インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~   作:ロシアよ永遠に

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久々に本編に出番の原作カップル


第23話『桐ヶ谷邸にて』

 

 

 

ユウキの病院を訪ねた翌日

 

埼玉県川越市にある桐ヶ谷邸

 

和の屋敷、と言わんばかりに、目の前に広がる広々とした敷居に圧倒され、思わずゴクリと唾を飲み込む1人の少年が居た。

彼の名は織斑一夏。

故あって、ここに住まうとある人物を尋ねて、遙々とIS学園から電車を乗り継いでやって来た。

時間にして11時

外出許可が下りる8時に出て来たにも関わらず、ダイヤの影響でここまで掛かってしまったのは致し方ない。

ちなみに、マドカに乗せてきて貰ったらよかったと当時考えたが、

『本来、私とお前は敵対者の間柄だ。必要以上に馴れ合うつもりはない。』

と、今更感が溢れ出んばかりの拒否をした。

まぁ、亡国機業とて暇ではないのだろう。

だが無理強いは出来ないのもあって、詫びを入れると共に、昨日のことに対して礼を言っておくと、

『べ、別にお前のためじゃない!ゆ、ユウキのためなんだからな!勘違いするなよっ!』

なんていう、ツンデレが全開だった。

ともあれ、

桐ヶ谷邸の威圧感に負けじと、震える手でインターホンを鳴らす。

よく耳にする『ピンポーン』と言う音がインターホンの機器から聞こえ、待つこと数秒。

 

『はーい、どちら様ですか~?』

 

明るい少女の声が応じてくれた。

 

「織斑一夏です。」

 

『あ、一夏君だったんだ、いらっしゃい。』

 

「うん、直葉、和人はいるかな?」

 

『居るよ~、何か部屋に籠もって機械弄りしてるけど。』

 

応じたのは、一夏の友人である和人の従姉妹であり義妹の桐ヶ谷 直葉だ。聞いた話では、昔はともかくとして、今では兄に負けじとALOを旧作当時からプレイしている女の子だ。…ちなみにアバターネームはリーファ。シルフの金髪女性アバターだ。

 

「…もしかして、徹夜させたか…?」

 

『あはは、かもね。まぁとにかく入りなよ。玄関先で立ち話もナンでしょ?』

 

「それもそうだな。…じゃあお邪魔するよ。」

 

実を言うと、一夏がキリトこと桐ヶ谷 和人を訪ねて来たのは三回目だ。SAO帰還後のリハビリを終えてALOにインする前に訪ねたことがあった。最初こそ驚かれ、病院も違ったので初顔合わせとなったが、何のことかリアルでも意気投合した。その後は、ALOをクリアして間もなく受験勉強を始めなくてはならなくなったため、一度きりの訪問になったが、高校デビューを果たしたらまた遊ぼうと考えていた。何せ、同じSAO帰還者学校に通うのだ。これから幾らでも話せる。

 

 

そのはず、だった。

 

 

しかし、何の因果か一夏がISを動かしてしまい、その計画は見事にぽっきりと折れてしまったのである。

以降、夏休みに一度だけ訪れることがあったが、逆に言えばそれくらいでしか行けなかった事になる。

まぁなんにせよ、桐ヶ谷邸の構図…と言うよりも玄関から和人の部屋に向かうまでのルートは覚えてしまったので、何のこと無く上がり込み、(途中、台所にいた直葉と、桐ヶ谷兄妹の母である桐ヶ谷 翠に、挨拶とともに手土産を渡して)軽い足取りで階段を上がり、目的の部屋の前に辿り着く。

コンコンコンコン、と4回ノック(2回がトイレ、4回は一般らしい)をすると、

 

「どうぞ。」

 

と聞き慣れた少年の声が耳に入った。

部屋の主の許可を得たことで、ゆっくりと部屋のドアを開け放つと…

 

「よう、いらっしゃい一夏。」

 

「こんにちは、一夏君。」

 

パソコン用の椅子に座り、半身をこちらに向ける和人と、彼のベッドに座って、恐らく和人の作業を見ていたのであろう結城 明日奈がいた。

 

「お邪魔するよ。先生も来てたんですか。」

 

「うん、…というか、勉強会ならともかくとして、今は普通に呼んでくれても良いんじゃない?」

 

「ははっ、すいません明日奈さん。どうにもクセで…」

 

「もう、変なクセ付けないでよね?」

 

「善処します。あ、コレ、シュークリーム買ってきたので。」

 

ガサリとコンビニのナイロン袋に入れられたそれを机に置くと、和人の作業するデスクトップパソコンから伸びたコード。それに繋がれている物に一夏は着目する。

視聴覚双方向通信プローブ

ネットワークを通して、現実世界と視覚と聴覚のやり取りをする機械。和人が学校で研究しているテーマの一つだ。

形としては、ざっくりと説明するとUFO。

上部の円形状の部分には、内部のカメラやマイク、スピーカーを保護するガラスで覆われており、コレを介してネットワークにリアルタイムで視覚や聴覚を伝える。

 

「それが…」

 

「あぁ、これが一夏御所望の品だ。あとは…一夏、例の物を入力したら、完成って所かな。」

 

「それなら抜かりないぜ。」

 

そう言って一夏はポケットから1枚の紙切れを取り出して和人に手渡すと、パソコンのディスプレイに開かれている入力画面に、記されていた物を打ち込んでいく。最後にエンターを、ターンッ!という小気味よい音を鳴らしながら打つと、何やら接続画面に移行していく。

 

「よし、これで後は待つだけだな。…流石に徹夜はキツかったよ。」

 

「ほ、ホントに徹夜してたのか…?」

 

「ま、昨日の一夏の興奮気味な電話を聞いてりゃな。休みだし、これくらいどってこと無いよ。」

 

「悪いな和人。」

 

「気にするなよ。まぁ報酬はプローブの使い心地の感想と、そのシュークリームでいいぜ?」

 

随分と気の良い友人を持ったものだと、一夏は胸が熱くなる。そんな彼だからこそ明日奈も惹かれ、リズベットやシリカも好意を寄せているのだろう。

 

「ふぁ~……でもまぁ…完成したと実感したとなると、急に眠気が来たな…。」

 

「気を張っていたんだろ?…その緊張の糸が切れて、眠たくなったんじゃないか?」

 

「…だな。」

 

「じゃあ和人君は少し横になってると良いよ。私、おばさんや直葉ちゃんとお昼ご飯作ってくるから、出来たら呼びに来るわ。」

 

「お~、そうしてくれると助かる~…」

 

ぽふんと自身のベッドに顔面からダイブした和人は、その程よいクッションによって耐え難い微睡みに襲われる。そんな彼にクスリと笑みを溢しながら、明日奈は一夏に、『ちょっと行ってくるね』と言い残して部屋を後にした。

 

「…ホント明日奈さんて気配り出来るよな。和人が羨ましいよ。」

 

「…なんだよ、明日奈は俺の彼女だかんな。」

 

「や、別に取ろうなんて考えてないさ。でもやっぱ俺としては、男子高校生たるもの、恋人って言う存在に憧れるわけだよ。」

 

「IS学園なら候補はごまんと居るだろ?」

 

「う~ん…候補かどうかはともかくとして、確かに女の子は居るんだけどさ、誰も彼も、良い友達ではあっても、恋人にしたいなぁって思える子は居ないんだよなぁ。」

 

「そう言うもんなのか?」

 

「だって考えても見ろよ?恋人ってのは、将来的に自分と結婚するかも知れない子だぜ?そんな子をホイホイ選んで、結局別れることになって傷つくのは相手の方なんだ。和人は明日奈さんて言う心に決めた人も居れば、ユイちゃんていう愛娘も居る。ほぼ将来が約束されている様なモンじゃないか。」

 

「ぐぬ……そ、それはまぁ…確かに…。」

 

「…俺だってそう言う人がいつか見付かれば良いとも思うわけだよ。」

 

確かに実質女子高であるIS学園にも友人は居る。一緒に居て楽しい、と言うのも確かにある。だが彼女らに抱く感情。それは愛情ではない。恋人として…愛することは…出来ない。

 

「…じゃあユウキはどうなんだ?」

 

「な、なんでそこでユウキが出て来るんだよ?」

 

「いや、最近結構御執心だろ?もしかしたらもしかするんじゃないかなって、俺達の中では専らの噂だぞ?」

 

「噂って…………まてよ、もしかしなくても…」

 

「うん、アルゴ辺りにまで噂は広がってるらしい。」

 

「げ……」

 

一夏は内心嘆いた。

『鼠のアルゴ』

旧SAOにおいて、その人ありと言わしめられる程の敏腕の情報屋だ。元βテスターという利点を活かしてキリトと協力し、ゲームクリアに一役買った人物でもある。だが彼女はどこか人を喰ったような性格でもあり、個人情報とかの最低限のモラルを守っての情報の売り買いはするが、逆に言えば最低限のラインを越えない情報でなければ、コル…今ではユルドで売り買いする。そして面白いと思った情報は、割と格安で広めていくという、ある意味厄介なプレイヤーである。

そんな彼女が、イチカとユウキの間柄について詮索している。

下手をすれば、しばらくALOにインできなくなるかも知れない…。

 

「…でもそこの所、本当にお前はどう思ってる?」

 

「どう…って?」

 

「決まってるだろ?ユウキのことについてだよ。」

 

「そう…だな……一緒に居て…楽しい、かな。」

 

思えば…出会ってまだ一週間も経っていない。

だがその間に

デュエルして

スリーピングナイツと出会って

ボスに挑んで

打ち上げして

夜の街で遊び通して

ロザリオをプレゼントして

剣士の碑に行って……

様々なことを経験していた。

そんな中で、ユウキは色んな表情を見せてくれた。

怒った顔

楽しんでいる顔

戦っている顔

泣いている顔

寝ている顔

そして…溢れんばかりの笑顔。

そんな彼女の表情一つ一つが、一夏にとっては眩しく、そして何物にも代えがたいものだ。

もっと色んな顔を見てみたい。

もっとユウキと思い出を作りたい。

いつしか一夏の中でそんな想いが芽生えてきていた。

 

「出来ることなら、ずっと一緒に居たい。もっと間近でアイツの笑顔を見ていたいんだ。俺、ユウキの笑ってる顔…スゲェ好きだからさ。」

 

「………。」

 

「…な、なんだよ、その『これだから一夏は』的な眼は?」

 

「これだから一夏は…。」

 

「言葉にした!?」

 

鈍さもここまで来ると、呆れを通り越して感心するくらいまでになる。

というか口にしていて気付かないとか、どんだけ鈍チンなんだと、和人は一夏の朴念仁ぶりに正直震えた。

 

「お前、今の言葉で何も気付かないのか?」

 

「気付くって…何か?」

 

「…今、聞いてるこっちが小っ恥ずかしい位の告白をしてたんだぞ?」

 

「………へ?」

 

「あのなぁ?女の子に対して、『ずっと一緒にいたい』とか、『間近に居たい』とか、『笑顔が凄く好き』とか、それ、ほぼほぼ告白してるようなモンだぞ?」

 

「………………………………………………………………………………………………………………………………ゑ?」

 

和人の指摘と長い長い沈黙の後、ようやく、ようやく一夏は自分の言ったことに疑問を浮かべることとなった。

待てよ?

待てよ待てよ待てよ?

 

(俺、昨日のあの時…ユウキになんて言った?)

 

 

 

 

 

 

『俺がずっと一緒に居てやる!俺が沢山の思い出を一緒に作ってやる!もし最期の刻が来たら、俺が一番泣いてやる!』

 

 

 

 

 

 

 

……

 

………

 

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」

 

「うるせェェェエエエエエエエッッ!!」

 

突如と来て絶叫する一夏に、部屋の主たる和人がキレる。

あの時、あの場所で言った言葉が鮮明に頭の中に駆け巡り、一夏はまるでムンクの叫びか何かのように、まるで絶望したと言わんばかりの表情を浮かべた。

先程和人が指摘した『ずっと一緒に居たい。』その言葉を昨日の時点で満たしていた。

と言うことは、無自覚の内にユウキに告白していたと言うことになる。

 

「ど、どうしたんだよ一夏、いきなり絶叫とかビックリするだろ!?」

 

「和人ォ……俺、俺ェ………!」

 

あうあうと言葉足らずに。

そしてまるで赤く熟れた林檎のように顔を紅潮させた少年が目の前に居た。

 

誰だコイツ

 

それが和人の思いだった。

 

「俺……俺…昨日……ユウキに……!」

 

「ゆ、ユウキに…なんだ、どうしたんだ?」

 

「ず」

 

「ず?」

 

「ずっと一緒に居てやる…って……言っちゃったんだよ…」

 

「な」

 

「な?」

 

「なんだってぇぇぇぇえええええ!!??」

 

「うるせェェェエエエエエエエッッ!!」

 

「2人とも!何さっきから大声出してるの!?御近所さんに迷惑でしょ!?」

 

「「す、すいません」」

 

あまりのシャウトに、下に居た直葉がお玉を片手に部屋に凸してきた。さしもの2人も、自身らの声によって1階の面々に迷惑を被っていたことを改めて思い知らされる。

 

「全くもう…、で?なにをそんなに叫んでいたの?」

 

「いや、それはその…、なぁ和人。」

 

「そ、そうだぞスグ。男にはな、口が裂けても言えない事があるんだよ。」

 

「ふーん……」

 

2人の言い分に訝しげな目を向ける直葉だが、深く詮索するのも宜しくないと思うのと、喧嘩しているわけでは無いようなので安心し、これ以上問い詰めることはしないことにした。

兎にも角にも、兄の同年代の男友達と言う物がただでさえ少ないのだ。稀少な一夏という存在が居なくなるようなことになっていなくて、直葉は安堵する。もちろん、自身の友人である一夏が居なくなる、と言うのが嫌だというのもあるが。

 

「スグ、今スゲぇ失礼なこと考えてないか?」

 

「や、やだなぁお兄ちゃん。そんなわけ無いでしょ?ほら、そろそろ御飯できるから!一夏君も食べていくでしょ?」

 

「へ?お、俺も?」

 

「良いんじゃないか?プローブの調整もまだなんだし。」

 

「むぅ…それもそうか。…じゃあ直葉、御馳走になるよ。」

 

3人がそぞろと部屋を後にした部屋。

人も1人と居ないはずのその場所で。

独特の機械音と共に、プローブのカメラが突如として動いた。

 

『あうあう……』

 

いつの間にか接続が完了したプローブ、そのスピーカーから少女の声が響いた。

 

『一夏……が……ボクに……?』

 

その声は紛れもなく…メディキュボイドの中で暮らしている木綿季の声そのものだ。

…どうやら言葉からして、一夏と和人の会話を聞いていたらしい。

メディキュボイドとプローブの接続が思いのほか早かったようで、繫がると同時に2人の会話がメディキュボイドに響き、その内容に木綿季は言葉を発することが出来ず、結局最後まで聞かされていたことになったのである。

 

『……ボクは…一夏のこと…が……?』

 

どうやら木綿季の方も鈍感だったのか。

昨日マドカに指摘された婚約の言葉を一夏に訪ねていたことを思い出したのも相まって、もはや顔を見なくても彼女の顔は紅潮しているのが容易に想像できた。

 

『うぅ……はぅ………』

 

誰も居ないはずの部屋で、少女の悶絶したような声が響くという、シュールで、そして端から見ればホラーとも思える光景が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして…

 

 

どこまでも広がる青い空に、点々と浮かぶ白い雲

一面に広がる水面

現実にも有り触れていそうな、そんな景色にもかかわらず、どこかそこは幻想的だった。

そんな水面に、少女が1人佇む。

腰まで届く滑らかな白髪

膝辺りまで覆う、清楚を体現したようなワンピース

そこから伸びる、女性特有の白さながらも健康的な脚

そして、頭には鍔の大きな麦わら帽子

端から見れば、まさに画に描いたような光景だった。

そんな彼女は、静かに、ただそっと空を見上げていた。

流れ行く雲と、爽やかにも感じるその空

見上げたことで落ちそうになる麦わら帽子を押さえて、そっと…ただ静かに微笑み…

 

『ようやく…見つけたんだね。』

 

不意に…そう告げた。

 




最後の少女については、恐らく分かる人は居ると思います。ただ、彼女がキーマン…というかキーウーマンになります。

円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。

  • にいに。
  • お兄ちゃん。
  • 兄さん。
  • 兄貴。
  • 一夏。
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