《始まりの町》転移門前
・・・・・・遅い・・・。
あれから1時間たった。あの男の人はまだ転移してきてない。
結果的に私は助かった。もうダメだって思ったとき、一人のプレイヤーが助けてくれた。名前も顔も知らない自分を。
でも・・・その人はまだこない。
もうじき日が暮れる。夜のフィールドは危険だ。視界が悪くなり、モンスターを発見しにくくなる。それにあのフィールドは森。広く見渡せる平原ならまだしも見通しが悪い森のなかではどこから襲われるかわからない。
なによりもモンスターのたちが悪い。《リトルネペント》には目がない。どうやってこちらの位置を把握してるかはわからないけどあのモンスターにはスキル《隠蔽》が通用しない。
あの人はもしかしたら・・・もう・・・・・・。
早く探しに行きたい。命の恩人が危険な目にあってるかもしれない。けど武器が無い。装備の耐久値も少なく、アイテムも無い。今から準備して出るとなると、出発は夜になってしまう。一度通った道とはいえ視界が悪い中ソロでフィールドに出るのは危険すぎる。
・・・明日の早朝装備を整えて町を出よう。幸い始まりの町から次の村への道にはベータテスト時代との変更点はほとんどなかった。警戒しながら進んだ最初とは違い半分くらいの時間で到着できるだろう。
「そのためにも・・・・・・今は休まなきゃ・・・。」
おぼつかない足どりで宿屋を目指す。
この夜はあまり眠れなかった。
ハチside
昨日の地獄の鬼ごっこから一夜明け、俺は朝食をとっている。小町の顔が見れない朝がツラい。今日もまたレベリングだな。ふぇ〜。働きたくないよぉ〜。
今まで知らなかったが、この世界にはソードスキル以外にも様々なスキルがあるらしい。昨日、宿屋で晩飯食ってたらそういう会話が聞こえてきた。こらそこ、ストーカーとか言わない。・・・・・・したことあるけど。
しかし、重要なのは内容だ。そこにはあったのだ。この俺のために存在するかのようなスキルが。
スキル名は隠蔽。使用することでモンスター、プレイヤーから発見されにくくなる。熟練度が上がることでその精度は増すらしい。
そう、リアルステルスヒッキーである。見つけたときは運命を感じた。部屋の中で一人ニヤついてしまったほどだ。
二つ目のスキルは《索敵》。自分の周辺のプレイヤー、モンスターの位置を把握出来るといったものだ。こちらも隠蔽と同様熟練度が上がるごとに、索敵が増していく。
このスキルはソロプレイヤーにとって大切だ。当然のことだがソロプレイヤーは可能な限り単体のモンスターを狙う。そうするときに実は近くにもう一匹いましたー、ではシャレにならない。自身の安全を確保するために重要なスキルだ。
この二つのスキルはどちらも使い込むことで熟練度が上がるらしい。ガンガン使っていきたいとおもう。
あれから広場に移動した。
とりあえずどんな感じなのかが気になるので、試してみようと思う。まずは隠蔽からだ。
「ふっ。」
発動してみたんだが・・・・・・。うーんイマイチ実感がわかない。まぁこちらの見る世界が変わるわけじゃないし、当然なんだが。・・・色々試してみるか。
色々検証してみた結果、
隠蔽ぱねぇ。
プレイヤー達に全っ然気付かれない。いままで色々なプレイヤーにこの目のせいでジロジロ見られてきたがそれがまったくない。まるでそこに何も無いかのように通り過ぎていく。ホントに消えたような気分だ。・・・・・・大丈夫だよな?いるよな俺?
しかし、実際問題このスキルはバランスブレイカーなんじゃないだろうか。習得直後の熟練度でこの性能。極めたらどうなるんだろうか。大変気になるところである。
隠蔽はなかなかのチートスキルだった。次は索敵だな。
「・・・うおっ!」
驚いた・・・。なんだこの感覚。プレイヤーを感知するってこんな感じなのか。例えるならあれだな。あの誰かが自分の話してるときに感じるあの視線。あれがハッキリしたような感じ。
それにしてもすごいぞ、これ。俺を中心とした半径10Mくらいの範囲のプレイヤーが手に取るように分かる。思った以上に便利だわ。
この二つのスキルを駆使していけばレベリングもずいぶんと楽になるだろうな。短剣はリーチが短いから敵に近づかなきゃいけないだろうし。索敵で敵を見つけ、隠蔽で近づき短剣で仕留める。・・・・・・暗殺者かよ。カッコイイなおい。
まぁスキルの効果もわかったことだしレベリングに行くとしよう。森は・・・・・・・やめておこう。昨日の地獄の鬼ごっこがトラウマになっている。今日は平原でレベリングしよう。
数分後。装備を整え、アイテムを整理して、俺はフィールドに踏み出した。
???side
「やっとついた。」
朝に始まりの町を出発した私は一時間後、昨日の村についた。途中何度かモンスターと遭遇しそうになったが、索敵と隠蔽を駆使し戦闘を避けて進んだ。
「この村のどこかに。」
昨日の男の人がいる。そう思って駆け出した。しかし、それらしいプレイヤーは見当たらない。
「・・・いない。」
村中を走り回ったけど男の人は見つからなかった。
殺された?
そんな考えが浮かぶ。あの後なにかトラブルが起きたのかもしれない。脱出出来ずにそのまま・・・・・・。
「おヤ?キーちゃんじゃないカ。」
「っ!アルゴ!!」
アルゴとはベータテスト時代からの付き合いだ。このデスゲームが始まってからも、何度か会っている。彼女ならあの人の情報を持ってるかもしれない。
「おっおう、どうしたんダ?そんな慌てテ。」
「情報が欲しいんだ!」
「なんの情報ダ?」
「男の人の!!」
私の大声は広場に響いた。これでもかってくらい響いた。多くのプレイヤーがこっちを見てる。アルゴは口をポカンとあけている。
どうしてそんな顔をしてるんだろう?
「どっどうしてその情報が欲しいんダ?」
「それはね――。」
私は昨日、起きたことを説明した。
「なるほどナ。それでキーちゃんはそのプレイヤーにお礼を言いたいト。」
「うん。」
「うーん。でもSAOに男性プレイヤーは多いからナ。最前線だとしても見つけるのは難しいゾ。」
「・・・そう・・・・・・だよね。」
「なにかそのプレイヤーの特徴とか覚えてないカ?」
「えっと・・・。」
すごい速くて、短剣使いで、アホ毛があって・・・あっそうだ。
「変わった目の人だった。」
「・・・・・・・・・もしかして短剣使いカ?」
「うん。」
「アホ毛がなかったカ?」
「あった。」
「目が腐ってなかったカ?」
「・・・・・・・・・うん。」
「・・・・・・心当たりがあるゾ。」
「ホントに?!」
「ああ、昨日のお昼前に少し話したゾ。」
「お昼前・・・・・・。」
昨日私が助けてもらったのは夕方頃。これじゃあわからない。
「まァ、そんなに落ち込むナ。プレイヤーネームだけでも聞いておくカ?」
「うん。」
「ハチだ。」
ハチ・・・さん。うん。覚えた。
「理由が理由だからナ。今回はタダでいいヨ。」
「いいの?」
「そのかわり見つけたら教えてくれよナ。」
「わかった。」
フィールドに出てる可能性もある。装備を整えてから私も出てみよう。
今度こそ細心の注意を払って行動しよう。少しの慢心が死に繋がる。そのことを昨日、身をもって学んだのだから。
ハチside
何故か知らないうちに罵倒された気がするんだが・・・まぁいいか・・・・・・・・・いやよくねーな。
それにしても実にスムーズである。まわりのパーティーが走ってオオカミのようなモンスターを追いかけてるのに対して、こちらは忍び寄り、その首をソードスキルで切り裂くだけだからな。
ましてこちらはボッチだ。・・・・・・・・・間違えたソロプレイヤーだ。経験値も独り占めできる。昨日と比べるとずいぶんハイペースなレベリングだ。
しかし、ただひたすら必死に同じ場所でレベリングすればいいという訳ではない。レベルが上がると必然的に、次のレベルになるために必要な経験値は増える。そうなってくるとモンスター一体あたりの経験値が労力に合わなくなってくるのだ。
つまり敵モンスターと自分のレベル差が近すぎず、遠すぎない場所を選ばないといけない。
これがなかなか難しい。例え同じ経験値でもモンスターの種類によって戦いやすさは全然違ってくる。また、自分の武器も考慮に入れなければならない。
そういう観点では複数の武器の選択肢があるパーティープレイは、どこでもレベリング出来るという大きなメリットがあると言えるだろう。まぁやんないけど。
さて、この村周辺のフィールドでは十分なくらいのレベルになった。これからどうしようか。スキルスロットに空きができたことだし、隠蔽、索敵のほかになにか補助的なスキルでも練習しようか。
そういえば昨日、スキルをいじってる時に《投剣》なんてものがあったな。名前からして剣とかナイフとかを投げるスキルなんだろうが、どうにかして攻撃に使えないだろうか?
「・・・うん。いくらでもあるな、これ。」
目に刺す、手足に刺して固定する、などなどいくらでも思いつく。それに急所ならある程度のダメージも見込めるだろうしな。
よし、決めた。明日からは投剣スキルの熟練度を上げていこう。そうと決まれば村に帰って、投剣用のナイフでも探してみよう。
村の入り口付近、俺は昨日の少女とすれ違っていたのだが、俺は考え事のため、少女は俺の隠蔽スキルのためにお互い気が付くことは無かった。
「ナイフ・・・いや、ピックか・・・・・・。」
「あれ?今だれかいたような・・・・・。」
読んでいただきありがとうございます。基本的に誤字など以外は修正は加えずにいきます。次回も頑張っていきたいと思います。