インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~ 作:ロシアよ永遠に
白い閃光が、一人また一人とその身体を切り裂き、そして消える。
神速の太刀筋が、立ち塞がる敵の首を見るも無惨に跳ね、朦々と燃える人魂…リメンライトへと変えていく。
見る者は、その刃を見ることは無く、目にするのはその残光…軌跡のみ。
「ヒィッ!?」
誰かが悲鳴を溢す。
彼が抜き放った刀は、常に鞘に収まっている。
しかし、右手を動かした瞬間に、また一つリメンライトが増えた。
「速…すぎでしょ…!?」
さしもの抜群の反応速度と視力を持つユウキも、その光景には目を疑う物があった。
以前のデュエルとは比べものにならないほどの太刀筋、そして確実に一撃で仕留める正確さが目に焼き付いてならない。
「これが…イチカの本気なの…!?」
その姿はまさに修羅の如く。
あんな出鱈目な速さなんか、初見じゃ絶対に見切れない、見きれるはずも無い。もし、あの時使われていたら、リザインする事無くリメンライトに帰られていたのはユウキの方だっただろう。
占領していた部隊は瞬く間に消えていく。
後方に控えていたヒーラーも、流石に一撃でHPゲージを全損させられては回復の余地もない。
あっという間に戦線を押し上げられ、ヒーラー最後の一人もそのHPゲージを空っぽにさせられ、その姿をリメンライトへと変えていった。
「こ、これが『絶刀』の…強さ…」
「すごい…スゴいよイチカ!」
我が事のように喜び、イチカに飛び付くユウキ。しかし、彼の呼吸が深く、そして荒いことに気付いてしまう。
「イチカ…大丈夫?」
「あ、あぁ、問題ねぇよ。…本気の…反動って言うのかな、…少し、疲れた。」
「だ、大丈夫ですか?少し、休まれた方が…」
「いや…後ろの皆が気張ってくれてるんだ。立ち止まってらんねぇよ。」
恐らくは作り笑い、しかし彼は、汗を垂らしながらも抱き付いているユウキを背負ってボス部屋の扉を開いていく。
「さぁ…これがラストチャンスだ。」
目の前に聳え立つは巨人。双頭を持ち、二対の腕と、巨大な鎖を取り付けた大槌を手に持つ。
七人を見下ろしながら、奴は大きな息を吐き出す。
「俺達が戦ってる間に…さっきの奴等は隊列を整えてくる。…だからさ。」
後ろに続く、スリーピングナイツに振り返り、イチカは整息しながらも、宣う。
「次にアイツらが扉を開けたとき…勝利のVサインでも見せ付けてやろうぜ!」
27層ボス戦が開始され、早くも40分が経過した。
一戦目と比べて、かなりの効率の良いダメージを与えることが出来ていた。
パターンをある程度把握した上での攻撃により、体力の消費も抑えて戦うことが出来ている。
しかし、そうは問屋が卸さない。
ダメージを先の戦闘と同じくらい与えたと感じた頃。
敵がパターンを変えてきた。
先程までは、ハンマーとチェーンによる攻撃の後、硬直が生じたので、そこを攻めに入っていたのだが、その硬直をカバーするかのように、4本の腕で身体を覆うようにガード体勢に入り、ダメージが中々通らなくなっていた。
(くそっ…あの体勢になられたら…!)
思わず顔をしかめて、忌々しげに双頭のボスを睨む。
長引いているのもあってか、徐々にスリーピングナイツの集中力も低下しているらしく、ダメージを負いやすくなっているように感じる。
このままでは押し切られてしまう可能性も出て来た。
何か…何か打開できる手はないか…!?
しかしボスは、考える暇など与える気は毛頭無い。
再びチェーンを振り回す範囲攻撃を仕掛けてくる。
「皆!防御っ!!」
ジャラジャラと、地を這うように迫る大きな鎖を、皆が自分の得物で防いでいく中、真正面から受け止めてしまったタルケンの体勢が崩れる。
「ぐっ…!」
しばらくは何とか絶えては居たが、積もった疲労によって槍は弾き飛ばされ、タルケンも吹き飛ばされる。
「タルケン!」
「シウネー!彼を頼む!テッチ!」
「了解っ!」
タンク故に未だ体力に余裕がある彼は、大型シールドで皆の壁としてチェーンを受け止める。
そんな中で…吹き飛ばされたタルケンの槍が、ボスの『とある部位』にヒットしたときだ。
『グォオォォォッ!?』
一際大きな悲鳴にも似た雄叫びを上げた巨人は、少しばかり蹌踉けてガードを崩した。何事かと思って見ていると、数秒後には例のガード体勢へと移行する。
ここでイチカは…一つの疑念を持つに至った。
(もしかしたら…)
敵のガードが解除されると共に、腰のベルトに刺してある投擲用の針…ピックを抜き取り、気になる部位目掛けて投げつけた。元々牽制用にある程度熟練度は上げているので、寸分狂い無くピックは『その部位』に突き刺さる。
再び響く雄叫び。
そして数秒の隙の後、身を固める。
「どう…なってんの?」
「…弱点だ…。首と首の付け根に宝石みたいな物が埋め込まれている!そこに攻撃が当たったから、特殊なダメージモーションが入ったんだ!」
「で、でも…あんな高いとこ…AGIを全開にしても届かないよ?」
「いや……おあつらえ向きに、最高の足場がいるじゃないか!」
そう言って、未だタンクとして壁を担ってくれるノームの彼を見やる。視線に気付いたのか、『じ、自分?』みたいな感じで首を傾げている。
だが、あそこを狙う以外に素早い決着は見込めない。いつ戦線が崩壊するやも知れないのだ。四の五の言っては居られない。
「テッチ!チェーンの攻撃を防いだら屈んで!イチカとボクが攻める!」
「り、了解っ!」
ボスが長い鎖を振り回し、それを見事にテッチが防いだ。
瞬間、彼の方を足場に、二つの影が上空に躍り出た。
太陽、及び月の光を浴びることの出来ないダンジョンでは、翅を使っての飛行は不可能。しかし、とある方法を使えば『滑空』にも似た挙動を取ることが出来る。
「こじ開ける!」
イチカが鞘に収めた雪華を抜刀し、飛び上がる勢いと共にソードスキルを発動する。
旧SAOにおける、居合ソードスキル『断』
下方から抜刀の勢い共に切り上げ、敵を空中に打ち上げるソードスキルだ。彼自身も空中に飛び上がるので、そのまま追撃することが可能なものだ。しかし現ALOにおいて、エクストラスキルあっても、ユニークスキルは実装されていない。もちろん、キリトの二刀流も例外ではないので、
そして、OSSを組み上げる上で、断の再現をする時に、打ち上げ追撃のモーションもイチカは組み込んでいた。そしてそれを登録して、今この空中で使用した。空中でもどこでもだが、OSSに組み込んだ挙動は飛び上がりもスキルの一部として登録されている。つまり…
「ぜゃあぁぁあっ!!」
胸の宝石目掛けて断を放ったイチカは、その打ち上げのブーストの恩恵を得て、更に上空に飛び上がる。
切り上げだけで終わらせる必要は無い。まだイチカの攻撃フェイズは終了していない。おあつらえ向きに、ボスは弱点を攻撃されて、無防備にも胸をさらけ出していた。
「おぉぉぉぉぉ!!」
飛び上がったそのままの勢いで、右脚に体術ソードスキルのエフェクトを纏わせ、身体の捻りを利用して蹴り付ける。
続けざまに、システムアシストによって身体を捻り、左脚で追い打ちを掛けた。
体術ソードスキルである『連脚』
足による二発ヒットのスキルだ。
「これでぇぇぇぇ!!」
そして…終わりと言わんばかりに納刀した雪華を抜き取り、宝石へ縦一閃を穿つ。
しかし…これだけの連撃を与えても、まだなお敵は四散しない。
だが、こちらにはまだもう一人居る。
「行っけぇぇぇええユウキィィィィ!!!」
イチカの肩を踏み、ユウキは更に高く跳躍する。そして…目の前には…狙うべき宝石が、ギラリと光を放つ。
「任せて、『姉ちゃん』!!!」
(姉ちゃん…?)
「ハァァァァァァァ!!!」
これがラストチャンスだ。
ユウキは激昂の叫びと共に、マクアフィテルにソードスキルのエフェクトを纏わせてラッシュを掛けた。
突いて
突いて
突いて
突きまくる!!
マザーズ・ロザリオの11連撃が、宝石を寸分狂いなく突き刺し、穿つ。
「てやぁぁぁ!!!!」
これでトドメ!と言わんばかりの叫びと共に、マザーズ・ロザリオ最後の一突きを、渾身の力を以て突き刺した。
そしてそれは…宝石をガラスのように砕き、
それと同時に、ボスの身体を霧散させた。
『Congratulation!!』
デカデカと、一騎当千の7人を称えるその文字が、ボス部屋のど真ん中を支配した。
円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。
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にいに。
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お兄ちゃん。
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兄さん。
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兄貴。
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一夏。