ロクでなし講師と魔眼保持者 作:斎藤
ハーレム先生とグレン先生の賭けの成立から次の日。グレン先生から生徒の一人一人に、競技に対するアドバイスが行われた。
もちろん、『決闘戦』に出場する俺にもアドバイスをしに来るだろう。現にギイブルへのアドバイスを終えて銀髪にアドバイスをしている。
「んじゃ、最後にラヴァル。お前はひたすら避けろ。避けて接近してブン殴ってやれ」
やはり俺にもアドバイスはあった。だけど避けろって曖昧すぎね?
「いや、避けろって簡単に言うけど、撃たれた魔術に反応なんて無理でしょ」
「なら、撃たれる前から反応すればいい。魔術を撃つ時は殆どの人が相手に腕、指を向けて放つ。だから向けられたらすぐに軌道から離れろ」
「一理はある。でもそこまでやる気でないんだよなぁ」
「なら、やる気を出させる提案をしてやろう。学院にはもちろんテストがある。赤点でも俺の一存で平均点にまで上げてやる。どうだ?」
え?この人マジで言ってんの!?赤点でも平均点にしてくれるって神様?仏様?そんなの乗るしかない。テスト勉強なんてする気は無いけど赤点取って補習ってなる可能性がある分こちらの方が断然お得。
「グレン先生、更に追加で授業中に寝る権利もつけてください」
「いいだろう。『決闘戦』で勝ったらそうしてやる」
「よっしゃぁぁぁぁぁぁ!これはもらった」
「……ここまでやる気の出るラヴァルを見るのは初めてかも」
「馬鹿馬鹿しい」
銀髪とギイブルは俺の様子に呆れてるが俺はやってやる。当日風邪作戦?んなもんゴミ箱にポイだ。テストをなくせる方が大きい。
「後はそのやる気さえ維持できれば問題ないな」
「テストのために相手をブチのめす」
相手が誰であろうと絶対に負けない。殺す気でとは言わないけど意識を奪い取る気で挑む。もし危ない魔術を使い出せばあのババアが止めるだろうし大丈夫でしょ。
「いい?この前みたいな真似しないで真面目に避けるのよ?」
システィーナとギイブルがラヴァルに魔術を避けることができるのか疑問に思い、再び練習することになった。ラヴァルとしては避けられると断言できるし、正直面倒くさく、やりたくないだろう。だが、避けれなければさっきの話はなしとグレンから言われることでやる以外の選択肢が消えた。
「《大いなる風よ!》」
昨日見た魔術がラヴァルへ放たれる。撃たれる前に避けろと言われていたが、そのことを忘れて撃たれるまで動きはなかった。そのことにギイブルとシスティーナとグレンは終わったと思った。
しかし、ラヴァルにとって《ゲイル・ブロウ》くらいであれば発動後でも回避は可能だった。
即座に横へ一歩移動し、ギリギリのところで躱す。そして、躱すだけでなくそのままシスティーナへと接近していく。だがシスティーナは避けられたと思えば次の魔術を準備していた。テロの時の実戦経験が彼女に次の行動を与えていた。
「《拒み阻めよ・嵐の壁よ・その下肢も安らぎを》!」
次の魔術の準備段階から結構な量の魔力が込められていることは見ていてわかっていた。システィーナの改変魔術が広範囲に向けて撃たれることは同世代の中では圧倒的な実戦経験から予測できた。だから、ラヴァルは空を駆ける。
「《集え大気・集いし固めよ》」
即興で魔術を改変し、空気の足場を作ってシスティーナの改変魔術を空を走ることで躱す。
「うそーん」
二人の様子を見ていたグレンの間の抜けた声が聞こえる。《ストーム・ウォール》を躱されても諦めず空へ向かって《ゲイル・ブロウ》を連発する。だがその全てを空気の塊を足場として蹴り、高速機動で躱していく。そして、《ゲイル・ブロウ》が少し途切れた時、下にいるシスティーナへと空気の足場をを思い切り蹴り、ラヴァルは弾丸のように一直線に飛んでいく。
勢いよく地面に着いたことで重い音が鳴り響き、土煙が舞う。
土煙が晴れた時、ラヴァルの拳がシスティーナの眼前で寸止めされているのを全員が見た。
グレンは驚いた顔で二人を見る。
ギイブルは見間違いではないかと眼鏡を拭く。
システィーナは何が起きたのかと呆然としていた。
「ほれ、避けてやったぞ」
気怠そうにいつもの眠たそうな目でラヴァルが言った時、ラヴァルがシスティーナに勝ったことを全員が理解した。
「こんなに強いなら普段からちゃんとしなさいよ。急に改変魔術を使ったり、頭も良いじゃない」
疲れと驚きから少し声が小さく言われる。それにラヴァルは頭を掻きながら内心焦る。
(ヤッベェェェェ、改変魔術使っちまった!?しかも少し調子に乗って避けまくったし、明らかにヤバイやつじゃん。どう言い訳しよう……)
「ラヴァル=ピエル、僕は君をバカにしていた。評価を改めるよ」
ギイブルは素直に賞賛を送った。だがそんなことはラヴァルの頭に入ってこない。今は言い訳のみを探していた。
「白猫の改変魔術による攻撃とその後の《ゲイル・ブロウ》も判断は良かった。凄まじいのはラヴァルの戦闘センスだ。ラヴァル、戦闘中どこを見ていた?」
グレンはシスティーナを褒める。テロの経験が活きていると思った。ラヴァルの戦闘センスも褒める。
「どこって、銀髪しか見てないんだけど…」
「それだよ。普通は武器…この場合は魔術に目がいくがラヴァルは白猫全体を見て動いた。だから白猫の改変魔術にも体が反応することができた。といっても、ラヴァルまで改変魔術を使うとは思ってなかったけどな」
「改変魔術とか言ってるけど、たかが空気の足場を作ってるだけだから普通でしょ」
「それも才能だぞラヴァル。できないやつはできないからな。にしても、あの動きはすげぇよ。まるで実戦経験が豊富な魔術士みたいな動きだったぞ」
グレンの言葉で内心穏やかではないラヴァルは冷や汗を垂らす。グレンは普通に感心しているだけだが、ラヴァルは疑われていると思ってしまうほど精神的に追い込まれた。
「いやいや、ベテランの魔術士なんて多分もっと凄いでしょ。というわけで俺は帰っていいっすかね?今日は体を動かしすぎたんで疲れました」
勝手に追い込まれた末に、適当な言い訳をして帰ろうとする。
「ああ、お前達は俺の言ったアドバイスを念頭に置いてくれていれば大丈夫だろ」
グレンの言葉を聞いてラヴァルは逃げるように帰っていった。グレンやシスティーナそのことに多少は怪しむが、特に詮索はしなかった。
予想以上に伸びてビビった。みんな魔眼好きなんだなぁって思いました。作者も厨二病治らないんでわかります。
今後も、もう1つの作品を放置してでも投稿していくんでよろしくお願いします。