あの日見た夕焼けをともに   作:羽沢珈琲店

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今回はつぐみです。つぐみの話も書きやすい部類に入りますね。やはり好きなキャラは創作意欲が湧くのだろうか?

あのバンドメンバーも登場しますので、どうぞ。


羽沢つぐみ

 羽沢つぐみ。彼女は一言で言うなら努力家だ。もしも、幼馴染の中で普通のやつは誰だと聞かれればつぐみだと全員一致で答える。一番まともで普通なやつだからこそ、努力を欠かせない。俺はそう思っている。

 

 けど、その努力や頑張りが時に皆を不安にさせたり、心配させたりするのはつぐみの欠点だ。

 

 

 

 

 

 

 

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「「いらっしゃいませー!」」

「えっと、カプチーノを一つ」

「かしこまりました」

 

 軽快な挨拶と営業スマイルと共にやって来たお客様を出迎える。俺は今、『羽沢珈琲店』という店でバイト中だ。そして、店の名前から分かる通りここはつぐみの家でもある。『やまぶきベーカリー』、『北沢精肉コロッケ店』と並ぶ商店街の三大店に入るのが『羽沢珈琲店』だ。因みに、三大店と名付けているのは俺だけだ。

 

「つぐみ、カプチーノ頼む」

「分かった」

 

 つぐみはそそくさとカプチーノを作る準備に入る。流石珈琲店の娘だけあって手際がよくあっという間にカプチーノを作ってしまった。

 

「はい。お願いね」

「ん」

 

 俺は先程やって来たお客様にカプチーノを出す。お客様からいつも美味しいわと感謝のコメントを貰ってカウンターの方へと戻る。

 

 暫くするとお客も減り今はブレイクタイム中。

 

「うーん」

「どうしたつぐみ」

「明日提出の数学なんだけど、一個だけ分からないところがあって」

「そんな宿題あったか?」

「海君は授業に出てないからだよ。みんな海が学校に来ない事に心配してるんだから!」

「学校には来てる」

「昼から登校してもダメなの!」

 

 つぐみはぷくっと膨れた表情で俺を叱ってくる。なんか母さんに怒られてる感じがするな。

 

もっと海君といたいのに……」

「なんか言ったか?」

「べ、別に何でもないよ!」

 

 今度は頬を赤らめて慌てた表情でプリントに顔を向ける。そして数十秒後、やはり分からないのかしかめ面になる。

 

「つぐみ、ちょっと貸してみろ」

「えっ?」

「集合か。ここは図を書いて表すと分かりやすいぞ」

「図を?」

「あぁ。ここをこうやって」

 

 俺はつぐみの隣に行き例の図を書き入れる。

 

「これを使えばこの問題は後は簡単だ……ってつぐみどうした?」

「えっ!?ううん、何でもないよ!へぇー!この図を使えば解けるんだね。やっぱり海君は頭がいいね!」

 

 えへへ、と慌てふためきながら何かを隠し通そうとするつぐみ。若干顔も赤いし、まさか……。

 

「つぐみ、ちょっと頭貸せ」

「え?何を……」

 

 つぐみが言い切る前に俺のでことつぐみのでこをぴたりとくっ付ける。熱はない感じか。なら、少し疲れてるだけか?

 

「つぐみ、ちょっと奥で横に……つぐみ?」

「ぽー………」

「き、気絶してる……?」

 

 何故か先程よりも真っ赤になって立ったまま気絶してるつぐみ。これは相当重症だぞ。

 

 兎に角、つぐみのおばさんに頼んでつぐみを休ませてもらおうとつぐみの腰に手を回そうとしたその時、事件はおきた。

 

「頼もうー!です」

「イブちゃん、それはちょっと違うような……」

「へぇー、ここがイブちゃんが働いてるところか」

「いい感じの店っすね」

「私も仕事の終わりに利用しようかしら」

 

 一人を除いて、謎の美少女五人組が店に入って来たのだ。そして必然的に俺の行動に唖然とする。

 

 つぐみの腰に手を回し、まるでキスをするような状況。

 

 これを見れば、五人組が取る行動は一つしかない。

 

「「「「「し、失礼しましたー!!」」」」」

 

 美少女五人組は変な誤解をしたまま店を飛び出し、そのまま何処かへ立ち去って行った。

 

「………とりあえず、つぐみを寝かせてからイブに連絡だな」

 

 俺は慌てたら負けだと冷静に分析しつつ、つぐみをおばさんに預け、イブに連絡を取り始めた。手が震えていたなんてことはないぞ、断じて。断じて……。

 

 

 

 

 

 

 

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「という理由で、気絶したつぐみを部屋まで行かせようとした時にお前らが来たんだ」

「「へぇー」」

「おいそこの二人、信じてないな?」

 

 俺はイブに『もう来て大丈夫だ』というメールを送り、もう一度、五人組に来てもらった。そして、先程起きたことを懇切丁寧に説明したはずなのに、丸山彩と白鷺千聖の三人がまだ信じてくれないそうだ。

 

「大丈夫ですよ彩さん、千聖さん!海さんはそんなことしません!何たって武士の中の武士なんですから!」

「ホントかしら?」

「まぁまぁ千聖ちゃん。イブちゃんが言うんだから大丈夫だと思うよ。それにもし私達に何かしたり、何かあったらこの人社会的に生きられないと思うから!」

「さらっと怖いこと言まないで下さい、先輩」

 

 笑顔で俺に死の宣告をしないでください。

 

 今更だが、彼女達は一言で言うと芸能人だ。

Pastel*Palettesというアイドルバンドを組んでいて、最近デビューしだした。俺もイブに教えてもらうまで存在は知らなかったんだがな。確か、ボーカルが丸山彩(まるやまあや)。ギターが氷川日菜(ひかわひな)。ベースが白鷺千聖(しらさぎちさと)。ドラムが大和麻耶(やまとまや)。キーボードが若宮(わかみや)イブだったはず。

 

 そして察しはついてると思うが、イブは『羽沢珈琲店』で俺と同じアルバイトとして働いてる。

 

「しかし、全員で来るとは珍しいな。流石に周りの奴らにバレたんじゃないか?」

「それはほら、変装でね!」

 

 丸山彩は自慢げに変装してここまで来ましたと言い張る。イブからは中々アイドルとして売れない時にパスパレと出会ったと聞かされたが、変装するほど有名人になった事を嬉しいんだろう。

 

 俺は知らなかったけど。

 

「それで、ご注文は何に致しますか?」

「あら、礼儀は正しく出来るのね」

「白鷺先輩は俺を何だと思ってるんですか?」

「職場で卑猥な行為をする屑人間、かしら?」

「偏見が凄いですね白鷺先輩」

 

 二人の間に火花が散っているのを見て、大和麻耶が慌てて止めに入る。

 

「ち、千聖さん!落ち着いて下さい。店員さんもどうどう……」

「アハハ!この人面白いねイブちゃん」

「はい!」

 

 勝手に面白い人扱いされたよ。イブも認めちゃってるし。

 

「兎に角、決めるなら早く決めてくれ。そしてイブも手伝ってくれ」

「分かりました!」

「じゃあ、私はカフェオレで」

「私はコーヒーブラックで」

「じゃあ私も!」

「えっ!じゃ、じゃあ私もブラックに変更で!」

「自分はカプチーノでいいです」

「ブラック三つにカプチーノ一つ。イブはどうする?」

「私もコーヒーブラックにします!」

「いいのか?丸山先輩もそうだが、相当苦いぞ」

「だ、大丈夫です!」

「これも武士道を極めるための道です!」

「コーヒーに武士道は関係ないが……まぁいいや。じゃあイブ、手伝ってくれ」

「はい!」

 

 俺はつぐみから教わったコーヒーの作り方を順序良くやっていく。イブもまだ覚えていないことも多かったが、俺がフォローしつつ何とかブラックコーヒー四つとカプチーノ一つが完成した。

 

「コーヒーブラックとカプチーノです」

「あら、このコーヒー。香りがいいわ。何処の豆を使ってるのかしら?」

「つぐみが言うには親戚の家で作ってる豆らしいですよ」

「あらそうなの。………コーヒーの苦味もきちんと引き出されてる。意外と淹れるの上手なのね、あなた」

「天才子役からお褒めの言葉を貰い光栄です。それと俺の名前は平沢海と言います。以後よろしくお願いします」

「えぇよろしく平沢君」

「さっきまで不穏な二人だったのにもう仲良くなってる……」

 

 別に俺は白鷺先輩が嫌いというわけではないからな。少し失礼なことを言ったから言い返しただけの話。

 

「それで、丸山先輩はコーヒー飲まないんですか?」

「うっ……」

「氷川先輩はもうとっくに飲んでますよ」

「ちょっと苦いけど……飲めなくはないかな?」

(これの苦さがちょっとなの!?やっぱり日菜ちゃんって私たちと色々違うな……)

「イブはどうだ?」

「だ、大丈夫です!この苦さを克服しなければ武士道の道は遠ざかります!」

「だからコーヒーと武士道は関係ないんだが。さて、後は丸山先輩だけですよ」

「な、なんか私だけ当たりきつくない?」

「気のせいですよ丸山先輩」

 

 ニコッと俺は作り笑いを浮かべながら、先輩にコーヒーをぐいぐい勧める。

 

(このまま渋っていてもみんなから何て言われるか……。ううん。迷ってどうするの私!これもアイドルを目指す上での試練と思えば!)

 

 意を決した先輩がごくごくコーヒーを飲み始める。そして半分を飲み干すと、若干涙目になりながら感想を述べて来た。

 

「お、美味しいですね〜これ」

「嘘言わないで下さい。見てるこっちが悲しくなります」

「うっ!イ、イブちゃん!この人、意地悪だよ〜!」

「やはりあなたって職場で卑猥な行為をし、尚且つアイドルを泣かす屑人間だったのね」

「白鷺先輩は毒を吐かないとやってられないのですか?」

 

 またもや一触即発の雰囲気になり、二人の間に火花が飛び散る。

 

「海君ごめんなさい!急に気絶したりし……て?」

 

 そんな異様な場に目が覚めたつぐみがやって来た。そして唖然とした。

 

 平沢海と白鷺千聖の二人が睨み合っていたり、その睨み合いを必死に止めようとしてる大和麻耶と面白がっている氷川日菜がいたり、丸山彩が若宮イブに泣きついていたり、と少しカオスな空間が広がっていた。そんなカオスな空間を見たつぐみは、

 

「もう少し寝ておこうかな……」

 

 そっとその場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

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 イブ達も帰り、時外は夜の帳が下りていた。閉店の手伝いも終わって、俺も家に戻ろうとした時につぐみの叔母さんからつぐみと一緒に買い物に付き合って欲しいと言われた。つぐみは何故か慌ててパニックになっていたが、もう日が沈んでいる中、女の子一人では危ないと思い一緒についていくことになった。

 

「………」

「………」

 

 そして、家を出てから五分が経っただろうか。未だに両者口を開かない。流石にこのまま何も喋らないで買い物を済ませるのは後味が悪いよな。

 

「なぁつぐみ」

「な、なな何かな!?」

「そんな驚かなくてもいいだろ。今日、余計な事してごめんな。まさかつぐみが気絶するとは思わなくてな」

「そ、そんな!余計な事じゃないよ!海君は私の事を思ってしてくれた事なんだし。悪いのは私の方だよ!」

「そうか?それでもでことでこをくっつけるのは流石にやり過ぎた感はあった」

「そ、そうだね……」

 

 普通に手をでこに当てればよかったのに、何故あんな事をしたのか俺も分からん。ダメだ、思い出したら急に恥ずかしくなってきたぞ。

 

「そ、そうそう!やり過ぎたと言えば、丸山先輩を泣かしたのもやり過ぎだと思うよ!」

「うっ……。それを話にだすか。丸山先輩ってなんとなくひまりに似てるんだよ。少し調子のいいことが起きるとそのまま乗っかるところが。だからついつい揶揄いたくなったんだが……、少しやり過ぎたと反省してる」

 

 先輩を泣かせるって相当やばい奴だと思われてるよな、俺。特に氷川先輩とか面白半分で皆に話してそうだからな。……明日、学校サボるか。

 

「でも、海君って凄いね。初めて会った人達でも普通に話せて」

「正確には2回目なんだが、長時間喋ったのは今日が初めてだな。というか別に俺が凄いわけじゃない。先輩方の個性が強すぎるだけだ」

「そっか。私も何か個性が強かったらいいのにな……。そしたら海君ともっと話せるのに……」

「いやいやつぐみはそのままでいてくれ」

「えっ……?」

「唯でさえ先輩方やモカを対処するのだけでも大変なのに、つぐみまで変わってしまったら俺死ぬぞ?

「………」

「どうしたつぐみ?」

「何でもないよ。やっぱり海君は優しいねって思っただけ」

「??」

 

 俺、先輩を泣かしたのに優しい人間扱いされるのは少し罪悪感というものを感じるのだが、つぐみが上機嫌だから何も言わないでおこう。

 

(海君は優しい。その優しさに私は好きになった。小学校の頃からずっと。でも、私は知ってる。海君は蘭ちゃんが好きだってこと。そして、蘭ちゃんも海君のこと好きだってこと。本人達は否定しているけど、私には分かる。蘭ちゃんに対しての海君の行動は他の人と違う。それは私も含めて。だから私はこの気持ちを封印して来た。でも、流石に限界だよ海君、蘭ちゃん。二人が何もしないなら、私も黙ってるわけにはいかないよ)

 

 密かに思い続けていた想いを決意に変えたつぐみが頑張るのはもうすぐそこまできていた。




登場したのはパスパレの皆さんでした。なんか、パスパレの回になったのは気のせいだな。うん。

さて、つぐみがヤンデレっぽくなったかもしれないが、それもいいかなと。何となくヤンデレつぐみを見て見たい。(あくまで個人的な感想です)

パスパレを出したのも丁度イベントもやってますしね。今回は300000pt目指して頑張りたいと思います。因みにパスパレの中だったら彩ちゃんかイブちゃんが推しです。なので、今回のガチャは何としてでも引きたい……!

余談ですが、白鷺千聖に罵倒されてみたいと、これを書いていて思いました。

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