魔法少女リリカルなのは『INNOCENT BRAVE』   作:ウマー店長

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DUEL2 疾風迅雷②「シュテル・スタークス」

 電車に揺られて数分後、アヤトは自分が住むアパートの最寄り駅にたどり着いた。右肩にずっしりと感じるスーパーでの戦利品の重さを感じながら、早歩きで目的地へと急ぐ。

 先ほど小さな友人と交わした約束を果たすために。そして何よりもアヤト自身フェイトとの対戦が楽しみでしょうがないのだ。

 駅の改札を出て数分、初夏の日差しを浴びながら帰路を急ぎ、ようやくアパートを囲うコンクリートブロックの塀を過ぎ、敷地への入り口が見えてきたところだった。

 

「あれ・・・?」

 

 一人の少女が入り口のすぐ横のブロック塀にもたれかかり、空を見上げていた。

 アヤトが近づいてくるのに気がついたのか、視線を空からアヤトのほうへと移し、にっこりと微笑んだ。

 

「ああ、おかえりなさい」

「シュテル・・・?なんでここに?」

 

 私立天央中学の制服を身にまとった茶髪の少女。

 かつてブレイブデュエルロケテストトーナメントにおいて、アヤトと優勝の座を争った強豪。“星光の殲滅者”シュテル・スタークスがそこにいた。

 

「最近研究所に顔を見せないので様子を見に来ました。壮健なようで何よりです」

「いや、うれしいけど・・・わざわざうちまで来なくてよかったのに」

「学校から帰るついでに寄っただけですから、お気になさらず」

「いや、けどこんな直射日光当たるところで・・・。暑かっただろ?ちょっと上がってく?」

 

 シュテルがどれだけの時間ここでアヤトを待っていたのか知るところではないが、額にうっすらと浮かんでいる汗を見る限り決して短い時間ではないはずだ。

 

「・・・ありがとうございます。少しお邪魔しましょう」

 

 ハンカチで額の汗を拭いながらシュテルはアヤトの提案を呑んだ。

 アヤトはシュテルを連れ、アパートの敷地内へと入っていく。敷地の中には簡易的な駐輪場と大家さんが趣味で作っている小さな家庭菜園がある。菜園にはキュウリとプチトマトが植えられており、そろそろ収穫時期ではないかとアヤトは踏んでいる。(おすそ分けにも若干の期待をしている)

 そしてアヤトの部屋は一階の左端、方角で言うと東に位置している。決して広い部屋ではないがキッチンとトイレと風呂場が付いており、生活には一切不自由していない。

 

「えっと、鍵開けて・・・むぉっ・・・」

 

 アヤトが部屋のドアを開けたとたん、中から生暖かい空気が流れ出てきた。朝から大学に行っていたため長時間密閉され、初夏の日差しによって暖められ続けた部屋の空気は「サウナです」といわれても違和感を抱かないほどの温度になっている。唯一幸いしたのは湿気が少なかったことだろう。

 

「気温的にはあまり外と変わらないな・・・」

「直射日光が無いだけましですよ。お邪魔いたします」

「とりあえず窓開けようか・・・」

 

 アヤトは玄関のドアを開け放ち、ちょうどドアの反対に位置する窓も網戸を残し全開にした。とにかくこの生暖かい空気を部屋の中から追い出したかったからだ。

アヤトの借りている部屋は玄関から伸びる短い廊下の先に普段の生活スペースである部屋があり、途中の廊下に台所が備え付けられ、トイレと風呂場に続くドアが設置されている。

 部屋の中央にあるミニテーブルのそばに座布団を置きシュテルを座らせると、台所の戸棚からガラスコップを取り出し、冷蔵庫で冷やしておいた麦茶をいれてシュテルの元へと持っていく。

 

「あぁ、わざわざありがとうございます」

 

 シュテルは目の前のテーブルに置かれた麦茶の入ったコップを両手でつかみ、こくこくと飲み干していく。

 アヤトはその間にタイムセールの戦利品を冷蔵庫にしまおうと、手提げカバンを引っつかみ立ち上がった。その際、麦茶を飲み続けているシュテルに声をかける

 

「そこの扇風機、よかったら使っていいよ。だいぶ空気も入れ替わったし熱風にはならないと思うから」

「こくこく・・・ぷはっ。・・・では、お言葉に甘えて・・・」

 

 シュテルが部屋の隅の扇風機の前に移動してスイッチを入れたのを確認すると、アヤトは台所に設置されている小さな冷蔵庫の前へと移動した。買ってきたものを次々としまっていき、すべてを収納し終わると満足げな表情で額を拭った。先ほどまではちきれんばかりに膨らんでいた手提げカバンは本来あるべきサイズへと戻った。

 そして、シュテルがいる部屋のほうへと戻ると・・・。

 

「あ゛~~~・・・わ゛れ゛わ゛れ゛は゛う゛ち゛ゅ゛う゛し゛ん゛た゛~~~・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・はっ!」

「・・・うん、扇風機当たってるとやっちゃうよね。わかるわかる」

「い、いえ!これは・・・その・・・!」

 

 普段の冷静な表情を崩し、顔を赤らめ慌てるシュテル。

 

「はは、大丈夫大丈夫。この前レヴィもやってたし」

「・・・?レヴィが来ていたのですか?」

「うん、ここでくつろいでたらいきなり来て『熱いから涼ませて~!』って。ここも大して涼しくないのに」

「はぁ・・・。すみません、後で言っておきます」

「はは、いいよ別に。前にいつでも遊びにおいでって言ったのは俺だし」

「・・・あなたも大概お人よしですね」

「よく言われる」

 

 アヤトは冷蔵庫に荷物をしまった際、ついでに持ってきた自分専用のコップにこれまたついでに持ってきた麦茶の入ったボトルを傾けた。冷えた茶色の液体がコップに注がれ、八分目あたりまで注いだところでボトルを戻し、コップに口をつける。

 冷えた麦茶が喉を通り過ぎ、体温の上がった体の中央を通り過ぎていくのがわかる。

 

「はぁ・・・おいしい」

「あ、そういえば・・・」

「ん?」

「クッキーを作って来たのですが。よろしければ一緒に食べませんか?」

「え、いいの?」

「あなたに食べてもらうために持ってきたのです。駄目と言うはずがありません」

 

 シュテルは自分のカバンを開くと中からかわいらしい子袋とハートマークのあしらわれたリボンでラッピングされた包みを取り出した。シュテルが封を解くと、かすかな甘い香りと共に中からさまざまな形のクッキーたちが顔を出した。

 

「ディアーチェほどではありませんが、それなりに自信作のつもりです」

「おお、おいしそう・・・いただきます」

 

 アヤトがクッキーを一枚つまみ口に放り込むと、シュテル自慢のクッキーはサクッ、と心地よい音を立てた。ほどよい甘みとかすかなバニラの香りが口の中に広がる。

 

「ん~・・・!おいしい・・・!」

「ふふ・・・お口に合ったようで何よりです」

「うん、シュテルはいいお嫁さんになるな」

 

 アヤトはこういう状況でのお決まりの台詞を言い放った。しかし、シュテルは動じることなく顔に微笑を浮かべながら追加の麦茶を自分とアヤトのコップに注いだ。

 

「残念ながらまだ貰い手がいませんので」

「はは、じゃあ俺が立候補しようかな・・・なんてね」

「・・・・・・」

 

 アヤトの言葉を聴いたシュテルが、コップを持ち上げようとした姿勢のまま静止した。

 

「・・・あ、いや、冗談だよ!ごめん、怒らせるような事言って・・・」

「い、いえ、怒ってはいません。少し驚いただけです」

「そ、そっか」

「ええ・・・」

 

 お互いに黙ってしまい、微妙な空気が漂い始める。静かになった部屋には生暖かい風が吹き込み、まだそれほど多くないはずのセミの鳴き声がやたらと大きく聞こえた。

 

「・・・あ!しまった!」

「ど、どうされましたか?」

「フェイトちゃんと約束してたんだった・・・この短時間で何忘れてるんだよ俺は!」

「フェイト・・・ああ、T&Hの妹君のことですね」

「あれ?知り合い?」

「開発元の研究所の居候と設置店の店長の娘ですから。それなりに」

「なるほど」

 

 そんな会話を繰り広げながらもアヤトは着々と出かける準備を進める。今まで開けっ放しだった窓を閉め鍵をかけ扇風機の電源を切り、念のために火の元を確認した上でデータカートリッジとブレイブホルダーをカバンに放り込む。

 

「そんなに急がなくても大丈夫ですよ」

「え・・・いや、約束が・・・」

「今頃、レヴィが新しい”おもちゃ”に夢中なはずですから」

「・・・え?それってどういう・・・」

「百聞は一見にしかずです。私たちも向かいましょう」

 

 シュテルはてきぱきとクッキーの包みを片付け、自分のカバンを持ち上げる。

 

「参りましょう。早くしないと終わってしまいます」

 

 シュテルに言われるままに家を出たアヤトだったが、何故か脳裏には水色のツインテールの少女が高笑いをしている映像が流れ続けていた。

 




【独り言】

グランツ研究所
みんながんばりすぎ
やべえ

はい、今回はシュテル回でした。
作品内での時間調整のためにもアヤトには少し時間をつぶしてもらわなければいけなかったので・・・。
あと、純粋にシュテルが書きたかった。以上

ではまた次回
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