インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~ 作:ロシアよ永遠に
まず切り出したのは、俊敏性の高いマドカとユウキだった。
ヴァルハザクの動きそのものをを見極めるために、恐らくは脚を伸ばして届くかどうかの距離まで詰める。それに釣られてか、奴は右前脚を振り上げると、正面から迫る2人を薙ぎ払わんと、足下の白骨を、まるでブルドーザーの様に蹴散らしながら薙いだ。だが2人はそれを読んだのか、左右に散りながら薙ぎ払った前脚が引っ込められるまでに後ろ脚まで駆けると、ほぼ同時に後ろ脚を切り抜ける。赤黒い鮮血を模したポリゴンと共に、それがダメージを与えたことへの確信に変わる。ダメージを与えたことによって、2人にヘイトが向いたのか、ゆっくりとその巨大な体躯を旋回し、先ずは手数の多いマドカへと狙いを定める。
しかし、
「おいおい、こっちも忘れるなよ!」
そのモーションのうちにヴァルハザクの懐に飛び込んだイチカは、雪華を鞘から居合抜刀し、神速の斬撃を見舞った。そのグロテスクながらもしなやかな尻尾に、数本の斬撃痕が刻まれる。
鞘に納めた瞬間、お返しとばかりにヴァルハザクの尻尾がイチカに叩き付けられる。例の霧を纏いながらのそれは、叩き付けられた衝撃で舞い上がり、紙一重で躱したイチカの視界を塞ぐと共に、肺にその毒霧を有無を言わさず吸い込まさせる。
「ぐぉっ!?」
直接的なダメージは無いにせよ、毒霧を吸い込んだことにより勢いよく蓄積ダメージを受けてしまった。兎にも角にも、この霧から離れる為にバックステップを踏んで距離を取る。
「イチカっ下がって!」
この混沌とした空間に似つかわしくない透き通った声が響き、白い閃光が目の前を通り過ぎた。
残る1人であるシロであることは自明であった。
彼女は小柄なその体を利用し、そして姿勢を低く保つと、滑るようにヴァルハザクの身体の下へと潜り込む。そして、その勢いのままに身体を旋回して、菊一文字の長い刀身による回転切りを見舞う。
瞬間、鮮血が飛び散り、ヴァルハザクの四脚にそれぞれ一閃が刻み込まれた。
シロが身体の下を駆け抜けると、4人は一旦距離を取る。
「…ダメージの通り自体は悪くない。」
「うん。普通に切るだけでも、手応えは感じるね。」
奴の体力ゲージを見れば、さっきの応酬で一本目のゲージのうち、四分の一削れていた。先程の手応えから察するに、防御そのものは、アストラル種のモンスターと同じくしてそこまで高くないようだ。
…高くないようなのだが…
「でもやっぱり、あの霧が厄介だね。」
「だな…攻撃そのものが直撃はしなくても、フィールドダメージに加えて、霧による削りダメージが出てる。…体格の割に、攻撃範囲は広いとみた方が良い。」
癒やしの薬液を飲みながらイチカは冷静に、極めて冷静に分析していく。
フィールドダメージがある以上、迅速に片を付ける必要がある。しかし、焦って畳みかけようとすれば、あの広い攻撃範囲によって、瞬く間にリメインライトへと変えられてしまうだろう。
冷静かつ積極的に攻め、確実に避けていくスタンスが求められるのは道理としても、やはりヒーラーが居ないことに後悔が生まれる。
しっかりと躱すことを主観に置く以上、装備に敏捷性の高い軽装を多くしているユウキやマドカ、そこそこに軽くしているイチカはともかく、シロはタンク重視の重装だ。走行ならまだしも、ステップなどの瞬発力はそうまで無いため、霧による削りダメージを必然的に受けやすくなるだろう。
「…で?どうするんだ?リーダー。」
「…ユウキとマドカは、機動力を生かして左右から遊撃。俺とシロは魔法で攻撃しつつ、隙を突いての一撃をたたき込む。これに限るかな。…あと、継続ダメージがある以上、体力が半分を切った所で回復すること。これが鉄則だ。」
「らじゃっ!」
「あと、分かってると思うけど、回避は余裕を持ってだ!」
散開すると同時に、4人の間を霧の奔流が駆け抜ける。
奴の口から放たれるそれは、まるでジェット噴射のように霧を濃縮して吐き出している。差し詰め、ブレスのような物なのだろう。
「ユウキ、私は左を、お前は右を頼む。」
「任せてよ!」
再び初撃のように、足の速い2人が先行し、ブレスを横目に見ながら駆けぬける。
ガシャガシャと、骨を踏み抜く音を聞きながら、先ずはマドカが先手を取った。純手に構えた二振りの短剣に、ソードスキルの光を纏わせ、交差させるようにヴァルハザクの横っ腹に斬り付ける。
「まだだ!」
まだソードスキルの光は消えない。返す刃で、左手の短剣を逆手に持ち替え、更に十字傷を斬り付ける。その傷跡は、まるでオオカミか何かの牙による裂傷にも思える。
「私のOSS…名付けて、マドカ・ファング…貴様に見切れる筋m…ぐはっ!?」
「マドカー!?」
OSSのお披露目大いに結構。
確かに、以前は何処か一匹狼の雰囲気を持っていた彼女には、らしいと言えばらしいが、ドヤ顔で、しかも仕留め切れてない相手に背を向けて、決め台詞を吐いていたところに、尻尾による薙ぎ払いで吹き飛ばされていては、何もかもが台無しである。
「マドカの仇ぃっ!」
マドカと正反対に回り込んでいたことで、ユウキの目の前には丁度ヴァルハザクの顔面があった。
古今東西、大抵の生き物の尤もたる弱点に頭があげられるため、狙ってみて損はないはず、そう判断した彼女は、腰撓めにマクアフィテルを構えると、脚のバネを利用して跳躍する。同時に、ソードスキルの光を纏わせて、ヴァルハザクの、まるで骨のみと思われるような顎を、下から切り上げた。骨に当たったと言う感覚はあったが、それでもダメージは通っているのか、脚を斬り付けたときよりもダメージエフェクトは派手だった。その手応えにユウキはもう一撃と言わんばかりに、振り上げた剣を返す刃で振り下ろすと、先程と同じように大きなダメージエフェクトが入る。その恩恵があってか、ヴァルハザクは先程の咆吼よりも低い声で呻きをあげると共に、その体躯をよろめかせた。。
「よし!合わせろシロ!」
「うん。」
抜刀し、両手で構えた雪華と菊一文字の刃が煌めき、片や地面スレスレを這いながら、片やその長い刀身からやむを得ずだろうが、地面と、そして転がる骨共をガリガリと削りながら、その刃をヴァルハザクの片翼に向けて切り上げる。ソードスキルによるシステムアシストからの跳躍で、数メートルはあろうその高さの翼に、それぞれカタナソードスキル『浮舟』の一太刀を打ち込んだ。
自身らが飛び上がった事で、蹌踉めきから回復したヴァルハザクにとっては格好の獲物。太陽や月の光が差し込まないこの洞窟では飛翔が出来ないため、着地するまでの2人は正に隙だらけなのだ。
…だが、
「「はぁぁぁあっ!!」」
『浮舟』の跳躍の体勢から2人は身体をひねる。それと共に、消えたはずの『浮舟』によるソードスキルの光が、また別色の輝きを放っていた。捻った身体のその反発を利用し、眼前の翼、その先端と空気を巻き込む様に切り裂き、その根元へ向けて剣閃を穿つ。システムアシストによる、身体が引っ張られる感覚に従いながらヴァルハザクの胴体、その横っ腹に2人は着地する。同時に巻き込んだ空気と共に、周囲360度をソードスキル『旋車』による剣戟が生まれた。
翼の根元を深々と切り裂いただけに、普通ならば翼そのものを切り落としかねないものだが、そこはゲームというシステム上、極端なダメージはなかった。だが、旋車による巻き込みダメージによってかなり体力を減らすことに成功したらしく、ゲージも1本目を削りきることが出来た。
回復もかねて体勢を立て直すべく、4人は固まりすぎない程度の距離で一旦集合をかける。
「早くも三分の一か。ハイペースだな。」
「肉質が柔らかいのが幸いしてるが…ゲージ1本削ったんだ。パターン変化に気をつけろ。」
旧SAOのボスもそうだったが、体力を一定数減らすごとに攻撃パターンを変えていくのがRPGの常と言うべきか。
そして目の前のヴァルハザクも例に漏れず、その体躯を振り上げ、あの甲高い雄叫びを響かせたかと思うと、その身に纏う霧を更に濃密な物へと変化させていく。
「…え~……。」
少々ゲンナリした声で、変貌を遂げた奴を見やるユウキ。
ただでさえフィールドダメージに加えてさっきの一合で体力が三分の一程削られ、今もなお減少中だというのに、見るからに更に霧のダメージを増やすと言う状況なのだ。
「…悪質だね。この設定。…ヒーラーが居たら良かったけど。」
「言うな、…同感だけど、今更どうしようも無いだろ。」
シロの意見も尤もだ。
だからと言って、今更どうのこうのと言っても詮無きこと。兎にも角にも、目の前の龍をどうにかするのが先決に変わりない。
「攻め手を緩めるな。…より一層攻撃を確実に回避する。それだけだ。…決め台詞とか、ドヤ顔は要らないからな。」
そうイチカに言われて、バツの悪そうに顔を背けるマドカの顔は、小っ恥ずかしさからかほんのり赤くなっている。
さて、仕切り直しだ。
ヴァルハザクがその体躯を仰け反らせ、大きく息を吸い込んでいく。それに伴い、ボス部屋に漂う霧も、奴の体内に吸引されていくのが目に見えて分かる。比例して、霧によるダメージも、僅かながら減少した…
そう感じたのもつかの間。
大抵、大きく息を吸い込むモーションの後に行う攻撃と言えば想像がついてくる。
「ブレス攻撃が来るぞ!!」
イチカの声に、散開する。
先程のような直線的なブレス攻撃ならば、大きな攻撃のチャンスだ。
奴の直線上を避けながら、誰しもそう狙いを定め、着地と同時に奴の真正面を避けながら突っ込む準備をしていた。
だが…
体力が減少した事による変化は、纏う霧の濃度のみではなかったことに気付かされた時は、皆がそれに吹き飛ばされた後だった。
奴は、その細長い首を捻り、まるで自身の前方を薙ぎ払うようにブレスを吐き出してきたのだ。
左から右へと
そして返す首で右から左へ
広範囲を薙ぎ払うそれにより、距離を詰めるべく駆けだしていた4人は物の見事に直撃を受けて、後方へと吹き飛ばされる。
「いったぁ……!」
「まさか薙ぎ払ってくるとは…思わなかったな。」
急ぎ起き上がる最中でも、ヴァルハザクは容赦が無い。
起き上がるタイミングを狙う起き攻めの如く、細い四脚で駆け、その巨大な体躯をぶつけんとしていた。その狙う先は…
「シロ!躱せ!」
タンク役であるシロだ。
機動性の低い重装備の彼女はその装備の重量から、どうしても他の三人と比べて体制を整える時間を要してしまった。そこにヴァルハザクの巨大が、骸骨を蹴散らしながら迫り来る。
ガキィッ!!
甲高い音がボス部屋に木霊した。
「ぐっ!」
菊一文字を地面に突き刺し、それを軸にしての防御。だが細い刀身に加えて、ヴァルハザクの巨体による突進は、重装備といえどもシロの身体を吹き飛ばすには十分な物だ。
踏ん張りが効かず、軽々と吹き飛ばされたシロは、その体躯を骸骨の上に転がす。
「く……首の皮一枚…!」
ブレスに加えて、突進の一撃を受けてしまったことで、シロの体力ゲージは一気にレッドにまで減少していた。恐らく、ガードをしなければリメインライトへと変えられていただろうことは容易に予想がつく。
そしてシロの目の前には、未だ巨大な龍が、その身体を擡げている。
絶体絶命。
ガードをしたことにより、その反動によって一時的な硬直に陥った彼女は、ヴァルハザクにとって格好の獲物と化している。
情けない。
耐久性を上げるための重装備が、今回はかえって仇となったのだ。
護るための装いが、足を引っ張ってしまっては、余りにも皮肉な物である。このままリメインライトになってしまうのは火を見るよりも明らかだ。
ゆっくりと立ち上がりながら、シロを薙ぎ払わんとする目の前の龍、その狂気に満ちた目を見やった。
これから身に降る衝撃に身構えながら…。
…だが、
「やらせるかよっ!」
一番近くに居たイチカは、体力を回復させることもなく、旧SAOで居合ソードスキルの模倣のOSS『刹那』を発動させる。旧SAOでは、イチカの剣戟、それを神速たらしめたソードスキルがこの『刹那』。消えたと思わせるかのような速度で相手との距離を詰め、大振りの薙ぎ払いで一網打尽にする、正に先手を取るべくあるような物だ。見てからの回避の難しさもあり、奇襲に向いているこの技だが、ひとたび避けたり防いだりされれば、一気に追い詰められる諸刃の剣だ。
そして現在はあくまでも模倣である『刹那』は、システムアシストがない以上、そこまでの速度は出ず、イチカの全力でのステップが関の山だ。だが、その分の隙が少なくなっており、ピーキーな性能から、バランスの良い物へと変わっていた。
そして…
抜き放つ刃。
その軌道は、もはや視認は出来なかった。ただ、キラリと何かが光った、そう感じただけ。
正しく、閃の軌跡。
風を、空を断つ音のみが、その残響を残した。
そして抜き放ち、その一閃を終えた刃が煌めくことで、雪華が抜き放たれた事を認識する。
『刹那』による剣閃は、今まさにシロにとどめを刺さんとするヴァルハザクの前足を深く斬り裂く。
その痛みに耐えきれないかのように、奴は悲痛な雄叫びをあげながらその巨体を横転させ、まるで浜に打ち上げられた魚のように藻掻き始めた。
「ダウンだ!シロ、今の間に体勢を整えろ!」
「う、うん。」
癒やしの薬晶を取り出しながら、ヴァルハザクの正面を避けるように抜け出すと、その結晶を握り砕き、中に秘められた治癒効果がシロを覆い尽くす。レッドまで下がっていたHPが半分以上までこれで回復する。
そう思っていた。
「…あれ?」
「どうしたの?シロ。」
未だ何とかHPをグリーンに保っているユウキが、シロの言に問いかけた。
「HPが…グリーンにならない…?」
実質、最大HPの75%を回復する薬晶。それを使用したのだから、いくらレッドまで下がっていたとしても、これによって安全圏とされるグリーンまで回復するはずだ。にもかかわらず、シロのHPバーのカラーは未だイエロー。それも、丁度50%のところで止まっていた。
「…俺もだ。…何で?」
同じく、ヴァルハザクが転倒したことで体勢を整えようとして距離をとったイチカ。彼も回復せずにシロを救うためにヴァルハザクを攻撃しに行ったため、このタイミングで薬晶を使用した。…だがシロと同じくイチカのHPも、50%の所までは回復したものの、それ以上にまではリカバリーしない。
「ボクとマドカはグリーンまで回復してるのに?」
「あぁ。私も確かに問題なく50%以上の所まで回復出来たぞ?」
何がどうなってこうなったのか?
まだなお藻掻いているヴァルハザク。それにより吹き上げられる霧を見ながら、まだ安全であることが伺える。
だが遅からず奴は起き上がり攻めてくるだろう。出来るならばそれまでに最大体力の減少の原因を解明したい所だ。
「…もしかして。」
ポツリと、思案していたシロが呟くように口を開いた。
「フィールドダメージに加えての…特殊な状態異常…とか?」
そんな馬鹿な。
スリップダメージに加えて最大体力減少など、回復アイテムをどれだけ消費させるつもりなのか。…いや、ヒーラーが居ればある程度問題ないはずなのではあるが、居ない者をどうこう言っても仕方ない。
「状態異常の原因として考えられるのは…アイツの出している霧…みたいなのだと思う。…証拠に、私とイチカの身体に、同じ色の霧みたいなエフェクトが纏わり付いてる。」
「言われてみれば…。」
「多分…マドカとユウキが掛かってないのは、私とイチカは…2人よりもアイツに近付いている時間が若干多いからだと思う。」
「…つまり?」
今ひとつ理解しきれないユウキが首をかしげる。
「つまり、アイツに近付いて攻撃すれば、体力を半減させられるリスクを孕んでるって事だよ。」
「えぇ……じゃぁどうやって攻撃すればいいの?」
体力半減に加えてスリップダメージ。それに加えて、ヴァルハザクの巨大な体躯による攻撃範囲…。
正直、最初はダメージの通りやすさに、スリップダメージは気にはならず、このダンジョンの過程を見るにあたっては、割とヌル目のボスだとは思った。
だがこの状態異常が存在することを認知した事により、先程まで攻め気だったユウキが不安な声を出すに至るまでに攻撃の積極性を削ぐことになってしまった。
過去のSAOにおけるデスゲーム、イチカの中で『HP0=リアルでの死』というその名残が根強く残り、この窮地に拍車をかけていた。そして思案する時間の中でも、未だにHPは少しずつすり減り、ヴァルハザクもその体躯をゆっくりと持ち上げている。…どうやら転倒状態が解除されたようだ。
「大丈夫だ、問題ない。」
目の前の無理ゲーに気圧されかけていた面々に対して、不敵な笑みを浮かべてそう言い放ったのは、他でもないマドカだ。
「私が囮をやってやる。その隙に畳みかけろ。」
「囮って…正気なの?」
「本気も本気、正気も正気だ。…今この中で一番手数が多いのは私だ。…それに比例してヘイトも貯めやすい。そしてSPDも私が一番高い。つまり、ヘイト集めに私は適していると言うことだ。」
確かに両手に持った短剣から繰り出される連撃は、キリトの二刀流に差し迫る手数だ。さすがにダメージは彼に軍配が上がるものの、それでも手数による蓄積ダメージとヘイト集めは他の追従を許さないのも確かである。
「マドカ…大丈夫なの?」
「心配いらん。…私に任せろ。」
短剣を構えるとともに、まるで猛禽類を思わせるかのような笑みを浮かべたマドカは、起き上がったヴァルハザクを見やり一瞥する。転ばされてお冠なのか、あの甲高い咆吼をあげてこちらを威嚇してきている。
「ところで…イチカ。一つ確認してもいいか?」
「いいぜ?なんだ?」
「ああ。囮を務めるのはいいが…… 別に、あれを倒してしまっても構わんのだろう?」
「お、おう。」
「がつんと痛い目にあわせちゃえマドカ!」
意気揚々と、囮以上の役目を果たさんとする彼女に、ユウキは発破というか、エールを送る。
それに満足したのか、
「そうか。ならば、期待に応えるとしよう!」
マドカはヴァルハザクへ向けて、全力で駆けていった。
「イチカ。」
不安そうな声で話しかけてきたのはシロだった。
「…なに?」
「俗に言うあれは、死亡フラg」
「いや、問題ない。…多分な。」
シロの予感めいたものは気になるのだが、とりあえず視界の隅でヴァルハザクの尻尾によって黒猫が吹っ飛ばされていたのは、幻覚だと自身に言い聞かせることにした。
円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。
-
にいに。
-
お兄ちゃん。
-
兄さん。
-
兄貴。
-
一夏。