インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~ 作:ロシアよ永遠に
夜にラインのメインストリートを歩く。
ただそれだけでユウキにとってはワクワクが止まらなかった。
夜の薄暗さが掻き消そうなほどに煌びやかな電飾が街を照らし、客を寄せようと店番NPCがその声を張り上げる。…まるで縁日か何かを思わせるほどに。
現実世界なら騒音問題が起こりそうな物だが、宿屋の自室はシステム的に外部からシャットアウトされているし、最悪ログアウトすれば問題ない。
真夜中の、そして寝起きのテンションと言うのは中々スゴいもので、目移りするような店を、元気にいっぱいで駆け回るユウキは、イチカを疲れさせるには充分な物だった。
「ねぇねぇイチカ!今度はアレを食べよう!」
「お、おう。」
いつの間にか繋いだイチカの手を引いて、道行く所にある美味しそうな屋台を見つけては、それを購入して頬張り、満面の笑みを見せてくれる。
しかし何故かトルコのケバブ風の料理が並ぶ店でそれを購入した際に、ソースについて二人は揉めに揉め、『よろしい、ならば
曰く
『チリソースチリソース~♪』
『ケバブにチリソースなんて、何を言ってるんだユウキ。このヨーグルトソースをかけるのが常識だろ?』
『ゑ?』
『いや、常識と言うよりも…もっとこう……そう!ヨーグルトソースをかけないなんて、この料理に対する冒涜だ。』
『そ、そこまで言うかな!?ぼ、ボクがチリソースをかけてもイチカにあれこれ言われる筋合いはないよ!』
(ぶにゅ~)←ユウキのケバブにチリソース
『あぁ……なんという……!』
『ん~おいし~♪ほらイチカも!ケバブにチリソースは当たり前なんだよ。』
『ぬぁっ!?やめろ!俺まで邪道に落とす気か!?』
…結局、互いのソースをかけた物を食べ比べ、吟味して、どっちも旨ぇじゃん!的な結論に至って、二人の仲は保たれた。
しかしあれから各店舗を回っては見たが、疲れはあっても、ユウキのその笑みを見ていれば自然と疲れは忘れることが出来た。
一応、
「ユウキ…ユルドの方は大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫っ、ボク普段からあんまり使わないからね。逆に有り余ってるくらいさ。」
「なら良いけどさ。」
「あははっ、イチカって心配症だねぇ~……ぁ…。」
ふと、とある店の前でユウキは足を止めた。手を繋いでいたからか、イチカも釣られて足を止める。そして手を離したかと思えば、ショーウィンドウの奥にあるものをジッと見つめ始めた。
「どうかしたのか?また食べ物か………ん?」
破壊不可のオブジェクトであるガラス張りの向こうには、銀の光沢が眩しいシルバーアクセサリーが、煌びやかな輝きを放って展示されていた。
看板を見れば、どうやらプレイヤー経営の材料持ち込みアクセサリーショップらしい。店舗説明を見れば、宝石や鉱石などの加工アイテムを持ち込むことで、加工費のみを払うだけで、オリジナルのアクセサリーを作成してくれるらしい。装備効果は千差万別だが、世界に一つだけのプレゼントを作ることが出来るという。しかも、ザ・シードで構成された仮想世界でなら、コンバートの際に持ち込めるという特典付き。その際は装備効果は無くなるが、装飾用装備としての価値はあるらしい。
そんな店先の展示品を、いや…そこに飾られている銀装飾の十字架をジッと見つめるユウキ。
「…もしかして、こう言うのが欲しいのか?」
「ふぇっ!?ち、違うよ。なんか…綺麗だなぁ…って思って。」
「…まぁ確かに、現実世界で言えばオーダーメイドの店だからな。」
「そう…だね。」
未だ視線を逸らすことなく中を見るユウキを見ていて、どうにもこうにも居たたまれなくなってきたイチカ。そして…
「…よし、ユウキ、中に入るぞ。」
彼は意を決し、ユウキの手を取って店へと引っ張っていく。突然のことにユウキは目を見開いて、慌てふため始めた。
「イ、イチカ!?な、中に入って…何するのさ!?」
「ナニって……もちろんナニに決まってるだろ?」
「それ、誤解を招きかねないんだけど!?」
「とりあえず行くぞ。」
ユウキはずるずると引っ張られていき、木製の扉を開いたイチカと共に店内へと連行された。
中に入ってみれば、見事なまでの木造の内装が目に飛び込んでくる。温かな色味の木々は、二人の目を奪うには充分すぎるほどに美麗な物で、店の雰囲気を一段と盛り立てているように感じる。
「へぇ…スゴいもんだな…。」
「ほぇぇ……こんな店もあるんだね。」
「こんな真夜中に客とは珍しいな。」
見惚れながらも店内を見て回る二人に、一人の少女の声が掛かる。
店の奥から出て来た、長く黒いローブを身に纏った彼女の妖しさ満点の風貌に、2人は思わずゴクリと喉を鳴らす。
「何をそんなに怖がっている?…別に取って食ったりはしない。」
「そ、そうか。そりゃそうだよな。」
「…で?アクセサリーのオーダーメイドに来たのか?」
「お、おう。」
「ちょっ…ボク、欲しいなんて一言も言ってないよ!?」
「いや、眼がそう言ってたから。」
「そ、そんな目をしてたかなぁ…。」
「してたしてた。」
「……ゴホン!!」
店一杯に響く咳払いと共に、
「客として来てくれるのは良いが、恋人さんとイチャついたり痴話喧嘩するなら出て行って貰いたいのだが?」
目の前の若干桃色と化しつつある空間にゲンナリし、ローブの少女は溜息と共に2人を睨む。
「こ、こここ恋人ぉ!?ぼ、ボクとイチカは恋人じゃないよ!?」
「そうだぞ、俺とユウキは友達だぞ。そんな関係じゃない。」
「………。」
「な、なんか射殺せそうな目で睨むのは止めてくれませんかねユウキさん。」
「…べっつにぃ~…睨んでないしぃ~…」
「何にも用がないなら本気で追い出すぞお前ら。」
若干キレ始めたのか、少しずつ口調が荒くなってきた。店側にとっては、イチャつかれた上に冷やかしなど、迷惑千万だ。
「と、とりあえず、素材はあるから、オーダーメイドを頼めるか?」
「はじめからそうしておけば良いんだ…全く。…それで?何を使って作れば良い?」
「ぼ、ボクやっぱり…」
「今更だぞユウキ。まぁ出来上がったものが気に入ったら貰ってくれれば良いさ。」
「ほう?私の作る物が気に入らないかも知れないと、そう言うのだな?」
「ち、違うって!ほ、ほらユウキも!素材は気にしなくて良いから!な、何だったら、27層ボス討伐記念のプレゼントで…!」
「むぅ……そう、だなぁ…じゃあ御言葉に甘えて……。」
ようやく折れたのか、ユウキは受け取る旨を示した。こう言ったプレゼントに慣れていないのだろうか。
そしてイチカはというと、ローブの少女にデザインなどをこっそり伝え、ユウキに聞こえないようにしている。どうやらサプライズを企画しているらしい。隠密スキルで声漏れがないようにする徹底ぶりだ。
そしてストレージから、数個の素材アイテムをローブの少女に渡すと、彼女はそれを確認、店の奥にある工房と思しきスペースへと引っ込んでいった。
やはり鍛冶屋と同じようにして精錬するのか、暫くすると、カン!カン!とハンマーで叩く音が聞こえ始める。
何が出来上がるんだろう。
何を作ってくれているんだろう。
ここ最近はプレゼントと言う物を余り受け取ったことがない、ましてや目の前でオーダーメイドして貰えるものとあって、ユウキには期待と不安で胸が張り裂けそうだった。
思わず、ずっと握りっぱなしだったイチカの手を握ってしまう。一世一代、と言うほど大掛かりな物ではないにせよ、イチカがプレゼントしてくれるとあって、ユウキは内心穏やかではない。そんな彼女の心境を察してか否か、イチカもユウキの手を優しく握り返してくる。驚きはしたものの、手の平から伝わる優しい人肌の温もりが、胸の鼓動と気持ちを、ゆっくり落ち着かせてくれた。
ややあって
「待たせたな。」
奥から出て来たローブの少女は、出来がった代物を黒い柔らかな布で包み込んでテーブルへ。
ゴクリと、固唾を吞んでそれをのぞき込む二人に、ローブの少女はニヤリと笑みを浮かべて言う。
「ふふん…会心の出来と言うものだな。」
開かれた布、その中からは見事な銀細工のアクセサリーが姿を現した。
銀の
聖母マリアを模した彫刻が見事な逸品。
ユウキのイメージに合わせてなのか聖母の胸元にはアクセントで、アメジストの宝石が埋め込まれている。
「こ、これは……想像以上、だな。」
「うん…ボクもここまでの物は…見たこと無いかも…」
「どうだ?気に入ったか?…こう見えても家事スキルと装飾スキル、細工スキルはカンストしているんだ。私に扱えない素材はない!」
エヘンと、ローブの上から見ても乏しげな胸を張る少女はどことなく微笑ましくみえたのか、ユウキは思わず抱き着いた。
「ありがとう!ボク、こんなに綺麗な物作って貰ったの、初めてなんだ!だから凄く嬉しいよ!」
「うぁっ!?だ、抱き着くな!しょ、商売人として当然の仕事をしただけだ!べ、別に他意は無いぞ!」
「それでも、お礼は言いたいんだ!だから、ありがとう!」
「フ、フン!」
照れくさいのか、そっぽ向いてしまぅたローブの少女は、メニューを開いてイチカに代金を請求する。
価格としては30000ユルド。材料持ち込みとはいえオーダーメイドなら、これぐらいの価格なら安い方だ。
特に苦言を言うわけでもなく、納得の価格なので、イチカは請求価格に加え10000を上乗せして、ローブの少女に支払う。
「お金で買えないユウキの笑顔、プライスレス。」
ドヤ顔でそんなことを言うイチカが無性に腹が立ち、ローブの少女は顔面に思いっきりストレートをぶち込んでおいた。
ペンダントトップとして造られたロザリオを早速装備したところ、外見変更に加えて、AGIの補正上昇大と、STRの補正上昇小が付くという、ユウキのビルドにとってはありがたいものだった。ここまで来ると、本当にユウキの為のオーダーメイドと思えてくるほどに。
ステータス補正を無しにしても、その見た目はユウキの装備にマッチしていたので、イチカが少し見惚れる程になっていた。
「あ、そうだ!ねぇ、またここに来てもいい?」
店を去り際に、ユウキがローブの少女に問いかける。
「それは構わんが…私は仕事柄、そこまで頻繁にインしないぞ?それに、決まった時間でもないからな…不定期になるが…。」
「じゃあさ、フレンド登録しておこうよ!それならいつインしたのかわかるでしょ?」
「そ、それはそうだが…。」
「じゃあ決まり!少し待っててね~…。」
自分の端末を操作して、フレンド申請を送る準備をしているのだろう。喜々として指を動かすユウキをみて、ローブの少女はイチカにそっと尋ねる。
「…何時もあんな感じなのか?」
「まぁな、押しが強いから驚くだろう?」
「強いも何も…グイグイ来る感じだな。」
そして申請が送られて来た画面を見て、ローブの少女は少々戸惑った。余りインしないプレイスタイル上、フレンドと言う物を作ったことのない彼女にとって、これは受けるべきなのか迷いが生じる。
しかし半透明のディスプレイの向こうでニコニコしているユウキをみて、腹をくくった。
(えぇい、ままよ!)
申請承諾の○を押して、ユウキとローブの少女は晴れてフレンドとなったのである。
「やったぁ!よろしくね!えぇっと…」
「マドカ…だ。よろしく頼むぞユウキ。」
「うん!よろしくね、マドカ!」
何の気無しにフレンドとなった二人…。
しかし今はまだ知らなかった。
この出会いが…二人の辿るべき運命を、大きく突き動かすことに。
円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。
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にいに。
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お兄ちゃん。
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兄さん。
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兄貴。
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一夏。