インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~   作:ロシアよ永遠に

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前書きという名の番外編

例えばこんな君描

『進撃のアスナ』

第27層のボスに挑もうとするスリーピングナイツとイチカ。しかしそんな彼等を妨害すべく立ち塞がる攻略ギルド。彼我の数、その差は歴然で、文字通り数によって飲み込まんとする!
しかし、それに待ったを掛ける声があった!

「止めろぉぉぉぉ!!!」

迷宮区の通路の奥から響く少年の声。黒い髪に黒い服。傍らには白いナビゲーションピクシー。攻略ギルドでも有名なプレイヤー。

「キリトだ!」

「へっ!馬鹿め!返り討ちにしてやるぜ!」

幾ら手練のキリトが増えたところで、所詮はたった1人。それくらいなら問題ない。そう高を括った攻略ギルド。しかし。

「ん?」

目の良いケットシープレイヤーが、キリトの背後で動く影を見かけ目を凝らす。
そこにいたのは青の髪。
そして白の装束。
その手には細剣!

「げぇっ!?アスナだ!!」

「バーサークヒーラーだ!!」

「ヤベぇよヤベぇよ!!」

「てててて転移!!イグドラシルシティ!!」

そりゃもう蜘蛛の子を散らすように逃げ回った攻略ギルド。

「へ、へへっ!見ろよ!アイツら俺を見て逃げていったぜ!」

「い、いや、どっちかって言うと、キリトよりも先生を見て逃げてったような…」

「イチカ君、それ、どう言う意味?」

「ヒィッ!?」

結果、イチカとスリーピングナイツは無事にボスに挑めましたとさ。
めでたしめでたし!


第21話『後悔と懺悔』

倉橋医師に連れられて、病院の奥へ奥へと進み行く織斑兄妹。

その過程ですこしずつ、すこしずつ木綿季の過去について話し始める。

出生時にウイルス汚染血液によって感染したこと。

それは家族全員に蔓延したこと。

そこまで話したときに先導して歩いていた倉橋医師は、とある部屋の前でその足を止める。

 

『第一特殊機器計測室』

 

厳重なセキュリティ管理をされているらしく、倉橋医師は首掛けの認証カードを入口にあるパネルに翳すと、プシュゥという減圧音と共にその扉は開け放たれた。

入って直ぐに、さして廊下と変わらない通路。

しかし壁の片面はガラス張りになっていた。

 

「ここに…木綿季が?」

 

「えぇ。」

 

淡々と答える倉持医師は変わらず、二人の前を先導して開け放たれた扉を潜る。

物々しい部屋の名前に、メディキュボイド…そして終末期医療(ターミナルケア)

その単語の羅列が、医療にそこまで詳しくない一夏でさえ、嫌な予感という物をひしひしと感じていた。

 

「ガラスの先は無菌室になっていますので、入ることは出来ません。御了承下さい。」

 

一面に張られたガラス。その向こうを哀しげに見遣りながら、倉持医師は言う。

次いで、ガラスの向こう側に視線を向けた一夏とマドカは、その光景を見て言葉を失った。

 

 

 

か細い腕には幾つもの点滴の管が繫がれている痩せこけた少女。

そしてその頭の上半分は、壁や天井から伸びるコードに繋がれた巨大な機器が装着されている。

あの形状は…まさしく巨大なナーヴギアそのもののだようだった。

 

メディキュボイド

 

一夏が1年前まで繋がれていた…現国レベルで開発が急がれている、世界初の医療用フルダイブ機器。

 

「ユウキ…なのか…?」

 

ボソリと、消え入りそうな声で呟いたマドカ。

そしてユウキの姿に…一夏は1年前の自分の姿を重ねてみていた。

 

「…先生、ユウキの病状は…」

 

「……後天性免疫不全症候群…AIDSです。」

 

そこから、倉持医師は木綿季が話しても良いと言った内容を、ゆっくりと…話し始めた。

木綿季の過去

そして病状…

 

一つ一つ聞かされる度に、彼女の生きてきた過酷な生に、一夏は…マドカは、唯々黙って聞いていることしか出来なかった。

生まれ落ちてすぐに多剤併用療法での治療から始まり、学校や近所からのイジメ…

そして…家族との死別

天涯孤独となった彼女がどうすればあそこまで明るく振る舞う事が出来るのだろう…。

 

「そして…被験者となって以来、木綿季君はずっとこの中で暮らしているんです。」

 

「ずっと…というのは?」

 

「そのままの意味ですよ。現実世界に戻ってくることは殆どありません。今は苦痛の緩和の為に体感覚キャンセル機能を使用していますから。…なのでずっと仮想世界を旅しているのですよ。私との面談も、こちらがアミュスフィアを使用して、向こうで行っています。」

 

「つまり……24時間、ダイブしたまま、と言うことですか?」

 

「…4年間です。」

 

4年

その言葉は一夏と、マドカの耳に重く響き渡った。

 

そうか、これであの時…彼女に抱いた違和感がわかった。

 

あまりにも滑らかで違和感ない仮想世界での動き、それは長い長いフルダイブによるものだった。

3年前からの2年間、一夏も似たような経験をしていたが、彼女はその倍、仮想世界で生きてきたのだ。

つまり…彼女は世界で最も純粋な…仮想世界の旅人…住人。

そこにユウキの強さの根源があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…先生。」

 

「何ですか一夏君。」

 

「ここには…俺が使用していたメディキュボイド…ありましたよね?」

 

「えぇ…今はまだ使用されている患者さんはおられませんが…。」

 

ここに来て…一夏は一つの疑問符に解を導こうと考えた。

4年のフルダイブ

メディキュボイド

そして横浜港北総合病院

 

それらの言葉から一夏の中で思うことがあった。

 

「メディキュボイドのその内部には、ALOなどのゲームの他に、患者が入れるマイスペース、そんな物があるのではないですか?」

 

「え、えぇ。確かにあります。…しかし、どうしてそれを?君は…メディキュボイドに接続されて意識が戻らない内に…SAOに囚われた。…帰還後はすぐにメディキュボイドを外したので、それを知ることは…」

 

「いえ、SAOに囚われる前…ほんの、ほんの少しだけ、意識が戻ったことがあったんです、メディキュボイドの中で。」

 

「それは…初耳です。」

 

「意識がメディキュボイドの中で目覚めたとき、真っ暗な空間にいました。夢なのかと思っていましたが、立っているという実感もあるし、歩いたら歩いている感覚もある。当てもなく歩いた…そんな中で、一人の女の子と出会いました。」

 

「まさか…その女の子と言うのは…。」

 

「えぇ、…これは憶測ではありますが、あの子は…木綿季だったのだと、俺は思います。…その時に彼女は泣いていました。…そして、口にしていたのが、姉ちゃん、と言う言葉。この言葉は、ALOでも2回ほど口にしていました。それを指摘したとき、ユウキはまた涙を流していた。…つまり、木綿季には姉が居た…のでは?そして彼女は…もう。」

 

「えぇ、一夏君、貴方の言うとおりですよ。」

 

倉持医師は一夏から視線を外し、メディキュボイドを…いや、まるでその奥にある何かを懐かしむように、そして哀しげに見ながら口を開いた。

 

「木綿季君は双子でした。…お姉さんの名前は藍子さん。この病院に入院していました。…どちらかと言えば、元気一杯の木綿季君と違って、大人しい、そして優しく妹を見守るお姉さんでした。…そんな彼女も…3年前に…。」

 

…そうか。

それでなのか。

倉持医師の言葉に、一夏は得心が行った。

あの3年前の邂逅で、あれ程までに取り乱し、怒りをぶつけてきた木綿季は、姉を失い、やり場のない悲しみが怒りに変わったのだろう。

結果として姉が使用していたメディキュボイドを、彼女が亡くなったのをこれ幸いと言わんばかりに自分が使ってしまって、剰えのうのうと彼女の領域に踏み込んでしまったのだ。その心象たるや、どれほどの物だっただろうか。

 

「ごめん、な……ユウキ。」

 

「一夏…?」

 

「あの時……俺は…俺は……能天気に…ユウキに話しかけてしまった……!お前を……怒らせてしまった……!姉ちゃんを失って……辛い思いをしていたのに…俺はッ…!何も知らなくって……ゴメン……!!ゴメンな…ユウキ…!!」

 

無菌室とを隔てるガラスに拳と額を押し付けて…ただひたすら謝罪する。

忘れかけていた過去。それは思いも掛けぬ内に、木綿季という少女を傷つけて、そして悲しませていたのだ。

家族皆が居なくなってしまった矢先のことだ。

真実を知った彼女とは…もう…話すことが出来ないかも知れない。

 

深く彼女を悲しませてしまった自身の不甲斐なさ

そしてもうユウキと会えないだろうという悲しさが、一夏の目尻から涙となって溢れ、廊下の床をぽたぽたと塗らしていく。

そんな彼の背をマドカは、柄にもなく優しく撫でることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

静かに、静かに啜り泣く声が木霊する。

大人になりかけている少年の、1人の少女にただただ捧ぐ涙は、どれくらいの時間流していただろう?

数分か?それとももっとだろうか?

どちらにせよ落ち着いた一夏は、流れきらなかった涙を服の袖で拭い顔を上げた。

 

「ごめん、もう、大丈夫だ。」

 

「…そうか。なら、いい。」

 

「ありがとなマドカ。さすってくれて。」

 

「……フンッ!!」

 

どうやら照れているのか、背を向けてしまった仮初めの妹に、一夏は苦笑を隠せないでいる。倉持医師も、泣き出した一夏を申し訳なさそうに見ていたが、泣き止んだことで心なしか安心はしたようだ。

 

「…マドカ。」

 

「…なんだ?」

 

「帰ろう。」

 

「いい、のか?」

 

「…あぁ。…倉橋先生。俺達にユウキのことを教えてくれて…ユウキに会わせてくれて、ありがとうございました。」

 

「いえ…、僕の方ももう少しなにかできれば良かったのですが。」

 

「十分…すぎるほどですよ。」

 

「また…来てあげて下さい。木綿季君も…それを望んでいると思います。」

 

「だと…いいですね。」

 

望めるなら…また彼女と会いたい。そんな願いを僅かな望みとしながら、一夏はマドカと連れ立ち、倉持医師と共に第一特殊機器計測室を後にした…。

 

 

 

 

 

 

 

『待って!!!』

 

だがそんな3人を…呼び止める大きな声が響いた。

突然の声に、3人は振り返る。

メディキュボイドのモニター。そこに音声のみのやり取りを意味する、『SOUND・ONLY』の表示。

 

「ユウキ…?そこに…いるのか?」

 

『うん、そう…だよ、イチカ。』

 

メディキュボイド越しに話す彼女の声は、どこかの上擦っており、緊張と…そして先程まで涙を流していたことが窺い知れた。

 

『ボク…ボクね……、イチカ…もう一度…話がしたい。……いい、かな?』

 

「断る…断れる理由なんか……ねぇよ……ユウキが…俺と話すことを…望むなら……!」

 

『…倉橋先生。』

 

「なんですか?木綿季君。」

 

『隣の部屋にある…ボクとの面談用のアミュスフィア…それをイチカとマドカに貸してあげてくれませんか?』

 

「それは構いませんよ。ALOのソフトも入っていますし…ただ、キャリブレーションをして頂く手間はありますが。」

 

「ユ、ユウキ、私もなのか?」

 

『うん。…マドカにも…話したいこと…あるから。』

 

前のような懇願ではない。

ただ真剣に、話すべき事があるからこその純粋な願いだ。

そして彼女のその気持ちは、ALOの中のように面と向かわなくても、声だけで感じることが出来る。

 

「…わかった。」

 

『中に入ったら…イチカ、マドカと一緒にボクと最初に出会った場所に来て。そこで…待ってる。』

 

「あぁ、急いで向かうよ。」

 

こちらの返事を確認すると、ユウキはALOにダイブしたのか、『SOUND・ONLY』の文字は消えていた。

通路の奥を見れば突き当たりに、ここの入口と同じようにカードによる認証パネルの電子ロックがかかったドアが見える。恐らく、あそこがユウキの言っていた面談用のアミュスフィアが置いてある部屋なのだろう。

 

「倉橋先生、お願いしてもいいですか?」

 

「他ならぬ木綿季君と一夏君の頼みです。構いませんよ。ただ、先程も言ったとおり、キャリブレーションは僕に合わせて行っていますので、ユーザーの新規登録をお願いします。」

 

ピッという電子音と共に開いた部屋には、ダイブ用に設けられた背もたれ付きの椅子が数席あり、それに合わせてアミュスフィアもいつでも起動できるようにされていた。

 

「木綿季君を…頼みます、一夏君、マドカさん。」

 

「えぇ、…俺なりに最善を尽くします。」

 

「…私も、微力ながら助力するつもりです。」

 

倉橋医師の願いに、そんな返事を返した2人がアミュスフィアの設置された部屋に入ると、間を合わせたかのように扉は閉じられた。

 

「よし…行くか、マドカ。」

 

「…そうだな、早いところキャリブレーションを済ませてしまうとしよう。…ユウキが待っている。」

 

初めてアミュスフィアを買ったときの事を思い出しながら、ペタペタと自身の身体を触って、手早くキャリブレーションを済ませていく。物の数分で身体情報を登録して、自身のIDとパスワードを入力。アバターを呼び出した。

少々大きなゴーグル、と言うほどのそれを装着し、2人はゆったりと椅子にすわると、一呼吸ののち、あの言葉を紡いだ。

 

「「リンク・スタート!」」




色々と書いていくと、年数が合わなくなってきた…!
まず、木綿季がメディキュボイドを使用し始めて1年で藍子さんが死去、そしてその直ぐ後に今作のSAOスタート。で、2年後に生還し、1年経過←今ここ。
SAO原作では、藍子さん無くなったのは1年前、つまり、SAO事件解決時になる。
しかし、今作においては、現在より3年前。辻褄を合わせるためにユウキもフルダイブ開始が4年前になり、メディキュボイド試運転開始も、SAOより前になっているという……。
ごめん藍子さん…早く亡くならせてしまって…。

円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。

  • にいに。
  • お兄ちゃん。
  • 兄さん。
  • 兄貴。
  • 一夏。
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