チクショウ! どうしてこんな事に!?
ただ空いていた道を思いのままにかっ飛ばしただけじゃないか!
それなのに、俺の後ろを先程通り過ぎた3人のレプリロイドの内の一人が
猛烈なスピードで走って追いついてくる!
あれは見た事がある。 エックスだ!
ケツアゴイレギュラー『シグマ』との毎度の戦いに定評のあるロックマンXだ!
「前のキャデラック止まるんだ!! スピード違反だぞ!!」
はっきり言えば俺は焦っていた。 いくらこの車が古いキャデラックだからって、
このスピードで早々の事で追いつかれる事はないって思っていたから。
なのにあの青いイレギュラーハンターは俺を捕まえようと
まるでターミネーターのように走って俺のキャデラックに迫ってくる!
何がいけないんだ! ほんのちょっと速度オーバーしたぐらいで!
「聞こえなかったのか!! 止まらなければ抵抗とみなして攻撃するぞ!」
「誠くん! お願い止まってください!!」
言葉まで止まれって?
……冗談じゃない、ここまで突っ走って誰が止まるもんか!
捕まえたかったら捕まえてみろ!
このキャデラックは見た目ノーマルだけど、中身はゼロヨンだってできるように
カリカリにいじくってるんだ! トランスミッションだってATはATだけど
競技用の強化品に換装してる! やろうと思えばいつでも置き去りにできるんだ!
俺は強くアクセルペダルを踏み込み、もう一段階速度を上げた!
「きゃああああああああああ!!」
へへん! 見た事か、ちょっと踏んだだけであのロックマンXを数メートルも突き放した!
ざまぁ見ろってんだ!
……それにしても、言葉が今にも泣きそうなぐらい怖がってるな。
一応後で謝っておかなきゃ――――
「逃げたな!? よっしゃ! 攻撃だ!!」
……え? 今『よっしゃ』って言った? 何で?
自分で言うのも何だけど、俺達は速度違反を犯してるんだぞ?
なんでそんな待ってましたと言わんばっかりな言い方を?
俺は内心ほんのわずかに焦りを感じながらバックミラーを見ていると、
突然ロックマンの青いボディが……薄紫に変色した!?
そして次の瞬間――――
「『ストライクチェーン』ッ!!」
右手を突き出して叫んだかと思うと、ロックマンの手首がかぎ爪のような形に変わった!
身をよじりかぎ爪に変化した手首を振りかざすと、
それは鞭のようにしなりながら俺達の車目掛けて飛んできた!?
チェーンのような何かを伸ばしながら運転席にいた俺のすぐ側をかすめ、
それは助手席にいた言葉を囲うように曲がり、そのまま俺達二人に巻き付き、
あっという間に互いに引き寄せられるように一纏めに縛り上げられた!!
「ああああああああああああ!!!! ま、誠くん!!」
俺と言葉は一緒になって悲鳴を上げた――――何だよこれッ!!
「気の毒だけど俺の信じる正義の為だ!! そぉい!!」
ロックマンは俺達にチェーンを巻き付けたまま腕を振りかざすと、
俺達は2人してシートベルトを引きちぎられ、強引にキャデラックから空中へと投げ出された!!
砲弾のようにすっ飛んでいく俺の体、風を切り裂くような感覚が俺の思考を緩慢に――――。
あー、なんだこれ、これが空中遊泳ってやつかー??
何が起きたんだろうなー、ありえなさ過ぎて俺笑っちまうなー。
一緒に空飛んでる言葉、すっごく笑ってるー。
なんだかとっても気持ちい―、俺達どこに向かって飛んでるんだー?
あー、車がいっぱい集まってガソリン入れてるぞー。
わかった! この先にあったガソリンスタンドかー、なるほどなー。
すごーい! 目の前に給油ノズルの刺さったままの車が迫ってる!
あはは、運転手が逃げてる! 大体こんなスピードでぶつかったら俺も言葉もイチコロ――――
給油中の車両に激突した俺の全身に走る衝撃が体を形作る全てを砕く。
金属製のモノコックのシャシが俺の骨と共に潰れ、
雨あられのように降り注ぐ割れたガラス片が皮膚や筋肉を傷つける。
一撃の元にもたらされた耐え難い痛みに刈り取られた俺の意識は、
ひしゃげて火花の散った車から間髪入れずに放たれた、
眩い閃光と膨大な熱量の中に溶けていった――――――――
SCHOOL DAYS X
最終話
「速度違反」
目を覆いたくなるような強烈な閃光と、かつてない激しい地響きが熱風を伴い、
ハンターベース駐車場で起きた火災よりも凄惨なガソリンスタンド爆発の光景は、
後を追ってきたアクセルとゼロの足を立ち止まらせるのには十分だった。
「や、殺っちゃった……」
「あいつ派手にやったもんだな」
えらい事になってしまった。
人がガソリンを補給していた車に衝突して大爆発するという、
事の経緯を詳細に見ていたアクセルはただ茫然とする他なかった。
一方でゼロは見慣れた光景なのか、仲間の凶行に特に驚きも恐怖に引き攣ったりもしていない。
キャデラックの車速を上回る見るからに恐ろしいスピードですっ飛んで行き、
生身の体が給油中の車体とぶつかって、しかも火花が散る程の衝突エネルギー。
それが火種となって漏れたガソリンに一気に燃え広がったのだから恐ろしいと言う他無い。
ガソリンスタンドは小刻みに爆発を繰り返して
紅蓮の炎に包まれ、逃げ惑う人々の悲鳴で阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。
周辺道路を走っていた車もやはり巻き添えは食いたくないのだろう。
野次馬根性など働かせもせず、標識を無視したような速度でエンジンを吹かせながら、
中にはUターンして来た道を引き返す車もあり、
いずれも蜘蛛の子を散らすようにその場を去っていった。
そんな爆発現場から発せられる逆光にあてられながら、
燈色に照らされるエックスはいつの間にか運転席を乗っ取ったピンクキャデラックを運転し、
燃え盛るガソリンスタンドを引き攣った表情で凝視するアクセルの所に戻ってきた。
エックスは満面の笑みで片手を振りながら軽くクラクションを鳴らし、
ゼロとアクセルの目の前で車を止める。
「逃げたドライバーが反省の証に車を提供してくれたよ、ほら!」
「フッ……何だかんだ言って話の分かる奴だったわけだ」
「ああ、色々あったけどこれでカメリーオを追いかけられそうだ!」
まるで後ろの大惨事などどこ吹く風か、ガッツポーズをするエックスに
ゼロは腕を組んではにかみながら、カメリーオ追跡の手段を得た事を素直に喜びあっていた。
一方でアクセルの視線は爆心地に注がれたまま微動だにせず、
その胸中は仲間の無茶な行動からくる混乱と、現場から絶え間なく聞こえる悲鳴によって
もたらされる後ろめたさで、ありとあらゆる不穏な感情に支配され混沌を極めていた。
まさか・・・
こんなはずでは・・・
アクセルは出オチ昇竜拳で沈んだアジールフライヤーを脳裏に浮かばせながら自問自答する。
カメリーオを護送する最初の時点で、ゼロに行かせなければこんな事にならなかったのでは?
そんなゼロが提案した、車を徴収するという意見を何が何でも却下するべきだったのか?
何より、呆気に取られたりなんかしないでアレな提案に乗ったエックスを
身を挺してでも止めていれば、目の前の爆発は防げたんじゃないか……?
思い返せばキリがない。
自責の念ともとれるダウナーな思考の波に翻弄されるあまり、ついに――――
――――プツン――――
――――アクセルの堪忍袋が音を立てて、キレた。
「あはははははははははははははははははははははははッ!!」
喜びを分かち合う二人を割くかの如く、
アクセルは突如天を仰ぐように身を反らし笑い声を上げた。
大きく開かれた不気味なまでに輝きの無い瞳には、
喜びの感情を湛えているようには全く見えないが。
「ア、アクセル?」
「本っ当に心温まる話だねぇ!! 後ろで燃えてるガソリンスタンドよりも温かいよ!!」
激情に駆られながら火柱が立つスタンドを指さすアクセル。 突如大笑いをする彼を見て、
これには自信満々に宣言したエックスとゼロの2人も少したじろいた。
「はいはい! 分かりましたよどチクショウッ!!
もうこうなったら地獄にでもなんでも付き合ってやるよ!! バーローーーーッ!!」
膝を叩きながら早口でまくしたてるなり、
見るからに不貞腐れた態度で強く足音を立てながらキャデラックに歩み寄る。
「エックスは助手席! 僕が運転するよッ!!」
「お、おいアクセル「何も言わないでッ!!」
運転席の扉を乱暴に開け、エックスの腕を引っ張って引きずり出し
代わってアクセルが腰を打ち付ける様に皮張りのシートに一気に座り込んだ。
体重にシートを軋ませつつ扉を閉め、その手でドアパネルを叩いて続けてゼロの乗車を促した。
「ほらほら! 2人とも早くしてよ! ゼロもさっさと後ろに乗ってッ!!」
「あ、ああ……」
豹変したアクセルに催促され、エックスとゼロはやれやれと言わんばかりに両手を開くが、
カメリーオを追跡するという大仕事が残っている以上、時間を食う訳にもいかない為
青と赤のハンター2人はアクセルに従う形で車に乗り込む事にした。
エックスは助手席の扉を開け、ゼロは軽やかな動きで
リアフェンダーを乗り越え後部座席に飛び乗った。
勢いよく体重が乗っかったせいで車体の後部が揺れる。
イレギュラーハンター3人が搭乗した事を運転手を務めるアクセルが
視線を右側とバックミラーに動かして確認するなり、いざ発進となった次の瞬間!
「イヤッホオオオオオオオオイッ!!」
『アクセル全開!』でペダルを一気に踏込みタイヤを激しく空転させた!
車はその場に止まったままタイヤからは白煙が立ち上る、バーンアウトだ!
これにはエックスとゼロの2人は度肝を抜かれた。
そしてキャデラックのタイヤに十分な熱が加わると急発進!
同乗者3名はシートに体を押し付けられ、特にゼロの座る後部座席は
ヘッドレストなどついていない為、首が加速の勢いで上半身もろとも
持っていかれ、後ろに大きく仰け反る形になってしまった。
先程エックス達のそばを通過した時も相当な速度が出ていたが、
どうやらこのキャデラックはノーマルな見た目に反して内部は相当改造されているらしい。
本来シリーズ59と呼ばれるこのモデルの排気音はもっと静粛性の高い車なのだが、
アクセルの駆るこの車両はステレオタイプなアメ車そのものな、
言うなれば鉄の獣と形容するにふさわしいうなり声をあげて猛然と加速していく。
まるでドラッグレースのようにだだっ広い国道をでたらめなスピードで疾走する。
「アクセル!! もうちょっとスピード落とせないのか!?
これじゃあさっきのドライバーより性質悪いじゃないか!」
ドアの淵を掴みながら、暴力的な加速度と路面の振動に憶するエックス。
シートベルトはさっきドライバー達を放り投げた時に強引に引きちぎった為、
本来あるべき所にない状態なので体を固定する術がない。
しかしアクセルは笑い声をあげながら構わずにキャデラックを全力疾走させる。
「何がいけないのさ! 僕達が
ビビってないでさっさとカメリーオとっ捕まえてこんなクソ任務さっさと終わらせよう!!
……ヒャッハアァァァーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
「……アカン、完全にイってもうたやんけ」
なぜか関西弁っぽい方便で呟いたゼロの小声は、キャデラックの走行音にかき消されてしまう。
文字通り狂ったように速度を出すアクセルにエックスとゼロは驚き慄きながら、
カメリーオを追うべく燃え盛る給油所を後に弾丸のように走り去っていった。
未だ交通規制の遅れている、平常通りの交通量を記録する道路に
カメリーオのパトカーはそこにいた。
特に渋滞に巻き込まれる事なく悠々と車を運転しながら、車内に備え付きの通信機を使い、
映像付きの通信でとあるならず者と言葉を交わしていた。
「もしもし俺だ、カメリーオだよ」
<へっへっへ、カメリーオの旦那……また例の取引ですかい?>
投影された映像に映る相手は、頭に工事現場の安全帽らしきものをかぶった、
正確にはディグレイバーと大別されるレプリロイドである。
「悪ぃな『キンコーソーダー』、ちょっと入り用なんだよ。 先立つもんがなくてな。
盗んだ下着捌きてぇからどこかで落ち合いてぇんだが……直ちに」
キンコーソーダーとは彼の名前である。
量産型のレプリロイドの場合大半は識別コードが割り振られているが、
一部良くも悪くも自我に目覚めた個体は自らを名乗る場合もある。
そんな彼もまた、悪い意味で自我に目覚めイレギュラー認定された存在であるが、
銀行強盗もすれば今回のような盗品の売買にも手を染める、札付きのワルである。
して、キンコーソーダーはカメリーオの要求に応えるべく、わかりやしたぜと一言言うも
お互いに顔が見える状況だからか、ふとパトカーを運転しているカメリーオを見て首を傾げた。
<……あれ、風の噂じゃ旦那はパクられたってききましたが?>
「護送を買って出た奴がとんでもねぇムノウだったもんでよ。
上手く言って逃げたついでに駐車場の車に細工してやったんだよ……ニニニ」
<どらどら……ハハハッ! 本当だ、ハンターベースから煙が上がってら! いい気味だ!>
「ニニニッ! ざまぁみろってんだ!!」
悪党共はモニター越しに下衆びた笑い声をあげた。
この時、カメリーオは勝利を確信していた。
忍び込んだ保管庫から盗み出した武器弾薬、そしてコンピューターウイルスを使い
敵対するイレギュラーハンターの足を使い物にならなくする為、
レンジャー部隊時代の知識をこれでもかと悪用し、
真っ先に乗り込みそうな車両だけを狙い撃ちにした。
時間が迫る中の小細工ではあったが、
こうして敵が追って来ない所を見ると結果は大成功だったようだ。
しかも万一の追跡を困難にする為に、拝借したパトカーからは自車の位置を確認する為の
コンソールに内蔵されたGPSは、カメリーオ自身の『舌』である『アイアンタン』で貫き
あらかじめ排除しておいた。 運転席と助手席の間にそのコンソールが設置されているが、
現在使用中の通信機と、その下には何かがはまっていたであろう穴がごっそりと開いていた。
流石に褒められはしないが、逃亡を繰り返しただけあって抜かりはないようだ。
カメリーオは腰と運転席の隙間から出た、ゼロに切断された筈の
尻尾を喜びに小躍りするように動かしていた。
よく見れば、付け根の部分である腰にはガムテープのような物が張られている。
「しかし切られた俺の尻尾がガムテープごときで繋がるなんてな……。
ちょっとカッコが付かねぇが、まあ『主力武器』も含めてついでに
色々取り返せたんだ。 そこは贅沢言わねぇで後で修理するか……」
<へぇ……で、どこで落ち合いますかい? 纏まった額が今すぐ必要なら
とりあえず前金だけでも用意して隠れて待ってますが?>
「おっ、そうだな」
カメリーオは指示した。 集合場所は今から10分後に国際空港の道中にある
セントラルパークの敷地内、脇にベンチの置かれた公衆トイレの男子側のさる1室にて、
持ってきた下着と金を交換する約束を取り付ける。 とりあえずすぐ用意できる分だけを
前金で貰い、後日ほとぼりが冷めた頃に残りを受け取る段取りを立てた。
<あ~いいっすね~。 わっかりやした。
えっと連れに1人ライギャンβを見張りに連れて行きますが大丈夫ですかい?>
そう言ってキンコーソーダーは右隣にちらりと視線をやる。
画面が視線の先にずれ込むと、そこにはライオンのような鬣を持つ
獰猛な面構えの一体のイレギュラーが隣に立っていた。
どうやら彼のならず者仲間らしい。
「ああいいぜ、そんじゃあ早速頼むわ!」
<了解ですぜ……ところで>
カメリーオが通信を終えてスイッチを切ろうとした所で、
キンコーソーダーの質問がそれを遮った。
何か他にあるか? とカメリーオは瞼を小さく動かした。
<それにしても、逃げるだけにしてはずいぶん派手に
やりましたねって。 予想以上にひどい事なってますぜ?>
「ニニニ……元々ハンター共は前から気に入らなかったからな。
駐車場しか攻撃できなかったのがむしろ物足りねぇぐらいだ!」
<……ええ? 近所のガソリンスタンドも派手に爆発炎上してますぜ?>
キンコーソーダ―が画面に現在報道されているニュース番組をポップアップした。
カメリーオは目を見開いた。 生中継される内容は凄惨なものだった。
未だに火の手が収まらず、燃えているのが化石燃料と言う事もあって
通常のポンプ車でない特殊な消火装置を持った消防車が必死で火を消し止めようとしていた。
多数の救急車がピストン輸送されては、被災者を近くの大病院へと救急搬送され
赤いサイレンが鳴りやまぬ騒然とした現場が映し出されている。
炎上中の給油所は、カメリーオ自身も通り過ぎた大手系列のガソリンスタンドだった。
しかし……。
「お、おいなんだよこれ? 俺ここまで派手な事やってねぇぞ?」
<え? 旦那の仕業じゃないと? 爆発したから爆弾でも使って吹き飛ばしたんじゃ?>
「そんなところに寄り道できるかよ! ……じゃあこの爆発は一体誰が?」
困惑の中、カメリーオは必至で頭をひねる。
駐車場の火災に追われてハンター達は完全にお手上げ状態の筈。
自分も今言った通りとにかくハンターベースを離れるのが先決で
ブツの利益をさっさと確定させた上で高跳びに向けて逃げている最中だ。
何の関係も無い給油所などわざわざちょっかいを出す意味がない。
なのにこのタイミングで自身の通り道にあったスタンドが爆発するなど
あまりにも話が出来すぎている。
そんな時であった。
カメリーオの運転するパトカーのバックミラーに、奇妙な車が映し出されたのは。
そいつはシリーズ59と呼ばれる、アメリカンドリームの象徴である
ピンク色のクラシックカー、キャデラックその車だった。
競技用の車両を彷彿とさせるすさまじい轟音とかつてないスピードで迫るその車。
コンバーチブル故丸見えな搭乗者を見た時、カメリーオは凍り付いた。
「見つけたぞッ!! カメリーオッ!!」
搭乗者は3人。 運転席に黒、助手席に青、
そして後部座席に赤のレプリロイドが乗り込んでいる。
カメリーオにとって忌々しい、見覚えのある3人のイレギュラーハンター。
助手席の青のハンターが、カメリーオのパトカーを指さして叫んでいた!
「エ、エエエエエックスゥッ!? それにゼロとアクセルまでッ!?」
<えッ!?>
カメリーオは自慢のアイアンタンを突き出しながら驚愕に打ち震えた。
話を聞いていたキンコーソーダ―も驚きを隠せない。
<そんな!? 駐車場を使い物にならなくしたんじゃ!?>
「いや!! ありゃキャデラックだ!! あいつ民間人から車借りやがったんだ!!
……でもなんでよりによってピンクキャデラックなんだ?」
そこまで言いかけた時、さっきから流していた中継ニュースの画像が切り替わる。
どうやら事件を一部だが目撃した人が、ついさっきまで気を失っていた所目を覚まし、
怯えながらではあるがインタビューに答えてくれる事になったらしい。
<……事件の様子はどんな状態でしたか?>
<ええ……何と言えばいいか……人が飛んできたんです>
追いかけてくるエックス達から、不意にテレビ画面に視線を奪われる。
<その人車でかなり飛ばしてた所、いきなりロープか何か? で
助手席にいた人もろとも縛り上げられて、ものすごい勢いで投げ飛ばされたんです……。
その、ガソリンスタンド目掛けて>
<えっ? それじゃあ爆発事故が起きたのは……>
<え、ええ……投げられた人車で出してたスピードより
速い勢いですっ飛んで行って……その後は、もうすごい光と音で>
<……車が飛び込んだとかではなくって?>
<はい、間違いありません……むしろ乗ってた車はそのまま誰かが乗り込んで
持ち去ったような……そこから先は記憶が途切れてて……>
<……その、持ち去られた車っていうのは……?>
<あ、それだけは覚えてます!>
<クラシックカーです。 ピンク色のキャデラックでしたよあれは!>