戦国†恋姫 〜死ヲ穿ツ少年〜   作:録音ソラ

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タイトル決めるのって難しい


現状

 久遠と話した後、俺は一人部屋で考え事をしていた。

 久遠は公務があるとのことだ。

 …態度はでかいが、働くにしても見た目が少し若過ぎるように見える。

 

(……秋葉よりも大変かもしれないな)

 

 アルクェイドと共に千年城ブリュンスタッドで暮らしている間、秋葉達とは話していない。

 

(早く戻って遠野の家に少し寄ってみようか…)

 

 早く戻る。

 それを胸に決意し、今の状況と戻り方について考える。

 

 今は久遠の夫という役割をこなしつつ、特異点の鍵となるものを探すことが1番だ。

 特異点はそれを解決すると世界が自動的に直し始めるらしい。

 …どうやって帰るのかは知らないので、それも探さなければならないのだが。

 織田信長が女の子という時点で特異点の鍵と決め付けそうになっていたが、もしかすると他の人もそうなっていることもある。

 そうなるとそれをどうにかするだけでは元に戻ることはない。

 もっと根本的なものを探さなければ……

 

 その時、ふと辺りを見渡してみた。

 

 シンプルな和室だ。

 琥珀さんを追いかけた時に見つけた使用人の使っていた離れに似ている。

 それに、前に住んでいた部屋にも……

 

 ……前に?

 

 今の住んでいる場所は千年城ブリュンスタッドだ。

 その前は遠野の屋敷。

 その前は有間の家に……

 その前は…ナナヤの里にある、俺の家に…

 

 どうしてここまで鮮明に思い出せる…?

 それによく思い出してみると、俺じゃない俺の記憶がある…

 

 シオンなんて聞いたことない名前の筈なのに、顔も声も鮮明に思い出せる。

 どういうことなんだ…?

 それに1番不思議なのは…白いレンの主人になった記憶。

 使われないもの同士、なんて言葉を言われている。

 分からない、これは何なんだ…!

 

「……あの、お客様?」

 

 その声を聞き、振り返る。

 襖の向こうから声を掛けられたようだ。

 

「よろしいでしょうか?」

「あ、はい」

 

 襖が開き、奥から女性が現れる。

 久遠とは違い、大和撫子という言葉が合いそうな美しい女性だった。

 あと、大きい。どこがとは言わないが

 

「給仕を承ります、私、織田三郎が妻、帰蝶と申します。不束者ではございますが、よしなに」

 

 三つ指をつき、頭を下げる女性。

 それにつられこちらも頭を下げる。

 

「あ、ああ。俺は遠野志貴。これから世話になるよ」

「いえ、久遠より言いつかっております。お食事をお持ち致しました」

 

 そういうと顔を上げ、足つきのお盆を捧げ持って入ってくる。

 

「では、ただいまお給仕を」

「いや、それはいいよ」

「ですが…」

「一人で食べられる。それに、久遠の奥さんに給仕なんてさせられない」

 

 そう言うと、帰蝶はお盆を俺の近くに置いてくれた。

 

「君は食べないのか?」

「お客様にお出しする分しかありませんので」

「そうなのか」

 

 食べている間ずっといるのだろうか、などと考えつつ

 

「いただきます」

 

 とりあえず食べることにした。

 食事を出されて急に腹が減った気がしたので今は食おう。

 

 茶碗を手に取り、ふと気がつく。

 茶碗に視える線。

 そのモノの「綻び」だ。

 今まで何故か気にならなかったが、辺りは「綻び」だらけだった。

 

 綻びとは、そのモノの死にやすい場所。

 死の線と呼ばれるものだ。

 脳が根源と接続されることにより、そのモノの死を理解し、それが線や点となって目に視えるようになる。

 直死の魔眼と呼ばれるものの力というところだ。

 

 何故気になったかというと、少しばかり視え過ぎている。

 それに、これを見て何も思わないことが不思議だった。

 モノの死、そのものを見ているのだ。

 見続けでもすれば、気が狂い、脳が焼き切れそうになる。

 しかし、そうならない。

 普段は包帯を巻き、封印してはいたが……そう言えば今してないんだった。

 

 違和感を感じつつも食べていく。

 腹の虫には勝てないのだ。

 

 食べ進めている間、ずっと見られている。

 さっきの女性の視線をとても感じる。

 

(食べにくい…)

 

 俺の食べ方が変だろうか、普通に食べてるつもりなんだが…

 

「見られていると食べにくいんだが…」

「…………」

「俺の顔に何かあるんですか?」

「……あなたが久遠の夫になるのですか?」

 

 顔には何もないみたいだ。

 

「形だけのもの、だ。俺は衣食住を、久遠は俺を男避けとかに使うらしい。対等な条件なのかは分からないけど、助けて貰えるならこっちも助けるってだけの関係だよ」

「……形だけとしても、あなたに久遠の夫が務まるとは思えませんが…」

 

 俺もそう思う。

 夫なんて何をすればいいのかもさっぱりだ。

 

「気楽な気持ちで受けたのならば、すぐに撤回し、この国から出て行ってくれませんか」

「撤回するにしても本人はいない。それに、野垂れ死ぬ訳にもいかないから、お世話になる側だけど、そのことはお断りだ」

 

 それに勝手に約束を破ったりしたら…後が怖いのはアルクェイドの件でもうわかってる。

 約束を破ったりはしない。

 

「ごちそうさま」

 

 睨まれ続けながら食べる飯ほど味が分からないものはない。

 あと食べにくい。

 

「美味しかったよ」

「…ありがとうございます」

 

 あ、この人が作っていたのか。

 ちゃんと味わってから感想言えればよかった。

 

「とりあえず、さっきの話は久遠が戻ってから。そうでないと何も進まない」

「…わかりました。では、久遠が戻るまでの間、おくつろぎください」

 

 そう言うとお盆を持って部屋から出て行った。

 

「…どこの馬の骨かも分からない人間が近くにいるっていうのは不安だろうな…」

 

 それも夫…?妻…?にあたる人間のそばにいることになるんだ。

 不安になるのも仕方ないし、警戒されても仕方ない。

 知らない人間を、それも天から降ってきたなんて男を怪しむのは当然だろうな…

 

「しかし、そんなことよりも…」

 

 そんなことよりもこの眼だ。

 長時間、死を見続けてはいるが、未だに頭痛はない。

 それに人以外にはどうも点は視えなくなっている。

 

(こちらへ来たときに脳が少し変わったりした、とか?根源とさらにしっかりと繋がった…だとしたら、このよく分からない記憶もそれの影響ってことなのか…?)

 

 こんなに考えても分からないものは分からない。

 魔術関連の話はさっぱりだ。

 ……難しいことを考えるのはよそう。

 食べたあとだからか、眠気が襲って来た。

 

(寝ておこう)

 

 俺は眠りについた。

 これからどうするか、どうなるのかなんてことを考えることもなく、ただ今は休むために




はい、ということで、この遠野志貴くんは漫画版とかとかですね。はい。漫画版しか詳しく知りません。あとメルブラはよくやってます。
直死の魔眼は本来根源と繋がり見えるものです。志貴ではなく式さんは根源と直接繋がってたりするので、通常時は痛みなく使える、らしいです。
志貴くんは根源とたまたま繋がった人間ですからね。脳が追いつきません。それで痛みがあるのです。

次回はー…
志貴くん無双が…始まる

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