麦わら帽子の英雄譚   作:もりも

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孫を追って日本で事務所立てました!

日本を何もわかっておらず無意味にうろちょろするルフィにハラハラ心配した店長。ルフィは彼に事細かくメモしてもらい、なんとか目的のヒーロー事務所までたどり着いた。

 

「やっっと着いた メシーー!!」

 

「じいちゃーーん!!」

 

ダダダダダッ!重い足音を響かせながらラテン的な配色をした派手なヒーロー事務所から、大柄な老人が飛び出してくる。

 

「ルフィ!待って追ったぞい!」

 

熱い抱擁をルフィにするのは少年の祖父、モンキー・D・ガープだ。

 

「お前のことだからまず空港から出れるのも不安じゃったからのう」

 

「あんたも人のこと言えんだしょガープさん・・」

 

はぁ、とため息をこぼすのはガープのサイドキックである帽子を目深くかぶったボガード。

彼もルフィが今日来るのを把握していたため、ガープの後に事務所から出てきた。

 

「なんじゃい棘があるのぉ」

 

「ガープさんはまずブラジル出るまでに手こずったでしょうが」

「祖国の英雄たる自分を検査するなんて何事かとごねまくって・・・」sigh...

 

「だってわし偉いし!」

 

「はいはい」

 

長年サイドキックをやってきているボガードはもう慣れているのか テキトーに受け流す。

 

「じーちゃん どうでもいいからメシ食わしてくれよ!」

 

空港でしこたま料理を食べたくせに、もうすでに腹をすかせている。なんとも燃費の悪い少年だ。食欲に卑しい彼には家族に会って感傷に浸る感情は今はない。

 

「お前というやつはメシメシと・・一週間ぶりのじいちゃんじゃぞ!もっと甘えんかい!」

 

「ルフィ君の歓迎会のために豪勢な食事を用意しているよ」

 

「うわぁ ほんとか!?ありがとうボガード!」

「寿司あるか!?あれ一番楽しみなんだよな!」

 

孫に早く会いたかったガープは甘えろとごねるが、ルフィとボガードはそそくさと事務所内に入っていく。

 

 

「・・・ま、孫のくせにじいちゃん無視するんじゃなーーーい!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

大きなたんこぶを腫らしたまま、ガツガツとご飯を貪るルフィにボガードは尋ねた。

 

「雄英高校の倍率は300倍らしい ルフィ君は自信あるのかい?」

 

「自信?もちろん!」ばいりつってなんだ?

「受かる気しかしねえ」

 

「まぁルフィ君は個性を使いこなしてるから問題ないか」

 

「・・ふん!わしの孫なんじゃい」

「日本のヒーロー学校なんてチョチョイのチョイじゃい!」

 

(問題は・・・まぁよそう・・天に祈るしかないか)

 

ルフィの来日は憧れのオールマイトの母校である雄英高校の入学試験を受けるためだった。

ちょうど彼は日系のブラジル人。家庭内での会話はもっぱら日本語であったため、日本留学はとってもハードルが低かったのだ。

もっともルフィは話せなくても気にせずやってきただろうが、周りのハラハラ度はかなり軽減されただろう。

 

ガープといえば「拳骨のガープ」としてブラジル国内で古参のヒーローであり、ペレと肩を並べる英雄であった。

そんな彼であるのに、ルフィが日本に行く話を聞いた途端自分も日本に住むとワガママを暴れながら言い出して、ルフィが来日する前に急遽事務所を日本に移転させるのであった。

 

ガープの事務所AUAU(アウアウ)一同は盛大に「はぁ・・・」と息を漏らしたのだった。

 

「ルフィ君が落ちたらどうするつもりなんだろ」

 

事務所員の若い子が言った言葉に一同頭を抱えた。

 

 

もっぱらガープは後のなど考えていないが、落ちたら間違いなくせんべいを齧りながらなんでもない様に帰ると言い出すだろう。

 

(我が師匠ながらよくヒーローなんてやってこれたもんだ・・時代だな)

(ルフィ君も入れたとしても後が大変だぞ・・・)

 

この家族の能天気さと自分勝手さは常識の範囲外にある。ブラジルよりインフラも進み、規制も厳しい日本にこの二人が適応することができるだろうか。そこのところにボガードは不安でしかなかった。

そしてボガードの不安は的中するのであった。

 




閑話。解説回でした。

この世界にルフィなんて、不安でしかねえ・・・



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