インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~   作:ロシアよ永遠に

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第30話『学校へいこう!』

二日後

 

『ね、ねぇ一夏。』

 

「ん?」

 

『ぼ、ボクまだ心の準備が…。』

 

「大丈夫だ、問題ない。」

 

『それダメなパターンだよ!?』

 

08:30

ざわざわざわめく生徒が、SHRの為に静まりかえった廊下で。

一夏の肩に乗る木綿季はどこか裏返った声で彼に話しかける。

誰もいない廊下はどこか普段以上に声も響きわたり、彼女のその緊張をより一層高めていく。

 

「木綿季が望んだことだろ?腹をくくろうぜ?」

 

『う…うぅぅぅ~…』

 

妙なうなり声を上げる木綿季だが、段取りは着々と進むわけで…

 

「よし、では入ってこい。」

 

 千冬のそんな声が、木綿季にとって死刑宣告にも思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遡ること数分前。

 

SHRの始まるまでのほんのわずかな時間ながらも、1ー1の生徒は未だ談義に花を咲かせて賑わっていた。女三人寄れば姦しい、ともいうが、このクラスではそれがより顕著でもあった。

そんな中、一夏ラバーズの4人はとある席周囲にたむろして、とある懸念を抱いていた。

 

「一夏さん、遅いですわね。」

 

「確かに…いつもなら席に座ってゆっくりしてるのに、珍しいこともあるんだね。」

 

そう、後数分でチャイムが鳴るというのに、4人の中心にある席の主…唯一の男子生徒の一夏が、未だに登校してこないのだ。

 

「ふむ、しかし一夏は普通に私達と朝食は取っていたよな?」

 

「あぁ、定番の焼き鮭定食だった。今日の鮭もよい物だったぞ。」

 

「いやラウラ、鮭の善し悪しはともかくとして…。でも確かに心配だよね。」

 

何を手間取っているのか?普段は可能な限り余裕を持って行動し、規則正しい生活を心掛ける彼が遅刻など、明日はIS学園に隕石でも降ってきて、宇宙からの敵対勢力が現れるんじゃないかと思うほどだ。

そんな心配をしていても、時の流れという物は皆等しく平等に与えられるわけで、聞き慣れた号令が天井のスピーカーから流れ始めた。

 

「仕方ない。席に着くとしよう。遅刻していないのに離席したままで叱責を食らうのは本意ではない。」

 

「ですわね。一夏さんのことは心配ですが…」

 

後ろ髪を引かれる思いではあるが、流石に出席簿を頭部に食らうのは避けたいが為に、そそくさと自分の席へと散っていく4人。

生徒が席について、チャイムが鳴り終わるのを見計らったかのように教室の扉が開き、見慣れたスーツと服に身を包んだ千冬と真耶が入室してくる。

 

「諸君、おはよう。」

 

『おはようございます。』

 

「うむ、では今からSHRを始めるとしよう。」

 

「あの、きょうか……織斑先生。」

 

ビシッと、物怖じすることなく挙手したのはラウラだった。恐らく彼女の言わんとすることは、今この教室にいる大半の生徒の代弁になるだろう。

 

「なんだ?ボーデヴィッヒ。」

 

「嫁…織斑一夏は欠席でしょうか?」

 

「今からその件について話す。聞いていろ。」

 

…どういう事だろう?

SHRで一夏について説明がある?

ここで、生徒の脳内で様々な憶測が飛び交う。

 

まさか転校!?

 

いやいや、とうとう『切り落として』名実共に女の子になったとか!?

 

ここは、IS学園第2分校が出来て、そこの教官に抜擢されたんだよ!

 

うぅん、もしかしたら可能性の獣(意味深)に…!

 

想像力豊かな女子高生は、憶測が爆発し、最初こそ小さかったざわめきが教室中を巻き込んで、大きな喧騒へと変わっていった。

 

「あ、あのぅ…と、とりあえず静かにしてください~…。」

 

弱々しく、あせった真耶が静粛を促すが、小さな彼女の声は女子高生のざわめきにむなしく打ち消され、その無力感から涙が目尻に浮かんでくる。

だがそんな彼女の現状に、『担任』で『世界最強』の女性が黙っているはずもなかった。

 

「し・ず・か・に…

 

 

 

せんかぁぁぁぁぁ!!!」

 

キ、キィィィィィ~!!!

なんとも表見しがたく、そして耳障りな音…いや、むしろ超音波と言っても過言ではないような音が、1ー1の教室内に反響する。

何処から現れたのか解らないが、巨大で、深緑色の、恐らくは中学あたりまでで見慣れた黒板。それを千冬が爪を立てて引っ掻いていたのである。発泡スチロールが擦れる音と並んで不快な音にピックアップされるこれに、先程までざわめいていた生徒はその口…歯を食いしばり、耳を塞いで必死に耐えていた。

 

「山田先生が静かにしろと言ったのが聞こえんのか?んんん?」

 

悦を得たのか、より一層力を込めると共に黒板に爪を立てて、白い痕跡を残していく。より強力な不快音が響くと共に、空間その物が歪んでいる…かもしれない。

 

「…全く、いい加減己を律すると言うことを学べ。騒ぐのは休み時間にしろ。そのために設けられている。…まさか高校生にもなってその程度のことが解らんわけではあるまいな?」

 

愚弟もそうだが、そろそろ学習という物をしてくれという、口にはしないが、そんな千冬の想いは中々叶いそうにない。

 

「よし、では入ってこい。」

 

『し、失礼しますっ!!!』

 

良く言えば元気一杯、悪く言えば喧しいほどの女の子の声の後に、入り口の自動ドアが開け放たれた。

一呼吸置いて入ってきたのは、話題の渦中にあった見慣れた男子生徒である織斑一夏その人である。

何でこんなシチュエーションになっているのか解らず仕舞いの生徒達は、皆が困惑に満ちあふれてきていた。

 

「紹介しよう。」

 

紹介?

織斑一夏じゃないのか?

肩に何か乗っけているが、今更紹介なんて、と言う彼女らの思惑は外れ、黒板が天井に収納された後のスクリーンに、1つの姓名が表示される。

 

「今日から一週間、諸君らと勉強を共に学ぶ、『紺野 木綿季』だ。」

 

『は、初めまして!こ、紺野木綿季です!よ、よろしくお願いしまひゅっ!』

 

 

……

 

………

 

((((か、噛んだ…!))))

 

この時、クラス中の想いが1つになった…!

 

『ふ、ふぇぇ…』

 

「んっんん!!あ~、うん。諸君の気になることは、目の前にいるのは私の弟、織斑一夏の筈が、なぜ紺野木綿季と紹介されたのか、だろう?…厳密にいえば、この場に紺野木綿季なる人物はいない。彼女は今、闘病の真っ直中でな。意識を仮想空間に預けながらの入院生活を送っているんだ。」

 

ただ、と千冬は繋げる。

長い闘病なだけに、外の世界を長らく見ることなく生活している。無論、それに比例して学校へ通うこともなかった。そんな彼女の切望を特例で、一夏の肩にあるプローブを通しての授業参加を許可されたのだ、と。

 

「異例中の異例ではあるが、IS委員会も学園長の説得(意味深)で承認している。IS実技もプローブ越しに見学も許可している。期間は土日を挟んで一週間。…短い期間だが、親睦を深めて欲しい。以上!」

 

「じ、じゃあ、紺野さん。解らないことがあれば、何でも聞いてくださいね。」

 

『ふ、ふぁい…。』

 

かくして…紺野木綿季のIS学園への授業参加が幕を開けることとなったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてつつがなく終えた一限目

ISの座学、その今までの復習を内容とした授業。PICやシールドエネルギー、絶対防御にISコア、アラスカ条約に触れる物など、一般でも調べれば得られる情報ばかりのものだ。生徒達はこの内容に若干の疑問符を浮かべるが、改めて基本を振り返るという事で自己完結させ、その授業内容に集中していた。

その休み時間

やはり、と言うか案の定と言うべきか、一夏の周りには女子による人垣が出来ていた。

わらわらと集まってきた生徒の数々に、一夏はもちろんのこと、プローブ越しの木綿季ですら目を丸くする。

 

「ねぇねぇ!紺野さんて、好きな食べ物は?」

 

『うぇっ!?え、えと…特に好き嫌いはない、です…。』

 

「すごいね、コレ!仮想世界と繋がってるんでしょ!?ねぇねぇ、どんな技術使ってるの!?」

 

『えっと…一夏の友達から借りてるから…ボクはわかんないです。』

 

「好きなタイプは!?」

 

『そ、それは…そのぅ……ひ、秘密です!!』

 

「「「………。」」」

 

いくつか質問をしてみて、全員が一斉に固まって、そして沈黙する。その視線はどこか呆れたかのようで、じっと一夏と木綿季を見詰める。

 

「紺野さん、なんか堅いよ?」

 

『へ?』

 

「もっとフランクにいこうよフランクに!敬語なんていらないよ?」

 

『で、でも、ボクは皆さんより1つ年下で…。』

 

「一週間とはいえ、クラスメイトでしょ?クラスメイトは対等なのよ?年なんて気にしたら負けよ?」

 

押しの強い女子生徒に、どこか気圧されていた木綿季だったが、どこかその押しの強さが嬉しかった。以前の学校生活では、皆に避けられ、虐められていただけに、こうしてにこやかに話しかけてくれるのが心地よく思える。

そして何よりも、自身をクラスメイトとして受け入れてくれたことが、何よりも喜ばしかった。

 

『うん…わかった。じゃあ、改めてみんな、一週間だけど宜しくね!』

 

どこか余所余所しかった木綿季が吹っ切れたのか、おどおどしていた口調は何処へやら、本来の明るく物怖じしない声色へと変化した。

そんな木綿季のテンションにつられてか、周囲の女子生徒は皆が満面の笑みに包まれる。

 

「じゃ~、打ち解けたところでもう一つ質問~」

 

『いいよ!ドンと来て!』

 

こんな気持ちでいられるのは初めて…。もう何も怖くない。

そんな心の底から湧き上がる温かな気持ちを胸に、布仏本音こと、のほほんさんからの質問に応じると木綿季は声高らかに宣った。

 

「ずばり~、おりむ~との関係について~」

 

ピシリ…!と空気が固まった気がした。

主に、一歩引いて見ていた4人からの圧力(プレッシャー)によって。

そうだ、気にはなっていた。

『なぜ、木綿季のプローブが一夏の肩にあるのか』

加えて仮想世界という単語。

つまり、

つまりだ。

仮想(向こうの)世界で二人は出会った。と考えるのが自然と言うものだろう。

 

「もしかして~、おりむ~とはゲームの中で出会ったの~?」

 

皆が問いあぐねている最中、ズバズバと問い詰めるのほほんさん…恐ろしい子…!!

 

『う、うん。一夏とはALOで出会ってね。一緒にボスに挑んだんだよ。ね?一夏。』

 

「そうだよ(便乗)」

 

これは紛れもない事実だ。あれから一週間も経っていないのにずいぶん昔のようにも感じるほどではあるが…。

 

『それで、一夏にボクが病気で入院してることがバレちゃって…お見舞いに来てくれたんだよ。マドカと。』

 

((((マドカ!?また新しい女子……!?))))

 

さり気なく爆弾を投下した木綿季に、例の4人は凍り付く。

どうなってる…どうなっているのだALO!?男女の出会いの場になっているとは…

 

『それでその…病気で長い間入院してるって話したら、友達…和人に掛け合って、このプローブを借りたの。』

 

「そうだよ(便乗)」

 

『一夏は…ボクの願いを叶えてくれた大切な恩人…かな。それも感謝しても仕切れないくらいの…。』

 

しんみりと…だがしかし、どこかその恥ずかしげな声色に、その場にいた誰もが察した。

コイツ(一夏)はまたやらか(オト)した。』…と。だが、実際に結果として惚れる惚れないにも関わらず、誰かの力になろうとするのは彼の魅力でもあり、彼に好意を寄せる面々もそこに惚れ込んだ所もあるので、あぁだこうだと口にする物は誰も居なかった。

 

「じゃあじゃあ!次の質問!」

 

「次の質問は私から出させて貰おうか?」

 

ゾクリ

そんな擬音が、教室中に走った。

加えて、

┣″┣″┣″┣″┣″┣″┣″┣″

とかいうのもしっくりくるプレッシャーも。

 

誰も彼もが視線をプローブから、ゆっくりと背後へ移していく。それこそ油を差していないブリキ人形のように、ギギギギ…という空耳が聞こえんばかりに。

 

阿修羅がいた…いや、阿修羅すら超越する存在(世界最強)がそこにはいた。

 

「お前達はいつになったら席に着くんだ?」

 

何の事かと時計を見やれば、休み時間は終わりを告げている時刻となっており、つまりチャイムは鳴ったと言うことだ。

それを解った彼女らに千冬は、目は怒りを、口元は笑みを浮かべる。

 

「とっくにチャイムは鳴っている!!席に着かんか馬鹿者共が!!」

 

彼女の怒号と共に、蜘蛛の子を散らすかの如く解散し、我先にと席に着く。

やれやれとこめかみを押さえながら千冬は壇上に戻り、2時限目の授業を始める。

 

(一夏…)

 

(な、なんだ?)

 

プローブ越しに小声で話す木綿季。その声は震えており、恐らくは涙目なのだろう。

 

(千冬さんて…怖いね…)

 

(お、おう。まぁ授業中は特にな。でもプライベートだとだらしn…)

 

スコーン!!という音と共に、一夏の言葉は遮られ、同時にプローブも何かの衝撃でカメラがひどく振動する。それと共に、何故かメディキュボイド内部にいる木綿季の額に、鋭い痛みが走った。

 

「『いったぁぁぁぁぁっ!?』」

 

「おい織斑、紺野。授業中だ。静かに受けろ。いいな?」

 

「『は、はい。』」

 

投げられたのはチョーク。一夏の額と、そしてプローブに、見事なまでのコントロールでぶつけてきたのである。

しかし現実世界の一夏ならまだしも、仮想世界の木綿季にまでダメージを与えるとは、やはりいろいろと自分の姉は規格外だと改めて思い知らされた一夏だった。

円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。

  • にいに。
  • お兄ちゃん。
  • 兄さん。
  • 兄貴。
  • 一夏。
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