少年と少女達の輝き目指す物語   作:キャプテンタディー

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どうも、キャプテンタディーです。

今回は前回の前編の続きになります。
なので、前置きはもうこれでおしまいです!

更新遅くなって申し訳ないです。
それでは、本編をどうぞ!




#22 曜と過ごす休日 後編

 

 

 

 

 

 

俺と曜は日本丸を見るため、まず見るための入場券を買いに来ていた。

 

入場料を見てみると、どうやら日本丸の隣に建っている『横浜みなと博物館』と一緒に見るかどうかで料金は変わるらしい。

 

簡単に言ってしまうと、日本丸と博物館、どっちも見るなら1人600円と少々高いのだ。

 

 

「どうする?どっちも見る?」

「ううん。今日は日本丸を見に来たから、日本丸だけの単館券にする」

「じゃあ日本丸の単館券でお願いします」

「では、2名で800円になります」

 

 

どちらか片方だけを見るなら1人400円と安い。

 

今日は曜の志望で日本丸だけ見に来たわけだから、入場料が400円分得した気分だった。

 

えっ?なんで俺が入場料金を払うのかって?

 

曜に寝顔を撮られた件があるからな。察して。

 

 

「それでは、ごゆっくりどうぞ」

 

 

入場券を受け取り、受付の係員のスラッとした綺麗なお辞儀に目が釘付けになっていた俺は、またさっきと同じように曜に手を引っ張られる。

 

 

「ほら遼くん!ぼさっとしてると置いてくよ!」

「おいぃ!?だから手を引っ張るなって!」

 

 

早く船の中を見たいという、目をキラキラ輝かせて訴えかけている曜に、俺は成す術もなかった。

 

とにかく、入場券を買えたから船を見ることは出来る。ただ船も博物館同様。順路を追って見学するわけだから、ゆっくり見ていく必要がある。

 

でも曜のことだ。それ関しては問題ないと思う。

 

 

「うわぁ〜!すご〜い!」

 

 

今のあいつはまるで無邪気は子供だ。

 

 

「あまりはしゃぐなよ。怪我するぞ!」

「分かってるよ〜!」

 

 

曜の言葉に、俺はため息をつく。

 

俺の話に対して分かったようなつもりで答えていると、あとで自分にバチが当たるぞ。

 

はい、フラグ立てた。

 

 

「それにしても、スゲェなやっぱ……」

 

 

そして俺は日本丸の甲板の上に立ち、足元の甲板を見ていてすごく感激する。

 

やはり日本丸の甲板は、とても立派なものだった。

 

床はピカピカに磨かれ、開館前に磨いてからそんなに時間が経っていないのだろう。ところどころに木が濡れている場所をいくつか発見し、小さな水溜まりもいくつか発見した。

 

 

「えへっ♪えへへへっ♪」

 

 

そんなのお構いなしの様子を見せていた曜は、はにかんだ笑顔のまま船首の部分へと走っていく。

 

曜を追いかける俺は、自分の上に張られた真っ白なマストを見上げながら、曜が向かっていった船首の方へと歩いていく。

 

時々、船の後方に振り返ったりと、あっちの方とか見てみたかったと思っていたけど、あくまで博物館だから順路通りに進む必要がある。

 

 

「遼くん!早くおいでよ〜!」

「はいはい。ちょっと待てって…」

 

 

見学案内には船の後方も見れるって書いてあったから、船全体を見れることに胸躍らせた俺は、曜に急かされるように船首部分へと向かう。

 

 

「あはっ!あはははっ!」

「はぁ…やれやれ……」

 

 

船首部分にやっと辿り着くと、そこにはいつまでも笑顔を絶やさずに甲板の上をクルクル回っている曜の姿1人だけだった。

 

今日はまるで、この日本丸には俺と曜しかいない雰囲気にさせられる。

 

船の甲板の下にも見学できる場所はあり、その下に他に見学している人はいるだろうけれど、無意識にそう感じさせられた。

 

2人っきりで船の上……ゴクリ。

 

だが、その束の間だった。

 

 

グラッ!

 

 

「うわぁ!?」

「……っ!危ない!」

 

 

さっき俺が立てたフラグが、見事に回収された。

 

曜は甲板から出ばっていた円状の部分に踵が躓き、それにびっくりした曜は体勢を崩してそのまま背中から倒れる。

 

だが俺から見ると、曜は頭から甲板に倒れるように見えた。だからその瞬間を見た俺は、瞬発的に曜のもとへと走っていた。

 

距離は5メートル。

 

スライディングすればギリギリ間に合う。

 

曜はいきなりだっだから、受身は取れない。

 

間に合えっ!間に合え〜!

 

 

 

ズササササ〜ッ!ガシッ!

 

 

 

「ふぅ、間に合ったぁ…」

「…………………///」

 

 

とりあえず、超がつくほどにギリギリだった。

 

俺は曜の背中と、甲板の間に入り込むようにスライディングをして、なんとかことは免れられた。

 

今の状況を詳しく説明すれば、俺の右手が曜の背中を通って右肩を支え、俺の左手は腕と一緒に、曜の両膝の裏を持ち上げている状態である。

 

 

「大丈夫か?怪我はない?」

「う…うん。大丈夫……///」

 

 

ともかく、曜も無事に怪我もなくて良かった。

 

スクールアイドルをやってる身なんだから、もう少し注意して行動してほしいもんだけどな。

 

 

「ほい。立てるか?」

「うん。ありがとっ…///」

 

 

一旦、曜を抱きかかえたまま俺は立ち上がり、その後にゆっくりと曜を下ろす。

 

俺の問いかけに曜は顔を赤く染めながら答えると、ボソッと小さな声で何かを呟いたが、俺にはなんて言ったのか分からなかった。

 

 

「んじゃ、日本丸の内部の見学といこうぜ」

「うんっ!全速前進であります!」

 

 

それで曜は仕切り直すように俺に向かってビシッと敬礼をすると、自分から先頭を切って、今度は船の内部へと歩き出す。

 

日本丸は下にあと2階くらいあるらしいから、順路を追って見学して行こうと思う。

 

 

「次は転けるなよ〜?」

「うっ、了解であります…///」

 

 

曜にはちゃんと忠告したし、これで安心だろう。

 

これでようやく、安心して見学出来そうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜!見た見た〜!」

 

 

彼女の反応を見れば、この日本丸での内部がどんな風だったかが想像できるであろう。

 

日本丸の内部は、当時にあった部屋などそのものがそのままに残されていて、船の動力とされるものがある機関室や、曜が1番見たいと言っていた船長室など、日本丸の内部で重要な部分のところを間近に見学することが出来た。

 

また、当時に大海原を航海していた頃の乗組員のインタビュー映像や写真など、日本丸のあゆみや、練習船での訓練と生活などを紹介されていたところにとても感銘を受けた。

 

この船の見学に費やした時間は、約1時間。

 

曜は満足感の溢れる笑顔をしていた。

 

 

「遼くん、楽しかったね!」

「あぁ。歴史あるものをこんなに間近に見れるのはあまり滅多にないことだし、見れてよかったな」

「うん!」

 

 

俺もこの機会に日本丸という歴史のある船を見る事が出来てよかったと思ってる。

 

曜には誘ってくれたことに感謝しかない。

 

家に篭ろうとしていた俺が馬鹿だったよ。

 

休みの日は沼津から離れてちょっと遠くに出かけてみるのも、意外とありなのかもしれない。

 

もちろん1人ではなく、誰かを誘ってね。

 

 

 

グウウゥゥ〜!

 

 

「あっ……///」

「…………………」

 

 

そして誰かさんのお腹の音がなると、恥ずかしかったのかお腹を両手で抑え、彼女は謝る。

 

 

「あ…あはは……ごめんね?///」

「別にいいさ。ちょうどお昼の時間だから、一旦俺たちが降りた駅まで戻るか。駅周辺になら食べられる場所とかあるだろうし…」

「そうだね。早速行ってみよう!」

 

 

時間はまだ正午すら回っていない。

 

今の時刻は11時半だけど、この後には赤レンガ倉庫にも行くから時間的にはちょうどいいくらい。

 

それに、日本丸に着いた頃は陽射しが強くて物凄く暑かったのだが、今では少し雲がかかってきて少し涼しくなってきた。

 

この天気が少しでも長く続いてくれれば、俺からしてみれば嬉しい限りである。

 

だが、天気のことよりも先に問題がありそうだ。

 

 

「うわっ…人さっきより多くない?」

「だな。お昼近い時間だし、先にお昼を済まそうって俺たちと考えてることは一緒なんだな」

 

 

駅に戻った俺と曜だが、ここの駅に着いた時よりも人がだいぶ多く集まってきていた。

 

俺の見る限り、ここには昼食を食べられるところがたくさんあることが分かるけれども、果たしてすぐに食べられる場所は見つかるだろうか?

 

 

否、なかなか見つからない。

 

 

「お店、全部に長い行列が出来てるから、すぐには食べられなさそうだね…」

 

 

駅周辺のお店を回ってはいるものの、それなりに長蛇の列があり、なかなかすぐ食べられるお店はほとんどないに近かった。

 

ラーメン屋、中にはイタリアンレストランと、俺と曜が今までに見たこともないお店が数多くずらっと立ち並んでいて、沼津でも感じたことのない賑やかさがあった。

 

 

これが、都会の街ってやつなんだな。

 

 

「でもそれだけ、どのお店も出している料理が美味しいってことなんだろうな」

 

 

長い行列を見て呟いていた曜に対して、俺はそう話したのはいいけれども、逆に不味いものは出さないだろうって、何故か俺は1人で納得してしまう。

 

それで俺は、曜と行列があまりないお店を探していた。且つ、お値段が安いところとかね。

 

時間が経つ次第に俺と曜は一言も話すこともなくなり、無我夢中にお店を探していたら、値段的に安いお店を曜は見つける。

 

 

「あっ、あったよ!行列がないお店!」

「どれ?どこにある?」

「あそこ!“松屋”って書いてあるお店!」

 

 

俺は曜が指差す方向に目をしかめて見ると、明るい黄色い看板に深い青字で、間違いなく“松屋”と少し字崩れした漢字で書かれている。

 

文字の上には赤い丸があり、その赤い丸の中には少し小さめの黄色い丸と青い丸の2つがある。

 

何処かで見覚えあったようなと、やや不確かな記憶をたどっていた俺は、ふとハッと思い出す。

 

 

あれ、沼津にもあるやつだってことをね。

 

 

「曜、あれは牛丼屋の松屋だ」

「えっ?……あっ、本当だ!」

 

 

俺は曜が指差していた看板のお店の正体を指摘すると、曜も俺みたいにしかめっ面で看板を見てはすぐにそのお店が“松屋”だってことに納得する。

 

まさか曜が見つけたお店が、まさか三大牛丼チェーン店の松屋だと思わなかった。

 

実は沼津にも松屋はあって、俺と曜がまだ小学生の小さい時から松屋の牛丼を食べていた。

 

幸い、松屋のお店の中はガラガラ。

 

お店の中に入って、すぐに牛丼の注文が出来そうなくらいに人は少なく、行列も全くない。

 

お昼を食べるなら、ここしかない。

 

 

「どうする?変なお店に入って高いもの食べるよりはマシだと思うけど、やめる?」

「ううん!松屋にする!」

 

 

曜もその気らしい。

 

日本丸で1時間も見学していれば、自然とお腹が空いてしまうのも無理もないだろう。

 

 

「んじゃ、さっさとお昼食べて、さっさと赤レンガ倉庫に行くぞ。善は急げだ」

「了解であります!」

 

 

彼女自身も松屋がいいとむぅ〜と一点張りだから、今日のお昼は松屋の牛丼に決定し、俺と曜はトコトコと躊躇うことなくお店の中に入って行く。

 

松屋は食券を買ってメニューを注文するから、入り口でまず食券を買わなければならない。

 

だけど俺も曜も、松屋に来たら食べるものはとっくに決まっていたのだ。

 

 

「牛めしでいい?」

「いいよ!牛めし牛めし〜♪」

 

 

『牛めし』

 

松屋で最も食べられている1番人気牛丼で、俺も曜もそれを初めて食べてからずっと食べている。

 

曜に関しては嬉しそうにはしゃぐくらい大好きで、松屋に来たら絶対に牛めし。それ以外は絶対に食べないと、とてもプライドが高い。

 

それでお店の厨房に近いテーブル席に座り、注文した牛めしを待つ。正面に向き合うようにして俺と曜は席に座っていて、牛めしが来るまでしばらくの間はこの後について話をしていた。

 

 

「ねぇ、遼くんはどこに行きたいの?」

「えっ?」

 

 

曜に振られたのは、そんな素っ気ない質問。

 

赤レンガ倉庫を見に行ったあと、多分俺の行きたいところに一緒に行こうと曜は考えているんだろう。

 

 

「私のわがままに付き合ってもらってばかりじゃ、遼くんだって楽しくないでしょ?」

「……っ!」

 

 

曜の話がまともすぎて、俺は一瞬ビビる。

 

俺の寝顔を写真で撮って、今まで散々俺を引っ張り回してきた彼女とは思えないほどの真剣な表情。

 

でも逆に、そんなことを言われてもすぐに行きたいところを思いつく俺ではない。

 

さっき曜が言った通り、俺は曜が行きたいところについて来ただけ。別に行きたいところはない。

 

だから俺は、曜の問いかけに対して否定した。

 

 

「何を急に…。俺は別に……」

「お待たせしました。牛めしになります」

 

 

だがそこに邪魔が入り、最後まで言えなかった。

 

2つの牛めしをお盆に乗せ、俺たちのテーブルにやって来た店員さん。にこやかに丁寧な口調でメニューの名前を言ったあとで、ゆっくりとこぼさないように2つの大きな器をテーブルに置いていく。

 

 

「キタ〜!牛めしだ〜!」

 

 

他のお客さんに鋭く痛い目線が送られているのも知らず、牛丼が来たくらいで大はしゃぎする曜。

 

俺はその姿にやれやれとやや呆れ、お店の店員は『ごゆっくりどうぞ』と、笑顔でそう言って持ち場の厨房へと戻っていった。

 

 

「記念に写真撮っとこ〜!」

「っておい!俺の食べるとこ撮るなよ!」

 

 

パシャ!

 

 

「えっへへ〜♪もう遅いのだ〜♪」

 

 

この日2枚目の被写体となり、牛めしを食べようとしていたところを曜に写真を撮られてしまった。

 

別にこういうときに撮られるのはいいんだけどさ、寝ているところを写真に収めるのはちょっとやめてほしいかな。

 

だって俺の寝顔だし……。

 

 

「それでは、いっただっきま〜す!」

 

 

両手を合わせ、満面な笑顔でそう言い放った曜は、右手に箸を持ちガツガツと牛めしを食べ始める。

 

その姿はまるで大食いする人みたいで、器を左手で持ってガッツリとご飯とお肉を美味しそうに食べている曜を見ると、なぜか不思議と微笑ましいなと感じている俺がいる。

 

 

「もぐもぐ……もぐもぐ…!」

 

 

それでリスみたいに頬が膨らむまで口にご飯をかきこんでいる曜に対して、俺はゆっくりとご飯を口に運んだ。

 

 

うん、牛めしはやっぱり美味しい。

 

 

本当にその一言に限るよ。

 

 

それで松屋でお昼を終えた俺と曜。

 

次に向かうのは、横浜赤レンガ倉庫。

 

赤レンガ倉庫は、当時の明治時代の明治政府によって保税倉庫として建設され、建設当時の正式名称は『横浜税関新港埠頭倉庫』

 

長々とした名前で、当時の赤レンガ倉庫はそういう風に使われていたらしい。

 

その後、その役目は終えた倉庫は商業施設へと変貌した。1号館は展示スペース、ホールなどの文化施設。2号館は商業施設となり、最上階の3階にはレストランが立ち並んでいる。

 

そして倉庫の付近一帯は、主に広場と公園を備える赤レンガパークとして整備され、時々そこで屋台などが出されて盛り上がっているそうだ。

 

 

「「ご馳走様でした!」」

 

 

空になった器に箸を置き、両手を合わせる。

 

食べ物を食べられたことに感謝を込めて俺と曜はそう言葉に表し、曜は俺に向かって言う。

 

 

「じゃあ早速、赤レンガ倉庫に行こう!」

「そうだな。行くか」

「うんっ!」

 

 

すでに赤レンガ倉庫に行く気満々の曜。

 

牛めしを食べ、すっかり元気になったようだ。

 

それからレジで会計を済ませ店の外に出ると、空はまた陽射しが強くなっていた。でも風もあり、結構涼しいから体感温度的にはちょうどいい。

 

 

「じゃ、行くか」

「ヨーソロー!」

 

 

そして隣に寄り添う曜にそんな言葉を投げかけて、俺と曜は赤レンガ倉庫へと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

松屋から赤レンガ倉庫まで、大体30分くらい。

 

車が多く行き来する場所の歩道をてくてくと歩いて行くと、赤レンガと名の付く通りに赤レンガで作られた大きな倉庫が2つ見えてくる。

 

 

「あれか、赤レンガ倉庫」

「すっごい!大っきいね〜!」

 

 

あまりの巨大さにびっくり仰天してしまうほどだ。

 

平行に並ぶ2つの赤レンガ倉庫。そのうち小さい方が1号館で、大きい方が2号館。

 

建物の高さは20mで同じだけれど、違うのは建物の長さが違うだけ。大きいとか小さいとかあれかもしれないけど、区別するのはそれしかなかった。

 

 

「遼くん、先に1号館の方を見よう!」

「いいよ。時間もあるし、ゆっくり見ていこう」

 

 

曜は先に1号館の方を見たいと言うから、俺はゆっくりと見ていこうと曜のあとについていく。

 

あらかじめ開けられていた両開きのドアをくぐって中に入っていくと、どこもかしこも壁の内装は赤レンガで、びっしりと積み上げられていた。

 

そして当時の面影が残されたまま、この1号館の1階は多くのショップが立ち並んでいる。

 

ここは本当に素晴らしい建物だと、俺は建物の雰囲気を感じてそう思った。

 

 

「あっ!遼くん見て!」

「お土産やさんか。千歌と梨子に1個買ってくか」

「あと花丸ちゃんに、ルビィちゃんの分もね!」

 

 

中を2人で散策していたときに曜が立ち止まったのは、Depot【デポ】という主にお土産を専門に売っているお店。

 

洋菓子などの食べ物はもちろん、付箋などの小物品やトートバックなどの大きなものなど、幅広いジャンルのお土産を取り揃えていた。

 

それでこの店の中で曜が1番に目に止まったのは、ここ赤レンガ倉庫でオリジナルのカステラである『横浜かすてら』だった。

 

 

「うわぁ〜!美味しそう〜♪」

「また食べ物かよ!」

「いいじゃんいいじゃん!」

 

 

赤レンガの色に扮した赤色のパッケージに身を包み、どう見ても美味しいとか言わないであろうそのカステラは、1人分でも大きいくらいに大きい。

 

だから俺は、曜に1つ提案を提示する。

 

 

「ってか、そのでかい食べ物をお土産にするなら、せいぜい2個ぐらいでいいだろう」

「えっ…?どうして?」

「1人でそんなでかいカステラ食べられるか?その大きさだったら、5人で食べるなら2個で十分。1個に対して3等分すればいいだけの話さ」

「おぉ!遼くん名案だね!」

 

 

いや、別に名案じゃないと思うけど…。

 

赤レンガ倉庫オリジナルだけあって、1人で全部を食すなんてまず無理だとは思うぞ。少食っぽい梨子なら絶対に食べられなさそうな大きさだ。

 

 

「じゃあ2つ買って、学校で5人で食べるよ!」

「ああ。そうした方がいい」

「すみませ〜ん!このカステラ2つください!」

 

 

この時、俺は財布を後ろ手に自分が払うんじゃないかって考えていた。だが、このカステラは曜が自分で払うって言い出したから、ある意味助かった。

 

 

まぁ…そういうことよ。

 

 

1個1300円もするカステラを5個買ってみろ?

 

6500円だぞ?払えるわけないじゃない!

 

 

「いや〜!いいお土産買えたぞ〜!」

 

 

お土産を買い、ウハウハ気分の曜。

 

買った2つのカステラは5人で分けて食べるそうだから、みんなで楽しそうにカステラを食べてる様子が容易に頭に思い浮かぶよ。

 

 

「じゃあ次行こう!」

「はいよ。ただし、ゆっくりな……」

 

 

それから俺と曜は1階のお店を見て回る。

 

ブランド品を取り扱うお店があったり、ジェルキャンドルというものを作る体験が出来るガラス細工のお店があったりと、お店を見て回るだけでも楽しいと思えるようなお店がたくさんあった。

 

 

「あっ、これ可愛い!」

「それって、錨のストラップじゃないか」

 

 

俺たちが次に見ているのは、Felicia!【ファリシア】という主にアクセサリーやストラップなどの小物品を取り扱うお店。

 

その中で曜が見ていたのは、水色に染まった船の錨の形をしたストラップ。

 

それには小さい船の舵も付いていて、ある意味では海をイメージしたようなストラップだった。

 

 

「たくさん色があって、どれにするか迷うな〜」

「曜、買う前提なのかよ」

「うん!この中で2つ選ぼうと思ってるんだけど、遼くんは何色がいい?」

 

 

曜にストラップの色選びを手伝わされる俺は、仕方なくそのストラップの色選びを手伝う。

 

2つのうち1つは千歌とかへのプレゼントで、もう1つは曜が自分で付けるものだろうと思っていた俺は、棚にひっかけられたストラップを見回し、迷うことなく色を選ぶ。

 

 

「水色と、オレンジかな」

「分かった。早速買ってくるね!」

 

 

それで曜は俺が選んだ水色とオレンジのストラップを手に持ち、レジで会計を済ます。

 

正直、俺だけの意見で簡単にそれを決めてしまって良いのだろうかと考えていた。例えそれがプレゼントなら、それは尚更だ。

 

ストラップが入った小さな紙袋を見せびらかして、曜は店の外で待っていた俺の元へと戻ってくる。

 

 

「お待たせ〜!」

 

 

だが一番の幼馴染へのプレゼントを買えたことに喜びを感じていた曜を見ていた俺は、曜がそれで良いならそれでいいかと、安易に考えるのをやめた。

 

 

「んじゃ、次は2号館に行こうか」

「えっ?2階と3階は見ないの?」

「1号館の2階と3階にはもうお店とかないんだ。イベントがあるときとか、そういう時にしか上には行けないらしいよ」

 

 

俺はさっき曜が会計を済ませている間、実は1号館の案内板を見ていた。

 

1号館の2階はクリエイティブフロアで、3階はホールフロア。イベントがあるときのみにしか2階や3階は行けなくて、この1号館は1階しかほぼ開いてないようなものだった。

 

それを彼女に説明をすると、それに納得すると同時に、驚きを隠せない表情を見せていた。

 

 

「そうだったんだね。全然知らなかった」

「でも2号館はちゃんと3階まで行けるらしいから、2号館の方がもっと楽しめるんじゃない?」

「そうだね!」

 

 

大体、2号館が主に商業施設だってWikipediaさんに書いてあったし、それで間違いはないだろうから、2号館に行ってみた方がいいと俺は思う。

 

 

「それじゃあ2号館に行ってみよう!」

 

 

曜は腕を高々を掲げ、意気揚々と2号館に向かう。

 

1号館とは打って変わって、2号館は主に雑貨を取り扱うお店や、服を扱うお店。レストランもあって、本当に普通によくある商業施設のようだった。

 

まるで…街の中にショッピングモールがあるかのように、この赤レンガ倉庫の2号館にはたくさんのお店が立ち並んでいた。

 

 

「本当にショッピングモールみたい……」

「商業施設だって書いてあったからな。初めてきた俺たちからしてみれば驚きでしかない」

「本当だよね」

 

 

大きな倉庫がたちまち商業施設に変わるなんてことが、まず信じられない。

 

それに、2号館のほうが1号館よりも人が多い。

 

だから逸れないように、俺は曜の手を掴む。

 

 

ギュッ

 

 

「えっ?」

「人多いし、逸れないようにしないと…」

「そ…そうだね……///」

 

 

突然、自分の左手が俺の右手に掴まれていることに驚いていた曜だったけど、手を掴んだ理由を耳にした曜はギュッと俺の手を握り返す。

 

まぁ、満更でもなさそうな表情をしてる。

 

 

「んじゃ、ゆっくり見ていこう」

「うんっ!全速前進〜!」

 

 

俺と曜は最初の一歩を同時に踏み出し、横浜赤レンガ倉庫2号館の中をゆっくり歩いて見ていく。

 

服を試着しあってアドバイスしあったり、アクセサリーショップによれば曜がアクセサリーを試しにつけてキャッキャしたりと、曜と一緒に楽しい時間を過ごした。

 

でも俺と曜も2人での楽しい時間は、あっという間に過ぎ去っていった。

 

 

「はぁ〜!疲れた疲れた〜!」

 

 

赤レンガ倉庫を後にした俺たちは、沼津に帰るために横浜駅に行かなければない。

 

それで俺と曜は、最初に降りた桜木町駅のホームにいる。ベンチに腰掛け、歩き回って疲れた体を一時的に休ませていた。

 

 

時刻は午後6時。

 

 

消えていた街の街灯がちらほらと付きはじめ、横浜の街の夜の姿がじわりじわりと現れていく。

 

だけど今回、俺と曜はその姿を目の当たりにすることはできない。理由は簡単で、早く帰らないと怒られてしまうから。親にね…。

 

 

「あぁ〜あ、夜景見たかったな…」

「また来ればいいさ。街は逃げたりしないよ」

 

 

夜景を見れず、捻くれてしまう曜。

 

都会の夜の街を俺も見てみたかったけれど、今回は我慢。またここに来て、今度はちゃんと夜の景色を眺めたい。

 

 

『まもなく3番線に、京浜東北・根岸線、大宮行きが参ります!危ないですので、黄色い線より下がってお待ちください!』

 

 

電車が来るアナウンスが流れ、そろそろ帰る準備をしようと立ち上がると、曜がいきなり声を上げる。

 

 

「あぁ!忘れてた!」

「えっ?えぇ?」

 

 

曜は突然そんなびっくりするくらいに声を発して、俺は一体何を忘れたんだろうと思っていた。

 

すると曜は、カバンからあるものを取り出す。

 

それはなんと、1号館のFelicia!というお店で買った錨と舵のストラップが2個入った紙袋。

 

どうしてそんなものをとりだしたんだ?と思っていたら、曜はそのストラップが入った紙袋をいきなりガサゴソと開け始めたのだ。

 

 

「おい!何してんだよ!」

「いいから!」

 

 

その彼女の行動に驚愕し、俺は問い詰めるも彼女はその問いに対してをはぐらかす。

 

彼女に疑念を抱いた俺は、どうして買ったものの袋をいきなり開けるんだ?と、彼女の行動に対して不思議としか思えなかった。

 

そしたら曜は、意外な行動に出る。

 

ただそれは、思いもよらない行動だった。

 

 

「はい!遼くんにプレゼント!!」

「えっ?えぇ!?」

 

 

彼女はオレンジ色の錨のストラップを袋から取り出すと、そのまま俺に差し出してきたのだ。

 

詳しいことは言わず、ただプレゼントと突然に…。

 

驚きを隠しきれずにいる俺は、どうしていきなりプレゼントと渡してきたのか考えていると、曜はまた話し出す。

 

 

「これ…実は、遼くんへのプレゼントなんだ…///」

「えっ!?だってこのストラップ、千歌にプレゼントするはずじゃなかったのか?」

 

 

曜の話によると、実はこのストラップは本当は俺が貰うということだったらしい。

 

何故、今までそれを隠してたんだって思うよ。

 

それで俺が思っていたことをそのまま言葉にして彼女に尋ねると、曜は首を横に振り、そしてまた彼女は尋ねてくる。

 

俺に思い返すよう仕向けて…。

 

 

「ううん、違うよ。遼くんは分からなかった?私、あのとき遼くんに対してなんて聞いた?」

「えっ…?」

 

 

俺は曜に言われるまま、あのときに曜に聞かれた言葉を思い返す。ストラップの色を選ぶ前、曜に尋ねられたキーワード。

 

 

『この中で2つ選ぼうと思ってるんだけど、遼くんは何色が“いい”?』

 

 

あぁ…そっか。そういうことかよ。

 

これは実際、誤解されてもおかしくはない。

 

 

「あっ……そういう事かよ……」

「えへへっ♪理解できた?」

 

 

俺が思い出した表情を見せると、曜は俺の表情を見て途端に笑い出す。このヨーソロー野郎…変な誤解させやがってぇ…!

 

 

「全く…変な誤解させやがって……」

「遼くんが勝手に誤解してただけでしょ?」

「んだと〜!こうしてやる〜!」

 

 

あまりにも曜は俺を馬鹿にしてくるから、俺は両手を使って曜の脇腹をくすぐった。

 

 

「あははっ!遼くんくすぐったいよぉ〜!」

「お前のせいだ〜!」

 

 

そうさせたのは曜だ。

 

俺はちょっとした怒り任せに脇腹から上の腋の部分もくすぐり、彼女が許すまでくすぐった。

 

 

「とりあえず、これは貰っとく!」

「えへへっ♪ありがとう遼くん!」

 

 

そしてとりあえず、曜に手渡されたオレンジ色の錨ストラップは貰うことにした。曜からのそのプレゼントは、私の我儘に付き合ってくれたそのお礼。

 

あの言葉を思い出した時と同時に、プレゼントの意味もなんとなく分かった。

 

ただそれをこの時間まで隠さないで、買ったときに渡してくれれば良かったのにと思っていたら、いつの間にか電車が来てしまったようだ。

 

 

「はぁ……んじゃ…帰るか?」

「うんっ!帰宅開始であります!」

 

 

荷物持ちは当然……俺。

 

といっても買ったのは、カステラだけ。

 

だからまだ良かった。

 

他にいろんなものを買ってたら、俺の身は大変じゃ済まない。多分……死ぬんじゃないか?

 

 

「遼くん、ちょっと耳貸して?」

「えっ?なんで?」

「いいから貸して」

 

 

すると曜はまた変なことを言ってくる。しかも今度は耳を貸して欲しいというお願いだった。

 

正直、耳打ちするほど重要なことを聞かされるのか思いながら、俺は渋々と曜の口の高さまで体をかがめ、彼女に耳を貸す。

 

 

一体何を聞かされるのか?そう思った瞬間

 

 

 

チュッ♡

 

 

 

耳ではなく、頬に感触を感じた。

 

 

「……!?!?!?」

 

 

俺は感触があった左頬に手を当て、曜の顔を見ると、彼女の顔は茹でタコのように真っ赤に染まり、そして曜は赤面しつつ言った。

 

 

「今日は…ありがとう♪///」

「あ…あぁ。どう…いたしまして…///」

 

 

曜の恥ずかしがりながらも笑顔で言ったその言葉に、俺も顔をほのかに赤くしてそう言って返す。

 

ただ頬にキスされた俺は、しばらくの間ずっと頬に残るキスの感触を忘れられずにいた。

 

 

何せ曜から頬にキスをされるのは……

 

 

今までの人生で初めてのことだったから…。

 

 

 

 

 

 






前編・後編と、見てくださった方々
ありがとうございます!

この個人回は、実は自分のツイッターで
『初めての個人回として誰がいいですか?』
という投票の結果で話を作りました。

1位が曜ちゃんだったので、推しの僕は嬉しい。

次回からは、サンシャインの第5話に
進みたいと思っています!


善子『クックック…ようやくこの堕天使ヨハn…』


次回もお楽しみに!
感想・評価等、お待ちしています!


善子『ちょっと!最後まで言わせt……』

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