魔法少女リリカルなのは『INNOCENT BRAVE』 作:ウマー店長
ヴィータの攻撃がなのはにクリーンヒットした。
派手な音を立て、先ほどからヴィータが撃ち出していた鉄球のようになのはは吹き飛ばされる。
「へっ!ゆだんたーてきってな!!逃げ足だけじゃデュエルにゃ勝てねえ」
『それを言うなら油断大敵だ』
「うっ・・・うっせー!いいんだよ大体あってるから!!」
デバイスに言葉の間違いを指摘され顔を赤くして叫ぶヴィータ。
しかし、攻撃の余波によって発生していた煙の先に人影が二人分見えたのを確認すると、再び顔を引き締めた。
「案外しぶてーなお前。それともアヤトさんに守ってもらったか?」
煙の中に居たのは当然のことだが、アヤトとなのはの二人である。
アヤトに抱きとめられたなのはは、ヴィータの攻撃を受けたことにより服がところどころ破れたり焦げたりしていた。
「ごめんなのはちゃん、フォローが間に合わなかった。大丈夫?」
「は、はい。大丈夫です・・・けど」
なのはは自分を抱きとめているアヤトの顔を見上げる。
自分を優しく抱きとめている青年の顔には諦めの表情は一切浮かんでいない。
低いランクのカードを使っているアヤトと、初心者で足手まといな自分。
そんな絶体絶命の状況のはずなのに、アヤトは何故か・・・。
(笑ってる・・・)
アヤトは、汗をかきながらもその表情に笑みを浮かべていたのだ。
彼はどんな状況になっても、楽しむことを忘れていない。
(アヤトさんは諦めてない・・・なら、私だって!)
なのははレイジングハートを握り締めた。
(このまま、何もできないまま負けるなんて・・・一方的にやられるなんて・・・そんなの!!)
「そんなのは・・・いやだ!!」
「なのはちゃん・・・?」
なのはは今まで自分を抱きとめていたアヤトの腕を離れて浮かび上がる。
レイジングハートを構えなおし、対戦相手であるヴィータの姿をキッと見つめた。
「・・・それじゃ、これでトドメだ」
満身創痍で自分に向かってくるなのはを見たヴィータは、今度こそトドメを刺そうと鉄球を呼び出す。
そんなヴィータを迎え撃つため、アヤトはブレイブフォースを構えた。
メギドシューターが起動し、三発の白銀の魔力弾が生成される。
そんな一触即発の空気の中、なのはに通信が届く。
『高町さん、ストライカーチェンジを使って』
通信の相手はフェイトだった。
対戦が終わり次第駆けつけたのだろう。映像に映るフェイトの顔には汗が浮かんでいる。
「フェイトさん・・・?ストライカーチェンジって?」
『君のデッキにはN+のカードが2枚入っているはず。その二枚を出して・・・あとはデバイスが補助してくれるっ』
「させるかっ!!」
フェイトの通信を聞いていたのか、ヴィータは呼び出していた鉄球をアイゼンで撃ちだす。
「シュートッ!」
しかし、アヤトがすかさずメギドシューターを放ち、鉄球を打ち落とした。
それだけではない、アヤトが呼び出していたシューターの数は三発。ヴィータの鉄球と接触しなかった残りの二発はそのままヴィータへ向かって飛翔していく。
「うおっと!」
慌てて回避行動を取るヴィータだが、アヤトが放ったシューターの目的はダメージを与えることではない。
「なのはちゃん!今だッ!」
「はいっ!」
そう、なのはが確実にストライカーチェンジを行うための時間稼ぎだ。
その目論見は見事成功し、なのははホルダーから二枚のカードを取り出す。
すると、取り出されたカードに呼応するように特徴的な魔法陣がなのはの背後に浮かび上がった。
「カードリリース!ノーマル二枚!!カードフュージョン!!」
なのはがコマンドを唱えると、二枚のカードは魔法陣へと吸収され、なのはの魔力の色と同じ桜色の光があふれ出した。
その中から新たなカードが一枚浮かび上がり、なのはの手の中へと収まる。
「ストライカーチェンジ・・・ドライブ、レディ!!」
なのははブレイブホルダーと新たなカードを構え、ホルダーにカードをスラッシュした。
「リライズ・アップ!!」
空間に光が満ちる。
先ほどまでなのはが着ていた海聖小学校の制服が一度光の粒子となり、それが別の服へと再構成されていく。
基本カラーは白、上半身はさっきまで着ていた制服を思わせるようなデザインで、胸にはレイジングハートのクリスタルを思わせる宝石が付いた装飾が取り付けられている。
上半身と同じようなカラーリングのスカートが広がり、両腕には紋章の付いた青い手甲がはまっている。
そして、先ほどまでは丸みを帯びたデザインのヘッドだったレイジングハートは、二股の音叉に装甲を取り付けたような外見へと変化した。
そんななのはの姿を見たヴィータは驚愕する。
「んげっ!どうりで馬鹿かてえと思ったらセイクリッドタイプかよ!しかも白とか超が付くレアカラーじゃねえか!!」
『ナノハ、最後のカードをスラッシュしてコールを』
「うんっ!スキルカード、スラッシュ!」
慌てるヴィータをよそに、なのはは初期デッキに残された最後のカードをスラッシュする。
レイジングハートの穂先に魔法陣が展開し、桜色の魔力が収束を始めた。
「やっべえ!」
ヴィータが慌ててシールドを張ったと同時にレイジングハートから桜色の魔力が解き放たれた。
「ディバイン・・・ッ!バスターッ!!」
桜色の砲撃はシールドごとヴィータを飲み込んだ。
間違いなく直撃。
Rランクのカードを使っているヴィータといえども大ダメージは避けられないだろう。
しかし。
「てめぇえええっ!!」
煙を突き破り、ヴィータがなのはへと突っ込んでくる。
ディバインバスターの余波のせいか、さっきまで頭に乗っていた帽子はどこかへ飛んでいってしまっていた。
「うそっ!まだ・・・っ!?」
ヴィータの勢いに、つい目を瞑ってしまうなのは。
見事な反撃を見せたなのはも、まだ実戦経験の乏しい初心者に変わりない。
アリサやすずかと同じようにとっさの反応ができずに居た。
だが、この場に居るのは初心者のなのはたちだけではない。
「・・・さて、そろそろストップだヴィータちゃん」
「ロケテスト中全国ランク6位の熟練者が、初プレイの初心者に乱入なんて感心しないよ」
なのはとヴィータの間に割って入った二本の杖が、ヴィータのグラーフアイゼンを弾き飛ばす。
異常に気づいたなのはが目を開けると、自分をかばうように立つ二つの影が目に入った。
「アヤトさん、フェイトさん!」
「・・・へっ!全国二位さまと三位さまのお出ましか。上等だ、そっちの初心者ヤローとまとめて・・・」
ヴィータが『初心者』という単語を認識するには数秒を要した。
そして、彼女は思わず叫ぶ。
「初心者ぁ!?」
その叫び声は、シミュレーター内部に響き渡った。
【独り言】
ようやくDUEL1にも終わりが見えてきました。
一話にどれだけ使ってんだよという話ですが、まあお付き合いください。
DUEL1が終わればオリジナルエピソードなどを絡められる予定なのでその辺にもご期待くださいな。
あと、アヤトを全国2位にするにあたり、フェイトちゃんが3位にランクダウンしております。
その辺うまく調整していきたい。