インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~   作:ロシアよ永遠に

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い、いかがわしいことはないですよ?


第15話『夜の街へ繰り出そう』

「ん~……」

 

もぞもぞと動きながら、ユウキは日付が変わった真夜中に目を覚ました。

未だ覚醒しきらない脳と共に、身体を起こそうとするが、身体が固定されたように動けない。

 

(あれ……動けない…?)

 

麻痺のバッドステータスでもないし、そもそもここは圏内だ。変なものを食べない限りはそんなことにはならないはず…。

首は何とか動かせるので、周囲を見渡してみた。

…机は食べ終わった皿が放置され、地面には樽ジョッキが無造作に転がり、各席にはスリーピングナイツの面々が大きなイビキをかいて寝ている。

 

(ここは…ダイシーカフェ?ボク、打ち上げの途中で寝ちゃったの、かな?)

 

よくよく思い出してみれば、酔っ払って…イチカに改めてお礼を言って…抱き着いて……そのまま…

 

(じゃあ……ボクが寝ているここって…)

 

恐る恐る見上げてみれば…スヤスヤと寝息を立てて眠る、自身と同族の少年。整った顔立ちで、眠っている姿も様になっている彼は、ユウキの背中と腰に手を回して、まるで抱き枕のようにして椅子の上で寝ているのだ。

そしてユウキには、そんな彼に抱き締められているのがシステム的にハラスメントに抵触するのか、

ハラスメントコードを発令しますか?

というシステムウインドウが表示されていた。

…確かに、見ず知らずの相手なら未だしも、知らない仲ではないので、ハラスメントコードに関しては発令しないように、『NO』のボタンまで何とか手を伸ばしてタップしておく。

ふぅ…と一息つくと、改めてその抱かれ心地を味わってみる。

抱き締められている、と言っても、そこまでキツいものでもなく、優しく抱かれているので不快感はなく、寧ろ安らぎすら感じられる程に、温かで居心地の良いものだ。

成る程確かに、こんな抱かれ方をすれば安眠してしまうのも納得出来てしまうし、気を抜けばまた眠ってしまいそうになる。

 

(もう少し…寝ちゃおうかな…。)

 

ゆっくりと彼の膝の上で体勢を整え、イチカの胸板に耳を当てるようにして再び目を閉じた。

トクン…トクン…

アバターであるはずの彼の心臓の鼓動。

そして彼の温かな体温が、ユウキをゆっくりと眠りへと誘っていく。

…こんな温もりを…忘れかけていた。

最後の家族が居なくなった…あの時から…。

抱き締められて…安心できるこの居心地の良さが嬉しくて…また同時に失うのが怖くもあった。

 

「ユウキ…?」

 

「ふぇ…っ…イ、イチカ…?」

 

寝ていたはずの彼が、突如として目が覚めたのか呼びかけてきた。その目は何処かしら不安を感じているようなものになっている。

 

「わ、悪ぃ、起こしたか?…でもなんかユウキが目を閉じて泣いてるから…気になって…。」

 

「ボクが…泣いてる…?」

 

そっと、目元に指を這わせれば、そこにはしっかりと涙が浮かんでいた。

どうしてだろう…、安心できたはずなのに、どうして泣いてしまうんだろう…?

 

「…悪い…怖い夢でも見てたのか?」

 

「う、うぅん、違うよ。…寧ろ…安心してた…けど…。」

 

「けど…?」

 

「うぅん、何でも無いっ!…ところでイチカ…いつまでボクを抱き枕にしてるのさ?」

 

「うぇっ!?こ、これはお前が酔っ払って抱き着いて寝たから、し、仕方なくだな…!」

 

上手くはぐらかされた感が拭いきれないイチカだったが、目覚めて未だに抱いていたことを指摘されてようやくユウキを解放した。

 

「ありゃ~…もう一時だよ~。変な時間に目が覚めちゃったな~。」

 

「ん~、もうそんな時間か。明日が土曜だから良いけど、平日だったらエラいことになってたな。」

 

「あ…そっか…イチカ、学校終わってから、ずっとボク達に付き合ってくれてたんだもんね…。…生活リズム崩しちゃってるなぁ…」

 

自分達のせいで、不規則な生活へと変わって行ってるかも知れないイチカを心配するが、その張本人は特に気にするものでもないようだった。

 

「いや、ユウキが気に病む必要は無いさ。俺だって嫌ならここまでしないからな。好きでやってるんだ。だから、生活リズムが崩れたとしたら、他の誰でもない、俺の自己管理不足。お前が責任を感じる必要はねぇよ。」

 

「そ、そう言うものかなぁ…?」

 

「そう言う物だ。…さて、変に目が冴えたな…。少しばかり夜風に当たってくるよ。」

 

外に出ると言うことなので、一応念のために戦闘用の装備を纏い、雪華を帯刀してカフェを後にする。

外に出てみれば、冬が近付いてきているのもあってか、肌を刺すような風が吹き抜けていく。

 

「さ、寒いね~…。」

 

そして何故か着いてきて震えているユウキ。

 

「寒いなら、中で寝てたら良いのに?」

 

「べ、別に良いでしょ?ボクはイチカについていきたいだけなんだから…。」

 

寒いのはまぁ…ユウキの装備はノースリーブだし、脚の露出も高いし、仕方ないところもあるのだが。

が、寒さに震えながらもついてこようとするユウキを見かねて、イチカはストレージから紺のコートを取り出してユウキに羽織らせる。イチカのサイズに合わせてあるため、頭一個分以上小さなユウキには大きな物だったが、それでも全身を温めるのには充分すぎるほどだ。

 

「仮想世界だから風邪は引かねぇから問題ないけど…隣でずっとガタガタされるのもナンだからな。貸してやるよ。」

 

「あ、ありがと……えへへ、暖かいなぁ…」

 

「そんなに大層なモンでもないけどな。…で、俺はこのまま街をブラブラするけど、ユウキはどうする?」

 

「一緒に行くっ。」

 

「だろうな。…んじゃ、行くとするか。」

 

「お~っ!」

 

まるで冒険か何かに出掛けるのかと思わせるほどに、ユウキのやる気は満ちあふれていた。

幸いにしてこのALOは他のMMOと同じように、NPC運営の店ならば24時間営業。こちらが寝ても覚めても、しっかりと接客して買い物や食事をさせてくれる。

つまり、本当にここに『眠らない街』が存在している事になる。

 

…も、もちろん、いかがわしい、所謂お子様お断りな店はない。…多分。

 

「えへへ~、真夜中の街に繰り出すって、何だか悪い事しているみたいで、ちょっとワクワクだね。」

 

「だな。…まぁ言っても、現実と違ってゲーセンもないし、出来るのは食べ歩きくらいだけど。」

 

「食べ歩き!そう言うのもあるのか!」

 

「ユウキ、何かキャラ違わないか?」

 

食べ歩きと聞いて、目の色を変えて食い付いてきた。あれだけ飲み食いして爆睡して、それで目覚めて直ぐにそこまで食欲が湧く物なのか?いくら仮想世界だからって…

 

「ほらイチカ!食べ歩きだよ食べ歩き!」

 

「夜食って、あんまり身体に良くないんだぞ?若い内から変な食生活してると、苦労するのは自分なんだからな。」

 

「うわ~…、イチカ、ジジ臭いんだけど…。」

 

「…良く言われる。」

 

おかしい。

自分は単に将来の健康を心配しているだけなのに、どうしてこうも呆れられるのか?

鈴と言いユウキと言い…

 

「でもさ、ここは仮想世界だよ?ここで食べても、食べてお腹が膨れた気になるだけで、現実世界に影響無いんだよ?」

 

「そりゃまぁ…そうだけど。」

 

「だったらさ、とことん楽しまなきゃ損だよ。ね?」

 

ここで、イチカの脳内に、背に羽を生やした二人の人物が降臨する。片や白鳥のような真っ白の羽を、片やコウモリ…自身の翅にも似た形の翼を持つ。

天使と悪魔だ。

 

天使『ユウキと共に行っちゃいなYO☆』

 

悪魔『いやいや、ダメダメ。食生活の乱れは健康の乱れ、健康の乱れは人生の乱れ。ここは心の刃を鬼にして……』

 

天使『あれ?俺達、発言内容が逆じゃないKA?』

 

悪魔『そうだね(便乗)』

 

…頼りになりそうにない天使と悪魔だが、発言の根っこはともかく、そんな二つの葛藤がイチカの中で鬩ぎ合っているのは事実だった。

 

「イチカ…」

 

「な、なんだ?」

 

「ダメ…かな?」

 

上目遣い+涙目+猫撫で声+少々顔赤らめ=核弾頭並の威力

 

もちろん、そんな超兵器にイチカが耐えれるほどの鋼の精神を持ち合わせているはずもなく…

 

「わ、わかったよ。今日だけ…だからな。」

 

「わぁい!ありがとイチカ!」

 

先程と打って変わり、喜色満面で腕に抱き着いてきた。

まぁ…満更でもないような顔でユウキと共に夜の街へ繰り出すイチカを見て、天使と悪魔は口を揃えてこう言った。

 

『『チョロいなぁ…』』

円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。

  • にいに。
  • お兄ちゃん。
  • 兄さん。
  • 兄貴。
  • 一夏。
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