幼女戦記~秋津洲皇国助太刀ス!(本編完結)   作:宗田りょう

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年表は、後で書き換えますが大筋は変わりません。


最終話─帝国最良のとき

1925年 8月28日 ローレライ作戦完遂

・戦艦フリードリヒ・デア・グローセを囮にした艦隊行動と、潜水艦・航空艦隊一体の三次元攻撃により連合王国本国艦隊及び内海艦隊合わせ20隻を大破・撃沈

 

1925年9月11日

・連合王国空軍レーダー解析完了、連合王国より持ち出された『ブルーベリー』レーダー解析により、偽装は不可能だが妨害は可能という結論に達する。

・同日レーダー波長に合わせた欺瞞紙散布装置の実戦投入が可能に

 

9月12日

・ドードーバードコンプレックスの壊滅を確認、連合王国空軍はポーツマス以北へ移動開始

・連合王国は緊急国防計画『クロムウェル』計画を発動、王室の存続計画が開始される。

・皇国海軍部隊(主力空母2戦艦1)到着

 

9月16日

・最高統帥会議は連合王国上陸作戦『アシカ作戦』決行を決断

 

9月21日未明、アシカ作戦発動。

・合衆国義勇艦隊旗艦コンパルジョン以下7隻、機雷による海峡封鎖開始

・V1B1型及び2型による対地誘導弾攻撃開始。

・帝国高海艦隊、海峡封鎖・沿岸支援のための移動開始

・501特別魔導大隊ワイト島占領、魔導師大隊はポーツマス攻撃を開始

 

9月22日

・第7空挺師団、親衛降下猟兵旅団等1万2千人

 連合王国沿岸部のブラントン・ラムズゲイトを結ぶ一帯に空挺降下開始

 

・午前7時、帝国軍第一波、上陸開始。

 

 

※※※※※※※ ※※※※※※※ ※※※※※※※

 

 

9月23日午前11時 

海岸から3キロ内陸、203大隊仮設集合場所

 

秋のドードーバード地域は霧がかかるはずだったが、この年はどうしたわけか日中は霧もなく、にわか雨は多いが作戦に支障はない天候だった。

 

ターニャが小高い丘の上からの海岸を見ると、大小さまざま木箱とアリのような兵士たちが見えた。敵空軍の妨害はなく、この地域での上陸作業は比較的スムーズに進んでいる。

恐ろしく手際がいいのは、土壇場になって参加した貨物船─というか、魔改造した上陸用特殊船が間に合ったためだ。

 

「……あのみょうちきりんな船が役に立つとはな」

「本当に驚きです。べトンで作った船って、水に浮かぶのですね」

 

……まあ、鉄の船でも水に浮かぶからな、と言おうとしたが、セレブリャコーフ中尉が感心しているのでそのままにする。

はじめは悪い冗談に聞こえたコンクリート船は、失っても惜しくはない巨大構造物という特性を生かして巨大な艀や人工港になっていた。

 

そのまま二人は元来た道を戻った。こうした時間を過ごせるのは向こう一週間でこれが最後になるかもしれなかった。203大隊は今夜、師団単位という空前の規模で行われるロンディニュウム襲撃に参加するためだ。そしてターニャの大隊には重要な任務がある。

 

大隊本部は村の教会に置かれ、無線機も運び込まれていた。午前中は時々生き残りによる砲撃が来たが、すぐに沈黙した。

 

『上陸軍本部より、カンタベリー市街を確保とのこと』

『第2梯団の第15戦車師団はチャーブル線を越えてアッシュフォードへ進出』

『第8軍は上陸作業を完了。ポーツマスへから進撃を開始します』

 

大隊と司令部のやり取りや、漏れてくる無線を確認する限りで我々の戦争は順調らしい。ターニャは思った。

今夜だ。今夜で今度こそ、戦争は終わる。

 

「セレブリャコーフ中尉、後片付けを始めよう。ここはクナイセン閣下の歩兵師団が引き継ぐ。我々は参謀本部からの命令通りに、攻撃開始地点へ移動する」

「はい、少佐殿。……しかし、まだ、任務は明かされないのでしょうか」

 

いつもなら、セレブリャコーフ中尉はこのような疑問は出さない。だが半日前の、ナポレオンでもなしえなかったぞ!という煽りが効きすぎたのか、上陸してから精神の高揚があるらしかった。

すぐに分かる、と答えようとして、ターニャが口にした言葉は違っていた。

 

 

「我々の任務はな中尉、ロンディニュウムでチャーブルの毛を毟ってくるのさ」

 

※※※※※※※ ※※※※※※※ 

 

我が大隊の目標は、W・Sチャーブルただ一人である。

彼は『クロムウェル司令』なる、恐るべき命令を下した。

国民一人が帝国兵一人と刺し違えよという恐るべき命令を下してしまった。

 

また、チャーブルはロンディニュウムの無防備都市宣言を拒絶した。

故に、ロンディニュウムに存在する市民は全員防衛隊員である。つまり、兵士だ。

 

……繰り返す。

 

ロンディニュウムに存在する老若男女、生きとし生けるものは全て敵だ。

 

何故か?ロンディニュウムは要塞となり、それを守るとあの老人が言ったからだ。

 

あの紳士気取りのために、無辜の市民が犠牲になる。なぜなら彼が命令を変更せぬ限り、ロンディニュウムに生きるもの全てが兵士だからだ。

 

だから排除しよう、やつを、排除しよう。

平和を愛するすべての文明人のために。

 

諸君なら、可能だと信じている。

 

不愉快なものは多い。

ホワイトホール外務省庁舎ソーホー陸軍省海軍省王国通信本部バッキンガム宮殿スコットランドヤード本部!

 

残念だが、壊すなという命令だ。抵抗がない限りは、な。

 

あ、偵察ではトラファルガー広場は防空陣地になっている。全て燃やせ。

ロンドン塔には、戦争反対を唱えた真の愛国者がいる。余裕があれば救出するのが筋だが……仕方がない、破壊して脱走しやすくしろ。

 

いいか、騒ぎを起こせば必ずネズミは穴から出てくる。

目標は後で述べる通りだ。一番抵抗が激しい場所を狙え。奴はそこにいる

 

だが気を付けろ、多くは言わないがレジサイド(王殺し)は恐ろしいからな、慎重かつ大胆にやれ

 

死んだり殺されたりするな。我々はジョンブルとは違う。戦争は好きでするものではない。

 

勝って帰るまでが戦争だ。

 

※※※※※※※ ※※※※※※※

1925年 11月 ブリティッシュ・カナディア 首都オタワ

 

連邦王国臣民の皆さま、私が、かつて本土の戦いと名付けたものは終わりました

 

我々は海岸で戦い、田園で戦い、丘で戦い、都市で戦い、その全てに敗れました。

 

しかし、この敗北は世界大戦の終わりを意味するものではありません。新たな、圧政への抵抗と自由を求める戦い、第二次世界大戦の始まりに過ぎないのです。

 

カイザーはこれを嗤い、世界は不信を抱くでしょう。しかし、それは誤りであります

 

我々は、決して屈服しない。たとえ、国土を失おうとも、王国の旗のもとにあるコモンウェルス諸国、同盟国である秋津洲皇国・独立南部連合。

そして帝国に立ち向かわんとする全ての人々と手を取り合い、戦い抜くのです。

 

我々は全世界を戦場として、戦います。

それは苛酷で、果てしない忍耐を我々に強いるものでしょう。

 

我々には新たな義務が課せられたのです。

帝国最良の時代が1000年続くなら、そして連合王国最悪の時代が1000年続くなら

 

遥かな子孫のために、1001年戦い抜くのです。

 

我々の子孫が、誰かによって書かれた歴史書を読み『あの時こそ帝国最良の時代であった』と言い、そしてこう振り返るのです。

困難な時代の中で、連邦王国こそ歴史の光明であった。と

 

国王陛下万歳。

ブリタニアよ、統治せよ。

 

(W・S チャーブル によるオタワ演説)

 

※※※※※※※ ※※※※※※※

 

 

 

刀を持った少女は、静かに歩いていた。

川の流れのように静かに。だが、そこにあった川は干上がり、赤黒い地面がむき出しになっている。

 

メアリー・スーは静謐な死を纏いながら、けれども、来た道は焔で清めながら

国境への長い道を歩いていた。

 

 

 

※※※※※※※ ※※※※※※※ 

 

帝国軍は、この戦争で決定的な勝利を手にした。だが、それを素直に喜ぶことはできなかった。失われた兵士は多く、戦争は続いたからだ。

 

欧州における戦いが終結したのは10月21日の連邦王国本土完全占領、そして12月にスエズとジブラルタルの完全占領が達成されてからだった。これにより、欧州戦線における主要戦闘は終結した。

 

だが、帝国が期待していた合衆国による仲介は失敗した。

戦線はカレー洋からカリブ海まで広がった。

帝国も始まりが終わったことを知った。だが、終わりの始まりではなかった。

 

連邦という地獄の釜は今にも吹きこぼれそうであった。血塗られた手は東方から伸ばされている。

あるいは、侍の鋭い切っ先は、極北の島々や中東から欧州を狙っていた。

 

戦争の季節は、まだ始まったばかりだった。

    

 

完

 




これにて、本作品は完結になります。
年表とは少し異なりましたが、帝国は連合王国本土を守り切れないので奪還は困難でも不可能ではなく、だいたい半年遅れであのような流れになるはずです。

合衆国が帝国側で参戦しない限り、秋津洲皇国・連合王国の海洋同盟は共和国領奪還まで行けるでしょう(もちろん、史実合衆国の25%程度の国力を持つ独立南部連合というギミックのせいですが)

かなり駆け足ですが(というか打ち切りですが)少しでもこの先を読みたいと思っていただければ、作者としては幸いです。

またべつの作品でお会いしましょう。
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