魔法少女リリカルなのは『INNOCENT BRAVE』 作:ウマー店長
眼下には透き通るような青い海が、周囲には果ての無い青空が広がっている。
海は穏やかな波を立て、空にはいくつかの雲が見て取れた。
この空間を照らす日の光はやわらかく、ここが草原であったなら昼寝の一つでもしたくなるような陽気である。
しかし。
「撃ちぬけっ!」
足場など何一つ無いはずのこの空間に青年の声が響き渡った。
その掛け声とともにいくつかの白銀の光弾が、淡く光の軌跡を残しながら目標へと向かって飛翔していく。
光弾の向かう先には、赤紫の杖を構え、杖と同色の衣装を着た少女が居た。
なお、ここは空中である。
「させませんっ!」
少女はそれらの光弾を、自らが呼び出した燃え盛る真紅の光弾をぶつけて相殺する。
同じ場所にとどまるのは危険と判断したのか、光弾を発射し終わると同時にその場からすみやかに飛び去った。
「パイロシューターッ!」
少女がそう高らかに宣言すると先ほどと同じ真紅の光弾が少女の周りに付き添うように出現する。
「シュートッ!」
少女の合図とともに計5発の光弾が青年に向かって飛翔する。
青年は光弾の接近をかわしつつも、白銀の光弾を自分の周りに滞空させるように展開していく。
「メギドシューター・・・」
青年は先ほどまで自分の周囲に展開していたものとは別の光弾を生み出す。
その狙いは、少女が打ち出した真紅の光弾である。
「シュートッ!」
青年を追っていた光弾と同じ数、5発の光弾が合図と同時に発射された。
真紅と白銀、二種類の光弾が互いにぶつかり、爆風を上げながら相殺された。
この衝撃で周囲の雲が散らされ、今まで穏やかだった海面は少し大きめの波を立てた。
だが、これだけでは終わらない。
「シューターだけに気をとられては困りますよ」
「くっ!」
少年は上空を見上げる。
その目線の先には、先ほどから相対していた少女が浮かんでいる。
しかし、少女が両手で持つ杖は先端部分の形状が先ほどまでとは変化していた。
今までは丸みを帯びた、まるで魔法使いが持っている杖のようだったのに対し、現在は先端が二股に分かれた、槍のような形状へと変化している。
「ディザスター・・・」
その二股の穂先へ、赤い光が収束し始める。
その光景を見た青年は自分が持つ杖の先端を少女へと向けた。
「メギド・・・」
青年の掛け声とともに、白銀の光が少女と同じように杖の先端へと収束し始める。
そして、二人の収束していた光が一定の大きさ以上になったとき・・・。
「ヒートッ!!」
「ブラスターッ!!」
二人のほぼ同時の掛け声により光線・・・砲撃が放たれた。
二人の杖から放たれた砲撃は真正面からぶつかり合い、先ほどの光弾同士の衝突とは比べ物にならないほどの爆風と煙が辺りに撒き散らされる。
それにより、周囲の雲は完全に吹き飛び、海面は大きな波を立て始めた。
この煙が晴れれば、周囲の空は雲ひとつ無い青空へと変貌しているだろう。
だが、煙が晴れるのを待つ前に、紅蓮の砲撃が煙を突き破るように青年へと向かって放たれた。
数は2発、最初の一発と合わせれば計3発の砲撃である。
「複数連続で発射できるのか・・・!」
青年は驚きの言葉を口にするが、その表情にあわてた様子は一切無く、その瞳は飛来する2発の砲撃を見つめていた。
「スフィア、収束」
その掛け声と同時に今まで青年の周囲に浮かんでいた光弾が収束し始めた。
青年の周囲にあった光弾の数は8つ、それらが4つずつ収束し、2つの大きな光弾が生成される。
「撃ちぬけ、メギドブラスター!」
掛け声と同時に撃ち出された新たな2発の白銀の砲撃が、少女の紅蓮の砲撃と激突する。
先ほど以上の爆風と爆煙が周囲の空へと広がった。
その様子を見ていた少女は杖を握りなおしながら新たな光弾を生み出す。
「なるほど、スフィアはこのために・・・」
少女の顔に浮かぶのは、焦りでも、恐怖でもない。
ただただ、好敵手に出会えた、喜び。
その感情が、少女の心に更なる炎を燃え上がらせる。
そして、いくつかの光弾を生成し終わる頃に、ようやく煙が晴れた。
煙が晴れた先の空には、先ほどまで相対していた青年の姿が映る。
「素晴らしいです・・・貴方のような方と戦えたことに、至上の喜びを感じます」
「それは光栄だね、俺も最高に楽しいよ!」
青年は先ほどのように光弾を周囲に展開した状態で少女の声にこたえた。
二人の顔に浮かぶ表情は・・・喜び。
そして。
「我が魔導の全てを以って、貴方を倒します」
「ああ、望むところだ」
二人は杖を構えなおす。
少女の杖は先ほどまでと同じ二股の形状。
それに対する青年の杖はガシャン、と音を立てて変形した。
魔導視の杖のようだった外見は槍のような、矛のような形に変形し、穂先の部分には白銀の光刃が展開される。
「俺の全力で、君を倒す」
「・・・望むところです」
少女は一度構えを解き、スカートの裾を持ち上げながら会釈をする。
「改めまして、私はシュテル。シュテル・スタークスと申します」
まるで騎士の決闘の名乗りのように、少女・・・シュテルは自分の名を名乗った。
青年もそれに習い、一度武器を下ろし、名乗りを上げる。
「俺は、アヤト。如月アヤトだ」
これがブレイブデュエル、ロケテストランキング決勝の一場面である。
ブレイブデュエル。
グランツ・フローリアン博士が主体となって開発した体感型シミュレーションゲームであり、若い世代を中心に爆発的な勢いで流行している。
プレイヤーはさまざまなカードを元にデッキを組み立て、デッキホルダーへとセット。
シミュレーターへ入り、ゲームが起動されるとデッキにセットされたカードのデータをもとに、さまざまな『魔法』を行使できる。
その『魔法』には当然「空を飛ぶこと」も含まれており、プレイヤーのイメージ次第ではあるが自由自在に空を飛び回ることができるのも人気の一因だろう。
そんなブレイブデュエルの世界に、3人の少女たちが足を踏み入れようとしていた・・・。
【単語集】
『シューター』・・・基本的な射撃魔法。こぶし大の魔力弾を発射する魔法。
『スフィア』・・・魔力で構成した球体。シューターのように相手に直接ぶつけることもさまざまな魔法の基点にすることもできる。
『砲撃魔法』・・・純粋な魔力の塊を打ち出す高威力の魔法。
『ブレイブデュエル』・・・体感型シミュレーションゲーム。ジャンルは魔法バトルアクション
『ロケテスト』・・・ブレイブデュエルが一般公開される前の試験的な公開イベント。第0回大会も行われた。
ゲームの内容を自分なりに噛み砕いて設定を作っています。
なのでところどころ漫画版やモバゲー版とは違った部分が出てくると思いますのでもし見つけたら指摘をお願いします。
(独自解釈を基にした指摘はお断りします( ゜ω ゜)