リスクなんてっ・・!!考えてる場合じゃない!!
ワンフォーオール!!100パーセント!!!
「テキサス・・スマッシュ!!!」ZOOAH!!!
激昂したバギーが自分たちに向けた銃口を見て、半ば反射に近い形で手錠を引きちぎり緑谷は個性を繰り出した。
バギー玉の威力はバギーが言っていた通り凄まじい威力を誇っているが、緑谷が繰り出した爆発的な拳圧はそれを押し返す。
「何ぃ!!?」
激しい衝撃は互角・・・ではなくまさにオールマイトの力そのもの、緑谷の拳圧がバギー一味を丸ごと弾き飛ばす。
まるで弾頭ミサイルが過ぎ去ったかのような土煙を巻き起こり、サーカス団ご自慢の天幕が引き裂かれた様を上鳴たちは今だに慣れない緑谷の個性に硬直して思考が一時ストップしていた。
皆がハッとしたのは、緑谷の歯を食いしばって呻く声に気がついた時だった。
「デ、デクくん!?」
「み、緑谷!?・・無理するなよ・・って言いたいとこだけど、助かったぜ!」
「あれを食らったらもう大丈夫だろ!早くここからズラかろうぜ!」
「むしろ相手死んでないかの方が心配なぐらいだね。」
麗日と上鳴が両脇から緑谷を支え立ち上がらせる。自力で手錠を引きちぎった緑谷以外の人間は芦戸の酸で溶かし両腕が解放されている。緊張から解放されたように緩慢な空気が一同に流れ始めていたが、反撃した当の本人は警戒を未だ解いてはいなかった。
(・・・あの手応え・・見た目ほど相手に威力が伝わってない。)
その予感は当たり、土煙が薄くなると同時に憮然とたつ四つの人影がくっきりと見え始めたのだった。
「・・・とんでもねえガキだ。バギー玉を跳ね返すとはな。おかげでこの拳銃もお釈迦だ!!」
「「「!!??」」」
先ほどとは打って変わってバギーの表情には笑みが消えていた。あるのは怒りというよりもこれを仕出かした緑谷を標的と定めた顔だ。
「嘘だろこいつら仲間を盾にして今のを防いだってのかよ・・!?」
上鳴が後退りながらそうボヤいたのは、緑谷の攻撃を受けながらも立つバギー、カバジ、モージ、アルビダは味方の団員を前に突き出し爆風を防いでいたからだった。
「・・・お陰で俺様のサーカス団はめちゃめちゃだ。この騒ぎでじきにヒーロー共々が駆けつけてくるだろう。このクソ餓鬼どもに手を煩わしている時間はねぇ。」
バギーの団員に向けて吐いた言葉を聞き、雄英生は彼らが退却するのかと一瞬頭を過ぎったが・・・バギーは砕けた拳銃から腰に差したナイフに持ち替えた。
「とっととコイツらバラしてズラかるぞ!」
「「「!!??」」」
「逃してはくれないか・・!皆!一斉攻撃だ!!」
緑谷が後ずさる友に指示を飛ばす。
その掛け声に間髪入れず攻撃態勢をとった彼らはさすが雄英ヒーロー科というべきか、切り替えの早さもさすがだ。しかしそれよりも速く道化が個性を四方八方に解放する。
「バラバラーー!!」BONN!!
バギーが叫ぶや否や、体がぶつ切りサイズにばらけた。
「あの・・個性はサーカスで見た!?死角からの攻撃がくる!!」
緑谷が瞬時に警戒したのはバラけたバギーの手。ナイフを握っていた手だ。
サーカスの中で見せた男の個性は体の大部分を空中で自由に操作できること。実はB組「取陰切奈」の下位互換の個性になるが、ヒーロー側とは違い、個性の使い方が命を断つ手段として直結している。
スパッという鋭い音が鼓膜を震わす。
「「響香ちゃん!!?」」
「っ・・・ぅう!!??」
緑谷・上鳴の後ろに控えていた耳郎が呻き声にもならない声をあげ斬りつけられた腿裏を押さえてうずくまった。
「ギャハハハ!!仕留めるときゃあ!まずは女からって決まってんのよ!」
「・・・やろぉ!!!!」
上鳴は仲のいい耳郎がやられ激昂しバギーへ一直線に駆ける。
「か弱い女が傷つきゃあ男が黙ってる訳ないからな!」
「感電死させてやる!!!」
「逆上して周りが見えてねえな!モージ!!」
「上鳴くん!!」
上鳴の個性がバギーに届く前にモージが跨る百獣の王の前足が彼の眼前に現れる。
・・・が、突如リッチーの脚が止まりその攻撃は空振りに終わる。
「な、なんだぁ!??」
「ヒョーッ!!あっぶね!!!」
その原因は峰田の個性である黒い玉がへばりつき動きを封じていたからだ。
間一髪の上鳴は軽く峰田に感謝すると、すぐに攻撃へ切り替える。彼の個性は系統でいえば最強の個性の1つだ。相手が生き物であるならば絶対的な威力を誇る。
「まず・・・一人と一体だぁあああ!!!!!」
閃光で体が掻き消えるほどにスパークさせた電気にモージ・リッチー共に硬直し、そして白目を剥きながら倒れ伏した。
上鳴は伏したモージを跨いでバギーに指を差す。
「・・ウェ・・次はてめえらだ!!」
若干崩れかけるが事切れる事なく真っ直ぐに瞳を向けた。
その姿に芦戸らは目を見開き驚く。
「か、上鳴が・・かっこよく見える・・。」
「いや、ほんと・・。」
「フォローしたオイラには!?」
「響香ちゃんがやられたのが許せなかったんや。」
今までなら先ほど程度に放電すればアホになってしまうのだが、今回は違ったようだ。仲のいい耳郎のために。しかしそれがどういった心境からかはここでは割愛しておこう。
(・・よし、この場面で一番の懸念だったライオンを倒せたのは大きいぞ。単純な戦闘力が一番厄介だからだ。)
「麗日さん、僕を浮かして。」
こそりと緑谷は麗日に耳打ちする。
「確かに厄介。だが、その力の代償は小さくないようだ。」
カバジは自慢の一輪車に跨りゆるりと剣を構える。
「もう1発でも打てば、膝を折るのは必至。大切に扱うんだな!」
そう言うとカバジは右手に持つ剣を上鳴に投げつける。
「ひっ!?」
これに上鳴は避けざるを得ない。電気に質量はないので跳ね返すことはできないからだ。
上鳴は間一髪避けるも、先ほどの放電で動きは鈍い。十分な体勢を保ててはいない。
「隙だらけだ!!おら!バラバラー!!!」
「げっ!?」と声を漏らした上鳴の周りにはナイフや剣を装着したバギーの無数のパーツが囲い込んだ。
「
「くっ・・!!ならお前も感電させてやる!!」
「クック・・放電して動けなくなったお前の首を俺が一瞬で掻き切ってやるが。」
「っ・・!!」
一瞬の躊躇。カバヂの一言に上鳴の動きを固まった。
「ダッハッハッハ!!その前に俺様が穴だらけにしてやるよ!!」
判断の良さこそ勝負の強さ。上鳴の経験では戦いの中でまだ最適解を瞬時に出せない。
しかし上鳴同様思考が停止している生徒らとは反面に緑谷だけは違った。
緑谷は麗日によって空中からバギーの頭部へと一人猛進する。
「なにっ!!?」
(体を切り離しての攻撃は厄介っ!!でもそうする事で自分を守る防御はできない!!ガラ空きだ!!)
緑谷の判断力は予測たってのものだ。状況のイメージを描くことに長けているのだろう。間違いなく雄英1年生でも最上位を争うほど危機的状況を察知できる能力を持っている。
「テキサス!!!」
だが、あくまで学生の中での話だ。
「スマ「邪魔はさせないわ!」っ・・!!??」
緑谷の動きを読んでいたかのようにアルビダが彼とバギーの間に割って入ってきたのだ。
出した拳を引っ込めることはもはやできず緑谷は振り切った。
本来であれば割って入ってきたところでアルビダ共々オールマイトの力で当然吹き飛ばせるはずだが、徒手空拳の緑谷にとってアルビダは相性の悪い個性を持っていたのだ。
緑谷の拳はアルビダの肌に当たる瞬間お風呂場で足を滑らすかのように拳をあられのない方向に突き出してしまう。
「なっ・・!!???」
「こ、攻撃がそれた!?」
逸れた衝撃波が周りの資材などを薙ぎ倒し再び土埃を巻き起こす。突飛な出来事に一瞬頭がパニックした緑谷だが、アルビダの個性と状況の把握に頭を切り替えた。
「攻撃を逸らす。そういう個性か!!」
「そうね。」
既に痛めた両腕で体を起き上がらせようにも動けない緑谷にアルビダは右手で彼の頸を押さえ込む。
「ただ少し違うのは私はこの美肌を使って物を滑らせることができること。つまり物理攻撃は無効なだけ。」
(・・・なら麗日さんや芦戸さんたちの個性なら!!)
「・・・って顔してるじゃない?その前にあんたは死ぬわ!」
不敵に笑むアルビダの頭上からバギーの手が持つナイフが彼に目掛けて降りかかる。なんとか横目にそれを視界に入れた緑谷はもんどりうって個性を発動させようとするがアルビダに折れた右肘を外側に折り曲げられ激痛でそれどころではない。
(だ、だ・・めだ。し、死ぬ・・。)
「デクくんっ・・!!」
「「「緑谷!!?」」」
今から起こる惨劇が皆の脳裏に浮かんだ。
クラスメイトが死ぬ。
まだ、自分は助かると頭の片隅であった全員が明確に死をイメージした。どうしようもなく避けられない未来を防ぐため、動けない耳郎以外が緑谷に向かって足を駆け出す。
ヒーローを目指す少年少女だ。仲間の絶対絶滅の危機に自らを顧みず救出に足を踏み出すのは当然だった。
麗日葉隠は緑谷の盾になる為にナイフに向かい、上鳴は電撃を発生させ、峰田は所構わずモギモギを投げつけ芦戸は酸をナイフに向けた。
しかしその隙こそバギーたちが虎視眈々と狙った瞬間だった。
子供とはいえ侮れない彼らをバギーたちは実に大人の駆け引きを行なっていた。
簡単に一網打尽にできるとは緑谷の初撃から思っていなかった。だからこそ上鳴が動きを止めた時も緑谷がアルビダに止められた時も一瞬で殺すことはしなかった。今から殺すと言わんばかりに「間」を作り、生徒の意識を集中させる事で死角から狩ることを実行させようと目論んでいたからだ。
後ろから崩せばあとはなし崩し的に容易くなる。まさにカバヂやバギーの本体が彼らの視界から消えた今その目論見は確実となった。
ニヤケたバギーの顔の横に火の粉が僅かに飛ぶ。
どこから発生した?火薬が引火したか?いや、確かにそこらに爆薬はあったが爆発した様子はないし、それらは先程の緑谷の攻撃でほぼ吹き飛ばされていたはずだ。
なにも火の粉に起因するものはないはずだ。
若干の違和感を感じる前にバギーは突然の右手の燃えるような熱に絶叫をあげる。
「ぎゃあああ!!??」
「「「!!??」」」
そしてそれと同時にカバヂとアルビダが同じく声を上げる。
何事かと視界の狭い緑谷が突然圧力がなくなったアルビダを見上げると、体から焼けたように煙が吹き出し、皮膚は火傷したように爛れていた。
(な、なにが!?)
「子供相手にオトナげねぇナ。」
照明のない暗闇なのに光を纏いながら現れた青年がこちらにゆっくり近づいてきた。
喜怒を表したワッペンがついたテンガロンハットを深く被った彼に皆の視線が集まる。
その姿に女生徒たちは思わずあっと声を漏らした。
「この国で戦うつもりハなかったが、弟のダチを助けねぇわけにもイカネェもんな。」
先程麗日たちが遭遇したエースが参上した。
◆
「とりあえずほかの生徒に問い合わせたところ、あいつらは全員ででかけてるらしいです。」
蛙水に電話で確認した相澤は受話器を置いて振り向きざまに後ろのオールマイトに報告した。
「どこにいったのだい彼らは?」
「どうやらこの前オープンした港のサーカスを見に行っているようです。」
「サーカスか。しかし流石に23時を越えた今に連絡がつかないとなると何かに巻き込まれたか・・。」
「そうですね。ただ夜遊びしてるとは考えにくいですね。上鳴芦戸峰田はいざ知らず他の緑谷たちはそういうタイプではないですし。」
相澤は外用の身支度を済ませてとりあえずそのサーカス会場から生徒が寄り道しそうなルートを辿ろうと考えた。
流石にこれだけで学校側が警察に捜索等を頼むには体裁が悪い。仮に本当にただ夜遊びをしているだけならば雄英の名に自分の生徒が泥を塗ることになる。そうだったら間違いなく退学処分に彼は処すだろう。
「相澤君私も出よう。確かに少々気掛かりだ。」
「貴方のお手を煩わすわけにはいかないです。私の生徒ですから。貴方は休める時に休んでいて下さい。」
相澤は遠慮がちに答える。
「いや、なんだね・・・、当人も自覚はないんだろうが、緑谷少年は間が悪いとあうかなんだか厄介な場面に出くわすところが多くてね。今回もそんな気がするのだよ。」
「はぁ・・確かにあいつのよく分からない危なっかしさは私も感じますが、ここに入ってからこの短い期間にそう何度も危険な目に遭ってたらこの先大変なんてもんじゃないですよ。」
「ハハハ。気のせいならそれが一番だがね!」
「た、大変です!港にて大規模な爆発事故が発生した模様で騒ぎになっています。民間のヒーロー他、ウチのヒーローにも援助を求める連絡が来ています。」
半分冗談に会話する二人に他の教員が慌てたように声をかけた。
それを聞いた二人は場所がサーカスが行われている港だと聞いて、顔を合わせ
た後一拍置いて顔を見上げたのだった。
◆
突然の乱入にエースに対し目を見開く一同。エースの顔を見ていの一番に反応したのはバギーで、先程までとは違い狼狽えるような顔を浮かべている。
「な、なんでてめえみてぇな大物がこんなとこに・・・!!?」
「知っているのかいバギー!?」
脂汗を滲ませるバギーの顔を見て緑谷はこの男が何者か思案する。しかし大物、そして熱を使う人物を連想すれば彼のオタク知識から正体を割り出すのは簡単であった。
その答えに緑谷の顔は驚愕一色。まるで有り得ないものを見るような目の開きようだ。
「ま、まままままままままさか・・・白ひげ2番隊隊長・・!!火拳の・・エース!!???」
緑谷の発言に皆が聞き覚えがあるかのように驚愕が伝播する。
ヒーロー・敵界隈でこの名を知らないものはいない。
「うそっ!!?だって・・この人、ルフィのお兄さん・・!?。」
「「「ええっ!!??」」」
身近な情報が飛び出し再度驚く男子。
「弟がセワになってるな。挨拶はアト、今は休んでな。」
「ま、まじか・・。でも確かに爺さんがガープでルフィはあれだし、兄貴が有名人でも血筋としてはおかしかねぇよな。」
自分たちの同級生に世界的に知られる人物がいる事に驚きはあるものの、ルフィ本人のスケール感にどこか納得がいく上鳴。
「ま、待て!!火拳!!俺らはおめえとは争う気はねぇ!!この場はここで収める!!」
慌てるバギー。そして同様にアルビダとカバヂもまたそれに頷き賛同する。
これまで恐ろしく見えていた敵が急に大したことがないように思えてきた。確かに雰囲気を感じさせるエースだが、噂で聞いていたよりも実物は若く気が柔らかそうな見た目であったため生徒らはバギーたちの狼狽えように若干の意外さを感じた。
「白ひげの主戦場は主にヨーロッパ界隈。僕らが思うよりもずっと白ひげの看板は敵を畏怖させる存在なんだと思う。それに火拳といえばその中の中核の一人。そして・・・彼は世界でも確認されているのが10人にも満たない希少個性を持つ人物だって話だ。」
「それは無理だな。あんたらが敵で、俺がヴィジランテである限りな!」
エースが左足を前に腰を落として拳を固める。
もはやバギーたちに逃げる道はない。
「こなくそがぁ!!!」
ヤケクソに叫ぶバギーが先程上鳴に仕掛けた串刺狂宴をエースにぶちかます。
しかしエースに刺さった大量の刃物は血を噴き出させる事は無く、エースの体の中をただ通過していくだけであった。
「「「えっ・・???」」」
「無駄だ。あの人の個性は自身が「火」そのものなんだ。火に物理攻撃は通用しない。自然(ロギア)と呼ばれるこの個性は間違いなく最強だ。」
ニヤリと口角を上げるエースは固めた拳を灼熱の炎へと変貌させ、正拳突きのようにそれをバギーたちに向かって振り抜く。
「火拳!!」
「「「ぎゃあああああああ!!!!」」」
極大の火の巨塊がうねりをあげてバギーたちを吹き飛ばした。
港ともあって過剰な延焼もなく、程なく鎮火していく光景を眺め呆然とする緑谷。クラスメイトの轟を大きく超え、小さい頃からテレビで見てきたエンデヴァーにも比肩するのではないかというエースの破壊力に興奮を覚えつつも、彼がヒーローではないということに僅かながらの危険を感じていた。
そう、悪ではないにしろ自分や母校の教師たちとは違う人種でもあるからだ。
そんな緑谷とは違い、他の者はエースに対し友好的な態度で感謝を述べていた。
「そんなことより早く傷負ってるカノジョを病院に送っといたほうがいい。俺もとっととここから早く離れなキャならないし。」
足を刺された耳郎を背負う上鳴に催促しエースは自分の荷物を拾う。
「何であなたみたいな人がヴィジランテなんか・・。ヒーローをやらない理由があるんですか?」
緑谷はエースの去り際に疑問を投げかけた。エースの人柄、強さはヒーローとして十分すぎるほどで、なぜ非合法・・犯罪者としてこの活動をしているのか不思議でならなかった。
「別に深い意味なんてねぇさ。今の方が気楽ってのもあるし自由がきくからな。ヒーローって言っても社会の一部で職業だ。そのしがらみの中じゃ救えないこともある。」
「確かに、それは・・そうですけど。じゃあルフィ君は何でヒーローを?彼も見ている限りではエースさんと似ているように思えるのですが。」
「まぁルフィはオールマイトに憧れてるとこあったから単純にヒーローになりたいのもあったし、ある人との約束があったからな。」
「約束?」
「その人もこちら側で、ルフィのもう一つの憧れでもあったんだ。その人がルフィにヒーローとして背中を押した。ルフィには象徴としてなって欲しかったから。」
「象徴?」
エースの言う象徴に皆が疑問符をあげ、緑谷だけがその意味を理解した。
「あいつには不思議な力がある。それは表舞台でこそ掲げてこそ意味があるのさ。」
エースはそう言うと突然顔を空に向け警戒色を露わにした。
「わたしがぁ〜〜満天の夜空から!やって来た!!!」
ドンっと地面が震えるほどの衝撃を出しながら緑谷生徒らとエースの間に割って入って来たのは・・
「「「オールマイト!!!」」」
「君たち無事だったかい?全く予想どうり渦中に巻き込まれてるとはね!」
オールマイトはサムズアップして生徒を振り返る。そして「さて・・」とエースの方に顔を向けると神妙な顔つきで青年を視る。
「お、オールマイト!違うんです!あの人は僕たちを助けてくれたんです!」
オールマイトが出す雰囲気からエースの正体に気づいていることを察すると緑谷は擁護するように手を振って制止する。
「わかっているさ。彼が今回の原因ではないのは。白ひげの一味が子供相手に手を出すような卑劣なことをするとは思えんからね。」
「へぇ。親父の事知ってんノカいオールマイト?」
「会ったことはないさ。しかし彼が今まで行ってきた所業は職業柄嫌でも耳に入ってきているからね。声を大にして言えやしないが、彼ほど尊敬に値する人物もそうはいない。」
「No. 1ヒーローにそうイってくれると俺の鼻もタカぇな。なら、俺も見逃してくれるかい?」
「それとこれは話は別だね。」
オールマイトは依然として警戒は解かない。
「参ったね。あんたに狙われチャア。」
「よく言うね。私では君の個性の前では傷一つ付けることが出来ないというのに。」
「そっくりそのままコトバを返すぜ。それはこっちも同じだし、あんたなら俺を無力化するなんて大した難易度じゃないダロ?」
お互いがニヤリと口角をあげ不敵に笑う。肉弾戦を得意とするオールマイトでは確かに火が実体であるエースに攻撃を加えることは出来ない。しかしエースとて弱点はある。自然系に共通する攻略法はその実体の物質そのものを無力化することだ。エースならば水。港で海沿いのこの場所ならいくらでもやりようはあるだろう。
「ふっ。冗談さ!我々よりも先に生徒たちを助けてくれた君を捕まえるなんて、そんな面の皮が厚い真似しやしないよ。礼を言わしてくれ、ありがとう!」
オールマイトはこれまでの緊張感を翻してフランクに感謝の意を示す。
「そういうジョーダンはカンベンしてくれ。心臓に悪い。そうそう、オールマイト。この近辺のヒガイは全部俺がやっちまったことダ。生徒たちは捕まって多少の抵抗はしたんだろうが、この敵をノシちまったのもオレだ。全部の責任はオレにある。」
エースはこのほぼ全壊となったサーカス会場と近辺の港場に目を向けオールマイトにクギを刺す。その発言に緑谷は異を唱える。この現状はエースによるものもあるが大部分は緑谷のOFAによるものだ。
多少の事は誰も咎めない暗黙の了解だが、ヒーロー以外に個性を公共の場で使うことは禁止されている。今回のような犯罪に巻き込まれた場合は個性を使用しても正当防衛の対象に値するがここまで損害を出してしまえば正当防衛の範囲外になってしまう可能性も否めない。政府は線引きが難しいため個性の過剰防衛の適用の基準を引き下げざるを得ず、今回の場合における港の関連のない他の所有物の賠償責任や個性使用の断罪を生徒らに向けてしまうことが予想される。エースはそういう面倒事を弟の友人ではなく自身に向けられるように言っているのだ。
「被害者の彼らは確かにここまでの大事になってしまえば処罰はないにしても二次三次的な影響は受けるだろうが、君が手を出したとなれば、それはただの罪になる。自ら罪を負うと?」
「今更この程度の罪をカブろうが大したことはねぇさ。少年たちは自分たちの身を守るために正しい行動しただけ。それなのにヘンなイチャモンがつくなんてバカらしいダロ?」
エースは両手を広げて法だけでは解決しないことがあると言いたようなニュアンスでそう言った。
「俺たちは影さ。法に守られない奴、法によって理不尽な目にあっている奴を助けるのが俺たちの役目さ。」
朗らかな笑顔で語るエースだが、その顔から揺るがない信念を誰しもが感じ取った。やはり兄弟と言うべきか、ルフィとよく似ている。
そして話している内に遠方からファンファンとサイレン音が聞こえて来た。どうやら警察とヒーローがやって来たようだ。その音を聞いてエースは体を火に変化させ消えるように去っていった。
「か、カッケェ・・・。あれがルフィの兄貴かよ。下手なヒーローよりカッコイイぜ!」
上鳴が言ったことに一同が肯定した。
ヒーローを目指す自分たちと近いようで違う新たなヒーロー像。この出会いに緑谷達が影響を受けたどうかはわからない。
約一年ぶりの投稿。
他の作品に浮気したりと長い番外編だった!
前話で言語がどうとか言ったけど、基本外国人は話せない設定でバギー達は普通に日本語上手いと言うことにします。
なのでエースは日本語を話せるけども下手、ということで!