魔法少女リリカルなのは『INNOCENT BRAVE』   作:ウマー店長

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DUEL2 疾風迅雷⑤「お人よしの腕の中」

数分かかってようやくアインスが落ち着きを取り戻した。

その数分間をアヤトはアインスをなだめるのに費やしたのに対し、はやては爆笑、シュテルはあきれたものを見る目で終始傍観に徹していた。

 

「ごめん、アヤト君・・・」

「いや、気にしてないから大丈夫だよ」

 

そして今、アヤトたちはT&Hの最上階にあるデュエルスペースに向かうエレベーターの中にいた。

アヤトの隣には先ほど自分自身がさらしてしまった痴態を思い出し、暗いオーラを漂わせているアインスが立っている。

 

「公衆の面前で、その・・・だ、抱きついたり・・・」

 

アインスは真っ赤になっている両手で顔を覆い隠し、ぶんぶんと頭を振っていた。

さっきの自分が周りからどのように見られていたか想像してしまったのだろう。

そもそも、アインスはもともと人見知り&恥ずかしがりやなのだ。

見ず知らずの人々の前で(友人とはいえ)同年代の異性に抱きつくなどもってのほかである。

“個人的には役得”などとアヤトは思っていない、断じてない。

いや、微粒子レベルでは思っていた可能性も無きにしも非ずである。

われらが主人公は健全なのだ。アインスの胸部に付いた物体が押し付けられたことに対しても何も思うところは無い。

われらが主人公はKENZENなのだから。

 

「ほらアインス~、アヤトさん困っとるで?な?」

「はい・・・アヤト君、重ね重ね申し訳ない・・・」

「いや、ホント気にしてないよ?うん、気にしてない」

「目が泳いでいますよ」

 

シュテルからのやや冷たい目線を心のソニックムーブでかわし、はやてからの好奇の目線を心のプロテクションでガードしているうちに、エレベーターは最上階へと到着した。

チン!という音と共にエレベーターのドアが開くと

 

「おぉ・・・すごい人やな~!」

 

はやての言うとおり、最上階のデュエルスペースは許容量限界なのではないかと思えるほどの人でごった返していた。

特にシュミレータールームからの熱気がすごい。

 

「飛び入り参加でもしようかと思ってたけど・・・これはシミュレーターに近づくのも難しいんじゃないか?」

 

このメンバーの中で一番高い身長のアヤトですらなのは達がプレイしているシミュレーターが見えないほどの混雑っぷりだ。

人を掻き分けて進んでいるうちに試合は終わってしまうだろう。

 

「う~ん、どうやってあそこまで行ったもんかな~?」

「・・・おや?どうやら次のエレベーターが上ってくるようですね。少し場所を空けましょう」

 

周囲を観察していたシュテルがエレベーターが上ってきていることに気がついた。

シュテルの言葉に頷いたアヤトも降りてくる人のために場所を開けようとする・・・が。

 

「場所を・・・空ける・・・?」

 

アヤトは気がついた、この階に到着してから一切移動をしていないことに。

それは何故か、周りの人ごみのせいで身動きが取れなかったからだ。

そこに新たな人が来るとどうなるか。

どうなってしまうのだろう?

・・・無常にも、先ほどアヤトたちが聞いたものと同じチン!という音と共にエレベーターの扉は開かれた。

 

「ちょ、ちょっとまってください!今場所を空けぶふぅ!」

 

なんとかしてスペースを確保しようとしたアヤトは問答無用でエレベーターから降りてきた人ごみに押しつぶされた。

 

「きゃっ!」

「シュテル!」

 

アヤトはたまたま近くにいたシュテルの腕を引き、無理やり自分の胸に抱き寄せた。

周りが見えていない大人達の集団にもみくちゃにされたらどんな怪我をするか分からない。

シュテルは大人びてはいるが実際は飛び級で日本の中学に入っただけの子供だ。

怪我をさせるわけには行かなかった。

 

(はやてちゃんとアインスさんは?)

 

シュテルを確保したアヤトは人ごみに流されながら周囲を見回す。

どうやら壁際にいたはやてはそのまま壁に張り付いて人ごみから逃れていたようだ。

こちらへ向けて『大丈夫』のジェスチャーをしていた。

 

「アインスさんは!?」

「・・・アレではないでしょうか?」

 

アヤトの胸の中でシュテルがおずおずと指を刺した先には。

 

「あ、アヤトくーん!わがあるじぃー!!」

 

人ごみに流されていくアインスの姿が見えた。

 

「・・・大丈夫・・・でしょうか?」

「まぁ・・・ある程度は鍛えてるらしいし護身術も学んでるらしいから、たぶん」

 

アインスが完全に流されていくと、人の流れも収まった。

流れが収まっただけでスペースができたわけではないが、もみくちゃになる心配は無くなった。

しかし、周囲の人は少しでも前に出てモニターを見ようと押し合いへし合いを繰り返している。

この人ごみの中、どうやってはやてやアインスと合流するかをアヤトが考えていると

 

「・・・あの、アヤトさん」

「・・・ん?」

 

胸の中のシュテルがアヤトに呼びかけた。

 

「その、そろそろ離していただいていいでしょうか?」

「え?ああ、ごめん」

 

アヤトはシュテルを抱きしめていた腕を解いた。

シュテルは会場の熱気のせいか、人ごみにまかれたせいかはアヤトには分からなかったが、若干顔を赤くしながらもアヤトの胸から離れていった。

 

「ありがとうございます、かばっていただいて」

「こっちこそ、急に引っ張ってごめんね。怪我しなかった?」

「大丈夫です、おかげさまで」

 

アヤトはシュテルに怪我が無いことを確認すると改めて周囲を見回した。

エレベーターホールからは大分離れ不幸中の幸いか、かなり前のほうへと進むことができた。

 

(ここからなら何とかなのはちゃん達のところにいけるかも・・・いや、さすがにシュテルを置いて一人で行くわけには・・・)

「行ってきて下さい」

「え?」

 

まるで思考を読まれたかのようなシュテルの発言にアヤトは驚いた。

 

「あなた一人ならシミュレーターまで行けるでょう?私はかまいませんから」

「いや、けどまたさっきみたいになったら大変だし・・・」

「大丈夫ですよ、ここまで来れば先ほどのように人の波に押されることなんてありませんし・・・」

 

そういいながら、シュテルはアヤトに自分のスマホの画面を見せた。

そこには『今どのへんにおるん?そっちのほう行くから合流しよ』というはやてからのメッセージが表示されていた。

 

「私はハヤテと合流しますから、あなたは行ってきて下さい」

「・・・わかった、いってくるよ!今度埋め合わせするから!!」

 

そう言って、アヤトは人を掻き分けながらシミュレーターへと向かっていった。

 

(別に埋め合わせなどは必要ないのですが・・・)

 

そう思いながらも、去っていくアヤトの背中を見ながら何をしてもらおうか考えるシュテルだった。

 




はい、長い前振りが終わってようやく次回からアヤトのブレイブデュエルです。
思えばプロローグ以外でまともにデュエルしていない主人公。
戦闘描写をうまくできるか不安ですががんばります!
次回は・・・一ヶ月以内にできたらいいなぁ・・・
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