ロックマンZAX   作:Easatoshi

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第5話

 

 

 

カメリーオは冷や汗をかく。

 

「し、信じらんねぇ……あいつら車強奪しやがったのかぁ!?」

 

インタビューを受けていた人が言う奪われたキャデラックとは、

イレギュラーハンター3人が今しがた乗っている車両とみて間違いないだろう。

1959年式のクラシックカーなど現存している台数はそう多くない。

 

何よりインタビュー内容が真実だとすれば、自分を追いかけるという

目的の為に『あんな真似』までして車を強奪したと言う事にカメリーオは戦慄くほかない。

どんな凄腕の自動車泥棒(Grand Theft Auto)もあそこまで派手な事はするまい。

 

意地でも自分を捕まえようとするエックス達の執念を前に

カメリーオは身が震え、今朝方エックスから受けた死刑宣告が脳裏にこだまする。

 

 

――――カメリーオの首を引きちぎるのは取り調べの後にしよう――――

 

 

一度は逃れられたはずの死の影が、再び音を立ててカメリーオに迫りくる。

冗談じゃねぇ! せっかく逃げられたってのに!

理不尽に震えるカメリーオがハンドルを叩きそうになったその時、

 

<全員動くな!! イレギュラーハンターだ!!>

 

一気に何かが開け放たれてからの複数の足音が重なる音が!

 

<<ナニィ!?>>

「ニニ!?」

 

どうやらキンコーソーダ―側の方で事態が良からぬ方に動いたようだ。

画面の向こうの2人組が揃って驚いた声を上げ、

カメリーオは慌ててポップアップされていたニュース番組の画面を閉じると、

そこには多数のハンターがキンコーソーダ―とライギャンβのいる部屋になだれ込んで来ていた!

 

<ガサ入れだ!!>

<捕まってたまるか!! ライギャン煙幕だ!!>

<任せろ!!>

 

隣にいたライギャンβが素早く尻尾から煙幕を放ち、ガサ入れに来たハンター連中を煙に巻いた!

 

<すまねぇ旦那!! 俺達は一旦逃げますぜ!!

 集合場所への到着がちょっとばかり遅れ――――ザザ――――>

「お、おい!?」

 

そこまで言いかけてキンコーソーダ―との通信が途絶えた。

通信モニターが砂嵐に包まれ、間髪入れず【NO SIGNAL】の文字に切り替わる。

いよいよもってカメリーオの旗色が悪くなってきたようだ。

 

 

 

 

しかしカメリーオの不幸はそれだけで終わらない。

 

「年貢の納め時だ、カメリーオ!」

 

声をかけられ、はっとした様子でカメリーオは左隣を振り向いた。

 

そこにはバスターを突き付けるイレギュラー絶対滅ぼすマンXと

彼率いる2人のハンター、計3名の乗るキャデラックが隣に並んでいた。

どうやら会話に気を取られて3人が隣に並んでいる事に気が付かなかったようだ。

 

カメリーオは青ざめる。

今の彼にとってエックス達は死の象徴そのもの。 そんな彼らに追いつかれ

隣に並ばれると言う事は、言うなれば死神が鎌を片手に手招きをしているのと同じだからだ。

 

「カメリーオ!! 俺はお前を許さない!!」

 

シートから立ち上がりドアに片足を乗せてバスターをチャージしながら、

エックスは怒りを露にしながらカメリーオに言葉を投げかける。

 

「お前が逃げたりしなければ駐車場も火事にならなかったし、

 速度違反のドライバー投げ飛ばしてまで車を奪う事もなかった……!!

 そのせいでガソリンスタンドが爆発する事態にまでなったんだ!」

「俺の信頼を裏切りやがって……残りのパンツ貰ったらゼットセイバーの餌食にしてやる!!」

「とにかくアンタが捕まらなきゃ終わらないんだよッ!!

 いいから大人しく捕まっちゃえッ!!」

「ニニィ!? 駐車場の火事以外は全部てめえらのせいだろッ!?」

 

「「「言い訳無用ッ!! 責任は取ってもらうぞ(ぜ)(よ)!!」」」

 

最後にそう叫ぶと共にエックスはチャージショットを放つ。

これにはカメリーオは怯み、強力なバスターの一撃が大きく車体を揺らす。

 

「ニニニニニッ!?」

 

パトカーは挙動を乱してスピンしそうになり、カメリーオの腕が

暴れるハンドルを握ったまま振り回されて持っていかれそうになるが、

レプリロイドの膂力をもってハンドルを抑え込んで車体を立て直し、

何事もなかったかのように走行を続ける。

 

「くそっ! この程度じゃびくともしないか!」

 

悔しそうにこちらを見るエックスが毒づいた。

やはり暴徒の襲撃を視野に入れたイレギュラーハンターのパトカーたる所以だろう。

一般車と比較して一回りも重いが、相応の装甲の頑丈さを持ち合わせている。

強いてあげるなら強化ガラスにひびが入り、外板に焦げ跡がついたのみで

それ以外は特に目立ったダメージは見当たらない。

 

運転手のカメリーオと言えば眉間に皺寄せ、ハンドルを握る手は震えていた。

しかしそれは恐怖からもたらされるものではなく、

むしろその一線を越えた先にある理不尽さへの怒りで満ち溢れていた。

 

「こ、この野郎……大人しくしてりゃいい気になりやがって……!!」

 

ここに至るまでずっと逃げ一択で鬱憤がたまっていたのだろう。

カメリーオのフラストレーションはとうとう臨界点に達した!

 

「ニッギィィィィィィッ!! こうなったらヤケクソだあああああああああああ!!!!

 殺られる前に殺ってやらあああああああああああああああッ!!!!」

 

絶叫するカメリーオはステアリングを一気に左へ切った!

重々しいパトカーのタイヤからスキール音を上げながら、

艶光りするピンクの右フロントフェンダーを直撃する!

 

「ぐあっ!!」

「うおおおお!!」

「うわぁっ!!」

 

頑丈なパトカーの体当たりに、今しがた命中させたバスターの衝撃と同じぐらいに

今度はピンクのキャデラックが大きく挙動を乱す。

エックスとゼロはバランスを崩し、座席に尻餅をついてしまった。

 

ぶつけられたフェンダーはひしゃげ、対してダメージの通らなかった

パトカーとは異なって破損の痕跡が大きく目立つ。

たとえ非合法であっても、金持ちに憧れるカメリーオが

アメリカンドリームの体現に攻撃を加えるとは何たる皮肉!

 

「やったなあああああああああッ!?」

 

キャデラックの運転手であるアクセルも怒りに駆られ、

ぶつけられた仕返しにハンドルを右に切り返し体当たりを敢行する!

見るに無残な姿をさらす右フェンダーがカメリーオのパトカーに迫る!

 

「ッ! だめだアクセル!」

「ニニニッ! バーカ!!」

 

衝突!

しかしカメリーオのパトカーはエックスバスターの

フルチャージの時と違い、たいして突き飛ばされなかったばかりか、

むしろぶつけにかかったキャデラックが大きくはじき返されてしまう。

 

カメリーオは労を要せずに車体を立て直し、勝ち誇った態度で嘲笑した。

 

「うわあああああああああ!!」

「落ち着け、この車の体当たりじゃ無理だッ!!」

 

アクセルの無謀とも言える行動をエックスが窘める。

腰砕けに踊るキャデラックに辛うじてしがみついていたフェンダーは、

2回にわたる激しい接触についに耐え切れず付け根の部分からちぎれ、

鉄板が風に煽られるままに持っていかれては地面を転がっていった。

 

「とにかく距離を保つんだ! バスターでタイヤを狙えばまだチャンスは――――」

「そうはいくかよ!!」

 

カメリーオはすかさず強化ガラスのウィンドウに尻尾を叩きつける。

ひびが入っていたと言う事もあり、バスターの直撃にも耐えたガラスは

棘のついたカメリーオの尻尾を前に貫通を許す。

 

「てめぇらはこれでも食らってろッ!!」

 

そしてカメリーオの尻尾の先端から針状に尖った緑の光が複数本、

目にも止まらぬ勢いで飛び出した!

『カメレオンスティング』、ハンター除隊以降封印されていた筈のカメリーオの主力武器が

アクセルの駆るピンクキャデラックの右リヤタイヤに突き刺さる!

 

「しまった!!」

 

タイヤバースト!

それどころかカメレオンスティングの鋭い閃光はホイールにさえ穴をあけ、

後輪駆動車であるキャデラックの駆動力を大きく奪い去った。

不意を突かれた焦りから声を上げるエックス達が、完全にバランスを崩したキャデラックを

持ち直すこともできず車速の乗ったままスピンモードに突入!

勢い良く煙を上げて回る車体をどうする事も出来ず、カメリーオの後塵を拝するかの如く

急激にスピードを落としながら後ろへと流されそうになる。

 

「このまま逃がすかよッ!!」

 

立て直しの利かないキャデラックの後部座席から、スピンの勢いに逆らってゼロが立ち上がる。

その青い目つきは先を走るカメリーオの駆るパトカーを見据えながら――――飛んだ!

 

「いいのかぁゼロ!? この先は」

 

赤い残像を携え飛来するゼロをバックミラー越しに見据えるカメリーオが呟いた時――――

 

 

 

 

――――車はトンネルに突入し、ゼロの体は

 

「ぶべらッ!!」

 

中央の分離帯にある柱に正面から激突した。

慣性が強く働いたまま縦に突っ込んだ為か、頭と胴体だけが柱にめり込み

両手足と長い金髪は勢いのまま前方へと延び、

まるで宙に手足を伸ばして座っているかのような姿勢になった。

 

「トンネルだぜぇ?」

 

どうやら回った勢いと立て直そうと無理な操作をしようとしたせいか、

エックス達の乗る車は対向車線に入ってしまったらしい。

尋常でない姿勢からの跳躍に見事失敗し、そのままの姿勢で柱からずり落ちるゼロを、

トンネル内の橙色のランプに照らされるカメリーオは前方不注意だと言わんばかりに大笑いした。

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての景色が後ろへと流れていく中、醜態を晒したゼロの姿も挙動を乱したキャデラックの姿も

バックミラーから消えていき、やがてはあれだけ大きく耳に突き刺さったエンジン音も

ドップラー効果と共に聞こえなくなっていった。

 

「ニニニ……ったく、これであいつらの顔を見ずに済むってんだ」

 

忌々しい追跡者がゴマ粒一つの大きさにさえ見えなくなったのを確認し、

カメリーオは一息ついて額に流れた汗を拭うような仕草をする。

レプリロイドに生身の部分がある訳でないが、人間に近い思考をとるよう

高度にプログラミングされたが故の行動だろう。 変な所で生々しい挙動を見せる。

 

「だが安心してもいられねぇ……

 キンコーソーダ―とライギャンの2人が逃げおおせたかが問題だな」

 

一段落ついた所で思考を切り替えたカメリーオは、悪党仲間の2人組の安否を気に掛ける。

当然だ。 手に入れたブツを直ちに現金に換えてくれる手合いと言えば、

銀行強盗と盗品の流通において悪名を轟かせているキンコーソーダ―位のものだからだ。

他に候補がいない訳でないが、この逃亡中の切羽詰まった状況下でも

快く取引してくれるのは彼において他はいない。

 

「まあ、あいつら程のモンなら何とかなるかもしれねぇが……

 集合時間に遅れるかもしれねぇってのは中々に痛ぇな。

 

 しょうがねぇ、封鎖される前に空港に忍び込もうと思ったがそいつはあきらめて……」

 

カメリーオは想定外のトラブルから逃げ切る算段が崩れた事に対し、

改めて高跳びのプランを考え直し始めた。

 

ああでもない、こうでもない。

 

車のハンドルを握りながらである為か、それともやはり逃亡中には違いなく

落ち着かない為か、今一つカメリーオの思考がうまく纏まらない。

 

 

考えが決まらない中、カメリーオは何気なく

等間隔に柱の設置された分離帯越しに反対車線の方に目をやった。

 

そして、ある異変に気付く。

 

 

「……ニニ?」

 

 

カメリーオは見た。 反対を走る車がいずれもクラクションを鳴らしながら、

慌ただしくハンドルを切って道の真ん中を開けようとするのを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、今しがた置き去りにして聞こえなくなった筈の

 

 

 

 

キ ャ デ ラ ッ ク の エ ン ジ ン 音 が ト ン ネ ル 内 に こ だ ま す る

 

 

 

 

2度と耳にするまいと思ったあの耳に刺さる音。

身が震える思いのままカメリーオは恐る恐るバックミラーを覗き込んだ。

 

 

そしてエンジン音をかき消す程の男の大きな叫び声が。

 

 

 

「逃がすかあああああああああああああああああああああああッ!!!!」

 

 

 

「アイエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!?」

 

カメリーオは総毛立ち、今度こそ絶対的恐怖から金切り声を上げた!

 

……それもその筈であろう。 何故ならカメリーオが鏡越しに見た声の主とは――――

 

「カメリーオオォォォォォッ!! お前だけは絶対に許さねえええええええッ!!!!」

 

――――アクセルとエックスの乗るキャデラックの、喪失した右リアホイールを

補うかの如く、さながら神輿を担ぐかのように左肩でリアフェンダーを支えつつ……

 

鼻とヘルメットの隙間から赤いオイルを滝のように垂れ流しながら、

血走った目と血みどろの鬼気迫る形相で全力疾走するゼロの姿だったからだ!

 

「車支えてるだとぉ!? んなアホなああああああああああ!?」

 

白目を剥くカメリーオの口からはアイアンタンが突き出るように伸びた。

 

ドラッグレーサーに匹敵する馬力に追従できるだけあって、

アスファルトを蹴るゼロの足からはバーンアウトに匹敵する程の土煙が上がっている。

 

駆動輪の片方を失い絶対に走行できる状態でない筈のキャデラックを、

力技で支えた上に加速の補助として自分が代わりに走ると言う、

この上ない異様な光景を見たカメリーオの恐怖は計り知れない。

 

最早今日一日で体験したこの狂乱のロックンロールは、

カメリーオの瞼の裏に焼き付いて離れる事は決してないだろう。

 

 

2台して並走している内にトンネル区間が終わり、パトカーとキャデラックを遮っていた

柱の設置された分離帯が途切れ、青空に照らされた真っ平らな大通りが再び目前に現れる。

 

 

「く、クソったれ!! もう一回車ぶつけてやらぁ!!」

 

意地でも引かない根源的な恐怖に悪あがきを敢行するカメリーオ。

もう一度ハンドルを左に切り、頑丈なパトカーをぶつけにかかろうとする。

 

しかし助手席にいたエックスはもう一度突っ込んでくる事を

予想していたのか、カメリーオの『マナーの悪い幅寄せ』に動じる事はなく、

その体の色を黒に切り替えバスターを突き出した。

 

「『ジェルシェイバー』ッ!!」

 

銃口から液体の塊が飛び出し、それらは地面に向かって斜め下に飛び出した。

 

「バーカ! どこ狙ってそんなもん撃ってるんだよ!」

 

一見見当違いな方向に飛んで行ったエックスの攻撃。

カメリーオは狙いの定まっていない特殊武器を見て笑い声を上げた。

 

しかしそれこそが間違いだと言う事にカメリーオは気づかなかった。

エックスの放ったジェルシェイバーは地面を滑走し、命中した。

 

カメリーオのパトカーの左リヤタイヤに。

 

「ニニッ!? な、なんだ!?」

 

その瞬間、早々の事で乱れなかったカメリーオのパトカーの挙動がおかしくなる。

走破性を重視して4輪駆動として設計されたパトカーがいとも簡単に足元を掬われたのだ。

 

エックスの特殊武器が命中したリヤタイヤには、ジェルシェイバーの液体がこびりついて

一滴たりとも飛沫を上げずしっかりとタイヤの表面にまとわりついていた。

 

ハイドロプレーニング現象というものがある。

自動車が高速で濡れた路面を走る、タイヤの摩耗が進んで溝から水を排出しきれなくなった。

原因は様々であるが、いずれにしてもタイヤが水の分子に足元を掬われ、

地面に触れる事無くタイヤが浮いて滑り出してしまう事を言う。

 

エックスは車体同様に強化されているであろうパトカーのタイヤを

確実に使い物にならなくするため、カメリーオのように穴をあけるより

タイヤそのもののグリップ力を失わせる事を優先したようだ。

彼の目論見通り、一転して車体が言う事をきかなくなったカメリーオは

体当たりするどころでなく、慌てて車の揺れを止めようと

ハンドルを左右に慌ただしく切り始める。

 

「チクショウ!! この手があったか!?」

 

ぶつけるつもりが逆に、自分の方がキャデラックに引き寄せられそうになる中、

 

「今だゼロッ!!」

「任せろ!!」

 

エックスの掛け声に応えるように、

後輪を支えていたゼロが開いた手でビームサーベルを引き抜いた!

そして腰砕けのまま吸い寄せられ幅を詰めたカメリーオのパトカーの……

 

 

「『雷神撃』ッ!!」

 

 

自らが尻尾で空けた強化ガラスの穴へとピンポイントに、

電撃をまとったセイバーを突き刺した!!

 

「ニニイイイイイィィィィィィィッ!!!!」

 

セイバーは突き刺した角度が、運転席にいるカメリーオから見た視点で右斜めに突き刺さり、

すんでの所で直撃は避けられたがセンターコンソールの通信機に命中!

あともう少し角度がずれていたら自身の胴体を串刺しにされていたであろう事実に、

カメリーオは悲鳴を上げ、スパークを放つセイバーを

恐れてついハンドルから手を引き上げてしまった。

 

当然、ただでさえ挙動を乱している車は本格的にスピンに陥る事となる。

ゼロは突き刺したセイバーを引き抜くどころかパトカーもろとも引き寄せてしまい、

 

「お、おい!! こっち来るんじゃねぇ!!」

「まずい!! パトカーから離れろアクセ――――」

 

突発的なアクシデントに驚くエックス達の乗る、キャデラックを巻き添えにクラッシュ!

 

後輪の代わりを務めていたゼロはしっかりと車に挟まれ、

支える者のいなくなったキャデラックは火花を散らしながらコントロール不能に陥る。

アクセルも衝突のショックでハンドルから手を放してしまい、

2台してもつれ込んだまま差し掛かった川をまたぐ橋の欄干を突き破る――――

 

 

 

 

 

――――着水。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッぷはぁ!!」

「アクセル、無事だったか!」

 

パトカーとキャデラックの水面ダイブからしばしの後、

水面から顔を出したアクセルを河原で膝をついた姿勢で出迎えるエックス。

エックスは手を差し出してアクセルがそれを握るのを確認し、水に濡れた仲間を引っ張り上げた。

 

「なんとかね。 おかげですっかり頭も冷えたよ」

 

自ら上がったアクセルが立ち上がり、首を横に振るって水滴を飛ばす。

機械の体は水にふやけたりはしない。 が、川の水で冷やされた体は思った以上に冷え、

アクセルは寒そうに身を震わせては両手で二の腕を摩る。

 

「うう……カメリーオはどうなったの?」

 

アクセルの問いかけにエックスは苦虫を潰したような顔をする。

 

「……水の中で気付いて一緒に沈んだパトカーを見た時には、もう……」

「たまんないね、折角ここまで来たのに!」

 

ため息交じりに話すエックスに、アクセルは悪態をついて河原の小石を蹴飛ばした。

車を奪ってまで追いかけたというのに、

肝心のカメリーオを取り逃がしてしまうとは何たる失態か。

これでは発信機を付けた名も無き隊員と、

失ったホイールの代わりを務めたゼロの努力が報われない。

 

……そこまで考えてエックスとアクセルはある事に気づいた。

 

「そうだエックス、ゼロは!?」

「ッ!! さっきの接触で車に挟まれた筈!!」

 

車に押しつぶされ、もつれ合ったまま落下したゼロの姿が見当たらない。

しかし川底に沈んだキャデラックとパトカーをこの目で見たエックスの記憶にも、

赤いハンターの存在は影も形も捉えてはいない。

一緒に落ちたのなら少なくともこの近くにいる筈。 一体どこに?

 

 

 

エックス達が辺りを探し始めた時、ふと河原と護岸の間に生えている茂みが揺れる。

 

「お、俺はここだエックス……!!」

 

同時に聞き覚えのある声が聞こえ、それに気づいた

エックスとアクセルは茂みに駆け寄って急いで掻き分けた。

 

「ゼ……!?」

 

そして仲間の……ゼロの姿を捉えた時、2人は絶句した。

アクセルは立ちすくみ、エックスは力なく膝をつき両手を地面において打ちひしがれた。

 

 

「すまないエックス……ドジっちまったようだ……!!」

 

 

草むらに倒れる傷だらけのゼロの体は……下半身を失っていた。

 

「ゼ、ゼロ……なんて事だ……!!」

 

震える唇からやっとの思いで言葉を紡ぎだし、エックスの両手は手元の草を握りしめていた。

見開らいた目は、火花を散らすゼロの胴体の切断面に視線を奪われたまま。

 

エックスは魂の叫びを上げた。

 

「ダメじゃないかぁッ!! それぐらいの傷直しとかないでッ!!」

「えええええええええええええええええええええええええええええええッ!?」

 

アクセルも大声を上げた。

 

 




予定していた用事も終わり、ようやく執筆再開と相成りました!

ちなみに運転中のカメリーオですが、締め切った車内からウィンドウ越しに
オープンカーとはいえエックス達と普通に会話のやり取りができているのはわざとです。
実際問題窓を閉めてたらほとんど外の声聞こえなくなりますから。

クライマックスまであとわずか、もうしばらくのお付き合いをお願いします。

でわ!
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