インフィニット・ストラトス~君が描いた未来の世界は~ 作:ロシアよ永遠に
コースは中盤。山岳部に差し掛かった一行は、背後から迫るその物々しい車両から逃げるように細めのコースをひた走っていた。
「な、なぜハンヴィーが!?」
「知りませんわ!と言うか、一夏さん達はどうしましたの?!」
『あぁ。アイツらならデートに洒落込んだぞ。あのハンヴィーは代打…いや、代走だ。』
「…黒のハンヴィー……なんて魅力的なんだ…!」
「ちょっ!?キリト君!?鼻息荒くなってない!?」
事も無げに出場選手の疑問に答える千冬。それを余所に、ハンヴィーのルーフに設置された黒光りするナニかに一同の目線が集まる。
それは異質だった。
ハンヴィーに積載するには余りに巨大で過重。
25mm7連砲身ガトリング
ラファール・リヴァイブのパッケージ装備であるクァッド・ファランクス。IS用4連ガトリングの1つをハンヴィー用に改造して搭載していた。
「ロックンロール!!!」
キュィィン…と言う、その長々としたバレルが嫌な音と共に回転し始める。
ややあって、
殺戮兵器がその牙を剝いた。
それはまさに銃弾の嵐と言うに相応しいものだ。
高速回転する銃口から放たれる数多の銃弾は、道路に数多の銃痕を残し、砕けたアスファルトが砂塵のように巻き上げられる。
その背中から迫り来る死の代名詞に、誰も彼もが散り散りに走って避ける。
「アッハハハハハ!見て見てラウラ!皆蜘蛛の子を散らすように逃げるよお!」
「流石IS用の装備!その威力はお墨付きだな。」
ヨーロッパの金銀連合だ。
軍の経験上、運転するのはラウラ。
銃座で狂気の笑みを浮かべてガトリングガンをぶっぱするのはシャルロット。
2人のその目は血走っており、普段の温厚なシャルロットと、冷静なラウラからは想像できない物だった。
「くそっ…!あんな物直撃食らえば一発でバラバラだぞ!」
普通のガトリングガンですらヤバいのに、IS用のソレを持ち出して来た。その圧倒的な火力に晒されれば、どうなるかは火を見るより明らかだろう。
「クッ…!流石にヨーロッパの同志として、賞賛せざるを得ませんわね…。ですが!」
ヒールを鳴らして、ブルー・ディスティニー号のルーフに立つセシリア。その手にはイギリスのアーキュラシーインターナショナルが開発した、『アキュラシーインターナショナル AW50』。全長1420mm。セシリアの身長より僅かに短いその銃身を、後方で無法と化したハンヴィーへと向ける。
「ちょっ!おま…運転は!?」
「心配に及ばず…私のブルー・ディスティニーには、ティアーズと同じくイメージインターフェースでの操縦を可能としてますので。」
「な、なんじゃそりゃ…。」
「では…やんちゃが過ぎるお二人には折檻しなくてはなりませんわね。」
ガシャン!とコッキングレバーを引き込み、初弾を装填する。そのスコープ越しに、相変わらず狂気の笑みを浮かべて乱射するハンヴィーに狙いを定める。
「へカートⅡでも宜しかったのですが、ここは自国の技術力を見せ付けねばなりませんしね。」
「おい!そんな膝立ちの状態で撃つと…。」
対物ライフルだけに、威力に比例してその反動はかなりのものだ。それだけに接地による支持射撃状態…所謂、伏射でなければ、その狙撃銃としての正確な射撃を行うことが出来ないし、その反動で腕に大きな負担を強いることになる。
「大丈夫ですわ、問題ありません。」
しかしセシリアは、円夏の注意喚起に狼狽えることも無く、唯その口許に不敵な笑みを浮かべる。
「伊達に、『OF THE END』をやり込んでおりませんわ!」
「それゲームの話ぃぃ!!」
円夏の叫びと共に、マズル・コンペンセーターから閃光が走る。
12.7口径のNATO弾が空気を裂き、ハンヴィー……その僅か前方のアスファルトに吸い込まれ、小規模ながらもまるで爆発のようにその数多の破片を巻き上げた。
「うおっ!?」
思わずラウラはハンドルを右へ切る。しかし、僅かに遅れたのか、巻き上げられた破片が、ガトリングガンを構えるシャルロットに襲いかかる。
「いったぁぁっ!!」
思わぬ妨害に人としての防衛本能に従ってしまい、ガトリングガンの猛攻はなりを潜める。
「もう1発!」
再び爆ぜるハンヴィーの進路。今度は左に避ける。
「ぐぇっ!?」
左右に振られ、運転するラウラはともかく、同乗するシャルロットは乙女としてどうかと思う声と共に、ゆらり揺られてしまう。
「流石はセシリア…直撃ではなく、道路を狙った牽制…しかもハンヴィーの予測進路2メートル先を的確にとは…。我が隊に欲しくなるほどのスナイピングだ!」
不敵な笑みを浮かべながら、知り合い随一の狙撃手の腕に舌を巻く。
だが、少し自身の反応が遅い。急なハンドル切りでは、その分追い付くのが遅くなる。より早く、正確な相手の射撃タイミングを計らなければならない。
「…矢張り、距離を詰めるには、これが必要となるか!」
自身の左眼。ソレを覆う黒い眼帯を、ラウラは剥ぎ取る。
『
ナノマシンを移植された琥珀色の瞳は、脳への視覚信号伝達の爆発的速度向上と、超高速戦闘状況下における動体反射の強化を目的とされており、その能力は視覚能力を数倍に跳ね上げる。その能力は、数十メートル先で対物ライフルを構えるセシリア。その睫毛すら視認できるほどだ。
「さぁ…!こいセシリア!」
瞬間、ラウラはハンドルを右へ切る。
刹那、ハンヴィーの助手席のサイドガラスにコンクリ片が降り注ぐ。
「…流石はラウラさん…!早くも対応してきましたか。」
流石はドイツの現役少佐と言ったところか。切り替えが早いものだ。
その肩書きに恥じぬ判断能力に、セシリアもラウラと同じく舌を巻くに至る。
「読み通りだ…!見える!見えるぞ!私にも敵が…」
「オロロロロ……!」
ルーフから聞こえる如何ともし難い声。
言わずもがなシャルロットだろう。
しかし、彼女にしては少々不気味なその声に首を傾げると、ハンヴィーのフロントガラスに、何とも形容しがたいものが上から流れ落ちてくる。
「なっ!?なんだこれは!?」
ドロリとした、あらゆる色を混ぜ合わせたかのようなその液体。そこに含まれるのは、赤や緑、黒い点々としたもの。
越界の瞳で強化された視覚は、それらがなんなのかを否が応でも理解させる。
赤は人参
緑はほうれん草。
黒はトーストの耳の部分。
…そういえば、一緒に朝食を食べたシャルロットのメニュー。ソレにはほうれん草と人参のスープとトーストが含まれていたような…。
「ぬぁぁっ!?前が見えん!?」
だが運転するラウラにはそれを理解する事は出来ず、ワイパーフル稼働させて、フロントガラスを覆うソレを拭おうとするが、粘りのあるソレは白く広がってしまい、余計に状況を悪化させてしまう。
そして…
カーブの先…切り立った崖からの転落防止用のガードレールに気付くこと無く、ソレを真っ直ぐぶち破った。
「「あ……!」」
ハンヴィーは、眼下に広がる森林へと姿を消していったのだった。
円夏が一夏を呼ぶ時の呼び方は?今後の小説に反映されます。
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にいに。
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お兄ちゃん。
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兄さん。
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兄貴。
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一夏。