麦わら帽子の英雄譚   作:もりも

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灰色の世界

試験から数日後の夜、ジーコよりも凄いブラジルの英雄ガープの事務所AUAUは静寂につつまれていた。そのなかでも経理を担当するロドリゴさんは沈痛な顔をしている。

 

「どうすんだコレどうすんだコレre:re」

 

なにやらぶつくさ呟いている。ヤベェ

事務所一同の中の一人にルフィの顔も見られる。

テーブルを見るに豪勢な食事とケーキが並んでいる。

 

その誰もがよだれをたらす状況のなかで、ルフィの顔はというと・・・

 

「」

 

無!圧倒的無である!!

メシを前にしては阿修羅マンをも超える喜怒哀楽を見せるルフィがこの表情である。

生きる希望もないとヒシヒシと伝わって来る。

 

・・・彼に何があったというのか。スットボケ

 

「ただいま〜 ル〜フィ〜!今日雄英からの合格通知が来たんじゃろ?」

 

「ほれお前のために牛一頭丸買いじゃい!どうじゃすごいじゃろ!!噂のコーベじゃコーベ!ワシぐらいになればポケットマネーでホホイのホイじゃ!」

 

「ワシも珍しく気を使えるじゃ、礼には及ばないぞい!」

 

こんな灰色の世界にサンバのリズムでズカズカと踏み込んで来るガープ。

あーあー、と一同がなんて空気が読めない裏目にでるジジイなんだと心の中で睨みつけた。

 

「何惚けておる ルフィ?ほれ 肉じゃぞ!」

 

「いいよ・・・悪いし。じいちゃん食っていいよ・・・」

 

ルフィが覇気なく、遠慮がちに肉をお断りする。

時間が完全に停止した。

「あの」ルフィが肉を拒否したのだ。あり得ない、どんな天変地異より起こり得ない異常事態だ。

 

ガープは瞬時に理解した。

ここが灰色の世界なのだと。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「おかしい!冷静に考えればなんでワシの孫が落ちにゃいかんのだ!」

 

一晩明け、灰色の世界から脱却したガープは手塩にかけた孫が落ちるなどあり得ないと雄英高校まで抗議しに出向いたのだ。普通なら入試の合否の結果になんて言われようが突っぱねるとこなんだが、世界的なヒーローであるガープをさすがに門前払いすることは学校側もできなかった。

 

「やぁやぁこれは英雄ガープ氏!お初にお目にかかれて光栄さ!私は校長の根津です!艶の秘訣は正しい生活サイクルさ」

 

ネズミが人間の力を持った純然たるげっ歯類である校長はさりげなく自慢の毛並みの話を滑り込ませながら、正門にてガープを迎え入れた。そして傍に今年のヒーロー科の担任を務める相澤が佇む。

 

会議室へと入ったボガードを加えた四人は、円卓上に置かれたコーヒーがある椅子へ腰を落とした。

 

「単刀直入じゃが、ワシの孫が落ちた理由が知りたい!ルフィのやつの戦闘力は並のヒーローよりも上じゃ!それはワシが一番わかっとる!だから信じられんのじゃ」

 

平静をなんとか取り繕おうとしているガープだったが言葉からはしっかりと怒りがこもっていた。

そんなガープに相澤が答える。

 

「・・確かにあなたのお孫さんは優秀でした。身のこなし、単純な腕っ節、そして個性の練度。実技においてはどれを切り抜いても一級品でしたよ・・・」

 

相澤はルフィの能力を淡々と答え、素直に孫を褒められたガープは少し嬉しそうにしている。

 

「ガープさん、あなたはブラジルの方でいらっしゃるからご存知ないと思いますが・・・ヒーロー科として個性の強さこそ脚光を浴びがちですが、本来雄英高校は進学校でもあるんですよ」

 

「それも偏差値75オーバーの勉学においても日本有数の学校です。倍率が300もあるのだから必然的にこちらが求めるラインも上がってしまう」

 

相澤は顔の前で手を組み、少し言葉尻が重くなる。

 

「つまり筆記試験の結果も大きく関わってしまうんですよ」

 

「筆記試験・・・?」

 

ガープは今まで頭の隅にもおいてないワードに少し戸惑い。

あっ(察し)と呟いた。

今気づいたのかよ、ボガードが内心悪態をついたのは秘密だ。

 

「ルフィ君の実技試験はぶっちぎりのトップの成績でしたが・・・・」

 

「筆記において雄英史上ぶっちぎりの最低点を叩き出したんですよ」

 

ガープはそれを聞いた瞬間、灰色の世界を通り越し漆黒へと身を沈めた。

 

(容赦ないな・・相澤君)

(わかってた事だが、この先生も冷酷だな)

 

相澤の非情な言葉に校長とボガードは冷や汗をかいた。

相澤はフリーズしているガープを見て、言葉は続けず先日のルフィの答案用紙の採点時を思い返した。

 

 

一人の教師がわっと声をあげ、

 

『なんだこの用紙なんかシットリしてる!?』

 

周りの教師もワラワラと集まってきた。

 

『油付いてるじゃねえか!手汗か!?』

 

『しっかしなんだこの答案ほぼ白紙だぞ。冷やかしか?・・なんか鉛筆グリグリして、かろうじて回答の意思は感じるが』

 

『なんかこの油・・香ばしい臭いすんだけど・・・』

 

『ってこいつ実技ぶっちぎりの奴じゃないか』

 

『う、うそ?』

 

『おいおいちょっと待て、だとしたらこのとんでもないバカ(強調)どうすんだ!?』

『不合格か!?』

 

『いやいや実技がトップなんだぞ?幾ら何でもそれは・・・』

 

『あ、右下隅にちっちゃくおまけしてくださいって書いてある・・・・』

 

 

 

その情景を思い出し、相澤は額に再び青筋を立てた。

間を置いて相澤はさらになぜルフィが合格していないかコツコツと話す。

 

「まず平均80点がボーダーラインのテストにおいて、彼の平均は1.3点」

「この時点ですでに論外ですが、さらに彼には試験中食事をしていた疑いもある」

 

「そしてさらに言うなら、仮に順位づけで実技と筆記の成績を表すと、トップの実技とドンケツの筆記を合わして2で割ったとしてもちょうど受験者の半分・・彼は上位50パーセントの位置づけになります」

「ですが合格ラインは倍率300なので上位0.3パーセントになるわけです」

 

「数字をどう持ってこようが合格ラインにはかすりも・・」

 

「相澤君!」

 

根津は相沢が話し終わるところで制止した。

 

「もう彼のライフは0だ・・やめなさい・・」

 

「ああ・・すいません・・・なんか言葉が止まらなかったです」

 

校長に止められ、いつになく饒舌になっていた自分に相澤は気づいた。

しかし不合理が嫌いな相澤がルフィの不合理さに嫌悪さえ覚えるのには無理もなかった。

 

かくいうガープはその大きな体躯をすごく縮こませている。

 

「大丈夫ですよ・・・パーセントの数字並べたって理解しちゃいませんよ。あの孫あってこの祖父ありです。」

 

さりげに一番ひどい事を言うボガードであった。

 

 

 

 

ぐうの音も出ないガープはようやく諦めたのように呟いた。

 

「ブラジルに帰るかボガード」

 

「しかし事務所どうするんです?建てたばっかりですけど、このままじゃロドリゴの頭が禿げ上がりますよ?」

 

まるで初めから分かっていたかのようにボガードは淡々と答える。

ガープはさほど気にしてなさそうに、売れとの一言。

一体いくらの赤字を叩き出すのやら・・ロドリゴはハゲるにしても、今年のボーナスはカットだなと帽子の鐔をボガードは下に向ける。

 

そこで校長は素っ頓狂な声を上げる。

 

「え!?国に帰られるので!?」

 

何を意外な顔をしているのかとガープとボガードは顔を訝しむ。

そんな反応を見て相澤は少し考え込んだ。

 

(この爺さんなら少しでも可能性があると思ったら、ズケズケ踏み込んでくると思ったが・・・、ヒーロー科に合格しないとプライドに触るのか、有名なだけに)

 

なんだか反応がおかしい教師陣にボガードは返した。

 

「ルフィ君は雄英に入るのが目標で日本にまで来ましたからね。そこに入れないなら、帰るのが自然の流れでしょうに・・・」

 

 

 

 

「・・・え・・・いや、雄英には入れますよ 彼」

 

 

 

 

はっ!? 、と突拍子もない事をいけしゃあしゃあと答えた相澤に上着を着た二人は大口を開けて固まっている。

しかしそこはさすがロマーリオより凄いガープいち早く反応した。

 

「じゃ、じゃがさっきは無理といっとったじゃろうが!!!?だ、騙したのか!!」

 

ガープは混乱し、戦闘時の癖の袖の腕まくりしだした。

この動作に教師二人は少し焦ったが、ここで相澤はこの会話のすれ違いに気づいた。

そして一つ確認する。

 

「合否発表の封筒に入ったDVD最後まで拝見されましたか?」

 

すると未だ混乱していたボガードはその時のことを思い出した。

 

(確かあの時、ルフィ君が封筒を受け取ってデッキのある部屋で一人で見ていたな・・・)

 

あの日事務所のみんなはルフィがDVDを見ている部屋の外で結果を待っていた。

ルフィは受かっていたら大騒ぎして部屋からすぐ飛び出して来ていただろうから、全員落ちたと思っていた。

それにルフィは灰色の世界を醸していたのだ。

 

 

 

「つまり最初に不合格と聞いて、落ちたと思い後の話を聞いていなかったと・・・」

 

根津がボガードから聞いた話をまとめ、ふーんと鼻息を強めた。

あの男めもったいぶるからだよ、と毛並みを触りながら一人の男を思い浮かべた。

そして状況を理解したボガードはルフィに電話をかける。

 

「ルフィ君あのDVDを最後までみろ!」

 

 

「まぁ、こちらにも非がありますね。憧れに不合格の旨を言われたら、先を聞きたくないのもわかる。」

 

正直嫌いな部類なルフィにも相澤はちょっぴり同情した。

まだ話についていけてないガープはどういうことかと説明を相澤に促した。

相澤はまた聞き返されないようにはっきりと伝えた。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

「ルフィ君 君は不合格だ!」

 

事務所でガープとボガードを除く全員でDVDを再度見ることに。

TVに映し出されているのは今年から雄英の教師になるというオールマイトだった。

彼は続けて話をする。

ちなみにここでルフィは灰色になった。

 

「素晴らしい実技を見せたと思えば、私も思わず引いてしまうほどの筆記のbadさ・・。これでは文武両道を唱える学風にそぐわない結果だ」

 

「おおよその教師は君を躊躇なく不合格を言い渡した」

 

「しかし私がそれを拒んだ!!!」

 

オールマイトはこの一言に力を込めた。

そしてその言葉にルフィは顔を明るくさせる。

 

「実技試験における君の意思、度胸は私が思うヒーロー像そのものさ!」

「筆記ごときで君の中で燃える大炎を消すなんて私にはできない!!」

 

「私はこれでもトップヒーロー!発言力には自信がある!」

 

その言葉にルフィとともに周りの全員もまさか、と胸を弾ませた。

 

 

「そう君は合格だ!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

「雄英高校普通科に!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「「「へっ」」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

えええええええええええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜、弾かれるような声が2丁目の工藤さん家まで届いたという。

 

 

 

 

 

 

 

 




オールマイト「し、仕方なかったんだ・・ヒーローとしては実績はあっても、教師としては新米だから
       ここまでが限界だったんだ」アセアセ


この件でルフィ以外のブラジル勢から評価が下がったオールマイトであった。
なんだかんだ雄英に受かったルフィ!さて普通科で生きていけるのであろうか

ロドリゴさんの毛根は生き残った!
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