インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~   作:ロシアよ永遠に

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本編ほのぼの
後書き微妙に鬱です、御注意を。
IS組はこれで気持ちを一区切りになります。


第61話『宴会と失恋』

「そんじゃ…ALOデュエルトーナメント…お疲れ様!!そんでユウキとイチカの交際おめでとう!!乾杯っ!!」

 

『乾杯っ!!!!』

 

リズベットが幹事の下らガチンと樽ジョッキがぶつかり合い、各々がその中身を煽るように飲み干す。この世界で未成年禁酒などと言う物は存在しないため、希望する者はアルコール擬きを飲用している。

 

「さぁ!お料理はじゃんじゃん作ってるから、遠慮しないで食べてね!」

 

「うひょぉ!アスナさんの手料理!!」

 

「クライン、はしたないぞ?…気持ちはわかるけどな。」

 

SAO並びにALOでも屈指の美人プレイヤーのアスナの手料理とあって、クラインが飛び付かないわけがない。キリトも呆れながらも、手早くアスナの料理を口に含んでいる辺り大概だが。

 

「あの…本当に私達もお呼ばれして良かったのでしょうか?」

 

遠慮がちにアスナに問うのは、スリーピングナイツのシウネーだ。未だジョッキを両手で持っている辺り、緊張も遠慮が重なっている様子。

それもそうだろう。この中で接点がある人物と言えば、ユウキとイチカくらいなもの。見ず知らずの人達の中に入れられれば、誰だって身体が強張るものだ。

 

「俺が誘ったんだから、別にそんな畏まる必要ないんじゃないか?」

 

「イチカさん。」

 

両手でそれぞれローストビーフのようなものと、魚の香草焼きをプレートで持ち、木造のテーブルの上に並べて切り分けていく。

 

「それに、こういうパーティーは、親交を深めるためでもあるんだ。皆で美味しい料理を食べれば、それだけで仲良くなれるさ。」

 

「そう…ですね。」

 

それでもやはり表情が浮かないのは、スリーピングナイツの誓いだろう。一定以上の距離を保って人と接することを約束し合った面々なのだ。それだけに…

 

「ユウキ…それで良いのかい?」

 

「うん…ゴメンねノリ……リーダーのボクが誓いを破ってちゃ、世話ないよね。」

 

シウネー以外のスリーピングナイツは、ユウキがイチカと交際を始めたことに驚きを隠せず、こうして説明を受けていた。

 

「でもいいのか?その…僕らの身体のことは…。」

 

「うん、イチカもそれを解った上で恋人になってくれた。…最期の時まで一緒にいてやるって…。」

 

「そ、そそそんな情熱的な……?」

 

「ホントにボクの身勝手で、我が儘なんだけど……やっぱり約束を破っちゃったのは許されないことだから…ボク、スリーピングナイツを抜けようかと思ってる…。」

 

「ユウキ!?いきなり何を!?」

 

「だって…やっぱりさ。皆との誓いを守れないボクがリーダーじゃ、示し付かないよ…。だから…。」

 

「…ったく!アンタはいつまで経っても手の掛かるリーダーだよね!」

 

ユウキの首に腕を回し、軽く極めるようにノリはユウキを引き寄せる。

 

「ノリ…?」

 

「そんな情熱的なノロケを聞かされたら、あたしらも恋したくなるじゃんか!」

 

「だよな~…残りの人生、一回くらい恋人欲しいよな~。」

 

「ぼぼぼ僕だって、そういうことに対する興味は、なな無きにしも非ずと言いますか…。」

 

「乙女じゃないけど、命短し恋せよ…そういう方針転換もアリなんじゃないかな?」

 

「み、みんな…。」

 

「あら…私がいない間に話が纏まっちゃったわね。」

 

年長者として、パーティーに参加している面々に挨拶してきたシウネーは、話を終えたメンバーの輪に戻る。

 

「あのユウキが恋をして、こんなに愛らしくなってるんですもの。私も年甲斐もなく張り切っても良いかも知れないわね。」

 

「え?あ、愛らしい!?」

 

「自覚無い?…なんかさ、ユウキ最近美人になった感じするぞ?」

 

「えぇぇぇええ!?」

 

ユウキの驚きの声に、誰も彼もが声の発生源たる彼女に注目する。

思わず出てしまった大声に小さくなりながらも、ジュンの言葉が正直何を言っているのか解らなかった。

 

「ぼ、ボクが愛らしいとか美人になんて…何を言ってるのさ二人とも!?」

 

「え~?だって言うだろ?恋をすれば女の子は美人になるって。まさにユウキのそれだろ?」

 

「いいわね~、私も春が来ないかしら?」

 

「お、スリーピングナイツの皆、食べてるか?」

 

そんなユウキの心境なぞ何処吹く風。渦中になりかねないイチカが、スリーピングナイツの輪に加わる。

 

「おぅ、ありがたく楽しませて貰ってるよ。」

 

「そいつは何よりだ。…と、どうした?ユウキ。顔が真っ赤だぞ?」

 

「な…なんでもない、よ。」

 

「まぁまぁユウキは付き合ったばかりだからまだ恥ずかしいのよ。それよりもイチカさん?」

 

「ん?」

 

「ユウキとお付き合いすることは素直にお祝いします。ですが…もし…もしユウキを泣かせたりしたら…」

 

「な、泣かせたりしたら…?」

 

シウネーの言葉を皮切りに、ユウキ以外のスリーピングナイツから得も知れぬ威圧感がズッシリとイチカにのし掛かってくる。その重圧に、思わず一歩退いてしまうイチカ。

 

「斬り落とすぞ?」

 

「ねじり切っちゃうわよ?」

 

「すりつぶすよ?」

 

「串刺しにしますよ?」

 

「ミンチにしますよ?」

 

(グチャッとしますよ?)

 

上からジュン、シウネー、ノリ、タルケン、テッチである。

 

「あ、あれ?もう一人は誰だよ!?」

 

「は?ユウキ以外のスリーピングナイツは五人だろ?」

 

「幽霊でもいたんですか?」

 

「…おっかしいなぁ…?」

 

幻聴だろうか?それにしてもハッキリと物騒な言葉が聞こえたものだ。

 

(疲れてんのかなぁ俺。)

 

確かに激戦を繰り広げたのだから、疲れが出ていても仕方ないだろう。

少し甘いものでも飲んで、身体を楽にしよう。

そう思ってジュースを汲みに行こうと振り返ったとき。

 

(妹を…木綿季を…よろしくお願いしますね。一夏さん。)

 

「……!」

 

幻聴じゃない。

ハッキリと聞こえた。

木綿季を妹と呼ぶ存在は既にこの世にはいないのに…。

でも確かに感じる。

そこにいる。

彼女が。

 

(じゃないと…ホントにグチャッとしますよ?)

 

…木綿季のお姉さんはとても物騒なようだ。

 

「安心してくれ…俺は…ユウキを幸せにするから。」

 

振り返ること無く、その言葉でイチカは応じる。

その言葉に二言は無い。

得心したのか、その気配は霧が晴れるかのように薄くなり、やがて消えていった。

 

「お、イチカさん、もうプロポーズかい?」

 

「ふぉっ!?」

 

「プププププロポーズゥ!?」

 

「あら!素敵ね!そういえば私もキリト君に告白されてすぐにプロポーズされたなぁ…ちょっとデジャヴね。」

 

「あーもう!このバカップルめ!アタシがエンゲージリング作ってやるわよ!えぇ!こうなりゃヤケよ!」

 

「じゃあ私はユウキのウエディングドレスを作らなきゃね!あとケーキも…」

 

「は、話を飛躍しすぎだよ皆ァ!!」

 

真っ赤な顔で、かといって怒ってるわけでも無く。

心許せる仲間達と冗談を言い合って過ごす彼女に安心したのか、その存在は完全に姿を消したのだった。

 

(幸せにね、ユウキ。)

 

そんな言葉を残して。




ようやく戻ってIS学園のとある一室
先程まで激闘に次ぐ激闘に興奮が最高潮に達していた温度から一転。空気が途轍もないほどに冷えていた。それは赤道から北極までと言えばわかるだろうか?何せ、冷え切っていた。
沈黙が閉会式を終えてなお続いていた。

「…ねぇ?」

口火を切ったのは鈴だった。
その目は虚ろで、以前のように『よし、殺そう』とか言い出しかねないものを感じさせる。

「さっき…ユウキがイチカのこと…恋人って言ってたの、私の空耳かしら?」

「奇偶ですわね。私もその様に聞こえましたわ。」

同じくセシリアも目を虚ろにして目が笑っていない笑みを浮かべる。

「そっかそっか…アタシだけじゃ無かったのね?」

同意者が得られたことで、満面の笑みで、壊れたおもちゃのように何度も何度も頷く。正直怖い。

「…よし、殺そう。」

やはりである。双天牙月を展開して、今にも一夏の部屋へと凸しそうな鈴。そんな彼女の腕をつかんで待ったを掛けたのは箒であった。

「何よ、離しなさいよ箒。」

「まさか鈴、一夏の寝込みに奇襲を掛けるつもりではあるまいな?」

「はぁ?何言ってんのよ。当たり前じゃない!アイツを向こうから引きずり出してやるんだから!その上できっちりOHANASHIを…。」

「止めといた方が良いと思うよ。」

箒に便乗して制止するのはシャルロット。視線こそ鈴には向けないが、その言葉には力が籠もっている。

「一夏がどれだけフルダイブVRの世界を大切にしてるか…鈴は知ってるでしょ?それを邪魔したり蔑ろにしたりしたら…幼馴染みといっても一夏は許さないかも知れないよ?」

「そ、それは…!」

シャルロットの指摘に鈴はたじろぐ。一夏が旧SAOを通して、仮想世界という物に強い思い入れがあるのは鈴も知っている。それを彼に恋人が出来たと言う理由で嫉妬に駆られ、邪魔したり、VRを断つためにアミュスフィアを潰そうものなら、一夏の怒りはどれほどのものになるかは想像が付かない。

「だから…黙ってろっての?」

「…少なくとも、それは今じゃ無くても良いと思う。一夏がログアウトして、それからこっちで話せば済む話し…だから。」

「簪さんまで…。」

「…よくわからんが、嫁が楽しんでいる時間を邪魔するのは私としては反対だ。」

ラウラにまで同意されてしまっては、もはやぐうの音も出ない。
4:2で議論が分かたれたが、それでも鈴は食い下がる。

「でも何とも思わないの!?一夏が…一夏が木綿季と恋人だって…!そんなの、黙ってアンタ達は認められるの!?」

「そんなわけないじゃないか!」

鈴の叫びに同じく叫び返したのはシャルロットだった。そのアメジストの瞳に涙を溜め、必死に泣きたいのを我慢しているのが見て取れる。

「ボクだって…一夏が取られるのは悔しいよ!!でも、一夏が選んだのが木綿季なら仕方ないじゃないか!!一夏が…好きになったのが…木綿季、なんだ…っ!」

「…私だって、何も思わぬわけがない。だが…やはり一夏が奪われることより、一夏に嫌われる方が勝ってしまう私は…恋心が弱かったのやも知れないな…。」

箒も顔を伏せていてわからないが、それでもその声色から察するに、表情に陰りを差しているのだろう。

「箒は…強いわよ…少なくともアタシよりは…ね。きっと今までの箒なら、アタシより先に木刀抜いて一夏のトコに行きそうだもん…。」

「鈴…。」

「でもやっぱ…悔しいわ…。ずっと…好きだったのに…!」

「…今は…思い切り……泣こう…。明日、アイツらに出会って……普段通りに話せるように…!」

その日、少なくとも6人の少女達が初恋を散らすことになった。
だが彼女達は今は泣いて、明日は普段と変わらぬ生活が過ごせるように、せめて今夜だけはと、互いに慰め合うようにすすり泣いた。

円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。

  • にいに。
  • お兄ちゃん。
  • 兄さん。
  • 兄貴。
  • 一夏。
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