題名は未定 作:俺だよ俺
『これより、第4方面軍所属第11戦隊は輸送隊より離脱、調査任務艦隊へ合流します。』
「了解した。補給作業が終わるころには編成表を改めて送るので待っていてもらいたい。」
『了解しました。』
通信が切れる。
「輸送艦接舷完了、これより積み込み作業を開始します。」
「今回の補給部隊。護衛にしては規模が大きいような。」
「無人艦隊の増加だ。追加の部隊もついて、軍も重視しているってことだな。なんにしても、味方が多い事はいいことだ。」
「俺にとっては、補給の間はゆっくりできるしね。」
「補給部隊への挨拶が済むまでは休みはなしだぞ。司令官のお前が行かなくて、どうするタクト。」
「だから、もっとまじめな顔をだな・・・・」
タクトとレスターは補給部隊への挨拶に格納庫まで顔を出す。
シャトルのドアが目の前で開き、中から幼くも凛々しい高貴なる雰囲気を漂わせた、少女が降りてきた。
若くして国を率いることになった、歴代でも最年少で即位した女皇。シヴァ・トランスバール女皇陛下である。
タクトが目録を見るのを後回しにしたために、かなり大慌てで対応することになってしまった。
ラーク達も慌てて連絡用シャトルで集まって出迎えたのであった。
『エルシオール』が騒然としたのは言うまではないが、驚くのはこれだけでは早い補給品の項目の中に、こういった1文があったのだから
────クロノブレイクキャノン 一門と
「うむ、出迎えご苦労。ひさしいな、タクト・マイヤーズ。息災だったか?」
「そうですね。まさかシヴァ女皇陛下がいらっしゃるとは思ってもいませんでしたよ。」
「そ、そうです。なぜ、こんなところまで?いらっしゃったので?」
「なぜも何も、ルフトからの土産を運んできたからに決まっておろうが。それに気がかりなこともある・・・・」
「それは、いったい・・・・。
」
タクトとレスターがシヴァ陛下と話しているので、侍女との事務的会話はラークとウォルコットで行うことにした。
「御無沙汰しております、マイヤーズ大佐、クールダラス少佐。それにウォルコット・O・ヒューイ准将、ラーク・メンソール中佐にも御高名はかねがね耳にしております。」
「ああ、そりゃどうも・・・・」「昔のことですよ。ほっほっほ。」
「こちらが補給品の追加リストですご確認ください。」
「確かに受け取った。では、中を改めさせてもらってと・・・って!?おい!!タクト!!レスター!!受領品の中にクロノブレイクキャノンがあるぞ!!」
ラークの叫びが響き、それにタクト、レスターが続く。
「な、なんだって!?」
「クロノ・ブレイク・キャノンーーーー!!?」
「ルフトと私が話し合って、そなたが一番欲している物を持ってきた。」
「このような、過分な御心遣い。感謝いたします。」
混乱する若い衆とは違い、ウォルコットは動揺を隠して応対する。
「いや、まさか、クロノドライブキャノンが来るとは・・・」
「シャトヤーン様の了承も頂いた。さっそく取り付け作業にかかると良い。」
「りょ、了解いたしました。すまん、ラークそっちからも作業員を回してもらえないか?」
「あ、あぁ。とりあえず10人程すぐに送る!後続もすぐに用意する。シヴァ陛下自分達はこれで・・・。ウォルコット准将いいですね。」
シヴァ陛下が小声でタクトに話しかける。
「そなたに話がある。二人だけで話せる場所はあるか?」
「でしたら、シヴァ女皇陛下が先の戦いのときにお使いの部屋が開いています。」
「では、すぐにお部屋のご用意をいたします。准将失礼します。」
「後のことはお任せください・・・。」
「ウォルコット准将?」
「マイヤーズ大佐、私はエンジェル隊の前任者ですぞ。その関係上エルシオールのこともある程度は把握していますのでご心配なく。」
「准将、お願いします。」
「はい、任されましたぞ。」
「よしなにたのむぞ。・・・ときにタクトよ。その女皇陛下と言う呼び方はよせ。形式ばった言い方は我らには不要ぞ。」
「では、シヴァ様とでもお呼びしましょうか?」
「それでよい。」
「では、参ろうか。マイヤーズ」
エルシオール内、謁見の間
「懐かしいな、ここにいたのが半年前とは思えぬ。もう何年も昔のことのようだ。」
「シヴァ様も、即位されたから、」ご苦労が多かったでしょう。」
「そうでもない。ルフトが、よく補佐してくれるので、私などはすることがなくて困る。」
「ルフト先生、いえ将軍は皇国に2人といない有能な方ですから。」
「そうだな。・・・・・・・でだ。今回、私自ら来た訳だが。」
シヴァ様は先ほどまでの懐かしむ顔をやめて女皇としての真面目な顔に変わる。
「先日、そなたがルフトに送ったメッセージの一節に『今、時を超え大いなる災いが再来した。白き月よ。今こそ有限と無限を結び、古より定められた使命を果たせ』・・・・と。」
「はい、それが警告を意味するものだと言うことはわかったのですが、その言葉の持つ意味まではつかめていません。」
「あれはな、マイヤーズ。とある詩の一説なのだ。」
「・・・・詩ですか?」
「白き月には代々聖母が受け継いできた伝承がある。」
『番人たる双子、楽園を囲み輪舞を踊る。漆黒は確か、されど有限。真白は不確か、されど無限。』
「有限と無限・・・それは、あのメッセージと同じ・・・・!」
「そう。そしてさらに、この後に続く一節が・・・・。『双子は断つ者。時を越えて災厄を断つ者』『双子は待つ者。時の果ての結びを待つ者』・・・・というものだ。」
「確かあのメッセージにも、「時を越えて災いが再来した」とありました。」
「間違いなく、あのメッセージは本物だ。しかも、発信者は白き月に深く関わりのあるものに間違いない。なにしろ、その伝承は白き月の聖母しか知らんのだからな。」
「ですが、シヴァ様。なぜ聖母だけしか知らないことをシヴァ様がご存じなのですか?」
「・・・・・・あの詩は・・・・・母上が、教えてくださったのだ。」
「母上・・・・・・?」
「我が母、シャトヤーン様から教わった。先代の皇王ジェラール・トランスバールが、ひそかにシャトヤーン様との間にもうけた子供・・・・・。それが私なのだ。」
「えっ!シャトヤーン様が、シヴァ様の・・・・・!?」
「驚くのも無理はない。私も最初は驚いた。だが、同時に嬉しかった。幼いころから、母は死んだ・・・・そう言い聞かされてきた。だが、母上は生きていた。私にとっては、それだけで、もう十分なのだ。」
「そうでしたか。」
皇王と月の聖母と言う立場では親子とは公表できるはずがなかったか・・・
「ですが、シヴァ様なぜ俺にその事を・・・?」
「私はトランスバール皇国の王であると同時に月の聖母の娘なのだ。そして、そなたは、クロノブレイクキャノンを搭載できるエルシオールと、皇国最強の戦力であるエンジェル隊
を率いる司令官。つまり、皇国に何かあったときには、私は皇王としても、白き月の代表としても、そなたを頼らなくれはいけない。だから、知っておいてほしかったのだ。それと、そなたを驚かせてみたかったと言うのもある。」
「はい・・・・・・?」
「そなたはいつも、しれっとした顔をしておるからな。うむ、いいものを見せてもらった。」
「は、はは・・・・。」
真面目だ顔で冗談みたいなことを絡めて来たシヴァにタクトも普段の様な飄々とした態度ではなくぎこちない笑いになって、自分のささやかなイタズラの成功を感じて軽く笑ったが、すぐに真面目な顔に戻り話を続ける。
「ともかく、私は『白き月』を動けぬ母上に変わって、事の次第を見届ける義務があるのだから、ここへ来たのだ。」
「・・・・と言うことは、クロノブレイクキャノンを使うような事態もあり得る、と・・・・そうお考えなのですか?」
「可能性はないとは言い切れない。白き月にも関わる話となれば、何らかのロストテクノロジーが絡んでいるかもしれないからな。」
「だからといって、シヴァ様が自ら来られなくても・・・・・・。」
「国のことは信頼できるものに任せている故、問題ない。エオニア動乱の後、各省庁で改革が進んでな風遠しが良くなっからな。・・・・・それとも、私が来て迷惑だったか?」
「とんでもない、俺もエンジェル隊も大歓迎ですよ。」
「そうか、それはよかった。では、さっそく艦内を見て回りたい。行くぞ、マイヤーズ。」
「はい、お供します。」
ティーラウンジではちょうどエンジェル隊がお茶をしているところだった。
タクトがエンジェル隊の皆に声を掛けて注目が集まるのだが、シヴァはさりげなくタクトの陰になる配置に移動して、エンジェル隊の皆を驚かすつもりらしい。年相応の少年のいたずら心からか、少女の茶目っ気から来るものなのか。彼女の行動に思わず笑みがこぼれそうになったタクトであるが彼女のイタズラ成功のために表情は変えないことにした。
「ちょうどよかった。タクトに聞きたいことが・・・・・・ってシヴァ女王陛下!?」
「じゃあ、やっぱり本当でしたのね。シヴァ陛下がいらしたと言う噂は。」
「でも、どうしてこちらにいらしたんですか?」
「ちょうど、タクトさんにお聞きしようと話していたところです。」
「おひさしぶりです~」
シヴァ陛下とエンジェル隊の面々は気兼ねなく会話を楽しんだ。ミルフィーなどは結構フランクな軽い感じであった。
「・・・・ん?そなたは、見かけぬ顔だが・・・・。」
シヴァ陛下の視線を受けたちとせはガチガチに固まって緊張していた。
「は、はい!このたびエンジェル隊に配属されました烏丸ちとせ少尉であります。」
「そんなに、かしこまらずともよい。皆と同じように振舞ってくれればよい。」
「いえ、ですが、その、あの・・・・!も、もったいないお言葉、恐縮です!で、ですが!シヴァ女皇陛下のお言葉とあらば、私、普通に・・・・しまっす!!・・・・・・・きゅう~」
ちとせが・・・ふつうに、倒れた。
「・・・・・マイヤーズ、あの烏丸とか言う隊員は、本当に大丈夫なのか?」
他のエンジェル隊メンバーに介抱されるちとせを見てシヴァ陛下は少し心配そうに小声でタクトにシヴァ陛下が尋ねる。「ふつうは、ああなりますよ」と言う言葉を飲み込んでタクトは答える。
「彼女はもう立派なエンジェル隊の仲間ですよ。」
間違いなく本心からの言葉であったし、ちとせもすぐに復活して会話に戻ってくる。
「いえ、私なんて、まだまだ未熟です。」
言葉こそ、弱めの言葉だがすでに緊張してガチガチしている様子はなく。普通に会話をしている。
「タクトさんの言う通りよ。ちとせのおかげで、助かってるもん。」
「タクトもアタシもアンタが大事な仲間だって思ってるわよ。」
ミルフィーやランファの言葉を聞いてシヴァは
「うむ、すでにお互いに信頼を置ける友になっているのだな。烏丸少尉、少々から買い過ぎた。エルシオールには烏丸少尉の様な反応をしてくれるものがおらなかったのでな。すまんな許せ。」
「もったいない、お言葉でございます!」
ちょっとしたハプニングはあったもののシヴァ陛下とみんなの再開は上手く言った様である。
「ミルフィーユ・桜庭はそなたを良く補佐しているようだな。」
「はい。いつも元気で明るくて、ミルフィーの笑顔を見ると疲れなんてどっかに行っちゃいますよ。」
「幸せそうだな。あの者の話をしている時の、そなたの顔はとても幸せそうだ。」
「い、いやまぁ、おかげさまで。あはは・・・・・。」
タクトに淡い恋心を抱いていた彼女はどこかで自分の入り込める余地が無いかを探していたが、そう言ったものが全くない事を理解して、我が儘なことと思いながらも少し寂しい気持ちになった。
「・・・・・・そなたが幸せなら、私もうれしい。」
シヴァ陛下が小声で小さくつぶやく。彼が幸せなのは自分も確かにうれしいのだが目の内にたまり始めた涙を見せるわけにもいかない。だから、気恥ずかしさと共に歩き出す。「こんな姿を見せるのはカッコ悪いし」と思いながら・・・
「はい?何か、おっしゃいましたか?」
「いや、なんでもない。いくぞ、マイヤーズ。」
「ちょっと!早いですよ!どうしたんですか?シヴァ様!」
「なんでもない。・・・・なんでもないと言っておろうが!」
シヴァは自分の気持ちを胸にしまい込み、速足で歩きだす。自分の初恋が終わったことを理解しながら・・・・
おおよそ、原作通りの流れですが原作より若干援軍が多いです。