インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~   作:ロシアよ永遠に

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第50話『立ち塞がるは巨刀』

「ん……ふぁ…。」

 

イチカとシロの試合終了による観客の大歓声に、試合前から気を失っていたユウキがようやく目を覚ます。どうやら途中から寝てしまっていたようで、半開きの眼をゴシゴシと擦りつつ観客席から起き上がる。

見渡してみれば、観客総立ちの大喝采。雄叫びや指笛が壮大に耳に響く。

 

「ん……何の騒ぎ…?」

 

「あ、ようやく起きたわねユウキ!試合、終わっちゃったよ?」

 

「試合……?終わっちゃった……?」

 

はて。なんのことか?アスナの言う言葉の端々を、覚醒しつつある頭で必死に呼び覚ます。

…?

 

……。

 

………!!!

 

「あ~!!そうだ!!イチカとシロの試合!!!」

 

やってしまったと言わんばかりに頭を抱えて膝をつく。大切な仲間二人の試合、その内容を眠りこけて見ていなかったなんて、紺野木綿季!一生の不覚!!!

 

「ど、どっちが勝ったの?」

 

「安心しろ、イチカが勝ち進んだぞ。……まぁヒヤヒヤさせられはしたがな。」

 

成長したとは言え、まだまだ修行が足りない弟に肩をすくめるオウカだったが、その内心は喜色に満ちあふれていた。刀一本気かと思えば、他の戦法をも持ち合わせていた。

あれを実戦でこなせる実行力。やはりSAOの2年は何物にも代えがたい、そして得がたい経験だったのだと改めて感じる。

そんな弟を、オウカは内心で誇らしく思っていた。

 

「そ、そっか、良かった…。」

 

勝ったことにより、ユウキの対戦相手は決まった。

この大舞台で臨む再戦、そして決着。

思えばここにくるまでいろんなことがあった。

27層ボス戦や、マドカとの出会い、リアルでの邂逅、IS学園の授業参加に、ISの操縦。

あの出会いと決闘からそんなに時間が経っていないはずなのに、とても濃密な時間過ごしていた。

でも今度は、本気の戦いになる。イチカは最初から全力で来るだろう。無論、それはあえて望むところだと言わせてもらおう。だが決着はまともな物にしたいとも思う。最初の決着のような…あんな……

 

ボンッ!!

 

思い出したら、一気に顔が熱くなってくる。

仮想世界とはいえ、そして事故とはいえ、唇を重ねてしまったのだ。思春期真っ盛りのユウキとしては、刺激が強いなんて物ではないだろう。

だがその勝負をきっかけに、スリーピングナイツの面々やイチカと一緒に冒険したり、一緒に騒いだり、マドカと出会ったり。

たぶんアレが無ければこんなにも満ち溢れた日々は過ごせなかった。

そして、募った想いに決着を着けるためにも、次の戦いは全力で望むのみ。

 

(ボク、負けないよ。イチカにも…そしてボク自身にも…。)

 

アスナとともに、イチカへの恋を確かめてから、啖呵を切っても何処か臆病で居てしまった弱い自身の心。この憶病風に負けないように、ユウキは今一度深呼吸する。

そして視線の先には、観客席に戻ってくる先の激闘を繰り広げた2人。

絶の剣と刀、そして気持ちへの決着の刻は、確実に近付いてきていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決勝トーナメント第三回戦

 

Eブロック代表 ゼンガー

    VS

Fブロック代表 キリト

 

リングの中央に、がっしりした体つきの銀髪の成人男性アバターであるゼンガー、そして黒の剣士ことキリトがその剣を構える。

片やオーソドックスな形状の片手直剣のユナイティウォークス。キリトが好んで使う攻撃力重視の一振り。

だが相対するゼンガーの持つ得物。それは異質なまでに巨大な物だった。

先の試合でシロが使っていた正宗が霞んでしまう程にその威圧感は強大。刀身およそ3メートル。だがただ長いだけではない。その刃の幅ですら人の胴ほどもありそうなまでの物だ。

 

「…遠巻きに見ても思ってたけど、実際近くで見ると想像以上にでっかいな…。」

 

「我が霊式斬艦刀にて、黒の剣士の相手を仕る。」

 

その巨大なまでの剣、その重量に囚われることなく振り回し、圧倒的な攻撃力で敵を薙ぎ払ってきた。それはまさしく一撃必殺と言うに相応しい。ただでさえズバ抜けた攻撃力に、STR偏重のビルドがそれに拍車をかけている。

 

(こりゃ…直撃したら一発で終わりだな…。)

 

 

ブーーー!!!

たらりと頬を伝う冷や汗をよそに、試合開始のブザーがリングに鳴り響く。

 

「推して参る!!」

 

霊式斬艦刀を片手に構え、SPDに割り振っているのかと疑うほどに素早い踏み込みで自身の間合いへと立ち入る。

この踏み込みと、斬艦刀の薙ぎ払いで数多のプレイヤーが斬り捨てられてきた。

 

「ぬぉぉぉぉ!!!」

 

そしてそのセオリー通り、ゼンガーは出鼻を挫くかのように巨大なその刃の錆にせんとぶん回してきた。並大抵のプレイヤーなら、予選のように斬艦刀の威圧とゼンガーの気迫で尻込みし、先手の一撃で敗退しているだろう。

だが、生憎とキリトは並大抵のプレイヤーではない。

 

「よっ!」

 

横凪に払われた斬艦刀、その刃を跳躍して躱したキリトはその刃の腹に着地すると、それを足場にゼンガーに迫る。折角ゼンガーまでの『直通の道』が出来ているのだ、利用しない手はないだろう。

何処か初手で決まる期待をしていたゼンガーは、躱されたことに一瞬驚くも、直ぐに我を取り戻して刃の向きを変える。すると当然キリトの足場の向きも変わるわけで、その勢いを利用して跳躍。ゼンガーの背後へと回り込む。

 

(先ずは初手を取る!)

 

まずは体力に優位性を持たせることで、試合の主導権を握る。それだけでいい。

ブレーキの勢いを利用してユナイティウォークスをホリゾンタルを発動して薙ぎ払う。これは入る!そう確信していたキリトは、自身の甘さを文字通り痛感する。

響いたのは、ダメージを入れた斬撃音ではない。

金属と金属がぶつかり合う甲高い音だ。

 

「まだ甘いぞ。」

 

横凪に迫ってきた斬艦刀の腹によって、キリトはユナイティウォークスごと大きく吹き飛ばされる。

やはりその質量に違わぬ一撃に顔をしかめながらも、翅を利用して空中制御する。

 

(やっべぇ……身体に直撃してたら…!)

 

想像しただけでも血の気が引く思いだ。

だが、キリトに休む暇などない。

 

「はぁぁぁぁっ!!!」

 

跳躍し、斬艦刀を振りかぶったゼンガーが、キリトを文字通り両断せんと巨大な刃を振り下ろしてきた。

咄嗟に横に躱したは良い物の、その威力はリングの惨状を見れば食らわずとも理解できる。

文字通り、リングを半壊させるほどの一撃。それはスメラギの『デュールの隻腕』に迫るほどで、PVPにおいて過剰なまでの威力だ。

 

(ここで尻込みしてちゃ、勝てる物も勝てない…!)

 

攻める!

ただそれだけだ。

攻めて攻めて、反撃の暇を与えない!

及び腰になった腰を上げて、斬艦刀から遠ざかるようにしてゼンガーの周囲を駆ける。振りの大きさの隙を突いて懐に飛び込む以外無い。

想像したとおり、自身を背後から薙ぎ払おうと刃を水平に構えて振りに掛かるのが目に入る。これを飛び避けて、その隙に踏み込めば勝ちを引き寄せられるはず。そう企てて、避けるタイミングを見計らおうとリズムを整える。

 

しかし、

 

彼が耳にしたのは、風切り音ではない。

ガリガリと、何かを掘り返すような甲高い音だ。

 

「いぃっ!?」

 

振り返ってみれば、リングとその下の土台を巻き込み、数多の破片と砂塵を巻き上げながら迫る斬艦刀の姿。その姿たるや、まるで巨大なブルドーザーが迫り来るかのように錯覚させる。

 

「斬艦刀・星薙ぎの太刀!!!ぬぅぁぁぁぁ!!!」

 

その長いリーチと砂塵の巻き上げ。それにより外面へのダメージ判定範囲が広がっているため、射程範囲外へ出ることも出来ず、ましてや当初の予定通りに飛んで避けるとも敵わない。文字通り八方塞がりだ。

 

(ちっ!どうする…どうする!?)

 

手をこまねいている間にも、背後から壁の如く迫る斬艦刀。ここで直撃を食らうわけには行かない。

…そうなったキリトに委ねられた選択肢は、一つしか無かった。

そして意を決したとき、キリトの姿は砂塵の嵐の中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

「キリト君!!」

 

砂塵に消えたキリトに、恋人のアスナは思わず悲鳴にも似た声を上げる。予想以上に攻め立てるゼンガーの斬撃は、キリトの実力を知る面々を驚愕させるには十分なほどで、彼が攻めあぐねているのが更なる拍車をかけていた。

 

「あわ……キリト、見えなくなっちゃった…。」

 

「っていうか、観客席(ここ)まで土煙に呑まれるとか、どれだけの力を入れてんだよ!?」

 

もうもうと視界を遮られ、観客席のあちこちから悲鳴が響き渡る。

 

「………。」

 

「………。」

 

そんな中、不動でリングを見つめるのは、規格外のオウカと、意外にもシロだった。

 

「やはりキリトとの対戦は楽しみになってきたな。」

 

「ん、私も戦ってみたくなってきた。」

 

2人が見据える先、徐々に晴れゆく粉塵の中、鈍い黒の輝きと、神々しい黄金の輝きが光る。

 

「あの咄嗟の判断で展開したか。この試合、まだまだ解らんな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む……!」

 

星薙ぎの太刀で、リングごとキリトを薙ぎ払った気で居た。

だが、途中で斬艦刀の刃がその動きを止めた。まるで何かが自身の刃を押し止めるかのように。

 

(我が斬艦刀を一振りの剣で止めた?いや、それはあり得ぬはずだ。)

 

あれだけの勢いで薙ぎ払えば、並大抵の『片手直剣一本』など、初手の時と同様にプレイヤーごと吹き飛ばせる。

ならば何がせき止めているのか?

その答えは、砂塵が晴れる中、幾何もしない内に明かされることとなった。

右の手にはユナイティウォークス、左の手には黄金に輝く片手直剣。その神々しいそれは、明らかにオーダーメイドや店売りでないことを物語るかのように眩しい。

伝説級(レジェンダリィ)ウェポン『エクスキャリバー』

その刃が白日の下にさらされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二刀流!少年!やはり私と君は運命の赤い糸で結ばれていたようだな!乙女座の私には、センチメンタリズムな運命を感じずにはいられない!」

 

もはや陣羽織の男のテンションは、オーバーフローしていた…。

円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。

  • にいに。
  • お兄ちゃん。
  • 兄さん。
  • 兄貴。
  • 一夏。
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