混沌重層世界-CHAOS REGION-   作:揺れる天秤

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第13話 中枢機関-陰陽-

 日本の中枢、永田町。

 国会議事堂の遥か地下には神世の時代に建築されたとされる特殊な空間があるとされていた。

 これは日本の天皇によって代々管理されてきた場所で、一説には『神様の住まう場所』とも称されている場所である。

 

 だが、今もそこは日本という国を守護する者達の集う大いなる場所へと生まれ変わっていた。

 その組織の名は───陰陽機関(おんようきかん)

 

「ただいま帰った」

「おかえりなさい、所長!」

 

 陰陽機関の中枢空間、白衣の職員達がそこかしこを歩いているそこに所長──阿頼耶識ことナハト・Y・ナハトヴァールがナイアルラトホテップとの戦いの傷を癒して帰ってきた。

 

「所長、今回は療養長かったですね?」

「ナイアルラトホテップとやり合うことになるとは思ってなかった。まあ、そっちはいい。実験はどうなっている?」

「はい。英霊召還(サーヴァントしょうかん)をベースに組み上げた術式の完成度はようやく90%を超えました。これであれば失われた叡智の召還も可能ではないかと」

「そう…。ナイアルラトホテップが境界を破壊したことで結果的にはこちらの召還システムの完成が早まるなんて…。因果なものだ…」

「どうします?とりあえず、一度試運転してみますか?成功するかはまだ五分でしょうが…」

「そう、だな…。何はともあれまずは動かそう。成功・失敗に関わらず、世界は大きな変革を迎えることができる」

「わかりました!みんな、準備に移れ!」

 

 大型の機械に膨大な電力の供給が始まる。

 静かに動いていた機械は次第に活発な機能を発揮して空間を揺るがすほどの音が響き渡る。

 

(召喚に成功したとして、その者が本当に役に立つ存在なのかどうか…。でも、それは召喚してみないことには何もわからない。自分の運とやらを信じてみよう…)

 

 機械はいよいよ最終段階に入ったのか、稲光のような電光が迸る。

 雷が落ちたような轟音とともに機械から水蒸気が吐き出され、機械の前には二人の少女が座り込んでいた。

 

「実験、成功…か」

「彼女達が召喚された者、なんですか?どう見ても中学生ぐらいにしか──」

「召喚システムによって召喚された以上、何らかの力を有しているのは間違いない。私から話しかけてみる」

「気をつけてくださいよ、所長」

「大丈夫」

 

 ナハトは互いを見合って固まっている二人の少女の前まで歩いていくと片膝を立ててしゃがみこむ。

 

「ようこそ、混沌重層世界『地球』へ。私はナハト。よければ、名前を教えてはくれないだろうか…?」

 

 少女達は警戒していたようだが、勝ち気な方の少女がもう一人を背に庇いながら──

 

「私は土井。土井球子。こっちは伊予島杏」

「はじめまして。君達は、どんな存在なのか理解はあるかい?」

「人間だけど?」

「そうではあるがそうじゃない。何か、力を有してはいないかな?」

「『勇者』のことか?」

「…『勇者』。それが、力の総称か。君、彼女達に良き部屋を一つと美味しい食事を。風呂なども用意しておくとなお良い」

「わ、わかりました!」

 

 一人の研究員が慌てて部屋から出ていく。それを見送ったナハトは二人に向き直る。

 

「いろいろと混乱していることもあるだろうし、何が起きたのかすらわからないだろうけれど…。安心できるのは私達は君達に危害を加えるつもりは微塵もない。助力を乞いたいとも思うが今すぐには無理だともわかっている。だから、今はこの場所で英気を養ってくれ。いずれ、より詳しく説明に行こう」

「あっ…」

 

 ナハトはしゃべるだけしゃべると一人部屋から出ていった。

 それを見送った二人は呆然としていたのだが…。

 

「球子様、杏様。お部屋の用意ができましたゆえ、ご案内致します」

「た、球子、様?」

「杏様って…」

「恭しいのは苦手でございましょうか?ですが、お二方は我等の初めての召喚成功の方々。どうか、我等の謝辞は受け取っていただきたく存じ上げ──」

「わ、わかった。わかりました!だから、とりあえず部屋ってのに案内してくれる?」

「これは、気が効きませんで。では、お二方をご案内致します」

 

 二人を先導するように歩きだした研究員についていく。

 

「球っち先輩、大丈夫なんですか?」

「いろいろわからないことが多いのはそうだけど今はついていくしかない。何もわからないのにどうにかするのは良くねーと思う」

「わかった。そういうことならとりあえず様子見だね?」

 

 二人は静かについていくが…。

 

「何が、起きたんだろうね…?」

「それもきっと説明してくれるだろうし、今は部屋に行って休もう」

「もう、球っち先輩はこういうときでも楽観的だよね?」

「私がシリアスしてたらそれはそれで変だと思うだろ?」

「まあ、そうかな?」

「いい度胸だよな杏は!」

 

 ヘッドロックをかけながらも球子はしっかりと研究員についていく。

 何が待ち構えているかまでは自分にもわからない。

 でも、きっとこれは必要なこと。

 そう自分を納得させて球子は杏を引きずりながら歩いていく。

 

 

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