赤い瞳と赤い弓兵   作:夢泉

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一章~旅立ち~
一章一話~最悪の出会い~


 体が引き寄せられるような感覚。またどこかに召喚されるらしい。どこに召喚されようともやることは変わらない。大勢を救うために少数を切り捨てる。ただ、それだけだ。

 

 

 

 

 視界が明るくなる。

 「!」

 「投影、開始(トレースオン)

 とっさに白と黒の夫婦剣、干将・莫耶を投影し迫り来る鎌の内側に右手にもった陰剣莫耶の腹を当て滑らせるようにして受け流す。同時に左手を正面へ、陽剣干将で相手の心臓を貫く。続けて右手を円を描くように後ろから前へ。鎌の付いた細腕を切り落とす。

 巨大カマキリは後ろに跳躍。距離を取る。しかし、心臓を貫いたためそうは動けまい。

 現状を把握しようと干将・莫耶を構えたまま眼だけで左右を見渡す。

 

「!」

 

 なんだこれは。この景色はまるで幼き頃のあの地獄ではないか。

 

 ふと、後ろに人がいることに気づく。この感覚。魔力のパスの繋がり。ということはこいつはマスター。聖杯戦争、なのか?

 

 知りたいことは山ほどあるが、取り敢えず後ろにマスターがいるのは間違いない。しかし、

 

「やれやれ……。召喚早々これとはとんでもないところに召喚されたな。」

 

 全く、化け物に殺されかけているマスターとはな。古今東西どこにもこんなマスターはおるまい。……おっと、そういえば私も……。

 磨耗した記憶の中でも変わらない輝きを放つあの満月の夜。運命の出会い。

 あのとき私は青タイツに殺されかけていたことを思い出し、苦笑する。

 

 カマキリは動く気配がない、取り敢えずこれだけは聞いておかなければいけない。

 後ろに警戒しつつ振り替える。

 

 「問おう、君が私のマスターか?」

 「えっとえっと………マス、ター?」

 

 混乱しているのか?まさか私のように偶然の召喚をしたのだろうか?

 

 しかし、このマスターは幼すぎる。齢10にも届いていないだろう。煤や痣だろうか、それらでひどい見た目になっているが、それらがあってもわかる西洋人特有の美しい白い肌。何より特徴的なのはルビーのような赤い瞳だろう。白い肌と赤い瞳は小さき姉を彷彿とさせる。唯一異なるのは髪が金髪である点だろうか。

 

 さて、どうしたものか。何から話そうかと思案していると後ろで何かが動く気配がしたため振り返りながら干将・莫耶を構える。

 

「馬鹿な、 」

 

動いていたのは先程のカマキリだった。しかし、確実に心臓を貫いたのだが。見ると胸には傷が一切無く、鎌も左右揃っている。周りに別の個体がないことから考えられるのは、

 

「再生か、」

 

ならば、

 

同調、開始(トレースオン)

 

投影するは彼の英雄王の庫に納められし、女怪殺しの剣。ギリシャ神話の英雄ペルセウスが所有した神剣。その名を

 

蘇生封じの剣(ハルペー)!!!!」

 

肩口から斜めに切り下ろす一閃。上下二つに別れたカマキリの体は二度と再生することはなく、数秒の後にカマキリは動かなくなった。

 

 振り替えるとマスターがなにかをこらえるように小刻みに肩を震わせている。

 

「おい、だいじょ「わあぁぁぁうわあぁぁぁ!」う、ぶか」

 

 盛大に泣き始めてしまった。

 

「うわあぁぁあぁぁ、うっ、くっ…ひくっ、っわあぁぁぁ」

 

 泣きながらよちよちと近づいて来たマスターは今、私の足にしがみついて泣き叫んでいる。

 

「こわ…かっ、た。こわかったよぉ。」

 

マスターが落ち着くまでこのままにしておくことにした。手は自然とマスターの頭を撫でていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どれくらいそうしていただろうか。とても長かったようにも短かったようにも感じる。

マスターは泣きつかれたのか私の足にもたれ掛かって眠ってしまった。

 

「やれやれ、世話のかかるマスターだ。」

 

マスターを起こさないように優しく足から離して抱き抱えた。

 

「さて、マスターの安眠を妨げるものたちにはご退場願おうか。」

 

 数は50といったところか。今や周りは様々な形の化け物に囲まれている。不死とも言える再生能力を持った化け物が50体。絶望的だ。しかし……不可能を可能にしてこそ弓の英霊!

 

「ーーーー投影、開始(トレースオン)

 

 投影するのはどれも不死殺しの概念を持つ剣。

 

「ーーーー憑依経験、共感終了」

 

工程完了(ロールアウト)全投影、待機(バレット クリア)

 

 剣の切っ先を怪物どもに向ける。

 

「っーーー停止解凍(フリーズアウト)全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)………!!!」

 

 

 直後、剣の雨が降った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わったか」

 剣の雨がやむと静寂のみがそこにあった。

 

 

 

 ここにいるとまた奴らが来るかもしれない。

 私はマスターを抱えて走り出した。

 

 

 走りながら使えそうなものを集めていく。そして、途中で見つけた、比較的原型の残っている家屋に入った。

 改めてみるとマスターはひどい格好だ。美しい顔は殴られたような痣だらけ。服はほとんど服の役割を果たしていないぼろ切れのようなもので、開いた穴から覗く肌は痣や傷だらけだ。とても美しい金色であろう髪は、ボサボサで好き勝手にのび放題。最低限の手入れしかされていないようである。

 

同調、開始(トレースオン)

毛布を投影しマスターにかけて、そのままマスターを床に寝かせる。所々出血も見られたため布を投影し応急処置のみ済ませた。

 

 さて、マスターが快適に暮らせる環境を整えねばな。

 

 マスターの体を綺麗にするために風呂を沸かす必要もあるし、家屋も綺麗にせねばならん。食事も用意しなければ。ああ、忙しい、忙しい。しかし、

 

「私を満足させたくば、この3倍はもってくるがいい!!」

 

 やはりこの男、どこにいってもオカンなのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?」

 

「起きたかマスター」

 

「ううぅぅーーん。あれ?ここは…?」

 

「空き家だ。マスター、風呂でも入るか?」

 

…………あれ?この人誰?……知らない男の人と二人きり。……私の服はボロボロで、それで今空き家にいる?それで、お風呂にはいるって?………………………………………まさか、

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「ど、どうした!?」

 

「やめて、来ないでっ、変態!ロリコン!」

 

「なんでさっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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