インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~   作:ロシアよ永遠に

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キリの良いところまでで切ったら短くなってしまった。申し訳ない。


第52話『刀と剣』

「よかったのかね?」

 

コロッセウムの通路を歩くゼンガーに、仮面の彼は語りかける。

 

「なにがだ?」

 

「とぼけなくても構わんよ。あの黒い少年との試合のことさ。あれだけの体力差がありながらも試合を放棄した。君ならば徒手空拳と言えども渡り合えたのではないか?」

 

「無理だな。」

 

「ほう?君ほどの男にそう言わしめる程の実力者なのかね?」

 

「いや、単に体術のスキルとやらを習得していない。いくら現実で戦えようと、ここはあくまでもゲームの世界だ。そういう物に左右されるのは仕方あるまい。」

 

「そうだったな。いや、ここまでリアリティに凝っていると、どうしてもイコール現実と捉えてしまいがちになってしまう。」

 

くっくと笑う仮面の男に…ブシドーは改めて仮想世界の技術、その高さに感嘆する。

 

「そういうお前の次の対戦相手は…」

 

「あぁ、知らぬ相手ではない。恐らくな。」

 

「…軍のトップガンの力、とくと見せて貰うとしよう。」

 

「軍のトップガン?否!人は私を、Mr.ブシドーと呼ぶ。ここではそう呼ぶと良い。…迷惑千万だがな。」

 

アバター名を呼べと言って迷惑千万と言うのもおかしな話だが、ともあれ、ブシドーはゼンガーを背にして自身の戦場へと赴く。その後ろ姿は何処か様になっている。

 

「我が盟友が鍛えしこの二振りで、少年の目を釘付けにして見せよう!」

 

何処かおかしな彼の言動が、それを台無しにしているのは言うまでも無いが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Gブロック代表 Mr.ブシドー

    VS

Hブロック代表 パトリック

 

片や二刀流の金髪でシルフ剣士

片や赤髪で軽装のサラマンダーの槍使い

ダイレクトに結果を伝えるならば、卓越した剣技のブシドーに対し、彼ほどでは無いにせよ、熟練の槍使いのパトリック。怒濤の攻めによるブシドーの有利かと思いきや、躓いて危うい攻撃を紙一重で躱したり、足に当たった小石が上手い具合にブシドーの脛にぶつかったりと、何かとパトリックは悪運が強く、中々勝敗が決しなかった。結果としては時間切れ(タイムアップ)でHP残量による判定でブシドーに軍配が上がる結果となった。

試合後、観客席で『大佐ぁ~!』と眼鏡を掛けたウンディーネのプレイヤーに泣きつくパトリックが目撃されたとかされてないとか。

 

 

そして…

 

 

 

 

『皆様お待たせしました!これより第1回ALO統一デュエルトーナメント準決勝を開始します!!』

 

勝ち進む毎に上がっていくボルテージは、当事者にとっては緊張と共に熱意を与えていく。そして目の前の相手が相手ならなおのこと。目の前で不敵な笑みを浮かべる想い人に、どちらも釣られて声も出さずに笑い合う。

 

『では!Bブロック代表、絶剣ことユウキ選手!!ダークホースと思われたオウカ選手を、どんでん返しの逆転劇で勝ち抜き、その無敗の戦績を継続しています!!』

 

「ユウキー!!頑張ってー!!」

 

「負けんじゃねぇぞー!!」

 

「ふ、ファイト、です…!」

 

「良い試合をお願いしますよ!」

 

「頑張れリーダー!!!」

 

しばらく治療で会えなかったスリーピングナイツの面々が、ここに来て短い治療の暇を縫って駆け付けてきてくれた。病院のモニターや携帯端末でも観戦できたのだが、それでも生での応援という物は何物にも代え難いもので、ユウキは片手を上げてそれに応える。

 

『対しCブロック代表、絶刀のイチカ!予選では並み居る強豪をその鮮烈なる刃で斬り捨て、決勝1回戦では魔法や体術、そして投剣スキルを駆使したトリッキーな戦いで魅せてくれました!』

 

「イチカー!負けるなよー!」

 

「イチカ…ファイト…!」

 

「えと…私、ユウキとイチカ君、どっちを応援すれば……う~!どっちも勝って~!!」

 

「いや、落ち着けアスナ。気持ちはわからんでもないが。」

 

約一名、気持ちのせめぎ合いの中で錯乱していたが、ここは一先ず置いておこう。

ともあれ…

 

「やっと、この時が来たね。」

 

「あぁ。」

 

「こんな大舞台でイチカと決着を着けられるなんて…ね。」

 

「あの時のデュエルとはダンチのギャラリーだ。その分盛り上がる。」

 

「流石にこの人数の観客の前で、アレは無しで…頼むよ?」

 

「アレ?」

 

アレと言う代名詞を出されても、イチカにとっては何のことか見当がつかずに首を傾げる。そんな彼に少し憤慨して、ユウキは顔を赤らめていく。

 

「あ、アレってのは…そのぅ………キ…」

 

「キ?」

 

「キ…!」

 

「キ?」

 

「~~!!!あぁぁ!もう!この鈍ちん!鈍感!とーへんぼく!!」

 

「えぇ~…」

 

何故か罵倒された。

ユウキからしてみれば、前回のデュエルで事故とはいえキスしてしまったのだ。それを再び、それも前回とは比べものにならないギャラリーの前でしようものなら、羞恥心でALOにログイン出来なくなってしまいそうだ。

 

『なにやら痴話喧嘩を繰り広げております両名ですが、そんなもんは犬にでも食わせておくとして…。』

 

酷い言いように2人は抗議の声を上げるが、審判には聞かぬ存ぜぬの一心でスルーされる。

 

『それでは!準決勝第一試合…カウントスタート!』

 

「ユウキ。」

 

「…なに?」

 

少しムスッと頬を膨らませるユウキ。鈍いイチカに御立腹のようだ。しかし、そんな彼女を意に介する事無く、彼は続ける。

 

「俺は、この試合に勝ったら…。」

 

「し…試合に、勝ったら?」

 

今度はユウキが首を傾げる番だ。だが真っ直ぐに自身を見つめるイチカの表情に何処か押され、同時になぜかありもしないはずの胸の鼓動が速くなり、そして頬が熱くなってくる。

 

「俺は、お前に俺の気持ちを伝えたい。」

 

そう、これがキリトに勧められた告白のシチュエーション。自身の想い人に向き合い、そしてその試合の後に気持ちを伝える。何処かベタながら、しかしピッタリのシチュエーション。

イチカの、気持ち。

その言葉にユウキは、ここにあるはずのない心臓がバクバクとその鼓動を跳ね上げ、そして耳障りに感じた。

自身が予想する物をイチカが考えているなら、負けるのもやぶさかではない。そんな考えが一瞬頭を過るが、直ぐにそれを霧散させる。

そんなことをして何の意味がある?

この時の、そしてこの決着の為に2人は勝ち進んで来たと言っても過言ではない。なのに負けても構わないなどと、そんな考えに至った自身が恥ずかしくなる。

全力でぶつかって、その上で負けるのは致し方ないだろう。だが負けても構わない考えでその想いを受け止めては、イチカにも、そして自分自身の想いにも反する。

だったら、自分に正直に裏も表も無く、とにかく前へ進んでいく。アスナがそう自身を評してくれた事を思い出し、熱くなってきた顔と想いを少しだけ冷静に移す。

そう。

ボクだって、この戦いの先に伝えたい『想い(大好き)』があるんだ。

 

「奇遇だね。ボクもこの戦いに勝ったら、イチカに伝えたい想いがあるんだ。」

 

思わぬ返しにイチカは一瞬目を見開くが、直ぐに戻すと、何処か嬉しそうに口許を釣り上げる。ほんのり、頬が朱に染まっているように感じたのは気のせいだろうか?

 

「負けられないな、互いに。」

 

「でも、この戦いも楽しみたいよね、思いっきり。」

 

「あぁ。勝っても負けても恨みっこ無し。」

 

「ぶつけ合おう!ボク達の…全力を…!!」

 

「応!!!」

 

同時に、

狙ったかのようにブザーが鳴り響き、2人は踏み込んだ。

 

絶剣と絶剣

 

2人の戦いの火蓋は、ここに切って落とされた。

円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。

  • にいに。
  • お兄ちゃん。
  • 兄さん。
  • 兄貴。
  • 一夏。
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