ノーソウル,ノーギフト   作:麻戸産チェーザレぬこ

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 訳あって短いです。
 


包まれて見る白鳥と虎

 葉は目を瞑っている。その彼を白夜叉が抱えるようにしていた。葉と頭を合わせていた白夜叉がふぅと深くつきはなれる。

 白夜叉たちが何をしているかというと白夜叉は葉の記憶をのぞいているのである。白夜叉が言うには――――葉は兄貴様にそっくりだから天がうっかり、ということもあるだろ? そうならんためにも私が上層へゆき麻倉葉に非は無いぞと分かってもらうのだ。だから葉がどんな過去を背負ってきたかを知らねばならない、それにギフトはそやつが歩んできた道によって恩恵が決まることがあってな、おそらくだが、おんしの兄がブラックリスト入りしているのはギフトゲームに乱入しただけではなく、〝場外乱闘〟〝闇討ち〟のギフトのせいであろうな。箱庭のギフトゲームルールというよりも〝箱庭の法〟にその二つが触れたのではないかな……なぜって? おんしの頭なら考えられるはずだが、まぁよいが。〝場外乱闘〟も〝闇討ち〟もよ、大会に起こってはならんだろ。それだよ。天はこれ以上の被害が拡大しないために対処したかったのではないかの――――といった事わけがあった。

 

「終わったか」

「うむ。………葉、なかなかの人生だの」

「でも、オイラ以上に辛い人生歩んできたヤツはいっぱいいたぞ」

「葉も――」

「オイラは楽が好きなんよ、あと白鳥も好きだ。てゆうかさ」

 

 葉は表情を崩しながら続きを言った。

 

「いつまでも昔のモン背負ってたら疲れるだろ? そんなもんだ。たぶん」

「なら言いたい事をかえよう……おんしは魔王の器だ。箱庭の魔王ではなく、しゃんとした魔王。試練を課すのではなく魂を砕く……な」

「そいつは困ったな」

「困った顔には見えんぞ。よいか葉、絶対あの二つは使うなよ」

「使うな言われてもどうしたら発動すんのか分からんぞ」

「しばらくゲームは控えるかゲーム会場に近づくな、これしか言えん。あー、明日のガルドのゲームに出るのか、大人しくしてるんだな隅っこで」

「なるべくそうしたいな~」

 

 やれやれと首を振る。

 

「では私は報告しにいくからこの部屋と、ここから遠いが風呂を好きに使え。琴温があない(案内)してくれるでな」

 

 立ち去ろうとする大人白夜叉の左手を葉がひっぱる。

 

「な、なかなか強引だの」

「オイラを連れて行かんのか?」

「誰の目から見ても罪をおかしていない、むしろ被害にあった子どもを警察に突き出して、その子を裁判で死刑にしてくださいと叫んでいる。被虐性欲を持っているのか葉は」

 

 葉は微笑んだ。

 

「そう、ありがとうな」

「とは言っても監視は付くだろうな、間違いなく」

「だよなー………しろやんが監視役だったらオイラ楽に生活できるんだけど」

「私もだよ。だるいの大好きっ子な葉を監視するのは仕事の内にもはいらんわ」

「なぁ、しろやん」

「どうした」

 

 白夜叉は目を優しく細める。

 

「あの場所、暇な時でいい。また連れていってほしい、です」

「ふふ、敬語など使わなくてもよい。いつでも歓迎する。私も葉の友人のICEMEN(アイスメン)とやらたちのオーロラ北極天を見てみたいの」

「おお! やっぱしお前もそう思うんか!! あいつらのアレはいいぞお、なんたってすんげえきれいな世界をみせてくれるんだよ」

 

 白夜叉はこくりと。

 

「しろやんの世界と合わせたら……オイラ気持ちよく眠れる」

 

 おもむろに手を伸ばし、ぽんぽん、と葉の頭を。

 そして白夜叉は天に向かった。

 入れ替わるように琴温が温泉へと葉を案内した。

 ゲームの朝を迎え、葉はサウザンドアイズで朝ごはんをいただき、そして身支度をととのえる。 

 

「今後ともご贔屓に、とノーネームへお願い致します」

「うん。じゃあ、あんたらもありがとうっ。ごはんも温泉も、おかげで疲れがとれて気分がいい」

 

 ――じゃ、葉はガルドのゲーム会場へ歩いていく。

 数人の店員たちが見送ってご飯を摂ろうと戻ろうとしたその時、葉がこちらへ戻ってきた。忘れ物かと疑ったけれども春雨もフツノミタマノツルギも携えている。あと、ヘッドホンもしっかりと頭に掛けている。

 

「す―――すまん、……待ち合わせってどこ集合なんでしょうか……? ガルドの本拠もわからないのでありまして………」

 

 どちらも、汗をかいていた。

 待ち合わせ場所は、〝六本傷〟の旗が掲げられたカフェ店であった。

 

 

 

 

「――ということがあってな。びびったよ」

「ソウデゴザイマスカ……。で、麻倉さんはなぜ猫族の方たちに、かつがれているのでしょうカ?」

「オイラに訊かれてもそいつは困る。なぁ、あとはもういいからそろそろ降ろしてくれんか? はずかしい」

「麻倉の旦那が言うならしょうがないっすね」

「五回だぞこれで」

 

 猫族にそう言いやればしぶしぶ下ろされた。麻倉はどこかに手ごろな座れる場所はないかと探して、手ごろな樽を見つけ腰を下ろし、石造りの道に視線をやる。ちなみにだが時間は十分ある。

 取り巻きをしていた鉤尻尾のウェイトレスの猫娘が今思い出したかのように急いで口を開く。

 

「そういえば、ボスからもエールを頼まれてました!」

「そうだった! ウチのコミュニティも連中の悪行にはアッタマきてたんですよ!!」

「忘れてたわ! あいつらいっつもタダメシ()らいなの!! 二度と不義理な真似が出来ないようにしてやって!」

 

 ソレ忘れることですカネー、と黒ウサギが冷たい視線を猫店員たちに凍結。

 そのかたわらで飛鳥が苦笑いをしながらも強くうなずく。

 

「ええ、そのつもりよ」

 

 おお! と〝六本傷〟の旗を掲げる猫店員たちが地をも揺らす歓声をあげる。

 十六夜は口角をあげ、耀は三毛猫を撫でながら微笑み、飛鳥にジンと黒ウサギは目を丸くして、麻倉葉の顔は見えない。

 ニャーニャーとした雄叫び(?)がすんだらしく鉤尻尾が不審な(おもて)で、ガルドが舞台区画ではなく、寝食や菜園に飼育などをする住居区画でギフトゲームが行われる事と、傘下のコミュニティや同士を全員放りだしたのだと伝える。

 その後、熱烈なエールを受け、一同は〝フォレス・ガロ〟の住居区画を目指そうと歩きだしたが一人だけ銅像を決め込んでいた。

 

「あら麻倉君、怖くなったの? 大丈夫よ。春日部さんに私がいるもの」

「……ん? ああすまん――っと。まったく。代金を踏み倒すとはガルドめ………なんて悪い奴だ」

 

 風が、髪を揺らす。

 葉は空を見上げながら。清々(すがすが)しい青空が()()にあった。

 

「そうです。ガルドは罪も無い子どもを人質にしてはその子どもたちを、殺したんですから」

「ええ。あんな理性どころか知性の欠片もない外道は討たないといけないわ」

「同じく」

「ジン坊っちゃん、飛鳥さん、耀さん、麻倉さん。今回のギフトゲーム、この黒ウサギは審判をしなければなりませんが、箱庭を犯したガルドを慈悲無く討ってください。子ども、名と旗を奪われた方たちのためにも」

 

 すでに十六夜は歩を進めていたらしく、一向に動かない黒ウサギたちに早くしろや、コミュニティ抜けるぞ? と発破をかけた。そのような大それたことを言うよりも、早く住民たちにとってのどす黒い下種をどうにかしねえと意味ないぞ、とそれも暗に言っていた。

 途中、麻倉が道のそこらへんに転がっている石や木の枝に葉っぱをポーチの中にたくさん入れる奇妙な行動があったけれども、一行はガルドの居住区画に着いた。

 

「おいチビッ子、石集めってか面白え趣味だな」

「まーな。にしても」

「……。ジャングル?」

 

 それというのも、居住区が森のように豹変していたからだ。ツタの絡む門をさすり、鬱葱(うっそう)と生い茂る木々を見上げて耀は呟く。

 十六夜がそれに続く。

 

「虎の住むコミュニティだしな。おかしくはないだろ」

「いや、おかしいです。〝フォレス・ガロ〟の本拠は普通の居住区だったはず………それにこの木々はまさか」

 

 ジンは木々に手を伸ばせば、樹皮は生き物のように脈を打ち、肌を通して胎動の様なもの。

 

「鬼化してる?」

「ジン君、ここに〝契約書類(ギアスロール)〟が貼ってあるわよ」

 

 

『ギフトゲーム名〝ハンティング〟

 

・プレイヤー一覧 久遠 飛鳥

         春日部 耀 

         麻倉 葉

         ジン=ラッセル

 

・クリア条件 ホストの本拠内に潜むガルド=ガスパーの討伐

・クリア方法 ホスト側が指定した特定の武具でのみ討伐可能。指定武具以外は〝契約(ギアス)〟によって

       ガルド=ガスパーを傷つける事は不可能。

・敗北条件  降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

・指定武具  ゲームテリトリーにて配置。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の(もと)、〝ノーネーム〟はギフトゲームに参加します。

                                〝フォレス・ガロ〟印』

 

 

 

「ガルドの身を条件に……指定武具で打倒!?」

「ジン坊っちゃん!? ちょっと、……いや! まずいですよ!」

 

 ジンと黒ウサギが顔を赤くし悲鳴のような声をあげる。麻倉と飛鳥が心配そうに問う。

 

「何がまずいんだ?」

「このゲームそんなに危険なの?」

「いえ、ゲームそのものはいいのです。問題はこのルールでありまして、飛鳥さんのギフトで彼を操る事も、耀さんのギフトに、麻倉さんの春雨とフツノミタマノツルギで傷つける事も出来ない事になります………」

 

 飛鳥が険しい顔で黒ウサギに問う。

 

「どういうこと?」

「〝恩恵(ギフト)〟ではなく〝契約(ギアス)〟によってその身を守り、神格ですら手が出せません!」

 

 そして参加者の飛鳥たちは門の前で作戦会議を開いてい、もう少しで終わりそうな空気だ。

 

「ふむふむ。つまり、久遠のギフトは相手を支配するんじゃなく、()()()ギフトなのか」

「そう、麻倉君。ではギフトゲームを始めましょうか」

 

 参加者たちはうなずく。

 ジンが、ゲームの扉を開いた。

 

 

 

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