魔法少女リリカルなのは『INNOCENT BRAVE』 作:ウマー店長
立ち並ぶ高層ビルの間に敷かれたコンクリート舗装の道路。
アヤトは黒いジャケットをはためかせながら市街地フィールドの一角を飛び回っていた。
「シュートッ!」
交差点を通過する瞬間、滞空させていた『メギドシューター』を発射する。
発射された弾丸は吸い込まれるようにして道路上に設置されていたBT(ブレイクターゲット)に命中する。
ガラスが割れるような音が辺りに鳴り響き、ダークマテリアルズ+αチームに得点が加算された。
「次ッ!」
『サーチャーの情報によれば次の四つ角を右だ。数は3』
あらかじめゲーム開始時に放っておいた探索魔法『フライシーカー』から送られてきた情報をブレイブフォースが読み上げる。
すずかの『プロフェッサータイプ』のような優れたレーダー機能を持たないアヤトは探索魔法を介してでなければ周囲の詳細な情報を得ることができないのだ。
しかし、一度探ることができてしまえばこちらのものである。
ブレイブフォースの情報に従い、四つ角を右に曲がった先に新たなBTが見えた。
道路上に1、そしてその先の空中に1、その少し先に1だ。
「この距離なら斬撃のほうが早いな。ブレイブフォース、スラッシュフォーム!」
『応ッ!』
アヤトの掛け声にあわせて、ブレイブフォースのヘッドが変形する。
槍のようなヘッドパーツから魔力刃が伸びるブレイブフォースの斬撃形態「スラッシュフォーム」である。
「ひとつッ!」
アヤトは地上のBTとすれ違いざまにブレイブフォースを振るう。
BTが破壊されたのを確認する間もなく、飛行のスピードを落とさないまま進路を上方へと移す。
「ふたつ!」
上昇の勢いに任せてブレイブフォースで斬り上げる。
派手な音が響き空中にBTの破片が散らばる。
アヤトはその中から大きい破片を一瞬で選び、ブレイブフォースを振るい柄の部分で撃ち出した。
まるで野球のボールのように打ち出された破片は回転しながら残りのBTに激突し、もろとも砕け散った。
「みっつ・・・っと」
得点が加算されたのを確認するとアヤトはふぅ、と息を吐き出した。
「これでこの辺のエリアは大体制覇したかな・・・?」
『そのようだな』
ブレイブフォースのコアクリスタルがピコピコと点滅する。
アヤトが今まで飛び回っていたのは背の高いビルが立ち並ぶ、上空からだと視界の悪い場所だ。
この周辺のターゲットを壊すよう指示したのはリーダーであるディアーチェである。
『聞こえておるか、いったんこちらに戻れ』
うわさをすれば、と言わんばかりのタイミングでディアーチェからアヤトに通信が入った。
「お、もう準備終わりそう?」
『うむ、巻き込まれたくなくば早々にこちらへ戻れ』
「了解」
通信を終了したアヤトはブレイブフォースをデバイスフォームに戻した後、一気に辺りのビル郡を見渡せる高さまで上昇する。
そして、仁王立ちのポーズで空に浮かんでいるディアーチェの姿を見つけると、その近くまで飛んでいく。
アヤトが戻ったことをちらりと横目で確認したディアーチェは不敵な笑みを浮かべた。
「首尾は上々か?」
「ディアーチェの剣兵の死角になるターゲットはあらかた破壊してきたよ
その分アリサちゃんたちに壊されちゃったけどね」
「かまわん、どうとでもなる数字だ」
ニィ、と口角を吊り上げ笑うディアーチェはどう見ても悪の親玉にしか見えなかった。
「さて、始めるぞ」
ディアーチェが魔導書型のデバイス『紫天の書』を掲げる。
スキルの起動音声と共にパラパラとひとりでにページがめくれ、ディアーチェの周囲に魔法陣が展開されていく。
そして、魔法陣の中から現れたのは、一振りの漆黒の剣。
ディアーチェの剣兵、射撃系スキルカード『ドゥームブリンガー』だ。
「並列展開」
ディアーチェがそう唱えると、ドゥームブリンガーが移動を始めた。
ただ移動するだけではなく、その軌跡に同じ姿の漆黒の剣を残しながら。
「・・・うわぁ」
数秒後にはアヤトとディアーチェの周りに・・・いや、仮想空間の空一面に漆黒の剣が浮かび上がっているという恐ろしい光景が広がっていた。
「・・・穿て」
レギオン・オブ・ドゥームブリンガー。
ディアーチェがそう唱えると同時にすべての剣兵が射出されていく。
ディアーチェの魔力の大部分と『ロード・オブ・グローリー』スタイルのスキルカード保持上限突破を組み合わせた広域殲滅魔法だ。
メインとなる『ドゥームブリンガー』や探知魔法の一種の『エリアサーチ』、複数のものをターゲットする『マルチロックオン』などなどいくつものスキルを組み合わせているディアーチェオリジナルである。
そして、広域殲滅の名に恥じぬその魔法は周囲のBTを一つ残さず破壊していく。
さっきまでアヤトが破壊していたBTはこの魔法の範囲外のものや死角になる場所に配置されているものだったのだ。
そして、その光景を見たアヤトは・・・。
「・・・えげつない」
そうこぼした。