ひねくれボッチは仮想現実で本物を求める   作:エンジェリック

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どうも、エンジェリックです。第四話の投稿となりました。よろしくお願いします。


ひねくれボッチは流星を見た

デスゲームが始まってからおよそ一ヶ月が経過し、プレイヤーの死者は二千人近くになった。まだ第一層は突破されていない。

 

ここまでくると正直、自分の認識が甘かったと言わざるを得ない。デスゲームといっても攻略を目指すプレイヤーは存在する。ベータテスター達もいるのだから第一層くらいは問題なく突破できるんじゃないか。そう思っていた。

 

しかし、結果はこの停滞した現状。《迷宮区》といわれる次の層に行くためのダンジョンは発見され、自分も行ったことがあるのだが《ボス部屋》というものが見つからない。名前からして次の層への道を守っていることがわかるが、その部屋が見つからない。

 

そしてなによりも、増えていく死者の数。これが問題だ。いままで死んでいった中には自ら命を絶ったプレイヤーも多いと聞く。この状況に絶望し、どうせいつか皆死んでしまうのだから、遅いか早いかの違いでしかない。そういう結論に達して死んでいったのだと思う。

 

別に倫理的な観点で自殺なんてするんじゃないと言うつもりは毛頭ない。しかし、クリアを目指す立場では話は違う。

 

それはマズイ。非常にマズイことなのだ。第一層でこれだけの時間と労力を費やしたのだ。今後、ゲームクリアを目指すにあたって難易度は上がっていくだろう。だからプレイヤーの全体数が減るのは、その難易度上昇を加速させているといえる。

 

人間はどんな異常な環境にも適用できる生き物だ。おそらくだが、このデスゲームをクリアするには数年かかるだろう。だが一年もすればこの環境に慣れてくるプレイヤーも増えていく。そうなって、ようやく攻略に携わる人数も増えるだろう。それまでは無闇に死者を増やしたくはない。一刻も早く他のプレイヤー達に確実な進歩を見せなくてはならない。

 

急ぐと前線で死者が増え、遅すぎると未来の戦力が減っていく。それでもって時間制限あり。

 

 

「クソゲーすぎるだろ。」

 

 

迷宮区を前にして一人愚痴る。この状況すら計算にいれてるとすれば、茅場晶彦は相当ひねくれてやがるな。お前もそうだろって?よせやい褒めんな。

 

・・・・・・とりあえずは攻略を進めるしかねぇな。

 

そう結論づけ、使い古した装備と共に俺は迷宮区へ踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

流星というものを見たことがあるだろうか。あるいは流れ星ともいう。そう、リア充どもが夜空を見上げて見つけては、間に合うわけがないのに叶いもしない願いごとをするあの流星だ。毎年夏になると周りのヤツらが星を見に行こうだの、一緒に星空を見ようだのうるさくなって困る。

思い出すのは中学時代、クラス全員で星を見に行くことになったのだが、俺だけ違う集合場所を教えられ、一人涙で滲んだ視界で星を見た苦い記憶。・・・・・・いかん、目から水が。

 

 

さて、話を戻そう。どうしてそんな話をしたかというと、今俺はその流星を見てるからだ。といっても場所は迷宮区の奥深く。この層ではトップレベルのモンスター達が出る場所だ。

 

一人のプレイヤーが亜人型モンスター《ルインコボルド・トルーパー》と戦っている。ソロでこの迷宮区に挑んでいるという点でも十分珍しいのだが、問題はそこではない。

 

そのプレイヤーはレイピアを使用しているのだが、そのソードスキルのスピードが尋常ではない。かつて他のパーティーのレイピア使いを何度か見たことがあるが、あそこまでのスピードを出しているプレイヤーはいままでみたことがない。どうすればあそこまでのスピードが出るんだろうか?是非とも教えていただきたい。まぁ、聞かないけど。

 

神速の突きを浴び続けたルインコボルド・トルーパーはポリゴンとなって砕け散った。

 

それにしてもあのプレイヤー、なんか足元がおぼつかねぇな。相当な時間レベリングをしているのだろうか?

 

そんなことを考えていると、そのプレイヤーのふらつきはどんどん大きくなり、ついには糸が切れた人形のように地面に倒れ伏した。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・仕事が増えたなぁ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???side

 

このデスゲームが始まってから一ヶ月がたった。二週間たっても外部からなんの連絡も無いことから、私は外部からの助けはこないことを確信した。ならば残された道は一つしかない。

 

どうやって死ぬか。

 

どうせこのゲームはクリアできない。現実の私の身体も永遠にはもたない。いつか皆死んでしまうのだ。遅いか早いかの違いでしかない。

 

・・・・・・でも、この世界には負けたくない。始まりの町に留まり、怯えて過ごすということは、この世界に負けたということだ。

 

この世界に恐怖し、逃げ出していつか死ぬ。そんなのは嫌だ。死ぬにしたって、この世界には負けたくない。この世界と戦って、最後まで足掻いて死んでやる。

 

そう思い私はいくつかの武器、アイテムを手に町を出た。

 

あれから一週間。三日くらいで現在の最前線と思われる場所についた私はひたすら戦った。レベルはすごいスピードで上がっていったが、そんなものはどうでもいい。どうせ死ぬのだ。

 

もう何体倒したかわからない怪物を砕いた後、私は意識が遠のくのを感じた。

 

 

・・・・・・これで・・・ようやく・・。

 

 

自分の身体が倒れていくのを感じながら、私は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暖かい・・・。優しく頬をなぞっていく風と日の光を感じた。倒れている身体には、迷宮の冷たく固い岩ではなく、柔らかい芝生の感触が伝わっている。

 

 

・・・・・・どうして?

 

 

私は迷宮の奥深くで死ぬはずだ。もう何も感じなくなるはずだ。

 

思わず跳ね起きてしまう。あたりの様子を見渡すと迷宮の塔が見えた。・・・外に出たの?

 

混乱する頭のまま、自分の置かれている状況を確認しようとする。すると少し離れたところに怪物がいた。ボロボロのコートを着て、座っている。フードの隙間からまるでこの世の全ての生者を憎んでいるかのような目が見えた。

 

いままで見たことがない怪物。今度こそ自分は死ぬんだろうか。

 

そう思いながら私はレイピアに手をかけた・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハチside

 

 

おっとこれはあれですね。モンスターと間違われてますね。

 

すごい目でこっち睨みながらレイピア抜こうとしてるよ。なんなのほんとに。

 

隠蔽スキル習得前はフィールドでモンスターと間違われることが多々あった。実際襲われた訳じゃないが、離れたところから、あれモンスターじゃね?みたいな会話がよく聞こえてきた。

 

この目か?この目が悪いのか?

 

それはそうと早くこのプレイヤーを止めねばなるまい。あの神速のソードスキルで穴だらけにされた自分なんぞ想像したくない。

 

 

「おい、落ち着け。俺はモンスターじゃない。」

 

 

するとそいつは心底驚いたような表情になった。フードの隙間から見える口で判断しただけだが。

 

そんなにモンスターに見えるの俺?泣くよ?

 

一人心に傷を負っていると、そのプレイヤーは怒りを抑えきれないといった声でこう言った。

 

 

「余計な・・・ことを・・・・・・。」

 

 

・・・・・・・・・まぁ、薄々わかっちゃいたけどね。けど、今ので確信した。

 

こいつは既に諦めているのだろう。生き残ることを。外部からの助けはこず、日に日に増えていく死亡者。そんな中でもう自分は死ぬしかない、けれど逃げ出したくはない。そう思ってここまで来たんだろう。最後までこの世界に負けず、戦って死ぬなら本望だ、と。

 

その世界に対して抗う姿勢は好感がもてるな。ただこいつは、俺が自分を心配して助けたとかそう思ってるみたいだしそこは訂正しておこう。

 

 

「勘違いすんじゃねぇ。俺はお前のマップデータが欲しいだけだ。」

 

 

そう、マップデータ。これは攻略において大変重要なものだ。一度誰かが来た道を通るという二度手間を防げるし、モンスターから逃げてるときに袋小路に追い詰められるなんてことも防止できる。

 

この仮想世界で倒れるくらいあそこでレベリングしているのだ。マップデータも相当な量になってるだろう。俺が楽するためにも、そのデータは是非とも欲しい。

 

 

「っ!」

 

 

そのプレイヤーはイラつきを隠しもせずにウィンドウをいじると、マップデータを転送してきた。

 

 

「これでいいでしょ。私はもう行くから。」

 

 

そう言ってそのプレイヤーは再び迷宮区の入口へ歩き出した。

 

 

「死ぬつもりなのか。」

 

 

俺の疑問を受けたそのプレイヤーは足を止め、振り返りもせずに言った。

 

 

「・・・あなたには関係ないでしょ。ほっといて。」

 

 

はい、予想通りの答えが返ってきました。確かに俺がコイツにどうこう言うのはおかしいかもしれない。しかし、そうは問屋がおろさない。

 

 

「死ぬつもりなんだったら、自殺してくれないか?」

 

 

一瞬の間の後、そいつはすごい速度で振り返って睨みつけてきた。おーおー怒ってる。ちょー怖いんだけど。直接顔は見れないにしても、怒気が溢れ出てるよ。

 

 

「私がどこでどう死のうが私の勝手よ。あなたにどうこう言われる筋合いはないわ。」

 

「お前は、いままで倒してきたモンスターの数を覚えているのか?」

 

「・・・なによ急に。」

 

 

うーん、伝わんないかぁ。知らない?結構有名だと思うんだけど。まぁいいや。

 

 

「お前、倒れるくらいあそこでレベリングしてたってことは、相当長い時間迷宮区にいたってことだよな?」

 

「四日くらいよ。」

 

「ってことはかなりの数のモンスターを倒したよな?」

 

「それがなに。」

 

 

質問の意図が見えないのかイライラが増している。しかし、四日間ぶっ続けって・・・よく死ななかったなこいつ。だがこれで材料は揃った。

 

 

「このゲームが供給する経験値や金は限られてるんだよ。つまりお前が経験値や金を稼ぐほど、他のプレイヤーにはそれがいかなくなる。金ならまだいい。だがお前がこの四日間で狩ってきたモンスターの経験値は既にお前だけのものになってしまっている。」

 

「っ!」

 

 

ようやく意味を理解したのか、目の前のプレイヤーは歯を食いしばっている。さて、次でフィニッシュだ。

 

 

「別にお前がどこでどう死のうがどうでもいい。だが最初から死ぬ気の奴が俺達から経験値を奪っていくんじゃねぇ。クリアを目指してる奴らだっているんだ。足を引っ張るな。」

 

「・・・・・・私だってクリア目指してるわよ。」

 

「少なくともお前のやり方はクリアを目指す奴のやり方じゃねぇ。」

 

 

今度こそ何も言えなくなったのか、俯いて手に握り拳をつくっている。怖いな〜。

 

 

「経験値を稼いだ以上死ぬんだったら役に立って死んでくれ。丁度今日の夕方、ボス攻略会議があるらしい。死ぬんだったらボス攻略のときにしろ。」

 

 

コイツが起きるのを待っていた時に通ったパーティーが話していた。隠蔽便利だな〜。

 

 

「・・・・・・わかっ・・・た。」

 

 

悔しいそうにそう呟いて、そのプレイヤーは迷宮区最寄りの町《トールバーナ》への道を歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふむ、上手くいったようだな。

 

正直いって、このゲームが供給する経験値や金が、たった一人のプレイヤーが四日間ぶっ続けでレベリングしただけで尽きるなんて思ってない。向こうは納得したが。

 

あのレイピア使いは強い。それこそいままで見てきたプレイヤーの中でもトップ10にはいるくらいだ。だからこそヤケになってここで死んでもらっては困る。

 

ボス戦がどれほど厳しいかはわからないが、突破さえ出来ればあのレイピア使いも少しは考え方を変えるんじゃないかと思う。そうなれば強力な戦力になる。今は戦力が必要だ。

 

博打気味だったがなんとか成功したようだ。さて、俺も行くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・あれ?道おなじじゃん。・・・・・・隠蔽使お。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーちゃん?side

 

デスゲーム開始から一ヶ月たった。私は今、迷宮区最寄りの町トールバーナにいる。今日の夕方からボス攻略会議があるから。

 

この一ヶ月、色々あった。多少の恐怖はあったけどがんばって、《森の秘薬》をクリアして第一層で最強の片手剣、《アニールブレード》を入手した。クエストをクリアしたときは思わずその場に座りこんじゃったのを覚えてる。

 

他にも女の子が少ないからなのか、頻繁にパーティーに誘われた。動きが制限されるとあの人を探しにくくなっちゃうので、丁重にお断りした。それでもよく誘われたので今はフードを被っている。

 

少し前にはクラインさんと再会した。リアルの知り合いの人達とパーティーを組んでいた。始まりの町で置いてきてしまったことで罪悪感があったけど、ある日クラインさんは、

 

 

「気にすんなって。そんなことより、お前が教えてくれたスキルで仲間を守れたんだ。感謝してるぜ。」

 

 

と言ってくれた。とても嬉しかった。ボス攻略会議にも参加するみたい。

 

あれから常に最前線でレベリングをしていたけど、あの人を見つけることは出来なかった。

 

アルゴも探してくれているみたいだけど見つからない。

アルゴほどの情報屋が見つけられないプレイヤーなんてなかなかいない。それに数十人しかいない最前線のプレイヤーの中で一ヶ月たっても一度も見かけないなんてあるんだろうか?

 

《黒鉄宮》に行けば安否がわかるかもしれない。でも今から始まりの町に戻るのは大きなタイムラグになっちゃう。攻略を疎かにはできない。

 

 

 

 

・・・いや・・・・・・これは言い訳なんだ。

 

 

 

 

私は怖いんだ。黒鉄宮で名前を見るのが。ハチさんの名前に線が引かれてるのを見ることが。自分のせいで人間が一人死んでしまったと認識することが。

 

そんな無責任で臆病な自分から目を背けるように攻略に打ち込む。

 

アルゴもそんな自分を心配してくれているのか、度々姿を見せては他愛のない話をして情報も売らずにどこかに去っていく。

 

しっかりしなきゃ。助けた自分がこんなんじゃハチさんもがっかりしてしまう。まずは第一層フロアボス攻略。そのためにも会議では重要事項を聞き漏らさないようにしないと。

 

胸に決意を秘め、広場に向け私は歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???side

 

あれから三十分くらいたって。私はトールバーナについた。あの目が腐ったプレイヤーは同じ道なのに見かけなかった。別の道があるんだろうか?

 

あいつに言われたことを思い出す。

 

 

クリアを目指してる奴らだっているんだ。足を引っ張るな。

 

少なくともお前のやり方はクリアを目指す奴のやり方じゃねぇ。

 

 

腹が立った。頭にきた。けどなにも反論出来なかった。あって数分、少し会話しただけでまるで何もかも見透かされたように感じた。

 

そのことが余計にイライラを増長させた。

 

あいつは言った。

 

足を引っ張るな、と。役に立って死んでくれ、と。

 

 

「・・・やってやるわよ。」

 

 

役に立つどころじゃない。この最前線のプレイヤー全員の誰よりも活躍してみせる。それであいつを見返す。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・この世界に囚われて、初めてなにか目標ができた気がした。

 

 

もっともそれはプラス思考とは程遠い、私怨だらけの目標だけど。今はこの目標を達成するために頑張ろう。

 

そのためにもまずは攻略会議。どんな小さな情報だって逃さない。絶対にあいつを見返してやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハチside

 

なんかとてつもない負のオーラを感じるんだが、なんかしたか俺?してましたね。絶対さっきのプレイヤーだよ。

 

 

 

 

ふぇ〜。行きたくないよぉ〜怖いよぉ〜。

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。次の第五話も頑張っていきたいと思います。
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