インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~   作:ロシアよ永遠に

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警告:サブタイトルがブシドーにハッキングされつつあります


第57話『身持ちが堅いな、少年!それでこそ口説き甲斐があるというもの!』

「きぇえ!!ブシパンチ!ブシキック!ブシチョップ!チョップ!!チョップ!!!」

 

「ちょっ!?ハワードとダリルの二刀流はどうした!?」

 

「敢えて言わせて貰おう!これが極と!!」

 

先の日本の刀を腰に納刀し、奇声を上げながら体術を仕掛けてくる。ダメージそのものは大したことはないが、奇抜な動きに翻弄されて上手く回避できないのが現状だった。

そして会話が成立しているようで成立していなかったりする。

加えてキリトにしてみれば、素手で向かってくるブシドーを斬り捨てることに躊躇が生まれ、そこにブシドーのブシパンチやら何やらが上手い具合に噛み合ってしまっているとかいないとか。

 

「何を躊躇している!少年!!」

 

「いや、何かやりにくくて仕方ないんだけど!?」

 

「何を言うか!戦場(いくさば)において躊躇は即ち死!如何に相手が奇抜で型破りであろうとも!敗北すればそれまで…それを理解しているハズだ!少年!」

 

「や、これはあくまでもゲームで…。」

 

「ゲームであろうとも!この果たし合いにおいて、手加減、躊躇は一切無用!そうでなければ私に対する侮蔑と取らせて貰う!」

 

「そんなつもりはないんだけど。」

 

「ならば闘え少年!闘って勝利を切り開け!」

 

「……あぁ~もう!やってやる!やってやるよ!!徹底的に!!」

 

「それでこそだ、少年!」

 

「スターバーストストリーム!!」

 

徒乱斬無(トランザム)!!」

 

「ジ・イクリプス!!!」

 

「グラハム・スペシャル!!」

 

「うぉぉぉぉおおお!!!」

 

「ぬぅぅぁぁあああ!!!」

 

もはややけくそだった。

互いに大技をぶちかまし、互いの剣と剣をぶつけ合う。どっちが先にぶっ倒れるのか解らないガチンコ勝負だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「泥試合だな。」

 

「泥試合だね。」

 

「泥試合ね。」

 

「泥試合だ…。」

 

「泥試合…。」

 

「泥試合だネ。」

 

「泥試合じゃねーか。」

 

観戦している面々が口を揃えてこう宣った。

優雅さなど欠片もない。むさ苦しい力任せのぶつかり合い。

どこかから、

『男に後退の二文字はねぇぇ!!』

『縮こまってんじゃねぇぇ!!』

と同意しているやら何やら解らない声が聞こえている。

それに便乗してかどうかわからないが、観客の中にも

『いいぞー!!』

『もっとやれー!!』

と言った声もチラホラ出ていたりする。

魔法や駆け引きもなく、ただの猪戦法であるが、それに惹きつけられるものもあるらしい。

 

「試合内容的には泥試合ですが、何だかパパ、楽しそうですね。」

 

「そういえばそうだね。一心不乱だけど、どこか口許が笑ってるって言うか。」

 

「今までにないデュエルのジャンルだからだと思いますけど…。」

 

「ノーガードデュエルかぁ…ねぇイチカ!ボク達も次はそんなデュエルをやってみようよ!足が動いたら負けね!」

 

「やめてください死んでしまいます。」

 

ここにもデュエル狂がいた。とんだとばっちりを受けそうになり、イチカは身震いを禁じ得ない。

 

「お、ブシドーの情報が入ってきたゾ。……入って…きた、けド……。」

 

ブシドーに付いての情報を、情報屋仲間を通じて集めていたアルゴが、送られてきた内容を閲覧して表情が固まり、言葉に詰まらせる。

 

「アーちゃん。」

 

「えと、何、かな?」

 

「今からオレっちの伝えることを、しっかり気を持って聞いて欲しイ。決して何があっても冷静に、正気を失っちゃダメだヨ?」

 

「え………あ、はい。」

 

「ブシドーは男色家、それも中性的な青年のような少年がドの付くストライクゾーンだそうダ。」

 

「いやぁぁぁあああ!!!」

 

((((((知ってた))))))

 

アスナの悲痛な悲鳴とは裏腹に、その場にいた彼女以外の誰もが冷静に、心中キリトの貞操に対して念仏を唱えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ…!はぁっ…!」

 

「ふぅっ…!ふぅっ…!」

 

互いに全力でぶつかり、互いに全力で受けた二人。

彼らのHPゲージは既にレッドで、身を守る防具も見るも無惨な程にボロボロだ。

 

「ふっ…ククク…!これだ!これとやりたかった…!」

 

「あ、アンタ…!こんな状況でも余裕だな…?」

 

「そうでもないさ。正直、己を律するのに一杯一杯だよ。キミの吐息、立ち振る舞い、視線、その総てが私を解き放たんと攻め立てるのだ!」

 

「ゑ?」

 

「さぁ少年!さらけ出すと良い!キミという存在を!その総てを!」

 

「うぉぉっ!?」

 

ブシドーの一撃が、キリトの胸元を一閃する。

これで決まりか!?と誰しもが思うが、キリトのHPは一向に減らない。

 

「ハァ…ハァ……少年…青年のような少年……!」

 

斬り裂かれたのはキリトのアバターではない、彼の纏う身体防具であるコート・オブ・ナイトブリーズ。その胸部が横一線に斬り裂かれていたのだ。その斬り裂かれた先には、キリトのアバターの地肌が露わになり、ブシドーはそれを鼻息荒く凝視している。

そしてそれは戦いを見守る観客、とりわけ女性プレイヤーの視線を集めていた。彼の恋人であるアスナも例外なく。

 

「き、キリト君…そんな……チラリズムでエロリズムだなんて…!!」

 

下手すれば、予選の時のユウキのように、鼻から命の水を拭きだして気を失いかねないほどの恍惚とした表情。が、すでに彼女は、仮想世界とは言えキリトと裸と裸のプロレスごっこをした仲であるため、辛うじて正気を保っていた。

 

「柔肌を晒すとは…破廉恥だぞ!少年!!」

 

「いやいや!アンタがやったんだろアンタが!!」

 

「しかし…これは……眼福と言うもの!そして私は我慢弱いと言った!アプローチを変えさせて貰おう!」

 

言うやブシドーはシルフの翅を羽ばたかせ、リング上空へと舞い上がる。

 

「次のダンス会場はこちらだ少年。」

 

「空中戦か…望むところだ。」

 

ブシドーの性格云々はともかく、技量的にはかなりのものであることは、斬り合いを通して熟知している。言動云々もともかくとして、だ。

何処かで彼との斬り合いが心躍るものなのだと自覚してきたキリトは黒い翅を羽ばたかせ、ブシドーの元へと向かう。

 

「さぁ第二部を始めようか!妖精と妖精、空におけるその舞踊…さながらフェアリィ・ダンスと言ったところだな!」

 

「そのネーミングは色々危ないぞ?苦情が来そうだ…」

 

「その様な道理!私の無理でこじ開ける!!」

 

再び始まる2人の壮絶な剣閃による応酬。遥か上空で小さく剣と剣がぶつかり合う金属音が響き、翅から溢れる光の粒子が彼らの軌跡を描いていく。

キリト自身、空中戦にある程度の自信はあった。妹であるリーファほどではないにせよ、それでも飛び方の練習は日々積んできていた為、並大抵のプレイヤーに引けは取らないという確固たるものがあった。

だが目の前のブシドーはそれを更に上回る技量を有していた。空を舞うその一つ一つの動作に淀みが無く、むしろ地上よりも空中の方が彼のホームグラウンドだと思わせるほどに。

 

「やはり空は良い…!私はここに来て正解だった…!」

 

「そりゃよかったな…!空が好きならリーファと気が合うんじゃ無いか?」

 

「興が乗らん!!」

 

「は?」

 

「女性に興味は無い!私は!私はノンケな美少年が、嫌がりながらも私に屈服していく状況を所望している!!」

 

「ちょっ!?何考えてんだあんた!?」

 

「無論!ナニを考えている!!」

 

ぞわり

ブシドーのこの発言に途方も無いほどの悪寒を感じた。それは旧SAO第75層のボス、スカルリーパーと相対した時よりも恐ろしいものを。

 

「お、俺のそばによるなぁぁ!!」

 

「待った!今のいい!なんかいい!!私の心に油が注がれた!!!今の気分は正にバースト・レイヴ!!」

 

「くそっ!こんのぉ!!」

 

咄嗟に発動したのはかつてユージーンと闘った際に使った幻惑範囲魔法。黒い煙と雲を生成し、ブシドーの視界を奪う。

 

「何と!!これでは何も…!いや!これは所謂目隠しプレイと言う奴か!!このようなプレイを所望するとは…少年…キミも中々…!」

 

「うぉぉぉお!!!」

 

愛しの少年の声で位置を察したブシドーは、我慢弱さの余りに飛び出そうと飛翔するが、突如として四肢を拘束され、空中に大の字で固定されてしまう。

幻惑範囲魔法が解け、自身を縛るものを見遣れば、空中の魔方陣から伸びた鎖が自身の手足を拘束していていた。

 

「次は束縛プレイとは…!やはりキミにはSの素質が…!」

 

「もう喋るな!!頼むから!!」

 

次いでベノムショットを打ち込まれたブシドーには毒のデバフが付与される。じわじわ削られる自身のHPを見遣る彼は、苦悶どころが恍惚とした表情である。

 

「フッ…このまま毒で朽ちるまで待つかい?よもや放置プレイまでとは…恐れ入るよ…。」

 

「うるっさい!!」

 

キリト渾身のアッパーカットがブシドーの顎を的確に捉え、毒の継続ダメージも合わさってブシドーはそのHPを尽きる。彼の表情は最後の最後まで恍惚としたまま。

 

『え、えと…ブシドー選手、HPエンプティーでキリト選手の勝利!!』

 

審判の勝利宣言が何処か遠い世界の言葉に聞こえる。途方も無いほどの疲労感が一気に身体を駆け巡り、キリトはリングに座り込んだ。

勝った…

勝ったが、途方も無いほどの安堵が同時に駆け巡った。

そう、それはきっと、

勝ったことよりも、

自身の貞操が守られたからだと思いたい。

 

「敢えて言わせてもらうぞ、少年。」

 

「っ!?!?」

 

進行委員によって恐る恐る蘇生されたブシドーは、どこか満足げに顔をほころばせながらキリトを見下ろす。先のやり取りがあったからか、キリトは思わず剣を構える。

 

「覚えておくがいい。私はしつこく、諦めの悪い男だ。」

 

そう言い残すや否や、踵を返して自身のコーナーへと退いていく。

 

「え?諦めの悪いって…」

 

自身の解釈が正しいのならば、これから彼に付きまとわれる可能性があると言うことになる。

これからのALO生活にゲンナリとしながら、キリトは自身のコーナーへと戻っていった。

 

「決勝戦…まともに戦えるかなぁ…。」

 

そんな言葉をポツリと呟きながら。

円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。

  • にいに。
  • お兄ちゃん。
  • 兄さん。
  • 兄貴。
  • 一夏。

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