「申し上げます!」
伝令が戻ってきた。
それが吉報か、はたまた…
「許す!」
「今川勢は現在、田楽狭間にて小休止!全軍を分散させ昼弁当を使っております!」
「デアルカ。…大義」
「はっ!」
伝令は報告を終えると、自らの持ち場へと戻る。
届いた報告は吉報。
この雨の中、そして田楽狭間での小休止ということは敵は隙だらけだということだ。
「勝者の余裕…というとこですかな」
「勝者か。あながち間違ってもおらんな」
今川勢はこの小休止の終了と共に全軍を清洲まで向かわせる。
そうなれば、此方は一方的に敗北することとなる。
「我が方は二千弱。対する義元公は一万五千ほど。軍神摩利支天といえど、この差を覆すのは至難の業でしょう」
「常識的に考えれば、あの大軍にこれだけの少数で
奇襲を仕掛けるのは無謀を通り越して自殺行為だからな」
確かにその通りだ。
本来これだけで挑めば返り討ちにあう。
そうなれば此方は抵抗したところで勝ち目などないだろう。だが
「常識などと、そんなつまらんものに縛られる者に、大業など成しえんぞ」
「ですが殿…」
「おけぃ。今やることは問答ではなく、合戦である。説教は義元を討ち取った後に聞いてやる。持ち場につけ」
「「はっ」」
二人は馬を走らせ、持ち場へと戻っていく。
「さて……これより織田久遠信長、一世一代の大博打。勝ちきってみせようではないか……!」
少女は一人、その目に野心を、闘志を滾らせ、その先にある未来を視るー
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呼子が鳴る音が聞こえた。
それと同時に今川勢は急ぎ本陣を守ろうと動き始める。
しかし、酒を呑んだ者たちや慌てて起きた者、状況を理解できない者達により戦場は混乱。
その中へ
「織田上総介久遠信長が家中、柴田権六勝家参候!」
柴田衆による奇襲。
本陣ではさらに混乱が起こる。
「やったか新介?」
「な、なんとか……」
少女達の声が聞こえる。
奴の頸を取った様だ。
「新介、小平太、大義なり!名乗れぃ!」
少女達はその頸を持ち
「織田上総介久遠信長馬廻り組組長、毛利新介!」
「同じく服部小平太!」
「東海一の弓取り!今川殿、討ち取ったりー!」
この一言により、今川勢は全て武器を捨て、撤退を始める。
この好機、逃すわけにはいかないー!
「今こそ好機なり!織田の勇士たちよ!これより敵を追討ーー」
そう叫んだ時である。
ふと、聞き慣れない音が聞こえた。
雨音や逃げる足音、叫び声が聞こえる中でもはっきりと聞こえてきーー音。
「なんだ、この音はーー」
次に光が周囲を照らす。
この雨雲の中、それは日輪の光のように明るい光ーー
「な、なんだあれはっ!?殿、空を!」
その声を聞き、それを見る。
そこにはーー
「光の玉が、天から落ちてきいるだと…!?」
その光の玉は静かに落ちていく。
そして、地上へと落ちた瞬間、さらに光り輝き、次の瞬間には消えていた。
「消えた……」
隣では何だったのか分からないものに驚きを隠せない者がいた。
しかし、そんなことより、今目の前にあるこれは何処から現れたのだ?
「おい、権六。あやつは誰だ?」
「は?……っ!!」
権六と呼ばれた女性はその方を見る。
そこには一人の見知らぬ格好をした男が倒れていた。
「男か?歳は我より少し上ぐらいに見えるが…それに怪我でもしているように見える」
目の前にいる男は目を覆うように包帯を巻いている。
怪我をしたのかもしれない。
「久遠さま!崩れたとは言え、彼我の戦力差は未だ変わらず!今すぐ後退すべきかと!」
ここは敵の本陣、混乱は一時的なものでしかない。
主君を討たれた兵が戻り、仇を討つものもあるかもしれない。
「……デアルカ。おい、猿」
「は、はひっ!?」
猿と呼ばれた少女は緊張しているのか、上擦った声で応える。
「そやつを持って帰れ。あとで検分する」
「あ、あの死体をですかっ!?」
「死体かどうかまだ分からん、やっておけ」
「は、はひぃ〜…」
猿はその男を馬に乗せる。
それを確認し
「権六!五郎左!疾く退くぞ!」
「はっ!皆の者、追い頸はやめぃ!今はすぐに清洲に戻る!」
「全軍退却!速やかに清洲に戻ります!急いで!」
「「「「「おう!」」」」」
権六と五郎左の指示により、退却が速やかに行われた。
此方側の被害は広がることはないだろう。
「義元は討った。当面の危機は去ったが…」
先程の青年を思い出す。
光の玉の中から現れた青年。
包帯を巻き、片手に短刀のようなものを持ったアレはーー
「あやつは何の兆しなのか……。乱れ乱れたこの世の地獄で、何かが始まろうとしている」
---そんな予感がする
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(---ん?)
はじめに感じたのは違和感。
先程、蔵で光に包まれた筈の自分には感じない筈のもの。
(布団…?)
何というか、懐かしい。
そんな感じの肌触りと---変わった匂い。
(何の…匂いだ…?)
その匂いを嗅いでいる内に徐々に意識が覚醒してくる。
それと同時に、すぐに感じたさらなる違和感。
---人の気配。
すぐに瞼を開けた。
そう言えば先程誰かに見つかり、光に包まれたのだ。
その誰かに今捕まっているのでは。
光が目に入り込んでくる。
そして、視界が明るくなる。
はじめに目に入ったのは
「………え?」
女の子の顔だった。
この少女との出会いから始まる、外史。
乱れ乱れたこの戦乱の中、青年はどうなる
思いっきり、恋姫の中身です。当分こんな感じ。志貴と剣丞という違いがどのようになっていくか、まぁ、楽しんでもらえれば……いいなぁ!
まぁ、多めですけど、ちらほら文章追加したり、消したりして、うん。まさかこんな進め方になるとは…