インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~ 作:ロシアよ永遠に
「よかったのかね?」
コロッセウムの通路を歩くゼンガーに、仮面の彼は語りかける。
「なにがだ?」
「とぼけなくても構わんよ。あの黒い少年との試合のことさ。あれだけの体力差がありながらも試合を放棄した。君ならば徒手空拳と言えども渡り合えたのではないか?」
「無理だな。」
「ほう?君ほどの男にそう言わしめる程の実力者なのかね?」
「いや、単に体術のスキルとやらを習得していない。いくら現実で戦えようと、ここはあくまでもゲームの世界だ。そういう物に左右されるのは仕方あるまい。」
「そうだったな。いや、ここまでリアリティに凝っていると、どうしてもイコール現実と捉えてしまいがちになってしまう。」
くっくと笑う仮面の男に…ブシドーは改めて仮想世界の技術、その高さに感嘆する。
「そういうお前の次の対戦相手は…」
「あぁ、知らぬ相手ではない。恐らくな。」
「…軍のトップガンの力、とくと見せて貰うとしよう。」
「軍のトップガン?否!人は私を、Mr.ブシドーと呼ぶ。ここではそう呼ぶと良い。…迷惑千万だがな。」
アバター名を呼べと言って迷惑千万と言うのもおかしな話だが、ともあれ、ブシドーはゼンガーを背にして自身の戦場へと赴く。その後ろ姿は何処か様になっている。
「我が盟友が鍛えしこの二振りで、少年の目を釘付けにして見せよう!」
何処かおかしな彼の言動が、それを台無しにしているのは言うまでも無いが。
Gブロック代表 Mr.ブシドー
VS
Hブロック代表 パトリック
片や二刀流の金髪でシルフ剣士
片や赤髪で軽装のサラマンダーの槍使い
ダイレクトに結果を伝えるならば、卓越した剣技のブシドーに対し、彼ほどでは無いにせよ、熟練の槍使いのパトリック。怒濤の攻めによるブシドーの有利かと思いきや、躓いて危うい攻撃を紙一重で躱したり、足に当たった小石が上手い具合にブシドーの脛にぶつかったりと、何かとパトリックは悪運が強く、中々勝敗が決しなかった。結果としては
試合後、観客席で『大佐ぁ~!』と眼鏡を掛けたウンディーネのプレイヤーに泣きつくパトリックが目撃されたとかされてないとか。
そして…
『皆様お待たせしました!これより第1回ALO統一デュエルトーナメント準決勝を開始します!!』
勝ち進む毎に上がっていくボルテージは、当事者にとっては緊張と共に熱意を与えていく。そして目の前の相手が相手ならなおのこと。目の前で不敵な笑みを浮かべる想い人に、どちらも釣られて声も出さずに笑い合う。
『では!Bブロック代表、絶剣ことユウキ選手!!ダークホースと思われたオウカ選手を、どんでん返しの逆転劇で勝ち抜き、その無敗の戦績を継続しています!!』
「ユウキー!!頑張ってー!!」
「負けんじゃねぇぞー!!」
「ふ、ファイト、です…!」
「良い試合をお願いしますよ!」
「頑張れリーダー!!!」
しばらく治療で会えなかったスリーピングナイツの面々が、ここに来て短い治療の暇を縫って駆け付けてきてくれた。病院のモニターや携帯端末でも観戦できたのだが、それでも生での応援という物は何物にも代え難いもので、ユウキは片手を上げてそれに応える。
『対しCブロック代表、絶刀のイチカ!予選では並み居る強豪をその鮮烈なる刃で斬り捨て、決勝1回戦では魔法や体術、そして投剣スキルを駆使したトリッキーな戦いで魅せてくれました!』
「イチカー!負けるなよー!」
「イチカ…ファイト…!」
「えと…私、ユウキとイチカ君、どっちを応援すれば……う~!どっちも勝って~!!」
「いや、落ち着けアスナ。気持ちはわからんでもないが。」
約一名、気持ちのせめぎ合いの中で錯乱していたが、ここは一先ず置いておこう。
ともあれ…
「やっと、この時が来たね。」
「あぁ。」
「こんな大舞台でイチカと決着を着けられるなんて…ね。」
「あの時のデュエルとはダンチのギャラリーだ。その分盛り上がる。」
「流石にこの人数の観客の前で、アレは無しで…頼むよ?」
「アレ?」
アレと言う代名詞を出されても、イチカにとっては何のことか見当がつかずに首を傾げる。そんな彼に少し憤慨して、ユウキは顔を赤らめていく。
「あ、アレってのは…そのぅ………キ…」
「キ?」
「キ…!」
「キ?」
「~~!!!あぁぁ!もう!この鈍ちん!鈍感!とーへんぼく!!」
「えぇ~…」
何故か罵倒された。
ユウキからしてみれば、前回のデュエルで事故とはいえキスしてしまったのだ。それを再び、それも前回とは比べものにならないギャラリーの前でしようものなら、羞恥心でALOにログイン出来なくなってしまいそうだ。
『なにやら痴話喧嘩を繰り広げております両名ですが、そんなもんは犬にでも食わせておくとして…。』
酷い言いように2人は抗議の声を上げるが、審判には聞かぬ存ぜぬの一心でスルーされる。
『それでは!準決勝第一試合…カウントスタート!』
「ユウキ。」
「…なに?」
少しムスッと頬を膨らませるユウキ。鈍いイチカに御立腹のようだ。しかし、そんな彼女を意に介する事無く、彼は続ける。
「俺は、この試合に勝ったら…。」
「し…試合に、勝ったら?」
今度はユウキが首を傾げる番だ。だが真っ直ぐに自身を見つめるイチカの表情に何処か押され、同時になぜかありもしないはずの胸の鼓動が速くなり、そして頬が熱くなってくる。
「俺は、お前に俺の気持ちを伝えたい。」
そう、これがキリトに勧められた告白のシチュエーション。自身の想い人に向き合い、そしてその試合の後に気持ちを伝える。何処かベタながら、しかしピッタリのシチュエーション。
イチカの、気持ち。
その言葉にユウキは、ここにあるはずのない心臓がバクバクとその鼓動を跳ね上げ、そして耳障りに感じた。
自身が予想する物をイチカが考えているなら、負けるのもやぶさかではない。そんな考えが一瞬頭を過るが、直ぐにそれを霧散させる。
そんなことをして何の意味がある?
この時の、そしてこの決着の為に2人は勝ち進んで来たと言っても過言ではない。なのに負けても構わないなどと、そんな考えに至った自身が恥ずかしくなる。
全力でぶつかって、その上で負けるのは致し方ないだろう。だが負けても構わない考えでその想いを受け止めては、イチカにも、そして自分自身の想いにも反する。
だったら、自分に正直に裏も表も無く、とにかく前へ進んでいく。アスナがそう自身を評してくれた事を思い出し、熱くなってきた顔と想いを少しだけ冷静に移す。
そう。
ボクだって、この戦いの先に伝えたい『
「奇遇だね。ボクもこの戦いに勝ったら、イチカに伝えたい想いがあるんだ。」
思わぬ返しにイチカは一瞬目を見開くが、直ぐに戻すと、何処か嬉しそうに口許を釣り上げる。ほんのり、頬が朱に染まっているように感じたのは気のせいだろうか?
「負けられないな、互いに。」
「でも、この戦いも楽しみたいよね、思いっきり。」
「あぁ。勝っても負けても恨みっこ無し。」
「ぶつけ合おう!ボク達の…全力を…!!」
「応!!!」
同時に、
狙ったかのようにブザーが鳴り響き、2人は踏み込んだ。
絶剣と絶剣
2人の戦いの火蓋は、ここに切って落とされた。
円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。
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にいに。
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お兄ちゃん。
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兄さん。
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兄貴。
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一夏。