人々は今日も、自身の目的の為にと、1日を過ごしていた。
知識を向上させたいと、勉学に励む者。
家族を養うために、労働に励む者。
純粋に今を生きる者など、それぞれの目的を果たすために日々励んでいた。
しかし、中にはそんな人々の暮らしを脅かす者も存在する。
「ハーイ、雨雨降れ降れ土の雨♪そして死ぬ死ぬ人間風情♪プププププ〰!」(怪人1)
「デフレの恐怖は時代遅れでゼニ!ソレソレソレ〰!!」(怪人2)
「電信柱は~稲妻を呼ぶ〰」(怪人3)
街は、突如現れた三体の怪人の手により荒らされていた。
怪人は、高いビルの屋上にて、雨を降らしているかのようにそれぞれの攻撃を連発させていた。
まず一体目の怪人は、口からトゲの様なモノを連射させて、下の建物を次々と穴だらけにしていた。怪人は、顔に黒真珠のような眼が6つと、鎌のような鋏角が付いた口。
4本の腕が特徴の土蜘蛛怪人『土グモン』であった。 土グモンは、お尻から糸を出すのはもちろん、土を
口の中にふくむことで鋭い刺へと形を変える事が可能。出来た刺は、マシンガンの弾丸のように撃ち込まれ、硬い岩でも蜂の巣に変えてしまうほどの威力を持つ。被害は、建物にとどまらず、街の人達も軽症では済まされなかった。
そんな土グモンの隣には、機械じみた怪人の姿があった。
左胸には数字や記号を記されたボタン、右には表示モニター。腹部は大きな引き出しで、中には大量の札束と小銭。右手はバーコードリーダー、左手はレシートプリンター。
そして顔は、横長の表示モニターで表情の役割を果たしている。
それが、レジスター怪人の『レジキラー』なのだ。
レジキラーが引き出しを開けると、中から小銭の形をした核ミサイルが連続発射されるのだ。
ことわざに『一円を笑うものは一円に泣く』というものがあるが、レジキラーにとって一円をはじめとする小銭は愚か、札までも人を苦しませる武器でしかないのだ。『一円に泣く』は、レジキラーにとって『恐怖で泣く』という意味合いなのだ。
そして、そのレジキラーの隣には3人体目の怪人がいた。
ゴツゴツした岩の体と、1メートル近くの長い首。
頭の先端には、ぶらんぶらんと揺れる4本の切れた電線。
電信柱怪人の『デンチューヌ』であった。
デンチューヌは、頭の電線から電気を放電させていた。その影響で、電灯や携帯電話、街中の家電製品が次々と感電するといった事故が多発中だ。
そもそも『なぜ怪人は誕生したのか?』『どうやって怪人は造られたのか?』謎が謎を呼ぶ。
これは、地獄の秘密結社『ハルッカー』の仕業である。
『ハルッカー』とは、天才科学者Dr.春花を筆頭に作られた、地球侵略を目的とした悪の軍団なのだ。欲しいものは、全て自分のものにする為なら手段を選ばないのが、Dr.春花のやり方。
怪人を開発しては、あの手この手で人々を苦しめ、気づけば東京のほとんどはハルッカーによって侵略されていた。
反撃を試みるも、数多い兵器をもっても怪人達を撃退する事は不可能であった。
手段の尽きた人類は、このまま平和な暮らしを奪われてしまうのではないかと思われていた。
しかし、諦めたわけではない。
なぜなら、唯一怪人を倒せる一人のヒーローの存在しているからだ。
この物語は、一人の勇敢なヒーローが怪人達による呪縛から人類を解放する為の奮闘記なのだ。
一通り街を荒らした3体の怪人。
ここで、土グモンが言い出した。
「よし、この辺は大体壊したし、次の街に行こうぜ」(土グモン)
「賛成でゼニ!」(レジキラー)
「オイ、アレを見ろよ」(デンチューヌ)
ここで、デンチューヌが何かに気づいた様子。
「「ん?」」(土グモン&レジキラー)
指した方向を見ると、そこには逃げ遅れた一人の男の姿があった。怪人達の恐怖で腰を抜かしまい、思うように動けなくなっていた。男を見つけるやいなや、土グモンは顔をニヤつかせた。
「ほほぉ、いいオモチャ見~つけた!キエ〰」(土グモン)
土グモンは、突然体を背後に向けたと思いきや、(お尻の)出糸突起から太めの糸を男目がけて放出した。
「ひゃあ!なんだコレ!?身動きが…」(男性)
糸は、意思を持っているかのように男の体をグルグル巻きに縛り上げた。男を縛り終わると、糸はエレベーターのワイヤーの様にどんどん上へと上がっていく。
そして、怪人達の目の前にて止まった。
「ひぃぃ、命だけは…どうか命だけはお助けを…」(男)
男は涙を流し、怯えながら命乞いをする。
「助けてくださいだと?なんなら、まず持ち金を全部よこしな!」(土グモン)
「うわぁぁぁぁ!」(男)
土グモンは、男を逆さまにすると、体を上下に揺らし始めた。
すると、男の服のポケットから財布やカード、食べかけのガムなどの私物が次々と出てきた。突然の行動に、男は恐怖で気を失っていた。
「何だ…たったこれっぽっちか~」(デンチューヌ)
「おいおい、捨てるんじゃないぞ。小銭は、オレが貰うゼニよ!」(レジキラー)
そのスキに、デンチューヌは男の財布の中から数枚の千円札を抜き取っていた。
小銭は、レジキラーの引き出しの中へ。
「ん?コイツ気絶してやがる。ったく、仕方ねーな…それじゃあ、適当に死んでろぉぉぉぉ」
土グモンは、男を力強く放り投げた。男性が飛ばされた先には、大きなビルの姿が。このまま激突すると、体中の骨は折れ、意識が完全に消滅してもおかしくはない。
「ハッハッハ-!これで体はバラバラに…」(土グモン)
この時、怪人達は男の死を確信していただろう。
しかし、その確信は今から予想を外し、彼らにプレッシャーを与える事となる。
そう、ヒーローが参上することで。
突然聞こえてくるバイクのエンジン音。
それは、“彼女”の相棒『パッチバイク』の嘶き。彼女はアクセルを全開になるまでひねり、まるで光の様な速さまで加速していく。
そして、急な片輪走行に切り替えたと思いきや、勢いよく男目がけて跳び上がる。
「ん?おい、アレを見ろよ」(デンチューヌ)
「「ん?……あぁ〰」」(土グモン&デンチューヌ)
目の前の異変に気づいた3体。目線の先には、ビル激突したと思われていた男をバイクに跨がる少女に救助されている光景があった。
少女は、片腕で男性を担ぎ、もう片方でバイクを操る。
そして、近くの建物へ着地すると、男をゆっくりと売却から降ろした。
「大丈夫だったか?ここで休んでおきな」(??)
彼女は、その場にパッチバイクを駐めると、3体のいる建物の屋上を見つめた。
そして、3体に向かって指を指して言った。
「今からそこに行く!アタイが着くまでソコを動くなよ」(??)
少女は、宣言を終えるとその場から姿を消した。
「き…消えた!」(土グモン)
「でも、バイクは駐めたままだぞ。アイツ、駐車違反だな…」(デンチューヌ)
「馬鹿野郎、そんな事言ってる場合か!このスキに、逃げるぞ…」(土グモン)
「逃げるって、ドコにだ?」(??)
「「「ハッ!」」」(怪人達)
3体が後ろを振り返ると、そこには彼女の姿があった。100メートルほど離れていた建物から、ほんの数秒でココまで移動したとでもいうのか。
いくらなんでも、人間離れにも程がある身体能力だ。
「アンタらも懲りないなぁ…土グモン、デンチューヌ、レジキラーさんよ!」(??)
「こ…懲りないのはどこの裏切り者だ!……か、葛城め!!」(土グモン)
少女の名前は『葛城』。
彼女こそ、この物語のヒーローなのだ。
1年ほど前まで彼女は、ハルッカーによって改造された秘密兵器であった。その力は、人類は愚か全ての生物を超越するほどのもの。
しかし、人間の心を持つ彼女は、悪事を働くハルッカーを許せなかった。軍団を抜け出した葛城は、ハルッカーによって奪われた世界平和を取り戻す為に、正義の味方として日々戦っているのだ。
「裏切り者とは、言ってくれるじゃねーか。アタイは、アンタらが悪さをしてる限り止めに来るだけさ」(葛城)
「ぐぬぬぬ…そう言っているのも今のうちでゼニ」(レジキラー)
「強くなっているの、オマエだけじゃない」(デンチューヌ)
「オマエら、一気に攻めて返り討ちにするぞ。いけー」(土グモン)
「「「うぉぉぉぉぉー」」」(土グモン、デンチューヌ、レジキラー)
土グモンの合図と共に、3体は一斉に葛城の元へと突っ込んだ。そんな状況でも、葛城は堂々としていた。
ヒーローたるもの、敵を恐れていては勤まらない職なのだ。
「さ~て、早く終わらせて昼飯とするか」(葛城)
そう言うと、葛城は懐から何かを取り出した。
それは、ラーメン丼のような形をいている。葛城が丼を腹部に当てると、端からベルトの様なモノが伸びて巻き付いた。
さらに葛城は、もう片方の手を胸の谷間に突っ込み、ソコから何かを取り出した。
その正体は、“忍転身”と達筆で書かれた巻物であった。
「一丁いきますか!」(葛城)
『オーダー通シマース』(ベルト音声)
ボタンを押すと、丼は縦に開いた。
「忍(しのび)~、変・身!!」(葛城)
『オーダー入りマース…セクハラーメンマン一丁!』(ベルト音声)
葛城は、カッコよくポーズを決めながら巻物を挿入し、ベルトを閉じた。
すると、ベルトから白い光が溢れだし、葛城を包み込んだ。服の上からは、白いプロテクターが装着。
手には、厚手のグローブ。
ヒラヒラさせた青いスカート。足には、重量感あふれる足甲。頭上には、ラーメン丼が被され、シールド付のヘルメットへと変わった。
そして、変身完了と同時に光が晴れた。葛城は、光のごとく一瞬に迫り、そして悪を討つ。
「「「へ?」」」(怪人達)
「ぎゃわぁぁぁぁ」(土グモン)
「嘘でゼニぃぃぃ」(レジキラー)
「ポメラニアァァァン」(デンチューヌ)
いつの間にか三体は、吹っ飛ばされてビルの下へ落下。
そして、その目の前には葛城の姿もあった。
「小さき山(貧乳)が危機の時!大きい山(爆乳)の危機の時!!いやっ、地球(おっぱい)の危機はアタイが守る!!!セクハラーメンマン舞忍びます!!」(葛城)
葛城は、決めゼリフと共に格好良くポーズを決めた。
このセクハラーメンマンこそ、葛城のヒーローとしての姿でもある。人間を超越した力を手に入れたことで、想像した物質を作り出し、それを鎧にて装着したのだ。なぜ『セクハラ』と『ラーメン』なのかは、察しを願いたい。
しかし怪人達は、屋上から落ちた程度では死なない。ハルッカーの技術は、もはや科学の次元を越えているようなものなのだからだ。
「痛ててて…怯むな兄弟!俺達は、泣く子も黙るハルッカーだぜ!」(土グモン)
「ハルッカー万歳でゼニ」(レジキラー)
「と~つ~げ~き…」(デンチューヌ)
三体は、再び葛城に襲いかかる。
今こそ、ヒーローとしての本領が発揮される時である。
「正義の為に…舞忍ぶぜ!ハァァァ」(葛城)
葛城は、三体に向かって走りだした。
土グモンは、4本腕攻撃を活かした連続攻撃を繰り出す。葛城は、一つ一つの攻撃を見抜いては、次々と後ろへ受け流していく。
そして、敵が自分の後ろに立つと、跳び上がりながら後ろ蹴りを繰り出した。
「うわ、痛っ!コイツ…」(土グモン)
「遅いんだよ、オマエの攻撃は」(葛城)
「スキあり!スキャナーレーザー」(レジキラー)
スキを見つけたレジキラーは、葛城目がけて右手のバーコードリーダーから、赤い光線を発射させた。
「よっと!」(葛城)
葛城は、光線の気配を感じると、体を後ろに反らしながら避けた。
「あっ!」(レジキラー)
「ん?いぎゃぁぁぁ」(土グモン)
避けた光線は、葛城の後ろにいた土グモンの体へと直撃した。
「ひぃっ、土グモン!!おのれ、よくも〰」(レジキラー)
仲間との信頼を取り戻そうと、レジキラーは再び光線を葛城に向けて発射させた。今度は、短めの光線を次々と連射した。それに対して葛城は、変わらず余裕の表情を見せていた。
「よっ、ハッ、どりゃあ。へん、攻撃が遅いぜ。その程度でこのセクハラーメンは、倒せないぞ」(葛城)
体の柔軟性を活かしながら、アクロバティックに光線をかわし続けていた。
「スキあり…」(デンチューヌ)
「うわっ!」(葛城)
前の敵に集中していたため、葛城は後ろがガラ空きであった。
両足にデンチューヌの電線が巻き付き、葛城はそのまま宙吊りにされてしまった。スカートは、すっかり下へとめくれており、パンツは丸見えだ。
「おお、今日は水色のシマパンかぁ。このまま、眺めておきたいが、今からオマエさんはオレの電撃で」(デンチューヌ)
デンチューヌは、残りの電線に電気を溜め始めた。電気が集まると、電線の先端から黄色く光り始めた。どうやら、集めた電気を一気に放電させて、葛城を感電死させるつもりだ。
しかしデンチューヌは、この時自身が犯したミスに気付いていなかった。それに葛城は、いち早く気づいた。
「悪いが、そうはいかないぜ!電気を溜める際は、待ち時間に注意しなよ」(葛城)
『オーダー入りマース…キザミ!!』(ベルト音声)
葛城は、胸元から緑色のUSBメモリを取り出すと、そのままベルトへと挿入した。
「どりゃぁぁ!」(葛城)
「あっ!しまった」(デンチューヌ)
なんとデンチューヌの電線は、ほんの一瞬にして切り刻まれていた。
葛城を見ると、いつの間にか両手に麺包丁のような双剣を手にしていた。
「ほ~ら、鬼さんこっちだ!手の鳴る方へ♪」(葛城)
「ぐぬぬぬ…キサマ〰」(デンチューヌ)
葛城は、挑発的な態度をとりながら逃げ回った。
デンチューヌは、残った電線を伸ばして葛城を捕まえようとする。電線は、みるみると伸びていき、獲物を狙う蛇の様に葛城を追尾する。
だが葛城は、電線との一定の距離を保ちながら走っている様子。電線の速度を上げても、葛城は全然捕まる気配がありません。
「ほらほら、こっちだよこっち!」(葛城)
「この!こしゃくな…ん!?なにっ!」(デンチューヌ)
デンチューヌに、何やら異変が起こった。
「か…体に電線が…」(デンチューヌ)
なんと、電線が自分の体に巻き付いていた。
そう、葛城は初めから動きを止めるために、敵の周辺をグルグルと逃げ回っていたのだ。気づいた頃にはもう遅く、電線は上手く絡まり、ほどくにもほどけなかった。
「オマエ…俺をハメたな」(デンチューヌ)
「へへへ、今さら気づいても遅いぜ!」(葛城)
再び胸元に手を突っ込むと、今度は赤いUSBメモリを取り出すと、片手に持っていた剣へと挿入した。
『トッピングオーダー入りマース…炙り』(ベルト音声)
「ハァァァァ!」(葛城)
葛城がチャクラを集中させると同時に、双剣の刃に炎が集中した。炎は刃を包み込むと、双剣は炎剣へと姿を変えた。
「英雄忍法 サラマンダースラッシュ-!!」(葛城)
葛城が両腕を交差させて剣を振ると、炎の斬撃がデンチューヌへと放たれた。
「ぎゃぁぁぁ、あじぃぃぃ」(デンチューヌ)
デンチューヌの体は、炎によって包まれた。
完全にセクハラーメンマンのペースに乗せられている3体の怪人。ナメられてるばかりで、3体は苛立っている様子であった。
「おのれセクハラーメンマン〰こうなれば3人一気に攻撃するぞ、兄弟!!」(土グモン)
「了解ゼニ!」(レジキラー)
「電信柱は、稲妻を呼ぶ~」(デンチューヌ)
3体の怪物は、一斉攻撃で一気に追い詰める作戦に出よくと攻撃体勢に入る。
「さ~て、トドメは超必殺技で決まりだ!」(葛城)
『オーダー入りマース…秘伝忍法』(ベルト音声)
USBメモリをベルトから抜き取ると、今度は“秘伝忍法”と書かれた巻物を挿入した。ベルトを閉じると、葛城の体から大量のチャクラが湧き上がってきた。チャクラは、両足の足甲に集まり包み込んだ。
「ハァァァァ!」(葛城)
「ヤバい、大技がくるでゼニ!」(レジキラー)
「発動させてたまるか〰」(デンチューヌ)
「見せ場だ。とう!」(葛城)
怪物達の方へ走りだすと、その勢いにのせて高く跳び上がった。
そして…。
「英雄忍法……ヘヴィードラグナー!いっけぇぇぇぇ!」(葛城)
体をドリルの様に回転させて、落下の勢いに乗せてながら両足を3体突っ込んだ。回転を増すごとに、足甲のチャクラはドンドン大きくなっていく。あまりの勢いに、3体は技を出す間もなく怯むしかなかった。
「「「ぐわぁぁぁぁぁ!Dr.春花様ぁぁぁぁ!!」」」(怪人達)
攻撃を受けた怪物達は、跡形も無く爆発し、粉々に吹き飛んだ。
葛城は、爆風を上手くかわしながら格好良く着地した。ベルトに挿さっていた巻物を外すと、葛城の服装は元へ戻る。
「ヨッシャ-!一丁あがり。さーて、倒したし早めの昼食に……ん?」(葛城)
神出鬼没な地獄の組織、ハルッカー。
そして、虫の知らせの間もなくヤツは訪れた。
「ハッ!」(葛城)
葛城は、謎の雰囲気に気づいた。
後ろを振り返ると、数百メートル離れた場所から全身を大きな布で羽織られた一人の人物の姿が目に映る。その人物は、男なのか女なのかわからない。
しかし、近づくたびに葛城に向けられるオーラの様なモノが段々と大きくなっている事は確かであった。葛城は、1分も考える事も無く、正体を確信した。
「これはこれは、早くもラスボス登場か……Dr.春花!!」(葛城)
葛城が名前を口にすると、その者は歩みをやめた。男か女か分からない人物は、本当にDr.春花なのか。二人は、それぞれ相手を見つめ合い様子を伺う。
すると、葛城は懐から何かを取り出そうとゴソゴソさせながら言った。
「この時を待っていたぜ。アンタには、アタイの“とっておき”でけりを付けてやる!」(葛城)
葛城は、先程の物と比べて大きめのUSBメモリを握っていた。そのUSBメモリには、達筆で“二郎”と書かれていた。
そして、そのままゆっくりと右手を上げ…。
「し~の~び~大・変身!!」(葛城)
勢いよく、ベルトにUSBメモリを挿し込んだ時であった。
バチッ!ビリビリビリビリ〰!!
「な…なんだ!?」(葛城)
ベルトから突然の電流。
それは、ベルトの故障にしては様子がおかしかった。放電された電気は、まるで生きているかの様に、どんどん葛城の身体を飲み込み、苦しめていた。
「うわぁぁぁぁ!」(葛城)
突如電流は、おさまりだした。
「痛ててて…ん?ここは、どこだ?」(葛城)
目を開けると、そこは先程いた街中ではない真っ暗で何も無い空間に、葛城は立っていた。
「アタイは、たしか街にいたはずじゃ」(葛城)
「お目覚めかしら」(Dr.春花?)
後方から、一人の女性の声がした。
そこにいたのは、Dr.春花だと思われる人物の姿であった。葛城との距離は、わずか十何センチであった。
「Dr.春花!!アタイが倒…」(葛城)
「あら、それでいいの?」(Dr.春花?)
Dr.春花は、後ろに向かって指を差すしていた。
すると、先程まで聞こえていなかった音が聞こえ始めた。その音は、炎が物を燃やす時の音のように聞こえる。
「これは…一体何がどうなっていやがるんだ」(葛城)
炎の海にて燃えさかる建物。それに対して、苦しみを訴える人々。後方は、世界平和とは真逆の地獄絵図が広がっていた。
そして、トドメを刺すかのようにDr.春花は言った。
「コレ…アナタがやったのよ」(Dr.春花?)
!!
心の中に放り込まれたモノは、ズッシリと重かった。震える体、顔から滲み出る汗。
「おい…どういう意味だ。おい、説明しやがれ!アタイがやったってどういう…」(葛城)
「もう一度言うわね。アナタがやったんだ!」(Dr.春花?)
すると、Dr.春花の声が女性声から男性へと切り替わりだした。
さらに、体を羽織っていた大きな布を一気に開き、正体を表した。
「お…お前は!」(葛城)
なんとその正体は、Dr.春花ではない筋肉質のザリガニ怪人であった。
「クックック、お前がヒーローになった理由なんて、所詮は自分の欲を叶えるためにすぎない」(ザリガニ怪人)
「ち、違う。アタイは…遊びでヒーローをやってる訳じゃない」(葛城)
「ホホー。それなら…」(ザリガニ怪人)
「ぐっ!何しやがる」(葛城)
「ヒーローなら…コイツらの思いも背負えるのかよ!」(ザリガニ怪人)
「うわぁぁぁぁ」(葛城)
ザリガニ怪人は、葛城を持ち上げると、力強く放り投げた。
「痛ってー、あのザリガニ野郎〰。ハッ!」(葛城)
「お姉ちゃん、どうして助けてくれなかったの」(女の子)
誰かが、葛城のススカートを引っ張っていた。5歳くらいの女の子だ。
その隣には、2人目の人影がいた。
「私達は、死にたくなかった。それなのに、アナタは…」(一般女性)
同じく葛城に訴えるもう1人は、目から血の涙を流し悲しみに飢えていた。
これは、幻しなのか現実なのか。人間を超越した力を持つ葛城でも訳がわからなかった。
「ち、違う!アタイは、みんなを助けようと…」(葛城)
「嘘だ嘘だ!」(一般男性1)
「力に溺れたヒーローオタクめ」(一般男性2)
「趣味感覚でヒーローやってるんじゃねーぞ!」(一般男性3)
次々と増える人影に飛び交う反論。葛城に対する訴えは、鳴り止まない。
「違う…違う…アタイは、みんなを…助けようとして…」(葛城)
「これでわかったか?オマエは、ヒーロー失格なんだよ!」(ザリガニ怪人)
「アタイは…アタイは…」(葛城)
言葉を探そうと、心の中を探りに探ろうとするも、精神状態は限界に達していた。あまりの絶望に、心の中はすっかり現実から逃げだそうとしているのが丸わかりであった。
そして…。
「いい加減…現実を認めやがれ〰」(ザリガニ怪人)
「うわぁぁぁぁ!!」(葛城)
葛城は、ザリガニ怪人のハサミにより切断された…。
そして、少女の目はやがて覚め始めたのであった。
「うわぁぁぁぁ!!」(葛城)
「葛城!?」(春花)
「うわぁぁぁぁ、あぁぁぁ〰」(葛城)
「落ち着いて葛城!正気をもって、葛城!!」(春花)
「ハァハァハァ……春…花?」(春花)
一体、何がどうなっているのだろうか。先程まで暗闇の中にいた葛城だが、いつの間にかベッドで横になっており、体には手当も施されていた。
さらに、目の前には焔紅蓮隊の春花がベッド前の丸椅子に座っている。
葛城は、顔から滲み出ていた汗を拭き、状況を整理する。
「ココは…半蔵学園の保健室?」(葛城)
「そうよ。あれから約3日も寝てたから心配したのよ」(春花)
「3日間…寝てた?今までのは全部夢だったのか?」(葛城)
そう、今まで葛城が見ていたのは、全て夢であった。人間を超越した力を手に入れていなければ、悪の組織ハルッカーも葛城の想像上にて造られたものであった。
それを知って葛城は、少し安心した。
だが、それと同時に自身の状況を振り返り始める。
「そうだ!!なぁ春花、あの後アタイの体に何が起こったんだ?ザリガニ野郎は倒したのか?教えてくれ、春花!!」(葛城)
「…」(春花)
春花は、真顔で黙り込む。
そして、覚悟を決めると椅子から立ち上がった。
「全てを話す前に葛城、アナタに言いたい事があるわ」(春花)
そう言うと春花は、急に指を鳴らした。
すると、目の前に春花の傀儡の一体が入ってきた。葛城が傀儡を見ると、あることに気づいた。
「それは!アタイの変身ベルト」(葛城)
「葛城。これは、アナタの為を思ってやることよ!」(春花)
春花は、再び指をならした。
すると。
ガシャァァァァン!!
「ハッ!」(葛城)
葛城は、目を疑った。
春花の傀儡の腕力により、変身ベルトはボロボロになるまで壊されてしまった。
そして、トドメを差すかの様に、春花の口から思わぬ一言が飛び出す。
「ヒーローを…辞めなさい!」(春花)
つづく!