インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~ 作:ロシアよ永遠に
いや、こう言った話は難産で、かなり苦戦しました。
その分グダって、長々としている物になってしまいましたが、御了承ください。
オマケあり
虹のトンネルを抜けて、視界と体感覚がアバターのイチカに馴染むと同時にセーブした27層の宿屋から出たところで、フードの少女と出会す。
何も言うことはなく、ただ同時に肯くとどちらからともなく駆けだした。
目指すは転移門
飛ぶのは24層
行き着く先は…イチカとユウキ、2人が戦ったあの場所へ…
いつの間にか…日は落ちかけ、森や転々と浮かぶ島々を茜色に照らし出す中、巨木が高々と聳える一回り大きなその島に2人の妖精がフワリと
「ユウキ…!ユウキ!いるのか!?」
しかしイチカの叫びが木霊するだけで、緩やかに吹き抜ける風が、木々の葉や、足下に咲き誇る草花を撫でる音だけが響く。
だが返事の無い現実にも関わらず、彼はただ呼び続ける。
ただ1人の少女を望んで…。
「ユウキ…俺は…!」
「イチカ…。」
木の陰から…その少女の声が木霊した。
まるで怯えているかと思うほどに小さく…彼の名を呼ぶ。
何時もの彼女らしからぬような…普段は相手の目を見てハキハキと、それこそ突き抜けんばかりの笑顔を見せて話してくれるハズが、今日はどこか余所余所しく、イチカと距離を置いて視線を逸らしている。
「ユウキ…俺は……」
「イチカ、ボクね。」
言いかけたイチカの言葉を遮るかのように、ユウキは話を切り出した。
「ボク、嬉しかったよ。…いきなり消えちゃったボクを追って…イチカとマドカが会いに来てくれた。それがとても…嬉しかった。」
でも、とユウキは繋いで言葉を綴る。
「ボクの…ボクの身体のこと…知っちゃった、よね?」
「…あぁ。倉橋先生から、聞いたよ。」
「自惚れかも知れないけどさ、2人が会いに来てくれて…ボクと仲良くしてくれてたんだなぁって…喜んでた。」
「…まぁ…友達…だからな。」
マドカは少し照れ臭そうにしながら、目を背けて頬をポリポリ。内心嬉しいはずが、うまく面に出すことが出来ないでいるようだ。
「うん、そう言ってくれて嬉しいなぁ…。でもね、だからこそ…ボクはもう2人と会えない…これ以上…一緒に居ちゃいけないって…。…ボクはね、もう…末期だから、さ。仲良くすればするほど…2人を悲しませちゃうと思うんだ。」
「………末期…。」
改めて、その言葉を耳に、そして口にすることで、その重さが改めてのし掛かってくる。
余命幾ばくも無い
その現実と未来を、目の前の少女は受け入れ、そして見つめている。
いや……むしろ、諦観している、と言うべきなのか。
「いつ消えるかとも分からない…この命だから……ボクは…2人を…悲しませたくないから…」
「だからもう会いたくない、と?」
「そういう…ことだよ。」
絆が深ければ深いほど、別れたときの悲しみも深いものとなる。だからこそ、ユウキは言う。それならば始めから仲良くせず、線引きした間柄で居れば、互いに悲しみも少なくなる、と。
「…じゃあ…ユウキ、お前はこっちの気持ちを考えたことあるか?」
「イチカ…?」
「…そうだな、ユウキ。阿呆の言うとおりだ。…お前が今日の朝、泣きながらログアウトしたことで、こちらが何も思わなかったとでも?」
「いちいち棘を刺してくるな…。ともかく…俺は、俺達はここまで来た。ユウキにもう一度会いたかったから。」
「そ・れ・に・だ!」
ぬっと伸びてきたマドカの手のひらがユウキの頭を、効果音を付けるならば『グヮシッ!!』とかいう文字がつきそうな勢いで掴む。
突然のことに目を丸くしていたユウキ。そこに…
「み、みゃぁぁあっ!?!?」
ギリギリと、筋力補正どれだけ付けているんだと言わんばかりのアイアンクローが、ユウキの頭蓋骨をミシミシと締め上げる。その圧倒的な握力パラメーターはユウキの頭を掴んだまま、小柄な体格とは言え、彼女の足を地面から浮かせるほどだ。
宙ぶらりんの脚がじたばたと藻掻いている。
「お前からフレンド申請したのだろうが…!それがなんだ?悲しませたくないから?泣かせたくないから?そんな勝手な理由で目の前から姿を消すだなどと………私は許さん!!」
「んみぃぃぃぃぃっ!?」
「……ユウキ。」
目の前の光景に若干のデジャヴを感じていたイチカがようやく口を開き、ユウキに呼びかける。
察してか、マドカも締めあげていた手を離すと、ユウキは地面にへたり込んだ。
ぐわんぐわんする頭に、中々引かない痛みで涙目になりながら、ユウキはイチカを見上げる。
イチカの方もユウキを見下げるのをはばかってか、片膝をつき、まるでユウキに
「もう、俺達と会いたくないのか?」
「…そう、いったでしょ…?」
「…本当に、そう思っているのか?」
「…どう言う…こと…?」
含みのあるイチカの物言いに、ユウキは若干の不快感を覚える。
自身がそう言っているのだ。
それに疑う余地はないはず…。
そんな彼女にイチカは、ゆっくりと手を伸ばしていく。その手が目指す先は…
「じゃあ……何でまだ
ユウキの胸部。そこに首からのチェーンを通して下げられた
「こ、れ…は……」
「俺達と本当にすっぱり出会いたくないなら、装備から外すはずだ。未練が無いように。…だけどお前はまだ付けている。」
「そ、それは…たまたま外し忘れただけで…」
「自身の身体が関係することに、たまたまも忘れていたもないはずだ。」
「う……っ。」
離別を決意しようという相手2人と出会うのに、その2人からのプレゼントを外さずに首から掛けている。
すっぱり別れ話をしようとする恋人が、2人でも思い出の品を身に着けている。そんな光景を想像すれば、相手の心中に渦巻くもの、それを想像するのは容易い。
「あえて言わせて貰うぞ、ユウキ。
自分に正直になれ。…心の内をさらけ出してみろ。」
「自分に……正直に……?」
「あぁ。」
「…お前の…病気をどうこうしてやる…などと言うことは、私達は医者ではないから無理だろう。…だがな、お前の心を…気持ちを…言葉を……受け止めてやる。それくらいなら…私達でも出来る。何だって良い。愚痴だろうが、文句だろうが、願望だろうが……お前が思うことを口に出すだけでも気は楽になるものだぞ。」
「で、でも……2人にそんな」
「迷惑は掛けられない、か?…ユウキ、友達ってのはな?損得勘定抜きにして助けるモンなんだ。…俺達は他の何でも無い。ユウキの力になって傍に居たいから、その気持ちだけでここまで来て、お前と話してる。それは…何も変なことでも無ければ、特別なことでもない。」
「う…ぅ……。」
「だから…遠慮なんてするな。出来ることは限られているかも知れない。けど、出来ることなら何でも力になる。
…だから……。」
イチカはそっと…目の前の少女を抱き寄せた。
どこまでも気丈に、周りの人が傷付かないように、悲しませないように。
人懐っこく、そして明るく振る舞いながらも、他人を近付けずに、ただただ孤独を選んできたユウキ。
そんな彼女の壊れそうなガラス細工にも似たその心をイチカは、マドカは、救いたかった。
他の誰でもない、大切な友人を…
最期の刻まで、独りの道を歩み続けようとする健気な彼女を…
「だから!俺の…俺達の前から、消えたいだなんて言うな…!」
優しく抱き留めながら…イチカは告げる。
独りを選ぶ必要は無い。
もし、死にゆくのならば、最期のその刻に傍で寄り添って、旅立つその時を看取って、その死を悲しむ友人が居てもいい。
「イチカ……泣いてるの…?」
「…悪い、かよ…!」
抱き締められた自身の肩を濡らすそれは、少年が流す涙。
自身と変わらぬ歳ながらも、比べるまでもなく過酷な運命を背負わされた少女。
それでも明るく笑顔を振る舞い、周りを笑顔に包んでくれる。
最初は強い子だとも思っただろう。
だが心の中では、ひたすら孤独と戦っていたのだ。
彼女が…自身の身体を蝕む病を聞いた、その時から…。
「ゴメン…ね……イチカ…マドカ……!」
「…全くだ。詫びとして、今度私のスキルレベリングに付き合ってもらおうか。」
「マドカ……イチカが言ってたけど、友達って…損得勘定抜きじゃなかったの…?」
「知らん。ソイツの価値観など私の管轄外だ。」
「なにそれ…」
彼女なりの冗談なのだろうか、先程まで重苦しくなっていた空気が、幾分か軽くなった…気がする。
そんな空気に充てられてか、余所余所しくしていたユウキの表情にも明るみが出始めた。
「…でもイチカ…。」
「ん?」
「ボク…イチカと『本当に初めて出会ったとき』のこと…思い出しちゃったんだ…。…うぅん。思い出したんじゃなくて…あの時の男の子がイチカだったことが分かっちゃった…。」
「それは…」
「あの日…あの時、ボクがイチカを追い出さなかったら、もしかしたらキミはSAOに…命の危機にさらされなかったかも知れない…。」
「それが…ユウキがこの阿呆に感じる負い目…か?」
マドカの問いに、ユウキは静かにただ頷いた。
下手をすればイチカが死んでしまう。その原因の大元となってしまうかも知れなかった。彼を…『殺し掛けた』。それがただユウキの中で重く重くのし掛かっている。
「それを言ったら…お前がお姉さんが亡くなって落ち込んでるときに、能天気に話し掛けた俺の自業自得とも取れるけどな。」
「っ!で、でもさ!」
「それに、だ。」
イチカの自身に対する戒めを否定しようとするユウキの言葉を遮り、彼は続ける。
「そもそも、あの時SAOに巻き込まれることがなかったら…今の俺はないぜ?」
そう、全てはあの時、仮想世界の
沢山の仲間との出会いと別れを経験し、過酷とも言えるデスゲームをクリアしたこと。それがイチカの人生で最も大きな物だったとも言える。
長いようで短い二年という歳月は、護ってくれていた姉から、『大人に大きく近付いたな』という、彼女からの太鼓判とも取れるほどの賛辞を貰えるほどに、イチカにとっては辛くも、しかし何物にも代えられない時間だったのだ。
「俺は、この仮想世界に来て、沢山の大切な人に出会えた。キリトや
「ぼ、ボク?」
まさかの自分の名前が出るなどと思いもしなかったユウキは、思わず聞き返してしまう。
大切な人達。その括りに、忌むべき自身の名があるというのは、彼女にとって余りにも信じがたい物だった。
「ユウキ、お前があの時のことを悔やむなら、この出会いを否定されることになっちまう。起こったことを悔やむことは出来る。でも、俺はSAOに巻き込まれることが、結果として良かった。…だから、あの時のことがなければ、俺はキリト達と出会うことも無く、ユウキともこうして話すこともなかったさ。」
「ぁ……。」
「だからさ、ユウキがあの時のことを罪だというなら、俺はそれを赦す。そして…こう言わせて貰うよ。
俺と、出会ってくれて……友達になってくれてありがとう。俺は…ユウキと出会えて、幸せだよ。」
「…ボク、もうすぐ死んじゃうんだよ…?仲良くしたら……哀しくなるよ…?」
「当たり前だろ?友達って言うのはそう言うもんだよ。…お前、もし死ぬ時に悲しんで看取ってくれる人が居ないのは寂しいだろ?
だったらさ、悲しむことがなくなるくらいに、皆で遊んで、騒いで、AIDSの奴に、『ボクはお前なんかに負けてない』って気概を見せ付けてやろうぜ。
ずっと一緒に居て、沢山の思い出をつくってさ。逝くときの悲しみなんて吹き飛ばせるくらいに。」
「ボクに…出来る、かな?」
「1人で出来なくても、マドカがいる、キリトがいる、アスナがいる、スリーピングナイツの皆も。そして俺が居てやる!俺がずっと一緒に居てやる!俺が沢山の思い出を一緒に作ってやる!もし最期の刻が来たら、俺が一番泣いてやる!」
「イチカと…一緒に…?」
「おう!一緒にだ!」
「ずっと?」
「ずっとだ!」
「健康な時も、病の時も、富める時も、貧しい時も、良い時も、悪い時もずっと?」
「お、おぅ。」
「おいおまえら、結婚式の誓いの言葉になっているぞ。」
「えっ!?マジで!?」
「あっ!マドカ~!ネタばらししないでよ~。」
さすが両親がクリスチャンだけあってか、こう言った手合いはお手の物らしい。
ユウキにしてみれば、家族でお嫁さんごっこ的な物をしたときに、藍を誓い合う言葉として両親が教えてくれた思い出もあったりする。
「…俺、もしかして、結婚式を知らない間に…ユウキ…?」
「えっ!?ち、ちちちがちがが違うよっ!?べ、べべつに…そんな意味で言ったわけじゃ…っ!」
「ほう?だったらどんな意味なんだ?教えてくれないか?」
「ま、マドカ~!!」
イチカの天然染みた勘違いによって、顔を真っ赤にして否定するユウキに、それに茶々を入れるマドカ。元々ずっと一緒にいる、というイチカをからかおうとしたのだが、マドカの指摘によってとんでもない方向に、話が進んでいく。他意は無いのか、よもやガチの結婚に話を進めるなど、ユウキにとっては想定外らしい。
「ま、そうだよな。ユウキみたいな可愛い子なんて、俺なんかじゃ釣り合わないしな。」
「か、かわっ!?!?」
「ん?ユウキ、顔が赤いぞ?風邪でも引いたか?」
しかしそこはMr.唐変木ことワンサマーイチカ。こんな言葉を平然と言ってのけるわけで、現にリアルではこれに落ちた少女多々である。
「……まぁとにかく。この唐変木や私もお前に寄り添ってやる。…ま、特にイチカ、まぁ精々爆発しないように気を付けるんだな。特にISごと爆発なんて事が起こりうるかも知れないぞ?」
「…お前に言われるとシャレにならないんだけどな。」
「ね、ねぇ、イチカ。」
ここで一つ気付いたユウキが、怖ず怖ず挙手。
「イチカ…ISって…もしかして半年前に見つかったって言う、世界初の男性IS操縦者の織斑一夏…だったの?」
「…なんだ、今更気付いたのか?そうだ。コイツが女の園にたった1人の男として放り込まれた、その織斑一夏だよ。」
「り、リアル割れ不可避かよ…。」
プライバシー的な物を露呈され、ガックリとイチカは肩を落とす。
「ふーん……実質女子高の中に男はイチカ一人ねぇ………へ~ぇ……ふぅん…?」
「な、なんで不機嫌になってるんだよユウキ…」
「べっつにぃ~?ボク、怒ってないもん…。」
あからさまに不機嫌になっていく絶剣様な訳だが、当の本人にとっては何故イライラするのか判らなかった。…人それを、嫉妬という。
「でも……学校かぁ……」
ポツリと…そう呟いたユウキは、どこか哀しげに差し込む夕日を見遣った。
「行って…みたいなぁ……」
「…そうか、ユウキは…長い間行ってないん…だよな。」
「2010年生まれだから…今中学3年か。」
「うん、小学校高学年から今まで、ずっと病院暮らしだからね。学校にはもう…4~5年行ってないかな…。」
学校には良い思い出はあまりない。だが、通うことに関しては多少なりとも楽しみはあった。
授業の楽しさ
学校行事
給食の味
それら全てが懐かしい思い出の仲でしかない。
「自分で勉強とかしていたけど…でも学校で授業を受けたいって、そんな気持ちはどこかにあるんだ。」
「ふむ…授業を受けたい、か。…私はそう言った拘りはないが、そう言う物なのか。」
「でもな……病院にいて…ましてや仮想世界でしか動けないともなると…………ん?」
ここでイチカに天啓が下る。
『逆に考えるんだ。仮想世界でなら自由に動けるさって考えるんだ。』
「…もしかしたら…。出来る、かも。」
「「え?」」
「ユウキ!学校に行けるかも知れないぞ!」
そんなイチカの言葉に、ユウキのみならずマドカも眼を丸めてしまった。
おまけ
一夏とマドカがログアウトし、メディキュボイド越しに別れを済ませた後、ユウキは倉橋医師からメディカルチェックを受けていた。
それは単に、メディキュボイドの機器が表示するバイタルなどの記録なので、ユウキがする事は殆ど無い。
その手持ち無沙汰な時間の中で、ユウキはマイスペースで一つの想像を思い浮かべていた。
一夏に婚約の誓いをさせていたこと
それが頭を駆け巡り、離れない。
結婚なんて考えたこともなかったので、まさに自分から言っておいて寝耳に水だ。
でも、一つ想像…妄想してしまう。
もし…一夏と結婚していたら…
一緒にご飯をつくって
一夏の出勤を見送って
一夏の勤務中は家事をして
夕飯をつくって、帰ってきた一夏と一緒に食べて
一緒に寝て
そして時々夜に
『ねぇ一夏、ボク、そろそろ子供が欲しいなぁ…。』
『そうだな、俺の仕事も安定してきたし…』
『もし出来たら、男の子がいい?それとも、女の子?』
『ん~、どっちでも良いさ。木綿季との子供なら可愛いに違いないし。』
『もぅ…そうやって歯の浮くようなことを言う…。でも名前とか決めないと、だね。』
『そうだな、でもその前に…』
『わっ!い、一夏!?』
『文字通り、元もなければ子も無いからな。だから木綿季…』
『うん、いいよ…いちか……きて……』
そして一夏の手は、木綿季の服のボタンへと伸び…
「はわわっ!?ナニコレ!?ナニコレ!?」
話が飛躍しすぎて、顔を覆い隠しながらマイスペースの床をごろんごろんと転げ回る。おそらく顔は真っ赤になっているに違いない。
余りにも恥ずかしい妄想だった…。
『ど、どうしたんですか木綿季君!?血圧と体温が急に…!?大丈夫ですか!?』
「はわっ!?」
バイタルチェック中だったので、倉橋医師が心配そうに叫ぶ声が聞こえる。
ど、どうやって説明しよう…。
そんなお年頃の木綿季の悩みだった。
円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。
-
にいに。
-
お兄ちゃん。
-
兄さん。
-
兄貴。
-
一夏。