インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~ 作:ロシアよ永遠に
これもうわかんねぇな
織斑一夏には悩みがある。
以前の最大の悩みは、唯一の男子生徒としてIS学園に放り込まれたときだった。
だが今はそれに慣れてしまったために解消された…と言うわけではなく、今の悩みが大きすぎるが為に霞んでしまっているだけなのかも知れない。
何せ…
「すぅ……すぅ……。」
夜中に目が覚めたら自身の布団の中で、まるで小動物のように身体を丸めて寝ていた恋人である少女…木綿季が原因なのだから。
当たり前だが、織斑一夏は男♂である。
現役バリバリの高校生である。
ついでに言えば、性欲盛んな17歳である。
そんな彼の布団の中で、年頃の…しかも最愛の恋人が可愛らしい寝息を立てていれば、そりゃゴクリと固唾を飲み込むのは自然現象だろう。ついでに、理性で抑えていた我が息子も、どうやらお目覚めになってきているようだ。
ステイ!
ステイ!!
今はマズい、途方もなくマズい。
いくら木綿季が魅力的で、最近そこはかとなく胸も大きくなってきているな~とか、色気付いてきたな~とか、そんな煩悩が日頃から募っていても、下半身に集まる野獣の本能に身を任せては、取り返しの付かないことになりかねない。
ヘタをすれば妊娠…。
それはまぁ…木綿季との子供は欲しいのは事実。
さぞかし木綿季に似て天使のような愛くるしさに、親バカコースまっしぐらなのは、もはや約束された勝利の未来のようなものだ。
だがしかし、
だがしかしだ。
そんな一夏の欲望と欲棒を押さえ込むのは、社会的なモラルだ。
今木綿季は16歳。
結婚できるギリギリの年齢だ。
それだけに、そんなうら若き彼女が懐妊したなどという事実が知れ渡れば、世間様から冷ややかな視線を向けられてしまうだろう。
それだけはダメだ。
自身の一時の暴走で、これからの木綿季の歩む人生を茨の道に変えるなどと、あってはならないのだ。
今までの人生で木綿季は、
大病に冒され、
差別を受け、
家族を失い、
十分すぎる苦悩の日々を過ごしてきたのだから…。
せめて…せめて、高校を卒業するまでは…
(落ち着け………… 心を平静にして考えるんだ…こんな時どうするか…あの神父様が教えてくれた、心を落ち着かせる方法……2… 3…5… 7… 落ち着くんだ…『素数』を数えて落ち着くんだ…『素数』は1と自分の数でしか割ることのできない孤独な数字……俺に勇気を与えてくれる。そして、右の頬を殴られたら、左の方へパイルドライバー…)
一意専心
一点集中
煩悩退散
臥薪嘗胆
電光石火
焼肉定食
冷静に…冷静に深呼吸をする。そうすることで彼のそそり立つバベルの塔はその鳴りを潜め、大きさは比較して火の見櫓位まで鎮火することが出来た。
よし!よし!よくやった俺!
歓喜
勝利
大喝采
一夏の脳内は、もはや宴会が執り行われ、選挙に当選したかのようにどんちゃん騒ぎしている。
「ふぅ………にしても…なんで気配無く潜り込んでくるんだろう…」
木綿季は円夏と同室だ。元テロ組織のエージェントの彼女は、気配や動きに敏感だ。それこそ寝込みを搔かれないように、睡眠を取っていても僅かな物音に目を覚ます訓練を積んできている。
そんな彼女に気付かれることなく一夏の部屋に忍び込むとは…木綿季…恐ろしい子ッ!
「…一度千冬姉に相談して…みる…か……。」
そんな件の少女をどうするかと見遣ってしまったとき、それは見えてしまった。
外れたパジャマのボタン
はだけたパジャマ
その隙間から見える僅かながら出来ている谷間が。
最近、70代から80代に乗ったと、男である一夏の前で恥ずかしげも無く宣って小躍りしていた。それを円夏が血涙を流して恨めしそうに見ていたのは余談だが。
ともあれ、成長してきているソレの谷間が目に入ってしまった。側臥位で寝ているため、ふにゃりと柔らかそうにその形を崩しているソレは、触ってみたいという男の欲望を刺激し、一夏の欲棒をスカイツリーへと成長させるには十分すぎるものだった。
そこはかとなく、パジャマとは違う白色の布が見えた…ような気がした。
ドクン ドクン
心臓の鼓動が、五月蠅いくらいに高まってくる…否、昂ぶってくる。
下半身に血液が漲る…否、迸る。
欲望を抑える理性に、僅かながら亀裂が走る。それは、加速度的に大きくなり、このままでは幾何もしないうちにその存在理由を失うだろう。
(俺は…俺を止めたい…!止めなきゃならないんだ!!白式!!俺に力を貸せ!!)
『( °Д°)ダニィ!?』
何というハイテクの無駄遣い。
そしてマスターを思い、応えようとするIS。
いいISだ。
感動的だな。
だが無意味だ。
表示されたのは、『不可』の二文字。
(ウソダードンドコドーン!!)
ガックリと項垂れる一夏。
人間だけが神を持つのではなかったのか…可能性という名の神を…。
(オンドゥルルラギッタンディスカー!!ナズェダマッデルンディス!!)
しかし白式は沈黙を通しており、一夏の脳内の訴えにはうんともすんとも言わない。
「ん~…一夏~…。」
寝言なのだろうか、自身の名前を呼びつつ身体に手を回して、あろうことか木綿季は密着してきたのだ。
(フォォォォォ!?)
ふにょりと、まるで極上のクッションか何かを思わせるものが、一夏の胸板に押しつけられる。
それが何なのかはもはや説明不要だろう。そして一夏の理性は限界寸前だ。
(どうする!?このままじゃ俺のビームマグナムが火を噴いちまう!)
何やら自分のムスコのサイズを誇張しているが、この際スルーするとして、兎にも角にもこのままだと冗談抜きで発射、もしくは木綿季を襲ってしまい、事案となりかねない。感覚をシャットアウト出来ればこんなことには…。
(…ん?五感をシャットアウト?…これだ!)
天啓が舞い降りた。
自身の閃きを賞賛しながら、一夏は枕元にあるその機器を手に取り、頭に装着する。
アミュスフィア
これを使用すれば…
「リンク…スタート…!」
こうして一夏の意識は仮想世界へと飛び立ち、どうにか自身の社会的地位を死守できたのだった。
「…一夏のヘタレ。」
そんな彼の部屋に、むくれた少女の呟きが木霊したのは、本人以外に誰も気付かなかった。
円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。
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にいに。
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お兄ちゃん。
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兄さん。
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兄貴。
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一夏。