ストライクウィッチーズ~愛の夢~   作:プレリュード

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第6話 おふろ

 なんとかして素早く例のネウロイを倒してしまおう。私はそう決意して、そのために宮藤さんを夜間哨戒できちんと戦えるように仕上げようとしていたはずだった。

 

 そうして捜索を始めて今日で3日目だった。ネウロイは影も形も見せない。

 

 ネウロイが倒されなければ今、動いている夜間哨戒のシフトは元に戻ってくれない。急がなくてはエイラに気づかれてしまう。なんとかして早く片付けなければいけない。けれど遅々としてネウロイは発見できない。

 

 時間だけが過ぎて、焦りだけが積もっていく。このままではいけない。ついこの間、エイラとの接触は最小限にすると決めたばかりなのに、添い寝に始まって連日の夜間哨戒と来ている。これでは本当に私がサーニャではないと気づかれてしまう。

 

 今、この状況だって危ない。私は私の部屋で私のベットの上にいる。けれど私は1人ではなかった。私のベットの上にはあぐらをかくエイラといわゆる女の子座り宮藤さんがいる。

 

 この状況を危ないと言わなくて何と言えばいいのだろう。

 

「ねぇ、サーニャちゃん。サーニャちゃんのご両親はどこにいるの?」

 

「オラーシャにあるウラルの山を越えたもっと、ずっと向こうまで。詳しい場所は……わからない」

 

 サーニャの記憶を頼りに宮藤さんの問いに答える。幸いなことにこの記憶は穴が空いていなかった。だから答えることができた。もし答えられなかったら不審に思われていたかもしれない。ちゃんと答えることができてよかった、と心の中だけでほっと胸を撫で下ろしていた。

 

「そっか……よかった」

 

「何がいいんだよ? 話を聞いてないのか、お前?」

 

「だって今は離れ離れでもいつかきっとまた会えるって事でしょ?」

 

 確かにそうかもしれない。サーニャのご両親は亡くなっているわけではないようだし、きっとまた会うことはできるかもしれない。

 

 さすがの私にもわかるけれどウラル山脈の向こう、ということはロシアが広がっている。そんな中からたった2人のご両親を探し出すのはどれだけ大変なことだろう。

 

「あのな、オラーシャは広いんだぞ。探すって言ったってそう簡単に見つかるもんか」

 

「でもサーニャちゃんは、早く家族と会いたいって思ってるでしょ? だったら、サーニャちゃんの家族だって絶対、サーニャちゃんと早く会いたいって思ってるはずだよ。そうやってどっちも諦めないでいれば、きっといつかは会えるよ。そんな風に思えるって、素敵なことだよ」

 

 私はお父さんともう会えないから、とどこか寂しそうな笑顔で宮藤さんが笑った。

 

 きっと宮藤さんは両親に愛されていたのだと思う。今も昔も。そしてお父さんが亡くなってしまったとしても、お母さんからずっとこれからも。

 

 だから宮藤さんは幸せな人だ。

 

 両親に会いたい。そう思っていればきっと会える。そんな美しい理想が口にできる宮藤さんは本当に幸せだと思う。

 

 きっと彼女は知らないんだろう。世の中には親に会いたくないと思っている人がいるなんてことを。この世界にあるかはわからないけれど、親に虐待を受けた子供を保護するための施設があるなんてことは絶対に知らない。そうでなくてはあんな言葉は出てこない。

 

「寝るのはもうムリだな。サウナでも行くか」

 

「は、はい!」

 

「え……」

 

「サーニャは来ないのか?」

 

 エイラが一声かけると私も宮藤さんも立ち上がった。もう日が落ちてきた頃だ。夜間哨戒の前にお風呂の代わりとしてサウナに入ろう、ということなんだと思う。

 

 はっきり言って断りたい。サウナということは服をすべて脱がなくてはいけない。つまり最後の砦だったショーツ、いやズボンとブラもなくなってしまうということ。

 

 けれど断ってしまえばそれはそれで不審がられる。変だと少しでも思われてしまうことすら避けなくてはいけない。

 

「ううん。行く」

 

「じゃあ行くぞー」

 

 気が向かない。本当にやめてほしい。なんでこんなに肌面積を広々と晒す機会に恵まれてしまうのだろう。いい加減にしないとそろそろ私の限界がきてしまう。他人といるのでさえ苦しい私に対してどうにもこの世界は厳しい。

 

「サーニャ? 先に入ってるぞ?」

 

「うん。すぐ行くわ」

 

 サウナに入る前に服を脱がなくてはいけない。でも脱いでいるところは見られたくない。だから宮藤さんとエイラには先に行ってもらった。完全にいなくなってからズボンを足から抜いて、ブラを外してから籠にそっと入れた。大き目のバスタオルを体に巻きつけて、なんとか際どいところは隠しきった。髪を別のタオルで纏め上げるとサウナルームに足を踏み入れて、エイラと宮藤さんから変に思われないくらいに離れた場所を選んで腰を下ろした。

 

 サウナに入ったことはほとんどない。ムシムシとして暑い。でもサウナとはこういうものらしい。

 

「それにしてもサーニャちゃんって肌、白いよね」

 

「どこ見てんだ、お前」

 

「それにすべすべだし。いいなあー」

 

 褒められるのは慣れていない。だからお願いだから触れないで欲しい。そもそも褒められたところでサーニャが賞賛を受けているのであって、私は関係ないのだけれど。そうだとしても見られると視線が気になってしまう。

 

「羨ましいなぁ」

 

「さ、サーニャをそんな目で見んなぁーー!!」

 

 ドタバタと後ろでエイラが宮藤さんに飛びかかる。私としてもジロジロ見られると息苦しくなるから視線を遮ってくれるのは助かった。

 

 そして今がチャンスかもしれない。エイラの視線も宮藤さんの視線も私から外れた。つまり今ならサウナから抜け出すチャンスだ。正直に言っていくらバスタオルである程度は隠していても、露出度は高い。そのせいかだんだんと呼吸が苦しくなっていた。これ以上いたら倒れてしまうかもしれない。

 

 ちらっと後ろを見て、さりげなく様子を伺って。そして私が目に入っていないことを確認したら気づかれないようにこっそりとサウナ室から逃げ出した。

 

「涼しい……」

 

 外に出るとひんやりとした風が素肌を撫でた。火照った体には気持ちがいい。このまま水風呂がわりの川に浸かるらしい。まだ私の体の芯は熱を持っている。それに汗もいっぱいかいてしまったから流してしまいたい。

 

 草の茂みを越えて澄んだせせらぎをたたえた小川へ。流れの穏やかな場所を狙ってゆっくりとバスタオルを外してちゃぷん、と肩まで浸かった。

 

「んっ……」

 

 ひやっとした感覚に思わず声が漏れた。水の冷たさにびっくりしたけれど、慣れてくるとこれもけっこう気持ちがいい。意外とサウナっていいものかもしれない。そう思うくらいには気持ちがよかった。

 

「でも、これって外……」

 

 そう、唯一の問題は野外であることだった。露天風呂なんていうものではなくて、完全に外。囲いなんてものはない。女性しかいないから大丈夫ということなんだろうけど、外で裸になっていると考えると落ち着かないものがあった。なんだかとってもイケないことをしている気分だ。

 

 いくら覗く人がいないとはいえ、いろいろ全開になっているのはやっぱりソワソワする。せめて手で隠すくらいは……

 

「あっ……ま、待って」

 

 たまらず手で隠そうとした時、持っていたバスタオルが手から離れて流れていってしまった。いくら流れが緩やかでほとんどないようでも川は川。それにバスタオルは広がっているせいで流れに乗りやすい。

 

 焦って私はバスタオルを追いかけた。でも水の抵抗があってうまく歩けない。同時に隠しながら歩こうとしているのだから当然といえばそれまでだけれど。もたもたやっているうちにバスタオルは流れていってしまった。

 

「タオルが……」

 

 ぽつん、と私は佇んだ。バスタオルがないだけでこの心細さはなんだろう。ただでさえ外なのに最後の鎧だったバスタオルさえもなくなってしまった。

 

 私はごつごつとした岩にぺたんと座るようにもたれた。迂闊だった。これではもう隠せるものがない。心細さどころか何かがせり上がるような感覚すら覚える。

 

「ら、ららー。ららーららー、ららら」

 

 小さく歌を口ずさむ。歌はいい。何もなくたってできる。それにこれで少しは気がまぎれるかもしれない。

 

 事実、私が1人のときに歌を口ずさむことが多いのは私のストレス発散みたいなものだった。でも誰かに聞かれるのは恥ずかしいからできる限り1人で歌うようにしている。

 

「あっ」

 

 なんて不幸なんだろう。この時ばかりは自らの不運を本気で呪ったし、なんでいつもこんな目にと思わざるを得なかった。

 

 私がいる岩とは違う別の岩の影でエイラと宮藤さんが私の方を見ていた。

 

 つまりこれはばっちり聞かれていたということなんだろう。

 

「ついてない……」

 

 どうして私が歌うときに限って必ず誰かが聞いているんだろう。せめて1人のときくらいは私でいさせてくれてもいいのに。

 

 また内心で深いため息。私の時間はもうお終い。またサーニャにならなくちゃ。

 

 けれど私は息苦しさを覚え始めた。サーニャにならなくちゃいけない。わかっているはずなのに、演じる余裕がない。

 

 できたことといえばとっさに両手で隠したことくらい。それ以上のことはできなかった。

 

「サーニャ、大丈夫か?」

 

「もしかしてサウナでのぼせちゃった?」

 

「う、うん」

 

 ごまかすにはちょうどいい口実が与えられたのはラッキーだった。これに飛びつかない手はない。息苦しさも体の強張りも私のものであってサーニャのものではないのなら隠さなくてはいけないだろう。

 

「どれどれーっと」

 

「え、エイラ?」

 

 ずいっとエイラが私に近寄った。もちろんエイラも裸で、しかもバスタオルを巻かずに、だ。

 

 なんで恥ずかしくないんだろう。いくら同性だとしても私だったら卒倒する。とにかく近い。近すぎる。額がぴったりと触れ合う。

 

「んー、熱はなさそうだなー」

 

「あ、あ、あ……あぅ」

 

 もう、限界です……




サーニャが耐性持ちだとしても私にはないと思うんですよ。そもそも裸になるだけで限界いってるのにこんなことやられたら限界越えていっちゃいますよね。

いやー、それにしてもアニメのシーンを書くって大変ですね。オリジナルキャラクターが死なないように、そしてなおかつストーリを崩さないようにしなくてはいけないので、いっそ展開を自分で作った方が楽な気がします。

でも6話は外せないと思ったんですよ。だってサーニャメインの話ですよ? エイラーニャ書いといてここを外すのはちょっとなあって思いまして。

あ、でもこれ以降はストパン1期の話で書くのはあと一つだけだと思います。ほら、最終戦とか私にサーニャを置き換えて書き直すのめんど……ゲフンゲフン、シーンが少ないから大変じゃないですか。
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