麦わら帽子の英雄譚   作:もりも

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助けるのがヒーローだろ

耳をつんざくような爆発音が響き渡る。

その音の元凶である彼の周りには仮想敵であるロボットが多数破壊されていた。

 

「はっ 歯応えのねぇ。これが最高峰?冗談だろ?」

 

C会場にいた爆豪勝己は大量の汗をかきながらこれからが本番とばかりに息巻いている。  

この様子を会場の監視カメラから観察するモニター室の教師陣は感嘆の声を漏らした。

 

「素晴らしいな彼は。単純に力があってもここまで長時間ロボを倒すことはおろか、個性を発動しつづけることは難しいのに」

 

「タフネスだね。救助ポイントがないことから彼は対敵に特化したバトルヒーロータイプってことが分かる」

 

「このテストは受験者がどういったタイプなのかハッキリわかりますね」

 

(不合理なのは変わらんがな)

 

この試験は単純にいえば、仮想敵であるロボットを数多く倒せばいいというもの。

ただ一つ生徒側には伝えていないことがある。

それは救助ポイント。

ヒーローたるもの人々の救助こそ本質。怪我している、しそうになっている他の受験者がいれば手をさしのべる。この行為をしてこそヒーローになるための資格があると言えよう。

そういった他の者のためになる行動をした者には救助ポイントが付与される。

かといって強さがヒーローの本質であるのもまた一つ。

この試験は敵を破壊した殲滅ポイントと救助ポイントの合計で合否が行われる。

 

「ところ替わってD会場なんだけど・・」

 

「これはまた凄いな」

 

隣のモニターに目を移すと、C会場以上に激しい戦闘が繰り広がれていた。

 

「ゴムゴムの~・・ピストル!!」bomb!

 

中型サイズの仮想敵が十数メートル先へ部品を散らしながら吹き飛ぶ。

 

「えーとこれで何ポイントなんだ?ま、いっか 見つけたやつぶっ飛ばしゃそれで」

「うおりゃあ!!!」

 

ルフィは腕を伸ばし仮想の街中にあるビルの上を縦横無尽に駆け回り、常に敵の上方から攻撃を仕掛ける。

既に破壊した敵数は40はあるだろうか。

 

「す、凄いな。まさかこんなにやるやつなんて」

 

自身も空手を習い身体能力には自信があった拳藤だったが、ルフィのそれには舌を巻いた。

 

(たしかにあのゴムみたいにのびる体があれば機動力があっても不思議じゃないけど、あの動きにあの反射神経は・・・)

 

(何よりこんな周りの環境も入り乱れてる中であの戦闘に慣れまくってる個性の練度の高さ・・・まさかアマゾンで鍛えられたとか・・まさかねぇ)

 

一つの会場でも数千人におよび、ごったがえしたこの環境の中で、ルフィはなんの問題もなく暴れまくった。

実は拳藤の言ったことは正しく、幼きころからルフィはガープによる悪魔のアマゾン川流域南下訓練を行っていたのだ。

数千キロにおよぶ密林を無装備でただ南に向かって歩くという、ことさら単純明解なこの修行。マジで生き残ればそれだけでAUAUに入所できるのだとか。(ボガード談)

それを7歳の時にやらされて生き残ったのだから、ルフィには事務所一同尊敬の念と、憐れみの思いを募った。

かく言うルフィはその時はガープを死ぬほど恨んだが、家で飯食ったら忘れたらしい。良くも悪くも切り替えがはやい。

 

(っと、人のこと考えてないで私もしっかりポイント稼がないと!)

 

ズズン

 

「!?」

 

コンクリートで舗装された道路がそいつに踏まれただけでひび割れる。背の高い雑草のように掻き分けられる建物はそいつが通ると、脆く崩れ去っている。

体長が50メートルはあろうか仮想敵が現れたのだ。

 

「あれが、説明の時に言ってた0ポイント」

「お邪魔虫か」

 

実はプレゼントマイクの説明の中で、倒しても得点にはならないただただ邪魔をしてくる敵がいるとあったのだ。

・・・大半が肉の事件で頭から飛んでいたが。

つまりこいつを倒しても意味がないのだ。

 

「ならここは引いといたほうがいいか。というか勝てるわけないし」

 

「うひゃあ、でっけーな!?」

 

四階建てのマンションの屋上に佇むルフィに拳藤は声を掛ける。

 

「いったん引きなよ!あれ倒しても意味ないらしいしさ!」

 

「そーなのか?おまえはどうすんだ?」

 

「他の皆と一旦逃げるよ」

 

逃亡とばかりに他の受験者は入り口へ引き返していた。

 

「逃げ遅れてる人もいないみたいだし」

 

拳藤はキョロキョロと見渡し、あの超大型敵から逃げ遅れた人がいないか確認しながらそう言った。

 

「ならおれはにげねぇ!」

 

「は?」

「あ、あんたが強いのはわかったけどあんなの無理だって!」

 

ルフィの言葉に手振りを大きくし、彼女は彼を止める意思を示す。

 

「だってお前らはあれから逃げるんだろ。じゃあおれがここであれを止めなくちゃ!」

 

「助けるのがヒーローだろ」

 

 

「あ・・」

 

迷いなく答えたルフィに拳藤はハッとさせられた。

 

「ゴムゴムの~・・・」

 

そう言いながらルフィは全速力で助走をつけながら、超大型敵にめがけて走り出す。

 

「おいおいアイツもやる気かよ!?」

 

モニター室から超大型敵に突撃をするルフィを見て教師陣は再度驚く。

「おいおい、またか!?」とだれかがつぶさに声に出した。

 

 

「バズーカぁぁぁ!!!!!!!」

 

Bakoooooooohn!!!!!!!!

 

強烈な打撃音が響き渡り超大型敵は体勢を崩し、周りの建物を崩しながらしりもちをついた。

 

『Yeah!!!!!!』

 

「ええええええええええええええええええええええ????!!!!!!」

 

教師陣は本日二回目のyeahを、受験者は驚愕の声を木霊させた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「いやぁ、まさか二度目のyeahがでるとは」

 

「二度目のyeahってなんだよ」

 

「しかし1日に2体も超大型敵が倒されるなんてな」

 

「しかも最初1台は半壊なんでしょ?予算大丈夫なん?」

 

「あの1台目を壊した緑谷って子、凄いパワーだった!腕と足ぐちゃぐちゃになってたけど・・」

 

「まさにオールマイト並み!あなたはどうでした?」

 

「オールマイト」

 

なぜか日本のNo.1ヒーローであるオールマイトが雄英教師陣の中にいた。

そう、彼はこの春から教鞭とることになったのだ。

 

(触れてほしいような、欲しくないような・・ただ、私は誇らしいぞ!緑谷少年!!)

 

「いやしかし!もう一人の彼!彼もとてつもなく素晴らしかった!」

 

オールマイトはナチュラルに話題を反らした。なにやら緑谷についてあまり聞かれたくないらしい。

 

「たしかに・・あれだけ殲滅ポイント取っていたのに無理して立ち向かったのは、救助ポイントになると知っていたからか?」

 

「いや彼にそんな打算はないよ!敵に背は見せない!じぶんの背の者たちにまで通させない!無意識に感じているんだ彼は!」

 

「ナチュラルボーンヒーロー」 

「彼はヒーローになる素質に溢れているよ!」

 

オールマイトは自身のヒーロー観にルフィが合致していることに嬉々として語った。

 

「そして殲滅ポイントと救助ポイント合わせて彼は130ポイントでブッチギリの1位さ!今年の1年生は有望株多そうで楽しみだね!」

 

艶々ふわふわの自分の毛並みを自慢げに撫でながら校長がこの場を閉めるのだった。

 

実技試験が終了し、次の試験のため教師陣はそれぞれその場を解散していった。

 

 

 

さぁ次は筆記試験だ!(ゲス笑い)

 




今回は少し多目に書きました。そんで地文も多目に書きました。
いやぁ戦闘描写を文章でやるのは難しいですね。


さぁルフィは合格できるのでしょうか!(笑)

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