とりあえず三人称でやっていこうと思いますが、見辛かったら遠慮なく言ってください
ミナガルデにあるギルド神楽。3人のハンターと2人の事務員で構成されたこのギルドでこれからなにが起こるのだろうか?
ギルド神楽の内部は案外広い。受付に2つの机にキッチンまで完備している。新参ギルドには少し過ぎた施設である。
普通ならば小さい拠点を作って、稼いでからどんどん拠点を大きくしていくものなのだが。
ギルド結成から2日目。早朝からギルドに呼び出されたこのギルドただ1人の男であるライブラは頭を抱えて机で唸っていた。
彼が頭を悩ませる理由は2つある。
1つ目は自分を朝早くから呼び出しておいて時間に全く間に合っていないこと。2階に居住区があるのだから早く来いよと。
「ただ起こしに行ったら俺が死にそうだ。色々な意味で」
「どういうことですか?」
「あぁ受付さん。いたんですか?」
「いましたよ!! さっきからずっといました!!」
”もーっ”っと顔を膨らましながら怒る彼女に、きっとこの先もこの人の可愛い態度に癒されるんだろうなと考えて余計に泣けてくるライブラ。
「それでどういうことですか? 普通に起こしに行ったらいいじゃないですか」
「あのですね。俺も数日しか一緒にいないのであまり彼女たちのことを知らないんですけど。妹の方は起こしに行ったら間違いなく殺されます」
あぁそうですねと受付さんは苦笑いをする。
「姉の方は起こしにいったらそのまま添い寝を要求されそうです」
あぁそうですねと再び苦笑いをする受付さん。なんせあの2人はギルド間でも”かなりの有名人なのだ”
「そういえば聞いてなかったんですけど」
机に突っ伏して動かなくなったライブラを見て話題を変えにくる受付。
「どうしてこのギルドに入ったんですか? というよりどうやってこのギルドに入れたんですか? 結構競争率高かったみたいですけど」
受付も昨日のギルド設立祝いで初めて彼のことを知らされたので、実はマトモに話すのは今回が初めてだったりする。
彼女が知っている情報は彼が上位のギルドにいること。そして上位にいるのにハンター装備と呼ばれる、低級の装備をしていることぐらいである。
そして明らかに望んでこのギルドに入った態度をしていないことぐらいか。
「あのですね。俺はつい先日この街に来たんですよ」
「つい先日ですか?」
「それでこの街でギルドに入らなきゃってことは事前に知ってて。そこでウロウロしている俺に声をかけられてそのまま……」
「あぁそういうことですか」
納得したように頷く受付さん。確かに自分と同じ上位のハンターの中でも、G級に近い位置にいる2人がいることがわかれば普通についていくだろう。
更に新しくギルドを作ってそこのメンバーに誘われたとなれば、新しく人間関係も築きやすい。
(でもあの人が同レベルのハンターって程度の理由で誘うのかな?)
受付も割りといい加減に選ばれた手前、あまり偉いことはいえないのだが。
受付とライブラが話していると、ドカドカという足音と共に誰かが降りてくる。というよりこんな足音をさせて降りてくる奴は1人しかいないと2人してため息をつく。
「受付さん。もうお昼ですよね」
「えぇ。少し小腹が空いてきました」
涙さえ出てくる我らがリーダの登場。そしてそれを見た瞬間、2人は口に含んでいた飲み物を思い切り吐き出した。
「なにを吐き出しておる。汚いではないか」
「ききききたないのはそっちだよ!!」
「なにが汚いか。余の裸は常にうつく――」
「そういう意味じゃありません!! どうして裸で出てくるんですか!!」
受付さんとライブラが椅子から立ち上がり講義する。
2人の言うとおり、彼女は生まれたままの姿。いわゆる全裸で降りてきたのだ。一体なにを考えているのかと。
「ふむ。本日は活動初日であるから裸体で朝の日の出を見ておったのだが……」
「まず裸体で見るって発想がおかしいよ」
「そのまま寝てしまっておったわ!! わはは!!」
このギルドに入って猛烈に後悔している理由の2つ目はこれだ。リーダーの底抜けた馬鹿さ加減。
馬鹿は時に予想外の動きをするから怖い。例えば今みたいに。
「うむ。それではまずはどのクエストに行くか決めようか」
「まず服を着ろよ」
「面白くないのー。少しは欲情して襲ってくるぐらいせんか」
ブーたれる姫様を華麗に受け流すライブラ。ってかこの男。我らがリーダーの名前すら知らなかったりする。
尻を振りながら階段を昇っていく姫を見てまたため息。
「ウチの姫にも困ったもんだ」
「あの性格がなかったらもっといいんですけどねー」
2人が雑談しながら姫を待っていると、今度は控えめな足音が聞こえてくる。
「おねえさまーどこー」
目をごしごしと擦りながら今度は妹が降りてくる。姉と違ってレウスがプリントされた可愛い? パジャマを着ている妹にほっこりする2人。
「この子は姫様みたいになってほしくないですね」
「全く。残念ながら裸で寝てるよって教えたら裸で寝そうだけど」
まだ寝惚けているのかフラフラしている妹を支えるライブラ。
「おねえさま?」
「はいはい。お姉様じゃないから早く着替えに行こうねー」
「うぅ~おねえさまと一緒じゃなきゃヤダー」
駄々をこね始める妹に対して助けを求めるように受付さんに視線を寄せるのだが。
「頑張ってくださいお姉様!!」
「ちょっと〆られたくなかったら早く連れて行ってくれませんか?」
拳を握りながらニコニコと微笑んでいるライブラになんらかの危険意識が湧いたのか、受付さんは飛ぶような速さで妹を連れて二階へ突撃していく。
「全く。あの受付さんも一癖ありそうだよね」
マトモなのが自分だけじゃないのかと考えて頭を振るライブラ。
「きっとこれから良心が入ってくれるきっとそうだ……」
ブツブツと次に入るのは癒し系の巨乳だのなんだの呟いている怪しい男が1人。
そんな男の耳にドタドタと五月蝿い足音が聞こえてくる。恐らくまた姫なんだろうと思い顔を上げると……そこには視界一杯に広がる靴底があった。
「どっせーい!!」
謎生物の蹴りが顔面にヒットしてギルドの壁まで吹っ飛ぶライブラ。しかし普段からモンスターを相手にしているからか、気絶だけはギリギリしていない。
ただし、既に顔がギリギリアウトなのだが。
「なにするのさレンちゃん!?」
「なにをするのではない!! お姉様の裸を視姦したのは知ってるんだぞ!!」
キッとこの騒動の元凶である受付さんを睨み付ける。
(言っちゃいましたてへぺろ☆)
後でぶん殴ってやろうと心に誓い、ライブラはレンに近づいていく。
「いきなり蹴りつけたら駄目だろ」
「お前がお姉様の裸を舐め回すように見るからだ!!」
「舐め回すようには見ていません。それと年上には敬語を使うように」
「お前の方が年下だろうが! それと頭を撫でるな!!」
年齢はよくわかっていないが、身長が遥かに下なので頭を撫で回すライブラ。どちからというと妹みたいな感じで接しているのだろう。
「ヤダ。犯罪臭がする」
あのメス豚は後で処分するとして。
「姫はまだ降りて来ないの?」
「まあ待て。今来る」
スタスタと階段を降りてくる姫。凛装備と呼ばれる装備に身を包んだ姫は確かに外見だけは姫らしい。
「さて受付よ! なにか我らの初陣に相応しい任務はあるか!?」
「それならリオレイアの討伐が一件。ってこれしか来てないんですけどね」
えへへと笑う受付さん。信頼も実績も無いギルドに回ってくるクエストは少ない。それでも上位のレイアならばまあいい方だろう。
「ふむ。全員の連携を確認するという意味でも丁度いいか」
そもそもライブラは姫やレンの実力を知らない。ギルドカードのモンスター討伐数と上位ハンターという理由だけでギルドに入るのを決めたのだ。
今ではそれが間違いだったと後悔しているのだが。
「ならば出陣するぞ!! 目指すはリオレイアの首だ!!」
アルコリス地方シルトン丘陵。ミナガルデが狩猟場としているエリアの1つで、丘のような地形が特徴的である。
断崖絶壁があったり視界が悪い森があったりと散々なエリアだったりするのだが……
「まずは飛龍の巣でも攻めるんですか?」
どんな地方、狩場でも必ずあるのが龍の巣である。基本的に龍たちはそこを拠点に活動していく。
広いエリアを無闇やたらと探索するよりも、そういう確実な場所から調べるなり待ち伏せするなりが鉄則なのだが。
「問題ない! 余が勘にて探して見せるわ!!」
ずっこけそうになった。ライブラが今まで生きてきたハンター人生で、勘で生きてきたハンターは沢山みてきたがここまで堂々という人物も珍しい。
というより、勘で全エリアを虱潰しに探すのだろうか?
「お姉様はアンタたち凡人が考えつかないような考えを持ってるの。わかったら黙ってついてくる」
「はいはい」
基本狩りはチームプレイ。まだまだ新参の自分が意見をして衝突しても仕方ないと黙って着いていくことにする。
ギャオギャオ!!
そんな彼らの前に3匹のランポスが現れる。青と黒のストライプが特徴的な肉食の鳥竜種であり、群れで襲ってくると危ないのだが、単体では大して強くない種でもある。
「じゃあ早速」
ガチャリとライブラが背中から愛用のガンランスを抜こうとするのだが、それを手だけで静止する姫。
「一番槍を逸る気持ちはわからぬでもないが。此度の戦。一番槍は余がもらおう!!」
「そうですかどうぞどうぞ」
正直、言っている意味が全くわからないので素直に譲る。
それに快くしたのか、姫は背中から自分の身長より一回り大きい太刀を抜く。全体的に蒼がかった太刀。
「では行くぞ双炎!! 我らが初陣である!!」
飛竜刀【双炎】。上位のリオレウスを倒さないと作れない装備であり、作るまでの道程は決して楽なものではない。
だがライブラが目を見張ったものはそれだけではない。
「わはは! その程度か雑兵よ!!」
笑いながらランポスを蹴散らしていく姫。
モンスターを倒す際に笑いながら攻撃するハンターは珍しくない。大体が恐怖を笑いで押し殺すか、心底殺しを楽しんでいるのかの2つ。
だが姫はそのどちらでもない。
明らかに楽しんでいるのだがその笑顔はまるで玩具で遊ぶような子供のように清清しい。
そしてその太刀による攻撃には一種の芸術のように、まるで舞を踊っているようにも見えてくる。
「見たでしょ。あれがお姉様の戦い方よ」
「驚いた。あんなハンターがいるなんて……」
少なくともあんなハンター。他を探しても絶対にいないだろう。
普段からの自信が戦いに繋がっているのならば。とんだ姫様だとライブラは思う。
「惚れたら殺す」
「普段の態度を見てたらない」
レンがギロリと睨んでくるがそれを華麗に受け流す。
あんな舞が踊れるのならば普段からお淑やかにしていればいいのにと涙せずにはいられない。
「見たか我が勇姿を! わはは!!」
どうやらあっちはあっちで終わったようで。しかもその防具には血の一滴もついていない。
マジでパネェと漏らすライブラ。
「ふむ。”槍”も此度の戦で十分に戦果を見せるがよいぞ!!」
「あの……槍って俺のことですか?」
「他に誰がおる? 名前を覚えて欲しかったら功績をあげるのだな!!」
わははと笑われるライブラ。まあこの人の態度は今に始まったことではないと早々に諦める。
「そもそも……」
「……むっ。静かにせよ」
そう言われて静かになる3人。耳を澄ますと微かにだが羽音が聞こえてくる。
そして暫くして空に現れるのは1匹の竜。
雌火竜リオレイア。雄のリオレウスとは違い、翼よりも脚の方が発達していることから陸上戦を得意とする陸の女王。
緑の甲殻に身を包み、その凶悪な目は既に3人を補足している。
ギャオオオオオオオオオオオオオ!!
咆哮で3人を怯ませようとしているリオレイアだが、対照的に1人を除いて2人は笑みさえ浮かべている。
「この世に王と呼ばれる者は2人もいらぬ! レン! まずは砲を上げ奴を引き摺り落とせ!!」
「わかった!!」
レンはカチリと手馴れた手つきで自身の獲物でライトボウガンの”ヴァルキリーブレイズ”を天に目掛けて展開させる。
「墜ちろ!!」
祝砲と共に陸の女王との開戦が告げられた。
第1話はこれで終わりです 受付さんは今の名前のままいこうと思い、姫様はまたいずれ名前が出る予定です
次回から本格的な戦闘になるので待っていてください