どうも、キャプテンタディーです!
いよいよ夏祭り編は最後のお話になります。
はてさて、曜ちゃんは見事に遼くんに告白する
ことが出来たのでしょうか?
是非とも、最後まで見ていってください。
久々の13000字。長いです()
それでは、本編をどうぞ!
聳え立つ木々の隙間から、西日の日差しが私と彼を照らしだす。
私は今、大きな山場を迎えていた。
「ここら辺で大丈夫だろう」
「……うん」
うわあぁぁあああん!
もう心臓がはち切れちゃいそうだよ!
遼くんと人気が全くない場所に移動して話すことにしたけれど、いざ移動して遼くんにちゃんと話すってなった時、また凄くドキドキしてきちゃった。
誰もいない、私と遼くんだけしかいないこの場の雰囲気は、静かで、さっきまで賑わいを見せていた夏祭りの雰囲気とは全くの別物だった。
とてつもなく、異様。
「じゃあ、ちゃんと話してもらおうか」
「うん。分かった」
そうしている内に、ちょうど誰も来ないであろう場所まで歩いてきた。
私はあえて大きな樹木を背にして彼の前に立ち、自分がこの今の状況から逃げないようにした。そうすれば、ちゃんと目の前にいる遼くんに自分の本当の気持ちを伝えられると思ったから。
そうして私は、彼の言葉に対して頷き、ちゃんと話すって意思を伝えた。いや、伝えてしまった。
もう『分かった』と言っちゃったから、私はもうこの場から逃げることは出来ない。僅かに触れてる浴衣の袖を握り、私は真っ直ぐ彼を見据えた。
「じゃあ……話すね」
「おう」
うん。これでいいんだ!
ちゃんと伝えるんだ!私の気持ちを!
鞠莉ちゃんや果南ちゃんがせっかく私を応援してくれているんだ。こんな絶好の大チャンスを与えられて、逃さない私じゃない。
「まずは、遼くんの質問に答えなきゃだね」
「あぁ。早くお前の答えが聞きたくてさ、こっちは体がうずうずしてて仕方がないんだ」
「はいはい。分かった分かった」
彼はもう答えが聞きたくて仕方がない様子。
だから順を追うようにして、私が今まで彼にしてきた行動の意味を1つずつ教えていくことにした。
ある意味、自分から公開処刑していく感じ。
「じゃあ1つ目。朝私がソワソワしてた件だけど、あの時に私が遼くんに言いたかったのは、夏祭りを2人で回りたいって言いたかったんだ。つまりは、遼くんと“デート”をしたかったんだ……」
「はっ?デート?」
「うん……そう……」
うぅ……やばい。
まだ1つ目しか話してもないのに、顔がだんだん真っ赤になっていくのを感じる。告白を含めてまだあと2つも話すことがあるのに、我慢できないよ。
平常心を保ちつつも、心の中では色々と破茶滅茶なことを考えていた。
「みんなと一緒に楽しむことを知っていて?」
「うん。知ってて遼くんに話した」
「……どうして?」
「だって、遼くんと回りたかったんだもん」
「……納得できないな」
だよね。こんな抽象的な理由じゃあ納得してくれないよね。
本当は、もう遼くんに告白をしたくて堪らない。けど手を繋いだ理由もきちんと話してから言った方が良いと思ってて、それが理由の全貌だからきっと遼くんも理解してくれると思ってる。
告白をして、そういう理由があったからそういう行動をしたって言ったら、遼くん怒るかな?
すると、彼は思いがけない言葉を発する。
「じゃあ別のことを聞こう。俺とずっと手を繋いでいたのはお前も覚えているはずだ」
「そうだね。かれこれ6時間くらいは遼くんと手を繋いでいたよね。なんか、ごめんね?突然手を強く握っちゃって……」
「もういいよ。別に気にしてないから」
彼からもう一つ話そうと思っていたことを話してくれて、逆に良い意味で私は助かった。
ただ、お昼の時からずっと手を繋いでいてくれた彼にとっては嫌だったと思う。お昼を食べさせ合ったことを思えば、遼くんには凄く恥ずかしい思いをさせてしまったと思ってる。
彼に内心で心から深く謝りながら、私は遼くんに対して手を繋いだ理由を口にした。
「遼くんと手を繋いた理由はね、今日は年に一度の夏祭りだからさ、遼くんと恋人みたいになって、手を繋ぎたいなぁって思ったの」
「……………………」
これは全く以って私の本心だよ。
だって、大好きな人と夏祭りだもん。こんな時に手を繋がないわけにいかないし、何より鞠莉ちゃんからのアドバイスのおかげなの。
『まずは必ず、遼と手を繋ぎなさい』
『えっ?手を……繋ぐ?』
『Yes!恋愛では一般常識です!それに、恋人同士でよくすることだから、曜も彼と恋人同士になった気分で手を繋いでみなさい。きっと、キュンキュンするはずよ!』
恋愛経験もなく、恋愛に疎かった私を一生懸命に指導してくれた鞠莉ちゃんには感謝しかない。私が鞠莉ちゃんに色々と教わらなかったら、きっと私は遼くんに告白することすらなかったかもしれない。
あとは、自分を信じられなかったかも。
私が遼くんに、“恋”をしていたこと自体がね。
「……なるほどな。分かった。お前がどうして手を繋いできたのかの理由は、何となくだけど理解することは出来たよ」
「本当!?良かった〜!」
ホッ、良かった。
最初の間は一体何だったのかよく分からなかったけど、それでも彼は私の言葉に首を縦に振って、私が話した理由について理解してくれていた。
その様子にホッと一息、私は安堵する。
そして私の言動において、付属された全ての理由を明かした私は、今から遼くんに告白すると考えた瞬間、体が小刻みに震えだした。
プルプル……プルプル……
あ……あれ?なんで私、震えてるの?
最初の一時的な感覚は全くのそれ。自分の身体に一体何が起こっているのかって不安で、恐怖の感覚さえもその時は芽生えていた。
けれども私は、その後でようやく気づいた。
私が彼に対して告白する『緊張』といったほうがいいかもしれない。鞠莉ちゃんから強く教えられた『断られる』ことを受け入れられるか。
それを1番に考えていたから、自分の身体が緊張を感じ、震えていたんだと私は思った。
そうやって自分自身に起きていることを深く分析している時に、閉じていた遼くんの口は開く。
「ただ曜。一つだけ、質問いいか?」
「んっ?なぁ〜に?」
腕を組み、神妙な表情で私を真っ直ぐに見つめてくる彼に、不意にまたドキドキしてしまう。けど、今に抱えているそのドキドキは、彼の言葉で一瞬にして消え去ってしまう。
心臓の胸の高鳴りは、度肝を抜かれた『ドキッ』という鼓動音になったのだ。
「お前、俺に何か
「…………っ!!??」
本当にドキッとした。
遼くんに私が告白するということを知らないはずなのにって。なのに私はバレてしまったことを前提にして、慌てて口の呂律が回らなかった。
「な、ななな、何言ってるの遼くん!?私が遼くんに隠しごとなんであるはずないじゃん!」
「その慌てぶりよう、“ある”んだな?」
「うぐっ……!」
私は本当に馬鹿だ。バカ曜だ。
「いや、だから私は……!」
「隠すな!お前が隠し事をしているときは、大体が慌ててる。俺は分かってるんだぞ?」
「うっ……」
わざわざ隠しごとをばらしちゃったとか、絶対にやっちゃいけないことを私はやってしまった。
ていうか、私の隠しごとのくせを知ってたなら、最初から隠し事なんてしなければ良かったと、私はそれに深く後悔した。
そしてもう、後戻りは出来なくなった。
「話してもらおうか?お前が本当に言いたいこと」
「……………………」
もうちゃんとね、彼に話さなきゃいけないときが来ちゃったみたい。あまりこんな展開、私は望んでいなかったのになぁ……。
でも言えるんだ。誰にも邪魔されずに、遼くんに対する想いを直接ぶつけられる。それだけで私は、気持ちをすぐに切り替えられた。
「分かった。ちゃんと話すから、聞いて?」
「……そうか」
遼くんに気持ちを伝える。
今さら緊張なんてしていられない。
気持ちを強く持って、彼の前で一つ大きく深呼吸した私は、もう一度彼をきちんと真っ直ぐ見つめ、私の全部を、遼くんに向かって大きく叫んだ。
羞恥を押し殺しつつ、純粋に、真っ直ぐに。
「私ね、ずっと……ずっと遼くんのことが……!」
その時だった。
「あっ!やっと見つけました!」
「「…………っ!?」」
私の正面、遼くんの背後から、私たちを見つけて嬉しそうな声が聞こえてくる。
私は遼くんの背後を覗き込むように、彼は後ろを振り返って、西日がちょうど当たっている木に視線を向ける。すると、その樹木の陰からこっそりと頭だけ現したのは、とても意外な人物だった。
どうして、私と遼くんの居場所が分かったのか?普通に聞き出して知りたいくらいに……。
「遼さん!曜さん!やっと見つけられた」
「ル……ルビィちゃん!?」
木の陰から現れたのは、ルビィちゃんだった。
呼吸のリズムが上がっていて、必死に呼吸を整えているから、きっとルビィちゃんはここまで走って来たんだと思う。
けども、本当にどうして私と遼くんがここにいるってことが分かったんだろう。私は、それがとても気になって仕方がなかった。
が、遼くんとルビィちゃんで話は進められる。
「ルビィちゃん、どうしたんだ?」
「あの……そろそろ準備の時間だったので、2人を呼びに行こうと思って……」
「あっ、もうそんな時間なのか」
どうやらルビィちゃんは、ライブの準備のために私たちを呼びに来たらしい。それを聞いた遼くんは驚き、左腕に輝く白銀の腕時計に目を向ける。
そして遼くんが見た時計の時刻は、そろそろ5時を迎えるところを針は差していた。
「やべっ!本当にもうそんな時間じゃん!」
「えぇ〜!?あっ、本当だ〜!」
私も彼の腕時計を懸命に見やると、本当に時計の針はそれを差していて、私もみんなに迷惑をかけるわけにはいかなかった。
その時に告白も、一度やめることにした。
こんな大事なときに告白なんてするべきじゃないって、すぐに感じた私は2人に言った。
「じゃあ急ごう、2人とも!千歌ちゃんたちを待たせるわけにはいかないよ!」
「そうだな!行こうルビィちゃん!」
「は……はいっ!」
告白はライブが終わったらまたしよう。
今度こそ、遼くんに気持ちを伝えよう。
「……………………」
ということで、私たちは急いで千歌ちゃんたちのところを戻ることにした。
ルビィちゃんが現れ、告白出来なくなっちゃったのは想定外で残念だったけれど、ライブの後に呼び出して、次こそちゃんと伝えよう。
このまま終わるなんて、絶対できないから。
「
〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜
「はい!事前練習終わり!」
「では、本番前までしっかり休みましょう!」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
本番まで、残り20分弱くらい。
それまでの2時間のほとんどは、ライブの練習に費やしていたところだった。
「はい千歌ちゃん!お水!」
「ありがとう!曜ちゃん!」
「はい!梨子ちゃんも!」
「うん!ありがとう曜ちゃん!」
「えへへっ!どういたしまして!」
給水の為、水の入ったペットボトルを千歌ちゃんと梨子ちゃんに配ると、それを快く受け取る2人。水を一気にがぶ飲みする千歌ちゃんの姿は、なんとなく少し子供っぽく見えた。
千歌ちゃんには、まぁ内緒だけど……。
他のみんなもお水を飲んで、練習で疲れてはいるけれど、笑顔は絶えず雰囲気はとても良い。
この良い雰囲気でライブに臨めれば、きっとライブは成功すると思う。そして何より多くの人が見てくれて、私たちのことを知って、覚えてもらえる人たちも増えると思う。
だからこそ、尚更失敗なんてできない。
これには果南ちゃん、鞠莉ちゃん、ダイヤさんの3人の再スタートの意味でもあるからね。
「お〜い!みんな〜!」
「あっ!遼くん!」
そんな私たち最後の休憩の最中、賑やかな控え室に意気揚々と彼が入ってくる。左手にはビニール袋を握りしめ、中には9人分のアイスが入っていた。
「千歌が我が儘だから、お望み通りの寿太郎みかん入り『みかんアイスゼリー』買ってきたぞ〜!」
「わ〜い!ありがとう遼くん!」
「代金は後々に返してもらうからな!」
「えぇ〜!?」
私は遼くんからの差し入れを両手で受け取っては、みんなに1つずつみかんアイスゼリーを順番に配っていく。この『みかんアイスゼリー』はみんながよく食べるゼリー状のアイスなんだ。
彼からの差し入れに、私を含めみんなご満悦。
ただ1人を、除いてはね……。
「わ、私はそんなのいらないわよ!絶対にいらないんだから!」
「そっか。善子はみかん嫌いだったな。悪い、善子がみかん嫌いだったの全然忘れてたわ」
「い、いいわよ別に。って、ヨハネ!」
善子ちゃんはみかんが嫌い。
それでいて彼はその事を忘れてたから、仕方なく善子ちゃんは渋りながらも彼を許した。でも名前は相変わらず訂正するけどね。善子ちゃんらしい。
「いいじゃんかよ。別に善子って呼んでも」
「いーや!ヨハネって呼んで欲しいの!」
ていうか、2人とも顔近づけ過ぎだよ。
善子ちゃんを『善子』と呼ぶ遼くんと、どうしても名前を『ヨハネ』と呼んでほしい善子ちゃんの鍔迫り合いは、どちらも引かない展開。
ただの2人の『呼び方』についての戯れ。
そう思って見ていた私だった。
なのに……
ズキッ、ズキッ
「…………っ」
2人の光景を見て、ふと胸に痛みを感じた。
どうしてそうなるのか、理由は分からない。ただ思い当たる事柄があるとするなら、この胸の痛みはきっと、私が告白に悔いがあったからだと思う。
あのままルビィちゃんに見つかりながら告白していれば、また違う状況だったのかもしれない。
でもそれを思い、悔やんでも仕方ない。まだ『次』がある。そう思えるだけで気持ちとしても、とてもだいぶ楽に感じた。
「……曜ちゃん?ずっと遼くんと善子ちゃんのこと見てるけど、大丈夫?具合悪い?」
「えっ?曜さん具合が悪いのですの!?」
「やめてよ千歌ちゃん!ダイヤさん誤解だよ!」
そしたらずっと遼くんと善子ちゃんのやり取りを見ていたせいか、具合が悪いと千歌ちゃんに変な気を遣わせしまい、ダイヤさんにも変な誤解を招いてしまう。
それに不安を抱いたみんな。私は深く千歌ちゃんとダイヤさんに謝りつつ、即座に2人の誤解を解消すべくみんなに話をした。
「私はただ、遼くんと善子ちゃんの2人のやり取りが面白くて。少しボーッとしてただけだよ」
「なぁ〜んだそうだったんだ!」
「“そうだったんだ”じゃありませんわ!全く!千歌さんのおかげでびっくりしましたわ!」
「ご、ごめんなさ〜い……」
ふぅ。何とか誤解は解消することが出来た。
けれどもダイヤさんは千歌ちゃんに対して怒りを露わにし、いつものお説教を千歌ちゃんにガミガミと言い続けるのであった。
ただこれは、間違いなく私のせいなんだけどね。ボーッとしてて、それで千歌ちゃんやダイヤさんに誤解を生ませてしまったのだから、私も私で今の事はしっかり反省しないと!
「失礼します!Aqoursの皆さん!まもなくライブの時間ですので、そろそろ準備をお願いします!」
「あっ、はい!分かりました!」
そんな時、私たちがある控え室にスタッフさんがやってきて、ライブの準備を進めるように私たちに伝えにくる。
ふと時計を見やると、ライブの開始時間の10分前になろうとしていたから、ちょうどいいタイミングなのかもしれない。
今回のライブは、沼津市が特別に用意してくれた特設ステージで歌うんだ。場所は狩野川で、しかも花火大会名物のナイアガラを背にして歌うんだよ!
なかなかに壮大だから絶対に成功させたい。
「じゃあみんな!今日はいろんな意味で大事なライブだから、みんなで絶対に成功させようね!」
「そうだね。私と鞠莉とダイヤの再スタートの意味もあるから、ミスとか絶対に出来ないね!」
「うふっ☆そうね!」
そんな思いは千歌ちゃんたちも一緒だった。
果南ちゃんたちもそのことを意識は凄くしてて、でも今日のライブを1番に楽しもうという面持ちを持っていた。
今回の衣装は『夏祭り』にちなんで和服。
ルビィちゃんと力合わせ、且つみんなのメンバーカラーに合わせて頑張って作ったの。だから衣装に負けないくらい可憐で、情熱的で、キラキラしているところみんなに見せてあげたい!
みんなもきっと、それを思っている!
遼くんもきっと、キラキラしている私たちを間近で見たいと思ってるはずだから……。
「ルビィも、一生懸命頑張る!」
「えぇ!私も果南さんや鞠莉さんに負けないくらい、精一杯やってみせますわ!!!」
「ダイヤさん、やる気満々ずら!」
「クックック。我、堕天使ヨハネも……」
「そういうのはいいずら……」
「ちょっと!最後まで言わせなさいよっ!」
「あ、あははは……」
みんなそれぞれが自分の気持ちや、これから行うライブに対しての意気込みを語っていく。そうしてそれが自分のことのようにスッと思えてきて、自分も頑張ろうって思える。
ある意味これが、“好循環”ってやつなのかな?
「ははっ!みんな頑張れよ!」
「遼くんは?」
「俺?俺はちゃんと見てるよ。みんなの歌とパフォーマンス、絶対に成功させろよな!変なミスしたら承知しねぇぞ!」
「……っ!うん!」
彼もまた、私たちが絶対にミスしないように喝を入れて油断を許さない。
遼くんは遼くんでそんな大事な場面を何度も経験があるから言えるんだと、千歌ちゃんを含めて、みんなはすぐにそう感じた。
「じゃあステージに行く前に、みんなで円陣を組んでいつものやろう!」
「「「「「「「「おー!」」」」」」」」
そして私たちは、遼くんから貰った緊張感を胸に秘めて円陣を組む。ライブの前にこうして手を重ね合わせて、声を掛け合うのがもう恒例になった。
その様子を見かねた彼は、そろそろと言って控え室を出て行こうとする。
「んじゃ、俺はそろそろ戻るわ」
円陣を組む私たちを背にし、右手を軽く上げながらそう言って控え室を後にしようとしていた。
けどその時、千歌ちゃんは言う。
「待って!遼くんもやろう!」
「は、はぁ!?」
「千歌ちゃん!?」
9人でやるんじゃなくて、遼くんも一緒に10人でやろうって千歌ちゃんは言い出す。
あまりにも唐突だったから、遼くんでさえ驚きを隠せなくて、みんな千歌ちゃんの発言に驚愕の表情が現れていた。
「お願い!私たちと一緒にやって!」
「何言ってやがるんだ千歌。そんな事に俺が混ざる理由なんてないはずだ」
「あるよ!遼くんは、Aqoursの
「……っ!」
千歌ちゃんの言葉に、思わず驚く彼。
私は、遼くんをAqoursの10人目として見ている千歌ちゃんの考えがすぐに分かった。
それで後々にみんなも、千歌ちゃんがどうして遼くんを10人目として言葉を投げかけたのかの理由を知り、彼は口を開く。
「俺が……10人目?」
「そう!遼くんはいつも私たちのことを気にかけてくれて、部活で忙しくても、いっつも私たちに連絡してくれる。それが千歌、凄く嬉しかったんだ!」
「そうですね。遼さんは私たちにとって大切な人。だから千歌さんはそう言ったのです!」
「……………………」
千歌ちゃんはそして彼の両手を握り、無理矢理に私たちが織り成している輪の中へと連れてくる。
千歌ちゃんに両手を握られた彼は、抵抗もなく、何も言わずに私たちの輪に加わる。少し何か考えている表情だったけれど、千歌ちゃんの言葉に何かを感じたのか、少し表情が緩み、遼くんは千歌ちゃんに口を開いて話す。
「……いいのか?俺で?」
「えっ……?」
「俺がAqoursの“10人目”でいいのか?ステージで歌うのは、“9人”だろ?」
「いいの。遼くんの支えがあるから、今の私たちがある。それだけで、みんな嬉しいんだ!」
「千歌……」
千歌ちゃんと言葉を交わしていくうちに、遼くんは首を縦に振り、『そっか』って小さく呟く。
表情もみるみるうちに口角が上がって微笑んで、彼は私たちに向かって言い放った。
「分かった。Aqoursの10人目、俺がしっかり受け取った。みんなを支えられるように、精一杯やってみせるよ!」
「……っ!ありがとう、遼くん!」
「良かったね!千歌ちゃん!」
「うん!千歌……すごく嬉しい!」
その言葉に、梨子ちゃんも寄り添って千歌ちゃんは喜びを爆発させた。
10人目のメンバー、遼くん。
彼自身も満更でもない表情を見せるあたり、遼くんも何かしら思うところがあったんだと思う。
そうじゃなかったら、こんなに笑う遼くんを見ることなんてできないから。
「とにかく、今からのライブには、みんな集中していこう!ついさっきまで練習してきたんだ。みんななら必ず出来るよ!」
「うん!私たち、やってみせるよ!」
「輝く私たちを見ててね!遼くん!」
「おう。俺も楽しませてもらうよ」
そうやって、また私たちは再び円陣を組む。今度はちゃんと遼くんも混ざって、みんなで一斉に声を張り上げた。
ライブの成功を、みんなで願って……!
「じゃあ行くよ!アクア〜!!」
『サ〜ンシャイ〜ン!!!』
〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜
夏祭りの風物詩『花火』
星空が輝く夜空を彩るように、夜空をいっぱいに埋め尽くす花火。音も大迫力。沢山の色、沢山の形にして夜空で光を放てば、一瞬にして夜空に消えてしまう。
そんな花火が上がって夜空を彩る空の下、9人の彼女たちは、狩野川に浮かぶステージの上で堂々としたパフォーマンスを披露していた。
『ど〜んなみ〜らい〜かは〜♪』
『だ〜れも〜ま〜だ知らない♪』
『でも〜楽〜しく〜な〜る〜はず〜だよ〜♪』
曲名『未熟DREAMER』
夏にちなみ『和』を感じられるが、ところどころでギターとの力強い演出がこの曲の良いところ。
果南と鞠莉、そしてダイヤの3人で作詞と作曲をしたこの曲は、この大きな夏祭りにはもってこいの曲だと、俺はそう感じた。
「あの子たち、可愛いね〜!」
「“Aqours”っていうんだ!みんな可愛い!」
それでまさか、こんなにも千歌たちを見てくれている人が多いとは思わなかった。
千歌たち9人を見て、『キャッキャッ!』と声を上げる女子高生らしき2人組の会話を耳にする。
周りを見渡せば、デジカメやスマホで写真や動画を撮っている人たちが多く見受けられて、キラキラとステージで舞い踊る9人の姿を写真に収めている人たちがたくさんいた。
これなら、夏祭りに訪れた人は、必ずや千歌たち「Aqours』のことを覚えてくれるだろう。
こんなにキラキラしている彼女たちを、見ていて忘れられるはずがない。
『成〜長した〜い〜な〜♪』
『ま〜だまだ〜♪』
『未〜熟ドリ〜マ〜♪』
沼津夏祭りの花火大会において、一番の名物は『ナイアガラ』
知ってると思うが、アメリカの観光地にもなっているナイアガラの滝。それを大胆に模したようにしてさ、上から下へ花火が滝のように演出がなされているのはここだけしかないんじゃないかな?
そしてそんな壮大な演出を背に9人の女子高生が歌を歌ったり、ダンスしたり、ていうか沼津市自体がここまで協力的になのは正直驚いた。
特設ステージを狩野川に作ることだけでも凄い。
千歌たちに出演のオファーを出しただけのことはあるけど、費用はいくらかかってるんだろう?
それがすごく気になって仕方がなかった。
『や〜っと1つになれそうな僕〜たちだから〜♪』
『本気ぶつけ合う事からは〜じ〜めよう〜♪』
『その時見〜える〜光〜が〜ある〜はず〜さ〜♪』
それでそうこうしているうちに、9人の華麗なるパフォーマンスは終わりを迎えて、『ナイアガラ』が終わると同時にステージのライトも消える。
ある意味、『味』のあるような終わり方をした事によって、観客からは黄色い歓声と、暖かい拍手が沸き起こった。
パチパチパチパチッ!
パチパチパチパチッ!
「ハァ……ハァ……」
ステージには横一列に並び、上がる息をゆっくりと整えている千歌たち。彼女たちには満足感のある笑顔があり、自分たちも理解出来たんだろう。
ライブは、大成功を収めたってことをね。
「ありがとうございました〜!」
『『『ありがとうございました〜!』』』
パチパチパチパチッ!
深々とお辞儀をし、お礼を述べる9人。
歓声と拍手は更に一層に湧き上がって、ライブのパフォーマンスを観客に見てもらえた千歌たちは、とても嬉しそうで笑顔が絶えなかった。
「みんな!ライブお疲れ様〜!」
「遼くん〜!私たち、やりきったよ!」
「あぁ。みんな、凄く輝いていたよ」
「え……えへへ♪嬉しいな〜♡」
控え室に俺は顔を出すと、和やかに会話していた彼女たち。
その彼女たちに声をかけたら今一番に千歌が抱きついてきて、ライブが上手くいって、キラッキラの満面の笑みを浮かべていた。
千歌に抱きつかれ、ちょうど胸のあたりで顔をウリウリされている俺であるが、それを気にすることはなく、俺は果南たち3人に言った。
2年ぶりにスクールアイドルを再開した3人を見られて、俺自身ものすごく嬉しさがあったからだ。
「果南、鞠莉、ダイヤ。3人がスクールアイドルをしてる姿をまた見られて、俺はすごく嬉しいよ」
その思いをそのまま3人にぶつけると、ダイヤと鞠莉と果南は一斉に顔を見合わせては、次第に顔を赤くして果南が恥ずかしがりながらお礼を言う。
それに続くようにして、鞠莉もダイヤも俺に対し感謝の気持ちを口にしてきた。
「あ、あははは……。遼にそう言われると、なんか恥ずかしいな。でも、ありがとう、遼!」
「こうして私たちがスクールアイドルをまたする事が出来るのは、これも全て遼さんのお陰ですわ!」
「遼!本当にありがとう!」
「……っ」
俺は別に、3人から感謝されるようなことは何もしてないんだけどなぁ……。
ただ3人の蟠りをなくし、あの時のように仲良しだった3人に戻したくて俺は行動してきただけなのに、そこまで感謝されるとは思わなかった。
ただ3人の感謝の言葉は素直に受け取る。
3人は俺にとって、とても大切な“友達”だから。
「じゃあ遼くん。そろそろ私たちは浴衣に着替えるから、遼くんは外で待ってて!覗いたら許さないんだから!」
「へーいへい。そんなの分かってるよ」
そんで俺は曜に控え室から追い出され、みんなが着替え終わるのを外で待つ。
その間、千歌にライブ前に言われたあの出来事というか、あの言葉をふと思い出していた。
『遼くんは、Aqoursの10人目だもん!』
千歌の口から言い放たれたその言葉は、俺といえども衝撃的に近いものだった。
ただみんなは、俺をそういう風に見ていて、千歌の言葉はまさにその通りだと言わんばかりに、俺を10人目のメンバーだと認めていた。
確かに俺は、千歌・曜・梨子の3人で始めたときからずっと彼女たちを支えてきた。花丸ちゃんたちが加わっても、果南たちが加わっても。
毎日毎日、俺は彼女たちの事を気にかけてやっていた。それが彼女たちからすれば、その行動全てに感謝していると千歌は言っていた。
正直、俺で良いのかなって思う。
でも千歌がそう言っているんだ。みんなは、俺のことを信頼している。だから、俺も千歌たちのことを信頼しても良いのかもしれない。
『No.10』か。
サッカーにおいて、『10番』は結構重要な意味を持つから、そう考えたら俺は結構重要なところを任されてる気がした。
思わずだけど、ちょっと笑みをこぼした。
ガチャ!
「……っ」
「お待たせ、遼くん」
それで控え室から誰が一番最初に出てくるだろうと、密かに俺は少しばかり考えていた。すると一番最初に控え室から出てきたのは、桜色の浴衣が凄く似合う梨子だった。意外……。
「おおっ。一番最初が梨子とは驚きだ」
「なぁ〜に?一番最初に誰が出てくるのか予想でもしていたの?私が一番最初で意外だった?」
「まぁな。ちょっと驚きを感じてるよ」
ていうか、やっぱり梨子の浴衣姿は綺麗だ。都会っ子はなんでも似合うんだなって思ってしまうよ。
綺麗な髪をまとめ、後ろでお団子にしている様はいつもの雰囲気とはまた違う雰囲気を漂わせる。
本当、梨子は綺麗だな……。
そんな時、梨子が俺に迫って話をしてきた。
「ねぇ、遼くん」
「なんだ?」
「あのね、まだみんな着替え終わらないみたいなんだけど、私遼くんと
「えっ?まぁ、別に良いけど……」
「本当?良かった!ありがとう!」
まだみんなが着替えを終えていないのは分かったけれど、それほど梨子が俺に話そうしていることは重要なのだろうか?
一旦、みんなから離れようだなんて……。
「それほど重要な話なのか?」
「うん。みんなには、少し話しにくくて……」
「……そうか」
俺だけには、話せることか。
あまり問い詰めたら逆に梨子も話し辛くなるだろうから、俺はそれ以上に彼女を問い詰めなかった。
そして、梨子は俺の左手を引いてきた。
「じゃあ、いい?」
「あぁ。行こうか」
優しく俺の手を引き、少しなんか小刻みに彼女の身体が震えている様子が伺えた。
梨子は俺になにを話そうとしているのか?まるでこの場面、人気のいない場所にちょうど移動しようとしていた曜と同じ場面に似ている。
一体、彼女は何を話そうとしているのか?
〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜
「あれ?遼くん?梨子ちゃん?」
衣装から浴衣に着替え、私は遼くんと梨子ちゃんがいる外側に顔を出したら、遼くんと梨子ちゃんの姿が見当たらなかった。
私はすぐさまみんなに2人がいないことを告げたとき、幸い、千歌ちゃんのスマホに梨子ちゃんからのメッセージが届いていたみたい。
メッセージの内容はこうだった。
『私のトイレに、彼を一緒に付き合わせてもらっています。すぐに戻ってくるから、安心して?』
「だって!だから2人とも大丈夫みたい!」
「ほっ。それなら安心ですわ」
「この時間に女の子1人で出歩かせるわけにはいかないからね。遼を連れて行くのは正解かも!」
「……………………」
みんなは、梨子ちゃんからのメッセージに安心・安堵の言葉を並べて胸を撫で下ろしていた。
でも、私の中ですごい胸騒ぎが起きていた。
本当にトイレ?っていう不信感。
もし、違う
ふと自分がそう考えたときに、私の心と身体に、大きな警鐘を鳴らした。
「……っ。私、2人を探してくるっ!」
「えっ!?ちょ、曜ちゃん!?」
身体は勝手に動いていた。
浴衣を着ていて走りたくても早くは走れなかったけど、背後からの千歌ちゃんの声を耳にしながら、私は2人を探しに控え室を飛び出した。
「ハァ……ハァ……」
嫌な……すごく嫌な予感がする。
とてつもない不安が身体にまとわりついて、早く遼くんと梨子ちゃんを見つけないとって、自分の心が強い焦燥感に駆られていた。
控え室を飛び出し、そこから少し離れたところには歩道とベンチが並び、あまり人通りが少ない場所に、その“2人”はいた。
あっ!遼くんと梨子ちゃんだ!
ちょうど蛍光灯が照らしているベンチに腰掛け、2人が横に並んだ状態で座っていた。
「ーーーーー!」
「ーーー。ーーーー?」
「ーー。ーーーーーーーーー!」
私が今いる場所では、とても遠くて2人の会話は全く耳に入ってこないし、まず聞こえない。表情もよく分からないし、遼くんと梨子ちゃんがお互いにジェスチャーをしながら、何かしら会話をしている様子が伺えるけど、本当にどんな話をしているのかよく分からなかった。
ドクンッ!ドクンッ!
そして同時に、私の心臓の鼓動が速くなった。
あの時、私が早く告白していればこんなにも不安に駆られることなんてなかった。
そんな大きな後悔が、目の前で後に降りかかってくるなんて、今の私には考えられなかった。
物陰に隠れながら、ゆっくり、ゆっくりと遼くんと梨子ちゃんのもとに近づいていった時に、それは聞こえてしまった。
「お願い遼くん!
「……………………」
「……嘘……でしょ?」
信じたく……なかった。
告白の話じゃなくて、普通の2人の楽しい会話だったら良かったのにって……。
梨子ちゃんに、私は先を越されたのだ……。
ベンチで正面に向き合い、梨子ちゃんが彼に対し告白している言葉が耳に入ってくる。それが私の頭にぐるぐると周回し、何度も何度も脳内でリピート再生された。
私が先に言うはずの言葉だったのにって、後悔と悔しさが滲み出てきて、涙が出そうだった。
でも、私の中で一つだけ希望はあった。
告白をしても、遼くんはそれに対して断ることが多かった。だから梨子ちゃんが告白する事は出来たとしても、彼が『OK』を出すとは思えなかった。
『だから大丈夫だろう!』って……。
根拠のない事柄を信じて、遼くんが梨子ちゃんを振ってくれることを信じて、私は願った。
でもそんな安易な私の考えは、
粉々のゴミ屑のように打ち砕かれた。
「……いいよ。それを、君が望むなら……」
「…………っ!あ、ありがとうっ!!!」
「……………………」
遼くんは、梨子ちゃんの告白を了承した。
梨子ちゃんは嬉しさのあまりに彼に抱きついて、大粒の涙を流して泣いていた。
私は、
「やだ……いやだよ……」
次の瞬間、目の前は真っ暗になった。
この話の最初から書いてた時は、曜ちゃんを
最初から結ばせる気は全くなかったです()
そうなると、読む方たちにとっては単純に
面白くないって思われそうだったのがそれです。
そしていかがだったでしょうか?
ある意味、一区切りがつくお話でした。
3年生が加わり、やっとAqoursを9人揃えること
が出来ました。内心少しホッとしております。
そしてそして次回は!
多分、きっと、3年生の回になると思います。
みなさん次回も是非、楽しみにしててください!
感想や評価等、お待ちしております!