NARUTO-うちはスズネの物語-   作:fukayu

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第一話 うちはの異児

 木の葉の戦神が姿を消してから数年の月日が経った。

あれから色んな事が起こった。主なものと言えば、うちはイタチによる一族虐殺事件だろうか。嘗ては火影の座まで上り詰めかけた一族は皮肉な事に同じ”うちは”によって滅ぼされた。

 事件の生き残りは犯人であるうちはイタチを除いて二人。一人はうちはイタチの弟であるうちはサスケ。そしてもう一人の名前はうちはスズネ。生まれた瞬間より、里から迫害されてきた英雄の子である。

彼女は今、一人孤独な青春を送っていた。

 

 

 

 第一話 うちはの異児

 

 

 

 オレの名前は櫓トウマ。アカデミー在籍する忍者のTAMAGOだ。といってもそれもあと数か月の話。卒業試験さえ合格すれば俺もいよいよ忍者になれる。今はその準備期間なんだが、

 

「退屈だァ!」

 

 俺は暇を持て余していた。基本的な授業は終わり今は過去のおさらいと個人個人の修業がメインと言う事でこれといったイベントの無い毎日が続いている。

 

「全く、お前は自分も試験に備える発想というのは無いのか?」

 

「試験って言ったってあんなんナルトくらいしか落ちねえだろ?」

 

 隣で話を聞いていた幼馴染の『如月ユウキ』がため息交じりに言ってきた言葉を否定する。ユウキはアカデミーに入る前からの中で幼馴染で親友で悪友だ。水色の髪に整った顔つき、成績も上から二番目で体術も忍術もそつなくこなす。おまけに頭もいいと同じ男としては気に入らないポイント満載だが基本はオレと同じ馬鹿なので問題ない。よく二人で、他の連中と一緒に騒いでイルカ先生に怒られたりしている。

 

「わからないぞ? お前は体を動かすのは得意だが、頭はなぁ?」

 

「なんだよ!? 確かにオレはあんまり勉強は出来ねえけど。馬鹿ってわけじゃ!」

 

 人には得手不得手があるんだ。オールマイティより一点突破。駄目な部分があっても他の部分で補えばいいのだ。だからオレは、勉強なんてしない!

 

「どうでもいいけど、お前が落ちても俺待たないよ?」

 

「そいつはねえだろ、相棒!?」

 

 そんな他愛ない話をしながら教室に入る。これがオレたち二人のいつもの光景。そして教室ではもう一つの普段と変わらぬ光景があった。

 

 鈴。

 それがあの少女に対する第一印象だろう。長い黒髪を一本に結ぶための髪留め。それについている鈴の音が少女がそこにいる事をこの教室にいる全ての人間に教えてくれる。少女の小さな頭が揺れる度に鳴るその音色はどれだけの喧騒の中でも透き通って聞こえる。ただ、離れていても聞こえるその鈴の音はうん、まあ忍ぶ者と呼ばれる忍には不要なもので……

 

「ちょっとスズネさん! その鈴どうにかならないの? 集中できないんだけど!」

 

 卒業試験の勉強をしていた女子が堪らずに少女に対して、怒鳴りつける。恐らくオレたちが来るずっと前から耐えていたんだろう。あの鈴の音はどれだけ集中していても聞こえてくる上に、風が吹くだけでなるので一度気になるとかなりうっとおしいのだろう。特に気にしていないユウキやそもそも勉強なんかする気の無いオレなんかは別に問題ない。

 唯一問題となるのなら居眠りする時に鳴ると気になって眠れないときがあると言う事だが、それはオレが悪いんだからやっぱり問題ない。居眠り常習犯のシカマルやナルトは子守歌代わりに使っているし……

 

「あ、ごめんなさい……」

 

 注意されたその少女はとても申し訳なさそうに頭を下げるが、そのせいでまた頭の鈴が鳴ってしまう。どうやら鈴を取るという選択肢は無いようで「あ、あれ?」などといいながら頭の鈴を押さえている。

 

「さっきの落ちる奴ってのにアイツも加えておくわ……」

 

 少女の名前はうちはスズネ。成績トップのユウキと違っていけ好かないうちはサスケと同じ一族でありながら断トツでドベの劣等生うずまきナルトに次ぐ成績の少女で、前述の長い黒髪と鈴に自信の無さそうな表情がデフォルトのくノ一だ。

 アカデミーの席順っていうのは基本的にあってないようなものなのだが、見事に彼女の周囲は空いている。いじめの無い学校は無い。というのは当たり前の意見だと思うがそれは忍者の卵たちの通うこのアカデミーでも同じらしい。日々の生活で溜まったストレスや鬱憤を晴らすための標的。表立ったものは無いが、今の様にそれとなく孤立させられたり、手裏剣を狙いがずれたふりをして投げられるのはよく見る。理由はいくつかあるのだろう。女子からの人気が高いサスケと同じ一族というだけで他の女子からは評価が低いし、いじめの標的にされそうなナルトがあんな性格なのでストレスの発散にならない等とか……まあ一番はあの鈴だろうと思うが。

 とはいえ、特にそんなものは無いオレたちはこれ幸いというように彼女の周りの空いた席に座る。ただこれといって会話をする訳では無い。せいぜい「おはよう」だとか「ッよ!」だとか挨拶をするくらいで後は近くにいた奴らと喋るだけだ。こちらから何かする気も無いが関わる気も無い。あっちも無駄に目立つのは望んでいないだろう。どうせあと少しでこの教室の大半が下忍になってアカデミーからいなくなる。それまでの辛抱と言うヤツだ。

 

「はぁ、退屈だァ!」

 

 今日も一日が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  一日の終わり。私にとってはこれからが地獄だった。日が暮れ始め、他の子たちが迎えに来た家族と一緒に帰る中私はただ無言で教室の掃除をしていた。別に当番なんかじゃない。ただ、こうして時間を潰しているだけだ。理由は里のみんなに――大人たちにあまり会いたくないから。

 私には親がいない。お父さんは私が生まれてすぐいなくなってしまって、お母さんは何年か前に死んでしまった。別にそれがつらいんじゃない。確かに家族が居ないのは苦しいし、寂しいけど火影様やイルカ先生たちが色々助けてくれるおかげで何とか生活は出来ている。でも、里のみんなが私を好意的な目で見てくれるわけじゃない。同じうちはのみんなは私のお母さんがうちはじゃないというだけで私たちを一族の集落から追い出し、他の大人たちもいろいろとお母さんにキツく当たっていた。お母さんと一族のみんなが居なくなっても、少しだけ私に対する風当たりは残っている。だから、他の子たちと一緒に帰ろうとすると変な目で見られてしまう。私一人ならいいけど他の子までそんな目で見られるのは嫌だった。だからいつからか私は一人、教室の掃除をするようになっていた。

 

(私は、どうしたいんだろう?)

 

 最近いつも考える。もうすぐ卒業してアカデミーを出ていくことになる。その前の試験に一抹の不安が残るものの、それさえ何とかすれば晴れて下忍だ。しかし、下忍になると言う事は指導者役の上忍と後二人同じ下忍とチームを組むことになる。それが心配だった。私にはこれといった才能は無い。うちは一族には写輪眼という特別な目があるけど、一族ならだれでも開眼するという訳でもない。むしろ使えなかったり、使いこなせない人の方が多かったらしい。落ちこぼれの私が運よく開眼するというのは少し夢が有り過ぎる話だった。

 

「はぁ」

 

 溜息交じりにバケツに水をくむ。水面に映る自分の顔が波で歪んだその時だった。

 

『力が欲しいの?』

 

「っえ?」

 

 誰かが私に問いかけてきた。慌てて辺りを見渡しても周囲に誰もいない。

 

「だ、誰!?」

 

『アタシが誰かは重要ではないわ。ただ、あなたが力を望むのか聞いているだけよ』

 

 姿を現さない誰かは先程と変わらない口調で私に問いかける。その質問に私は――

 

「力なんて……」

 

 力が欲しいか、なんてそんなの――――望む訳が無い。今自分がどうしたいのか悩んでいるのに力だけ手に入れてどうしようというのだ。そんなのは子供の私でもわかる。それくらい無駄で無意味な事だ。

 

『そう、まだ……ということかしら。いいよ、わかった。あなたがそう思うのならアタシは干渉しない。でも、これだけは覚えていなさい。何かを望むなら力とは必ず持っていなければいけないものよ。力が無ければ何もできない。選択の場に立つことすら不可能よ。だから、必要な時は望みなさい。迷わずに』

 

「待って! あなたは一体ッ」

 

 私が問いかけたころにはその声は聞こえなくなっていた。ただ、再び目を向けた水面に浮かぶ私の両眼が一瞬赤くなっていたのは気のせいだろうか?

 

「って、いけないまだ途中だった」

 

 いくら私が落ちこぼれだとしても自分で始めた掃除くらいはしっかり最後までやり遂げないと……

 

「おおーい! スズネ、いいとこにいた。すまんが手伝ってくれ。またナルトの奴が悪戯を――」

 

 その小さな決意を踏みにじる様に現れたイルカ先生に連れられ私は教室の掃除を見事に完遂できなくなってしまった。

 

(い、いや、これはイルカ先生が悪いんじゃない!私がもっと速く掃除を終わらせていれば……あ、あれ?これが力を求めるってこと?)

 

 多分違うと思う。

 

 

 

 

 

 

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