少年と少女達の輝き目指す物語   作:キャプテンタディー

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どうも、キャプテンタディーです。

前回の更新から3ヶ月ぶりになりますね。
本当に“お久しぶり”な感じです。

最近はリアルに充実してて、執筆を疎かに
してしまっていたので、そこは否めませんが。

それでは、本編をどうぞ!





#64 善子の願望、千歌の驚愕

 

 

 

 

 

「はい、お上がりよ!」

「冷めないうちに食べてね!」

 

 

 カレーを作るのに1時間ほどかかった。

 特にこれといって別に手間をかけたわけじゃないけど、強いていうならニンニクを加えて、少し辛味が増したくらいだろうか。彼女たちが食べられないほどの辛くにはしてないから、とりあえずは問題はないはずだ。

 曜が皿にご飯を盛り付けて、俺がそれにカレーをかけてからみんなの待つテーブルにサーブをする。俺と曜で料理したカレーを見て、驚かない彼女たちではなかった。

 

 

「わぁ〜!美味しそう〜!」

「ニンニクの香り、とても良いですわ」

「Yes!とても食欲をそそるわ!」

 

 

 みんな、各々に俺と曜が作ったカレーをまず見て感想を述べる。特に千歌なんかは俺の料理を一番に食べたがっていたから、目をめちゃくちゃキラキラにしていた。それだけ、俺のカレーを食べたかったんだなってことが一目瞭然で見てとれたよ。

 

 

「じゃあ、早速いただくずら♪」

「出来たてで熱いから気をつけなよ」

「はいずら!」

 

 

 もうすでにスプーンを手に持ち、食べる気満々の花丸ちゃん。さっきシャイ煮を3杯も食べていたのに、カレーもまさか食べる気か? 

 だとしたら、その栄養やら色んなモノは一体どこに吸収されていくんだ? まさか、栄養はその2つの膨よかな……? いいや、ここで言うのはやめよう。なんかあとから制裁をくらいそうだからな。

 

 

「それでは、いっただっきま〜す♪」

「おう、召し上がれ」

 

 

 そして千歌の号令の下、みんなは一斉にカレーを食べ始めた。一口で頬張れる、スプーンにはそれ程の量をのせてみんなはまず一口目を食べると、同時にみんなの表情はにんまりと笑顔になった。

 

 

「んん〜っ!美味し〜い!」

「まぁ!こんなにも美味しいカレー、私でも初めて食べましたわ!」

「すごく美味しいずら〜♪」

 

 

 俺と曜で作ったカレーは大絶賛。堕天使の泪でのたうち回っていたルビィちゃんでさえ、『辛い』とかも何も言わずに食している。もの凄く美味しそうに笑顔溢れていた。

 

 

「おかわりずら!」

「はやっ!まだ食べるのかよ?」

「はいっ!遼さんと曜さんが作ってくれたカレー、とても美味しいですから!」

 

 

 おかわりを要求する花丸ちゃん。この子は本当に食べても太らない体質なのかもね。その代わり15歳でその大きさなら、今も尚のこと大きくなっていくに違いない。ナニがとは言わないけど、そのナニかは言わないでおくよ。大事だから『2回』言った。花丸ちゃんのそれを触ってみたさはあるけどね。

 

 

「良かったね、遼くん!」

「あぁ、そうだな」

 

 

 ひとまず俺と曜で作ったカレーの評価は、鞠莉のシャイ煮よりも高評価を得ることができた。

 カレーはAqours全員が完食をし、カレーを食べたおかげなのか、みんなの満足感のある表情が見てとれる。俺からしてみれば満足そうで何よりだ。

 

 

 グイッ グイグイッ

 

 

「んっ……?」

 

 

 その時、俺の背後から服の左側の裾を掴まれる。ギュッと、そしてグイッと力強く引っ張ってくる。俺はその場で後ろを振り向いてみると、そこにいたのはさっきまで満面な笑み浮かべながら美味そうにカレーを食べていた善子だった。

 俺に上目遣いをしてくる彼女は、何か言いたげな表情だったので俺から声をかけてみる。

 

 

「どうした?善子?」

「……………………」

「……?」

 

 

 だが、善子は俺の問いかけに視線を外す。彼女をよく見ていると、若干少しばかり彼女の頬の辺りが紅い。善子にとって俺に話す事柄がそんなにも恥ずかしいことなのかは分からんが、とにかく善子から口を開けてもらった方が幸いなのだが……。

 

 

「よ、善子さん……?」

「……っ」

「…………善子さ」

「あぁ〜もう分かったわよ!」

「……っ!?」

 

 

 じれったく善子の名を呼び続け、彼女の方から口を開いてくれること願っていたら、ようやく善子は口を開いてくれた。自分の中でやっと決心がついたんだろうと思うのだけれど、善子は一体なにを話し出すのだろうか? そして何より、その大きな声でみんなも善子に視線が注がれる。

 

 それを気にすることなく、善子は重い口を開く。

 

 

「遼さん!」

「は、はい……」

「わ、私に、料理を教えてください!」

 

 

 いつもの善子なら、堕天使ヨハネになって堕天使なる言語を話すのが通常なのに、たった今俺に対して言い放った言葉は、堕天使が一切含まれていない素の善子の言葉だった。

 

 

「素直ずら」

「えっ?花丸……ちゃん?」

「善子ちゃんが素直ずら〜!?」

「善子言うな!ヨ・ハ・ネ〜!」

 

 

 当然、幼稚園の頃から善子のことを知ってる花丸ちゃんは驚きを隠せなかった様子。

 

 

「善子さん、熱でもあるのですか?」

「ないわよっ!信じてないわけ!?」

「まぁ、いつもの善子なら堕天使でそれっぽい言葉を話すじゃん? みんな、少し驚いてる……」

「果南さんまで!?」

 

 

 ダイヤでさえ、果南でさえ、善子が堕天使ヨハネになることなく素のままで話をしてくるとは思っていなかった。みんな、善子がとった行動に驚かざるを得なかった。

 

 

「みんなが驚くのも仕方ないよ善子ちゃん。ダイヤさんと果南ちゃんの言う通り、いつもの善子ちゃんなら堕天使ヨハネになっちゃうじゃん」

「うぅ……曜さんまでぇ……」

「泣くな善子。ほら立って」

 

 

 ただ、あまりにもみんなが驚き過ぎたせいで善子はだいぶショックを受けてしまっていた。その場でヘタリと座り込んで、目に浮かべている涙がそれを物語っている。

 こんな展開になってしまっては、俺の中で彼女に対する対応はある程度決まってしまったわけで。

 

 

「善子。料理の仕方なら教えてやる」

「えっ!?本当!?」

 

 

 目の前で泣かれたら、そりゃあ料理を教えないわけにはいかない。善子の思惑がなんなのかは分からないけど、こいつのお願い、男として断るわけにはいかなかった。

 

 

「上手くなりたいんだろ?料理を」

「え、えぇ!もちろんよ!」

「なら、泣きべそかくな」

「わ、分かってるわよっ!」

 

 

 俺の問いかけに、躊躇いなく答える善子。

 多分彼女は、鞠莉のシャイ煮が美味しかったからとか、曜の料理を見て、『私もあれくらいの料理が出来たらなぁ』っていう並々ならぬ欲望があるのかもしれないんじゃないかな? でもやっぱり、そこは本人から聞いてみるべきか? 

 その刹那、善子に口を開いたのは曜だ。

 

 

「でも善子ちゃん、どうして?」

「な、何がよ……?」

「どうして、遼くんに料理を教えてもらおうって思ったの? 何かきっかけがあるの?」

「えっ?ええと……その……」

「教えてよ、善子ちゃん」

 

 

 ニヤッと笑みを浮かべ、まるで善子を恥ずかしがらせるために質問しているようにしか見えない。

 

 

「いや……だから……」

「んっ?だから?な〜に?」

 

 

 あぁ、完全にその目的で言っていやがる。みんなもそのことを知りたいようで、俺が止めるにもまずこの状況下ではなす術もなかった。善子は、悩みに悩んだ挙句、みんなに理由を説明した。

 

 

「ヨハネは、遼さんの料理がとても素晴らしかったって思ったの! ズラ丸とルビィ、前に3人に作ってくれたオムライスのときもそうだった」

「オムライス……あっ!」

「もしかして善子ちゃん、あの日からずっと……」

 

 

 顔を紅くして、勇気と羞恥を織り交ぜながら話をする善子は、どうやら俺が以前作ったオムライスの一件からそんなことを考えていたみたい。

 あの日から少し時間は経ってしまったけれども、彼女はその事をやっと口にして話すことが出来た。言いたいことが言えた。きっと曜はこのことを聞きたかったんだろう。表情はにこやかで、澄んでる。

 

 

「だから私は、遼さんから料理を教わりたい!」

「……そうだったんだ」

「これでいい? これで満足?」

「どう思う? 遼くん?」

「いや、別に聞かなくても良かったのに……」

 

 

 曜のやろう、そこまで聞いて俺に振ることもないだろうに。俺だって、答えはもう善子に話したってのによ。また言わせる気かっつーの。

 はぁ……仕方ない。また言うしかないのか。

 

 

「善子、料理はちゃんと教えてやる。みっちり基本から教えてやるから覚悟しろよ!」

「……っ! えぇ! 分かってるわよ!」

「ふふっ。良かったわね……」

 

 

 善子はやる気満々だ。だけど、料理を覚えるのは簡単じゃない。料理をする上で『基本』は絶対身につけておかないと料理なんて出来ない。怪我をする恐れだってあるからな。彼女のやりたいって意志は強い。あとは彼女に教えてみてどうなるかだな。

 

 

「遼さん、よろしくお願いします!」

「あぁ。しっかり鍛えてやる」

 

 

 善子は、ちゃんと覚えられるだろうか? いいや、分からない。そこはもう教えてみないと分からないかもしれないな。善子なら出来ると信じたいよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜※※※※〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピギャッ! さ、流石に辛すぎですわ……」

「もう、ダイヤったらお子ちゃまね!」

「鞠莉さんおだまらっしゃ〜い!」

 

 

 遼くんは善子ちゃんに料理を教えることになり、一旦その話が後々に持ち越しとなった今、まだ残りに残ったシャイ煮と堕天使の泪を食していた。

 一口食べれば、想像を絶する辛さが口に押し寄せてくる。それを堪えるためにダイヤさんは顔をしかめていたら、鞠莉さんは一口二口と、ダイヤさんのことをからかう。私と曜ちゃんと梨子ちゃんの3人は、みんなから一歩引いたところでその様子を見ていた。

 

 そしてそんなやり取りや風景が、私がいつも見ている、いつもの日常になりつつあった。

 

 

「あ、千歌ちゃん」

「んっ……?」

 

 

 そんな束の間の時に、梨子ちゃんは私に声をかけてきた。それをさっきまで忘れてて、たった今思い出したような声を上げながら。

 

 

「なぁに梨子ちゃん?」

「歌詞のことなんだけど、進捗はどう?」

 

 

 聞かれたのは、今作成中の歌詞のこと。

 ラブライブの予備予選に向けて、私と梨子ちゃんは曲の作成の真っ只中だった。

 

 でも……まだ……

 

 

「あ。うん……。なかなか思い浮かばなくて」

「難産みたいだね。作曲は?」

「いろいろ考えてはいるけど、やっぱり1番は歌詞のイメージもあるから……」

「いい歌詞にするから、もう少し待ってて?」

「うん。私は大丈夫だから」

 

 

 まだまだ全然、歌詞が書けていない。

 早くとこ作詞して、梨子ちゃんと一緒に良い曲を作って、ラブライブに出るためにみんなとたくさん練習だってしたい。曲のテーマはあって、頭の中でそれを思い浮かべているのに、良い言葉が全く検討もつかないのが現状だった。

 歌詞に合わせて作曲してくれる梨子ちゃんや、曲に合わせて衣装を作ってくれる曜ちゃんにも迷惑はかけられない。何とかしなくっちゃって、私は躍起になっていた。

 

 そんなとき、彼が私たちに歩み寄ってくる。

 

 

「なんだ? また歌詞作りで迷ってんの?」

「遼くん……」

 

 

 曲作り、そして歌詞作りに難色を示してた私たちを見かねて、善子ちゃんたちの輪から離れ、私たちのことを心配そうに声をかけてくる。

 そしたら彼から、私へ質問が投げ込まれる。

 

 

「曲のテーマは決まってるのか?」

「うん。テーマはね、『()()()()()』なんだ」

「大切な……ものねぇ……」

「………………っ」

 

 

 内容は曲のテーマについて。私が口に出した、『大切なもの』というのが今回作る曲のテーマ。

 みんなが、スクールアイドルを通じて、それぞれ大切にしているものを見つけたり、大切だって思ったり感じたりしてきた。だから、それを歌詞にして曲して、その曲をラブライブの予選でぶつけたいって思った。

 でも全く全然書けていない状態で、何から書いていいのか分からなかった。

 

 けどそのとき、私はまた彼から問いかけられる。

 

 

「千歌にとって、大切なものは?」

「えっ……?」

「お前にとって大切なもの・ことはなんだと聞いている。もしかしてないのか?大切な何か……」

「あ、あるに決まってんじゃん!」

 

 

 “つい"だった。遼くんの発せられた言葉に、私はむきになり、つい強気なことを言ってしまった。

 そしてその発言が、後に私自身の首を絞めていることに気づかなかった。

 

 

「ほう?じゃあその大切なものを、今みんなの前で話せるかな?」

「えっ……?あっ……」

「「「「「「「「…………」」」」」」」

 

 

 気づいたときにはもう既に遅くて、周りを見れば、みんなの視線が私に向けられていた。私はものすごく後悔した。遼くんのあの問いかけが、私自身が秘めている大切なものを聞き出そうとしての口車だったことにも……ね。

 

 

「聞かせてくれ、お前の思い」

「あっ、いや……ち、千歌は……」

 

 

 こんな急にみんなに自分の思ってることを話せるわけがなく、私は次第に顔を赤らめる。こんなの、ものすごく恥ずかしいに決まってんじゃん。

 でも、あんな強気に言っちゃって今ここでなにも言わなかったら?それでこそ遼くんの思うツボ。

 

 

 何か……何か話さないと……。

 

 

 そんな風に自分の首を締め上げてる状態の中で、何かしらをみんなに向けて話そうと思って考える。けど、逆に話さないとって思いつめ過ぎている私は軽いパニック状態に陥っていた。

 ただその時だったの。マズイ、すごくマズイって考えていた時に、思わぬ形でとある人物から助け舟が入ったの。

 

 

「ま、まぁ遼くん。千歌ちゃんが恥ずかしがってるから、今ここでみんなの前で無理に話させなくてもいいんじゃない?」

「……っ!?曜ちゃん……!」

「ほら、曜ちゃん嫌がってるし……」

 

 

 私を助けてくれたのは曜ちゃんだった。

 私の表情を見かねて声をかけてくれた曜ちゃんは、未だに私に視線を向ける遼くんに対してことを収めようと話をする。

 その曜ちゃんの言葉に遼くんは、少し不満の表情に移り変わる。そう思ったらその一瞬に、チラッと何故か曜ちゃんに視線を送ったのが分かった。その意図がどういうことなのか全く分からないでいた私を他所に遼くんは口を開く。

 

 

「……分かった。千歌、さっきの話はなかったことにしてくれ。そしてもう忘れろ」

「あ……う、うん……」

 

 

 呆気なかった。彼は曜ちゃんの言葉に従うようにそれからは何も言わず、ただ私にそう言ってことをなかったかのような振る舞いをしてみせた。

 これを聞いた曜ちゃんもホッと胸を撫で下ろし、安心しきった表情を見せる。とりあえずは、自分が恥ずかしい思いをしなくて済んだと考えれば良いのかな?みんなの前で自分にとって大切なものを話すなんてやっぱり恥ずかしい。

 

 と、私も自分自身の胸を撫で下ろしてホッとしていた。でもその束の間に、ダイヤさんから声がかけられた。

 

 

「それより千歌さん」

「は、はい?な、なんですかダイヤさん?」

「善子さんの料理にマヨネーズを使い過ぎてしまいまして、マヨネーズがきれてしまったのです」

「あっ!それなら、私の家から新しいマヨネーズを持ってきます!少し待っててください!」

 

 

 用件は、善子ちゃんの『堕天使の泪』で使ってたマヨネーズがなくなってしまったという話だった。私はすぐにそう言って、海の家を飛び出して新しいマヨネーズを取りに向かう。私がいなくなったあとには、みんなは談笑の続きを始めていた。

 

 

「……………………」

 

 

 もしもあのとき、私の口から大切なことを話していたら、みんなはどんなは反応をしてただろう?

 みんな嬉しいと思ったのかな?それとも私のことをからかったりしてたのかな?う〜ん。唐突に頭の中に出てきたモヤモヤが消えない。

 

 そんな頭の中のモヤモヤが消えぬまま、私は家の入り口まで来る。暖簾を潜ろうと手を伸ばそうとしたその瞬間、誰かと誰か、何かの話をしている声が入り口から聞こえてきた。

 この時間に誰だろう?頭にふと出てきたその言葉ともに私は暖簾を手にかけ、そっと中を覗いてみると、そこには梨子ちゃんのお母さんと志満姉ちゃんの2人がいた。

 

 そしたら次の瞬間、志満姉ちゃんの口から信じられない言葉が出てきたんだ。ううん、正しくは梨子ちゃんのお母さんからかな。

 

 

「えっ?ピアノコンクール?」

「えぇ。案内案内が来たらしいんだけど、あの子、出るとも出ないとも言ってなくて……」

「……っ!?」

 

 

 “ピアノ”という言葉が出てきた瞬間に私はすぐに分かった。でも梨子ちゃんが、そんなことをみんなに隠していたなんて……。

 思いもよらなかった事実に、私は困惑していた。もしかしたら今も、みんなの知らないなかで一人で思い悩んでいるかもしれない。

 そう思ったら、動かずにはいられなかった。

 

 

「志満姉!」

「あっ、千歌ちゃん!」

「梨子ちゃんのお母さんもこんばんは!」

「はい、こんばんは!」

 

 

 ひとまず私は話を聞いていなかったことを装い、ごく普通に振る舞いを意識して玄関に入っていく。

 笑顔を絶やさず、出来るだけさっきの話を聞いていたことがバレないように。

 

 

「それよりどうしたの千歌ちゃん?」

「マヨネーズがなくなっちゃったから、新しいマヨネーズ持ってっていい?」

「あっ、うん!在庫がいくつかあるから、キッチンからそれ持ってっていいわよ」

「ありがとう志満姉!」

 

 

 手早く用件を伝えてキッチンへ向かって、志満姉の言われた通り棚にはマヨネーズの在庫があった。そのうちの一つを手に取り、すぐさま私は海の家へと戻っていったんだけど、みんなは既に食器を下げて洗ったりして片付けを始めていたのだ。

 

 

「あれ?みんなもう片付けてるの?」

「すみません、千歌さん。新しいマヨネーズを持ってきてくださったのに、皆さんがもうお腹いっぱいだって言うので片付けを始めてしまいました」

「あっ、そうなんだ……」

 

 

 ダイヤさんが自分から謝ってきたけど、私はすぐにそれを聞いて納得していた。あれだけの量、みんなで全部食べることが難しいって私も感じてはいた。だから、みんなが片付けを始めてくれていたことが良かったかもしれない。

 だって、新しく持って来たマヨネーズを使わずに済むからね。あっ、ついでに梨子ちゃんに聞きたいこともあるしね。

 

 そう思って、私は梨子ちゃんがいる方向に視線を向けたんだけど、梨子ちゃんのそばには曜ちゃんと遼くんがいた。楽しそうに話をしながら片付けをしている3人見てたら、何だか申し訳ないくらい話しかけづらかった。

 

 

「あっ、千歌ちゃん!」

「なんだ、戻って来てたのか」

「うん!新しいマヨネーズ持って来たのに、みんな片付け始めちゃってるんだもん」

 

 

 だから“あのこと”は今は話さず、機会があるときに梨子ちゃんと2人で話をすることに決めた。今の私がすることは、何事もなかったかのように普通に振る舞うだけだ。

 

 

「つべこべ言うな。ほれ、千歌も片付け手伝え」

「わ、分かってるよ〜!」

 

 

 いつなら梨子ちゃんとちゃんと話せるだろう。

 朝方、梨子ちゃんと2人で抜け出してピアノの話を切り出してみる?その方法ならまだみんな起きてこないはずだし、しっかり梨子ちゃんと2人っきりで話をすることができる。

 

 

 うん。この方法でいこう。あっ、でも……

 

 

 ……ピアノコンクールっていつ?

 

 

 

 






最後まで読んでいただきありがとうございます。
しばらく執筆してないせいか、地の文章がすごく
稚拙になったような気がします。

もう一度、日本語を勉強するのが必要ですね。
更新頻度も全くもってこのくらいの間隔での
更新になってしまうかもしれませんが、どうか
よろしくお願いいたします。

それでは次回も楽しみに待っていてください!
感想や評価等、お待ちしています!


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