青年は一人、夜の森を駆ける。
そこは日本の、三咲町。
そこから少し離れた山にある森。
月明かりに照らされ、眼に映る森は罠、罠、罠、罠。
木々のあらゆる場所に罠が張り巡らされた森を、迷いもなく青年は駆ける。
その青年が向かう先にあるのは
一つの大きな屋敷。
森を駆ける青年、殺人貴や死神と呼ばれ、死徒からも恐れられた吸血鬼の姫を守る者
遠野志貴という青年は、その屋敷にある不可思議なものを壊す為に動いていた。
ある者から、それを壊すことで彼女は少しでも吸血衝動から逃れることが出来るという。
なら、俺は迷いもなく行動しよう。あいつの為になるんだったら
そうこうしている内に屋敷から少し離れたところにある蔵についた。
「おかしいな、誰とも遭遇しなかった…?」
事前の情報によると、ここには多くの女性を娶った男が住んでいるという話だった。
それにその女性たちというのも、武術に長けたものが多く、ここへ侵入することさえ困難だと言われるほどに。
しかし、あったのは多くの罠のみ。
呆気ないほど簡単に侵入することに成功していた。
「まさか、みんなでピクニックにでも行ったのか?」
なんてことを言いつつ、蔵の扉に手を掛ける。
ギィ、と音を立て、扉は開いた。
鍵もかけていなかったようだ。
「妙だな…」
違和感はそれだけではなかった。
蔵の中に入り、棚を調べていく。
しかしそこには、なにも置かれていなかった。
少し前まで置いていた様だが、今は何もない。
ほとんどの棚を調べるも何もない。
「蔵としての役目を終えたってところなのか?…いや、蔵を新しく建てた、なんて話はなかったし、それにこんな中華風の蔵をわざわざ何個も建てる金があるのか…?」
そんなことを言いながら最後の棚を見てみた。
そこに一つだけ物があった。
「これ…か?」
手に取ったものは…鏡…だろうか?
しかし、ガラスは無く、少し汚れている。
誰かが使っていたものとは言い難い。
こんなものが、あいつの力を弱らせる原因の一つ…?
情報の提供者は、あいつのことに関してなら正しいことしか言わない奴だと思う。
それに、わざわざ俺をこんなところへデマ情報で向かわせるとも思えない。
とりあえず鏡らしきものを拭いてみた。
壊せばいいのだが、なんなのかよく分からないもののままというのもアレだ。
「これだけ磨けば…」
何とか一部分だけ、綺麗になった。
一応鏡としては機能するらしい。
しかし、変わった物だな…
そう眺めていると、ふと
「誰だっ!!そこにいるのは!」
女性の声が扉の方から聞こえた。
「まずっ…!?」
慌ててその鏡を抱えながら、ナイフを取り出す。
七夜と刻まれたナイフ。
そのナイフの刃を出した、その時だった。
「なっ…!」
驚くと同時に俺は、唐突に、光に、全身を、呑まれた。
そして、意識はそこで途切れた
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「これでよかったのでしょうか?」
女性は横にいる男性に尋ねる。
「ああ。本来なら剣丞が外史の扉を開くはずだったが…彼が開いたなら仕方ない。それに、アレが最後の外史へと続く扉だ。この世界にとってはアレが俺たちの危険に繋がるなら壊してもらうか、使ってしまってもう開かない様にしてもらうしかない」
男は淡々と告げる。
「彼なら、どんな外史だろうと生き延びられるだろう。アレだけの罠を掻い潜ってきたなら」
そして、男は去っていく。
女性もその後をついていく。
彼らが向かうその先はー
変な文章だなぁとかあれば感想で容赦無く言ってください。読んでくれた優しい方は