時は会場に戻り、今宵戦う2人はその時を待っていた
ライザーside
10年前のことを今でも思い出す、あの日いつか必ず2人の誇れる兄になるという誓い
その思い違い、あれから俺の後悔と懺悔の日々は続いている
そしてこれからもずっと
それが消えることは無い
もしあの時に戻れたならばと、何度もそう思う
されど時は戻らない、失ったものは取り戻せない
だからこそ証明しなければならない
見るものが恐怖するほどの
完全無欠の勝利で
グレイフィア様が名を呼ぶ
それに合わせゆっくりと会場へと歩む
そこには多くの悪魔がいた
サーゼクス様とセラフォルー様
リアス・グレモリーとその眷属達
グレモリー家の方々
ソーナ・シトリー含むシトリー家
各地を治める有力貴族
かつて戦った者達
そして最愛の家族達
それらを目に収めながら壇上へと向かう
どこからか小さな声で話しているのが聞こえてきた
「あれがフェニックスの三男か...」「三男は兄たちに比べ劣っていると聞いている...」「未だに眷属の1人も出来ないらしい...」「まだ若いとはいえ、それでは噂も真実かもしれんな...」
俺を貶すような発言を古くから居る悪魔たちがしていた
それが聞こえていたのか、雰囲気で察したのかは分からないが
「ただ長生きしているだけの老害どもめ...」「戦場に立てないほど弱いからあいつの強さが分からねぇんだろ...」「あの人がどれだけ凄いか、何も知らない癖に...」
かつて俺が打ち破ってきた若手の悪魔たちが、古き悪魔達を睨みながら呟いていた
その言葉が聞かれたら問題になるというのに
そんな彼らを嬉しく思い、僅かに笑みを浮かべながら進む
壇上に上がるとサーゼクス様から質問を受けた
「こんばんはライザー、今から行われる決闘に対して何か意気込みはあるかな?」
その質問に対して、俺は無難な回答をするべきなのだろう
少し目を瞑り考える
古き悪魔達の好む、清廉潔白で素直な若者として振る舞うのが正しい場面なのだろう
されど脳裏に浮かぶのは先程の若手たちの姿
あぁ、だから俺は
「見ていてくれ、俺の覚悟を」
ゆっくりと目を開き、そう言ったのだ
そんな俺の言葉にサーゼクス様は珍しいものでも見たかのような顔をした
ふと目を配れば父が目を見開き、遅れてきたのだろうレインですらも驚いたかのように固まっていた
そんな光景に思わず笑いが込み上げてくる
「.........驚いたよ、君らしくない言葉だね?」
「えぇ、自分でもそう思います、しかし私はこの言葉を伝えるべきだと、そう思ったのです」
「そうか、ならば私もその姿を見れることを楽しみにしているよ」
「はい、必ず」
その言葉を最後に少しづつ拍手が鳴り響いた
そしてグレイフィア様より次の入場者の名が呼ばれた
「続きまして、リアス・グレモリー様のポーン、赤龍帝兵藤一誠様のご入場です」
サーゼクスside
本当に驚いたよ、いつもなら無難な言葉で済ませてきたライザーがあんな言葉を言うなんてね
かつて戦った者たちの姿を見て気を入れ直したのかな
だが少し不味いことになった
当初の予定では、相手は赤龍帝とはいえまだ下級悪魔だからと少し油断しているであろうライザーに初手で決めに行くつもりだったのに
ここまで戦意に満ち溢れているのは想定外だ
一誠くんがライザーの圧に飲まれないか心配だ
そんなことを思っていると、グレイフィアが一誠くんを呼び始めた
「続きまして、リアス・グレモリー様のポーン、赤龍帝兵藤一誠様のご入場です」
そうして会場に現れた一誠くんを見て、会場にいる悪魔たちは息を飲んだ
ライザーと比べればまだ拙いが、覚悟を決めたもの特有の強い圧を放ちながら、ゆっくりとこちらに歩んでくる
その姿に緊張などなく、僕の前に上がりライザーの横に並んだ
今日は本当に驚かされてばかりだ
つい10日前までただの素人だったはずの彼が、まるで歴戦の戦士のように静かにライザーと目を合わせている
「こんばんは一誠くん、決闘の前に何か言いたいことはあるかい?」
ライザーの時と同じように、そう質問すると一誠くんは少し目を瞑り、そして
「勝ちます、そして俺がリアス・グレモリーのポーンであることを示します」
そう答えたのだった
思わず柔らかく笑みを浮かべてしまうほどの真っ直ぐな覚悟だ
「ふふふっ!これは面白い勝負が観られそうだね」
そこでふとあることを思い付いた
「そうだ!この決闘に勝った方に私から何か報奨を与えようと思うんだけど、2人とも何か叶えたいことなんかないかな?」
僕がそう発言すると、会場がざわつき始めた
まぁ魔王である僕直々に報奨を与えるなんて滅多にないことだし、ましてや貴族と言っても三男のライザーと下級悪魔の決闘でそれが行われるなんて思ってもいなかっただろう
僕と彼らとの関係を知らなければ尚更だ
だが
「「何も」」
2人同時に帰ってきた言葉は否であった
その瞬間会場は凍りつき、僕は口をぽかんと開けてしまった
「今はただ目の前の相手に勝つ、それだけを考えています」
「勝って約束を守る、今はそれしか考えていません!」
そんな2人の言葉に思わず笑いが込み上げてきた
そっと横を見れば、固まる悪魔たちの中で、口を塞ぎお腹を抱えて必死に笑いを堪えているセラフォルーの姿が見えた
まったく、失礼なやつだよほんと
でも僕も人のことをとやかく言えないね
あぁ本当に、君たち二人は何処までも僕を楽しませてくれるね
だから
「あはは!そうか、それはすまなかった!無粋な質問だったね!」
「それでは私はこの後の戦いを存分に楽しませて貰うよ、2人の武運を祈る」
そう言って僕は2人から離れセラフォルーの横に戻った
きっとこの2人のどちらが勝っても、それは両方の長い人生の大きな分岐点となるだろう
できることなら互いに幸せになれる方に転ぶことを祈るとしよう
そして2人は転移魔法によってフィールドへと移動した
自堕落に過ごしたあの日々、戻れることならばもう一度......
裏タイトル「何故あの時」
今回からこんな感じで後書きにショートストーリーかキャラの独白で追加要素を足していく予定です!
最近ようやく仕事に余裕が出来ましたので、投稿頻度は遅いですがゆっくりと進めていきたいとおもいますので、応援のほどよろしくお願いいたします