死から始まる幻想郷人(?)生   作:Narvi

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 超久しぶりです。タイトルでもわかるように、生存報告ですよ(違う)。

 久しぶりに書きたくなりました。ほとんど内容決まってないおかげで超自由に書けました。←おい

 僕は吸血鬼が好きなんじゃ! 願望詰め込み作品を目指してひっそりと書いていきます。

 この作品の大雑把な活動方針はあとがきにて。暇つぶしにでも、読んでいってくださいな。


1話 生存確認

 目を覚ましたら知らない天井だった。

 目に悪い全体赤色の部屋。しかし、嫌な感じはせず、机に花が飾られていたり、綺麗な装飾の施された大きな扉から、ここは客室なのだろうと推察する。

 まず、最初に感じたのは『体の異常なまでの軽さ』、そして『目を覚ましたことへの疑問』だった。

 

 自分の死ぬ瞬間は、よくわかった。思い出したくはないが、その記憶がこびりついて、一生離れることはないだろう。

 だから目を覚ましたこと事態が異常なのだ。

 

 この体の軽さも相まって『僕は死んだのでは?』なんて思うが、すぐにその考えを消した。死後の世界なんて見たことはないが、少なくともこんな生活を感じさせる客室ではないと思うからだ。

 

 唐突にガチャリ、と扉の開く音が客室に響いた。

 

「そろそろ起きる頃かと思っておりました」

 

 少し高めの、清楚さを感じさせる声。僕はそちらに目を向ける。

 メイド服を着た銀髪の女性。十代後半といったところだろうか。シワなくキッチリ着こなしている姿から、品の良さが伺えた。

 

「……よろしいでしょうか?」

 

「あ、ああ、悪い」

 

 完全に無視して考え込んでしまっていた。素直に謝り、聞いた。

 

「ここはどこですか?」

 

「はい、ここは紅魔館といいます。私はレミリアお嬢様に仕えているメイド、十六夜咲夜と申します」

 

「丁寧にどうも。僕は……いや、その前に一つ聞きたいんだけど――」

 

 一つ呼吸をおいて言う。

 

「僕って、死にました?」

 

 こんな突拍子もない、傍からしたら『バカじゃねーの!?』と笑われるような質問に、咲夜は無表情で答えた。

 

「はい、お嬢様からそう聞いております」

 

「そう、か……」

 

 それならますます不思議だ。

 死ぬことに抵抗がないといえば嘘になるが、僕はあそこで死ぬ気だったのだ。妖怪にやられて、大量出血で死ぬ。それが僕という人間の末路だったのだ。

 なのに、一度死んだとはいえ、今こうしてここにいる。それが少し気に入らない。

 

 僕はこれ以上何のために生きればいいのだろう。

 

「お嬢様がお呼びです。ご案内します」

 

 そんな悩みなんか露知らず、咲夜が言った。

 

 僕は何となく察していた。

 

 このお嬢様と呼ばれる存在が、僕がここにいる原因を作った張本人。

 なぜ、人間の生を馬鹿にするような行為を行ったのか。会えば何かわかるような気がする。

 

 

 

 僕は咲夜についていくことにした。真っ赤な廊下に響くふたり分の足音。

 そこに会話はなく、ただただコツコツと、不気味に音を鳴らしていく。

 

「ここがお嬢様のいるお部屋となります。くれぐれも粗相のないよう、お願いします」

 

 咲夜がそう言って、数回ノックする。

 

「お嬢様、彼が目を覚まされましたので、お連れしました」

 

「そう、入りなさい」

 

 幼い女の子の強気な声が扉越しに聞こえる。「失礼します」という咲夜に連れられ、部屋に入ると、そこには小さな少女がいた。

 綺麗に澄んだ色をした青色の髪に、真紅に染まった赤い瞳。一言喋る度に口元から鋭い牙を覗かせ、優雅に座る少女。

 

 彼女が普通でないのは、ひと目でわかった。

 

「それでは、失礼します」

 

 そう言って咲夜は音もなく消えた。それを目の前の少女は気にもとめず、一度そちらを見たあとこちらに目を向けた。

 

「私のこと、覚えているかしら?」

 

「もちろんです」

 

 もちろん覚えている。あの雨の中、唯一僕の死を見届けた少女のことを、忘れるはずがない。

 

「別に敬語じゃなくていいのよ? 私は貴方と対等でいたいの」

 

「そうですか……いや、そうか。ならそうさせてもらう。なぜか君を見てると自然と敬語で話そうと思ったんだ」

 

 本当に自然に、敬語が口をついて出たのだ。何となく『彼女が自分より上の立場』だと、身体がそう覚えているかのような――。

 

「それもそうね。あなたは私と同じ、吸血鬼になったのだから」

 

「……吸血鬼?」

 

 思わず聞き返す。少女はそれに対して口元を手で隠しながら、上品に笑った。

 

「そうよ。死の間際、あなたは私の手によって人間から吸血鬼になった。本来あなたはそこで死ぬはずだったのよ」

 

 まあ、わかっていたと思うのだけど、と言って、更に少女は話を続ける。

 

「それを、私はあなたを吸血鬼にして生かした。吸血鬼の再生力によってあなたは傷を癒したの。だからあなたは今、吸血鬼として生きている。人間をやめたのよ」

 

「なんで……」

 

「なんでかしらね? 確かに私はあなたに興味が沸いたけれど、あえて言うなら、『あなたが人間をやめることを望んでいたから』かしら?」

 

「僕が、望んでいた……」

 

「そうね、言うならばただの気まぐれよ。長く生きる私たちのちょっとしたスパイス。あなたが面白そうだったから、とでも思ってちょうだい」

 

 彼女は吸血鬼らしく、口角を上げて意地悪っぽく笑った。

 

「ハハッ、僕が望んでいた、か。まあ、間違ってはいないな」

 

「フフッ、そうでしょう? あなたはこっち側の人間なのよ」

 

「まあ、今は吸血鬼だけどな」

 

「確かにそうね」

 

 そう言って、二人して笑い合う。

 きっと彼女とは何かしら気が合うのだろう。今まで生きてきた中で感じることのなかった、空っぽになった空間にすぅっと入り込むような、そんな不思議なものを感じる。

 

「零夜」

 

 しばらくして、彼女はポツリと言った。

 

「あなたの名前よ。あなたは一度死んだ。(ゼロ)からのスタート。どうせあなたには何もない、空っぽの存在なのよ」

 

「随分と辛辣な物言いだな……まあ、その通りなんだけど」

 

 彼女の散々な発言に苦笑いを浮かべる。

 零夜。新しい、僕の名前。今までの『カタチだけのもの』なんかじゃない、『明確な意味をもったもの』。

 

「僕は零夜だ。君の名前は?」

 

「気に入ったようで何より。私はレミリア・スカーレット、この紅魔館の主よ。仕方がないから、零夜には気軽にレミリアと呼ぶことを許可するわ」

 

「こちらこそ、ご厚意痛み入ります、レミリアお嬢様?」

 

「あなたも大概ね……」

 

「そっちこそ」

 

 くだらない話をかわしつつ、お互いに見え見えの探り合いをする。しかし嫌な気は全くしない。むしろお互いにそれを楽しんでいた。

 

「レミリア」

 

「なにかしら?」

 

 一区切りついて、僕はレミリアの名前を呼ぶ。それに答えるようにレミリアはこちらに赤い目を向けた。

 

「ありがとな」

 

「な、急になによ……」

 

 確かに急だった。少し照れるような素振りを見せるレミリアを見て面白いと思うが、からかうのは次の機会にして、僕――俺は言葉を紡いだ。

 

「俺、生きているのが億劫だったんだ。だからここに来て、生きていることを知ったとき、『なんで生きてるんだろう』って思った。でも、レミリアと話して良かったよ。これからのことを考えると、すごくワクワクするし、すごく楽しみなんだ」

 

 きっと僕は今、柄にもなく笑っているだろう。それも、屈託のない笑顔で。

 

「吸血鬼になった、なんて聞いたとき最初はどうなるんだろうとか思ったけど、これはこれできっといいと思う。まあ、まだわからないけどさ。だから、レミリア――」

 

 僕はレミリアに頭を下げた。

 

「ここに住まわせてください」

 

 無音は一瞬。小さく笑う声が一つ、この部屋に響いた。

 

「最初に言ったわよね? 私と零夜は対等なの。わかる?」

 

「ああ、わかってる」

 

「なら、やり直しなさい」

 

「……ありがとう」

 

 俺は改めて、笑みを浮かべるレミリアをみて言った。

 

「これから、お世話になるよ」

 

「ええ、勝手にしなさい」

 

 レミリアがにやりと笑いながら手を差し出す。俺はその差し伸べられた手を、拒むことなく受け入れた。




 レミリアの口調が定まってないとか言わない。でも一貫して強気な少女です。そこは絶対に変えない。イメージは固まっているのです。男の子の妄想力を舐めちゃいけないよ()

 あとなぜか零夜と対等でいようとするレミリアしゃん(誤字にあらず)。別に恋に落ちるとか考えてないけど、二人は対等です。主従関係ではなく、あくまで対等なのです。


 とりあえず、この作品の方針。
 まず、この作品は異変とかいろいろ終わったあとの時系列です。なので戦闘が多くあるわけでもなく、どちらかといえば日常系です。
 もちろん霊夢とか魔理沙とかアリスとか、たくさん出てきます。

 今はこんなあたりしか公言はできないですね。序盤は紅魔館の方々とほのぼの過ごしていく感じになります。まだレミリアとしかまともに会話してないですからね。

 次の更新はいつになるのかわかりませんが、気長にお待ちください! 更新が気になる方は活動報告を覗くことを推奨します。TwitterのIDもあって、そちらで一部の事前公開、更新告知をしてます。みなさんぜひぜひご活用くださいな!

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