機動戦士Dガンダム~悪魔の兵器の物語~   作:クニクニ

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UA20万ありがとうございます。


第36話 日常と異常

「ううん・・・?」

 

ベッドで寝ていた隆司は眠りから徐々に覚めるのを感じ、閉じていた目を開けるとそこは先程まで寝ていた部屋ではなく、真っ白な空間が目の前に広がっており、俺はその空間の地べたで眠っていた。

 

壁は見当たらずどこまでも続く白い空間だ。

 

「こ、ここは・・・?」

 

俺は確か、デビルガンダム、じゃなくてディナと話していて疲労がたまっていたから部屋で寝ていたはず。

 

なら、何で俺はここにいるんだ?

 

「「「待っていたぞ、『・・・』者よ。」」」

 

突然声が響き渡り辺りを見回すと、白い空間にいつの間にいたのか燃え盛る青い炎で形成されている人物がいた。

 

「だ、誰だ!?」

 

俺は目の前にいる人物に問いかけるが目の前の炎の人物は答えず話を続ける。

 

「「「選択が迫っている。」」」

 

目の前にいるものは声が老若男女と様々な声が何重にも重なっており、どんな人物なのか判別がつかない。

 

「「「まもなく第2の封印が解かれる。」」」

 

「「「第2の封印を解いたとき、さらにお前に幾多の試練が降りかかるだろう。」」」

 

「「「そして乗り越えたときお前の選択で『・・・』が始まる。」」」

 

「選択って何の事だ?

それに何なんだここは、お前は一体・・・。」

 

炎の人物の言葉は所々が途切れており聞き取りにくく、さらにここが何なのかと俺は炎の人物に問おうとするが、いつのまにか目の前にまで炎の人物が顔に当たりそうな距離にまで迫ってきており、炎の人物の目が俺の目をじっと見つめる。

炎の人物の目はどこまでも底のない白い空洞が俺の顔を覗きこみ、俺の意識が空洞に飲み込まれそうな感覚に陥りそうになる。

 

「「「お前はいずれ知る。」」」

 

「「「お前は自らここまで来た。」」」

 

「「「もう逃れることはできない。」」」

 

「「「希望か、絶望か、」」」

 

「「「お前の選んだ道の先でお前を待とう。」」」

 

「「「『・・・』よ。その時・・・お前は・・・『・・・』に・・・な・・・。」」」

 

炎の人物が次々と言葉を並べてくるが、俺はそれを最後についに意識は持たなくなり、俺のそのまま意識は暗闇へと落ちた。

 

 

 

 

 

----------------------

 

 

 

「ううん・・・?」

 

ベッドで寝ていた隆司は重い瞼を開けて眠りから徐々に覚めるのを感じ、眠りから覚める。

 

「はっ!?」

 

俺はさっきの見た光景を思い出して、勢いよくベッドから起き上がる。

 

ベッドから起き上がった光景は眠る前に見たミネルバの部屋で間違いはなかった。

 

(なんだっんださっきのは?

よほど疲れていたのか?

確か、研究所で色々としつつ、部屋に戻るとティナにそっくりのデビルガンダムがいて、話を聞いていると色々と思考が追い付かなくなって寝たんだっけ?

もしかして、あれは夢だったのかな?)

 

だが夢にしては現実味のある夢だった。

まるで夢でなにかを伝えているかのように。

だが、あれがなんなのかわからない。

 

そもそもあんなのは見たこともない。

 

青い炎の人物、そして第2の封印。

さらにはこの先に選択が待っている?

 

ダメだ、分からない。

 

この先の展開を知っている俺でも炎の人物の伝えた意味がまるで分からない。

 

「おはようございます。マスター。」

 

頭を抱えて悩んでいると、俺に声を掛けてくれたので声をする方向を見るとやはり寝る前と何の代わりもしていないディナがベットの横で立っていた。

 

(これも、夢じゃなかったかぁ。)

 

ディナのことは一度考えることをやめて寝たが、起きてみれば夢ではなく現実だった為、昨日起こったことはすべて夢ではないと証明された。

 

「ああ、おはようディナ。

あれから俺はどれぐらい寝てた?」

 

「3時間20分と35秒です。」

 

(大体三時間半といったところか。

というか細かいな。)

 

だけど少しでも寝たお陰か体は調子がよくなったので、とりあえず、さっきの夢のことはあとに考えよう。

 

疲れは取れたので俺はベッドから降りる。

 

「よいしょっと、それじゃあ少し出掛けるよ。」

 

「どちらへ?」

 

「うーん、特にこれといった用事はないが・・・、そうだ散歩ついでに東方不敗の所へ行こうか。」

 

まだ、東方不敗とディナってまだ顔合わせしてないだろうから、散歩ついでに紹介するとしようかな。

 

「お供します。」

 

「よしっ、それじゃあ行くか。」

 

俺はディナを連れ添い部屋をあとにする。

 

ミネルバ艦内を歩いていると時々ザフト兵と遭遇するが決まって道を譲ってくれたりするのだが、どうも近寄りがたい雰囲気をだしている。

 

まあ、仮面なんか被っている時点で怪しいのだから仕方があるまい。

 

しかし、今回はいつもと違ってザフト兵と出会うと何故か魂でも抜けているのかと思うかのようにぼーっとしてこちらを見つめてくる。

 

正確には俺ではなくおれに付き添っているディナにだが。

 

まあ、気持ちはわかる。

ディナはティナになかった言葉では表しづらい妖艶というような雰囲気をだしており見とれてしまう気持ちはわかる。

 

まあ、そんな感じて俺に対してあからさまに距離をおいている人に遭遇することはなかったが、ディナがいなかったらいつも通りなんだろうなぁ、っと俺は心の中で若干複雑だなと感じるのであった。

 

 

ガシャアアアアン

 

そんな中、歩いている途中で何か物音がし、歩いていた足を止めた。

 

「ん?何の音だ今の?」

 

「あそこの医務室からです。」

 

ディナは指す道の先には医務室があり、そこから音がしたようだ。

 

「行ってみよう。」

 

「かしこまりました。」

 

俺は不審な音が聞こえた医務室へと再び歩を進めた。

 

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~ミネルバ艦内 医務室~

 

ミネルバの艦内にある医務室にて先程の戦いで敵パイロットを捕獲して捕虜になったステラがベットの上で横たわって拘束されており、シン、レイ、カミーユ、風見博士、理恵の5人がステラと共にいた。

 

「あ・・・ああ・・・。」

 

しかし、ステラは激しく錯乱しており、精神的に弱っている状態だった。

彼女は強化人間による副作用により、専用の薬物を定期的に服用しないと起こる症状のせいで暴れるため彼女の体に拘束具を着けていた。

 

「怖い・・・怖いよ、ネオ!」

 

「心配しなくても大丈夫だよ。もう何も君を怖がらせはしないんだから。」

 

「いやあああああああ!?」

 

シンはステラの手を取ろうとするが、ステラはシンのことを分かっていないのか、シンの手を振り払う。

 

「ステラ!?俺だよ、 シンだよ!覚えてないのか?」

 

「お前のことなんか知らない!」

 

ステラは鋭い目付きでシンを睨み、それが本当にシンのことを覚えてはいない証明でもあった。

 

「そんな・・・。」

 

シンはステラに覚えられていないことにショックだったのか壁にもたれ掛かって呆然とする。

 

「ネオ・・・ネオ、どこ?ここ怖い・・・ステラ・・・怖い・・・あああああああ!?。」

 

ステラは何もかもを拒絶するかのように再び暴れ始める。

 

「いかん!バイタルが乱れている!」

 

次第にステラは縛られているにもかかわらず体を必死にもがき始める。

精神的恐怖によるものなのかステラのバイタルサインが乱れ始め、さらにこのままにしてしまえば拘束具で自分の体を傷つけてしまう可能性があった。

 

「いかん、彼女を抑えるんだ!」 

 

「ステラ、落ち着いて!」

 

しかし、ステラの力は通常の人とは違い、

力があるため、拘束具の根本が嫌な音を立て、拘束具の根本の部分が千切れ左腕が自由になってしまった。

 

「まずい!?拘束具が!」

 

風見博士はすぐさま左腕を押さえようとするが、激しく暴れているため押さえつけるのに精一杯だった。

そんな状況でようやくシンはすぐに意識を戻してステラに駆け寄っては暴れるステラの体を抑える。

 

「大丈夫だよステラ。俺がいる・・・俺がいるから・・・。」

 

「ううう、あああああああ!?」 

 

(駄目なのか・・・。俺はステラを守れないのか。)

 

 

「大丈夫ですか!?」

 

 

ステラを押さえている中、ドアが開きそこから仮面を被った人物ジョーカーが現れる。

 

「おお、ジョーカー君か。すまないが手伝ってくれないか。」

 

ステラを数人で押さえているが強化人間な上、拒絶反応が強いせいかステラが暴れるのがはとまらない為、

風見博士はジョーカに助力を求める。

 

「わかりました。」

 

ジョーカーはすぐさま理解したのかステラのもとに歩みよると、ジョーカーは両手を広げてはステラの頭を包み込み、安心させるかのように穏やかな声で囁く。

 

「よーしよし。落ち着いて。」

 

しかし、ステラはジョーカーに抱かれてもなお暴れるのは止まらず彼女の自由になった左腕で、ジョーカーを激しく殴ったり叩いたりと抵抗しつつジタバタと暴れてるときジョーカーが抱き締めているせいではっきりと見えなかったがステラの胸が一瞬だけ淡く光ったような気がした。

 

「い、いやあぁぁぁ・・・。ううっ」

 

そしてステラに変化が現れ、激しく暴れていたのがおとなしくなり、ステラはゆっくりと眠りについたのであった。

 

「ふぅ、どうやら落ち着いたようだな。」

 

風見博士は安心したのかほっと一息につく。

 

「しかし、どうやって止めたんだ?」

 

「まぁ、ちょっとした特技といった所ですかね。」

 

「う~む、もしかしたら彼女にとっては何か安心できる何かがあったのかもしれないな。

さて、気になるところだが、彼女が再び暴れないようにきっちりと拘束具を着けなくては。

幸い彼女もぐっすり眠っているからすぐには起きないだろう。

ああ、それとお前さん達、先の戦闘から休んでいないだろうから疲れているだろう。

あとは我々に任せて休むといい。」

 

先程までシンやレイはステラたちと戦ってから休んでもいないため、風見博士は休むように伝える。

 

「わかりました。

シン、彼女のことは任せておいてすこし部屋で休むといい。あとはジョーカーと風見博士達が何とかしてくれるだろう。」

 

「レイ。」

 

「お前は戦闘が終わってからずっと付きっきりだろう。

それにここにずっといても体に障る。」

 

レイはシンのことを思ってか、シンに部屋に戻るように伝える。

ステラが収容されてから何時間も付っきりの状態だった為、彼には休息が必要だろうと判断した為である。

 

「あ、ああ。そうだな少し部屋に戻るよ。」

 

シンはなぜか少しだけ胸の奥がモヤモヤとして気分になっておりこれが何なのかはわからなかったが、いまはステラが安心して眠っていることにシンは少しながら安堵して部屋を後にする。

 

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シン達が部屋を後にして部屋には俺と風見博士、理恵の3人だけとなった。

 

「それにしてもその子お前さんにしっかりとしがみついているの。」

 

風見博士の言うとおり、ステラは俺の服を掴みながらで眠っており、未だに手を緩めない。

 

「気に入られたのですかね?でもこうしていると彼女もパイロットとは思えないですね。」

 

「そうだな。それにこのZEUTHのパイロットも若い者が多い。年配者としては複雑だよ。」

 

「そうですね・・・。」

 

このZEUTHの中にいるパイロット達はまだ20歳にもいっていない少年達が多数いる。

正規のパイロットもいるが戦争に巻き込まれてパイロットになった子もいる。

 

「君も聞いていると思うが彼女も強化人間だ。

しかも、つい先日調査に向かった研究所。

その子もあの研究所の出身のようだ。

これがそのリストだよ。」

 

風見博士から被検体のリストが映されているタブレットを渡される。

 

そのリストをスライドさせるとその中にステラの他にあの研究所で被検体となった人が映っており、

中には俺が先日埋めてあげた子供達のリストもあった。

 

「・・・。」

 

「そういえばさっきドタバタとしていたから気が付かなかったが、そこにいる彼女は初めて見るようだが?」

 

俺がタブレットを見ているとき、風見博士はようやく気が付いたのか俺に付き添っていたディナに気付く。

 

「ええっと、彼女はディナ。

自分の仲間で、先日に・・・研究所で合流しました。」

 

もちろん嘘である。

ディナが『元ガンダムです』なんていったところで信じてはくれないだろう。

 

「なるほど、おっといかん。もうこんな時間か。」

 

風見博士は時計を見ていると、すでに時計の針は夜の9時を指していた。

 

「では、申し訳ないがこれから急いでグラディス艦長に研究所の資料を渡しに行くので、

その子のことを頼んでも良いかな?」

 

「ええ、大丈夫ですよ。」

 

「では、すまんが頼んだよ。」

 

風見博士と理恵は医務室をあとにし、医務室には俺とディナとステラの三人だけになった。

 

----------------------

 

いやぁ、しかし何が起こるかわからないものだな。

 

物音が気になって見に来たらまさかのステラが暴れているときた。

 

風見博士が手伝ってほしいと言われたので、すぐさま手伝うことになったのだが、正直どうすればいいのかわからずテンパっており、とにかく頭を撫でれば落ち着くように囁くことにした。

 

さらに効果があるか分からないけど、ステラに回復能力を使ってみたのだが効果が出たのかステラは暴れるのをやめて眠りについたので効果はどうやらあったようだ。

 

いやぁ、それにしてもこの力。

精神的にも作用するとは驚きだな。

 

にしても、ステラが俺の服を握ったままなのでベッドから動くことができない。

 

握っているてをはずせるか試してみるがびくともしない。

さ、さすがエクステンデッド。

握る力も強化されてやがるぜ。

 

「ジョーカー殿。」

 

俺がステラの手と激闘をしているとき、部屋の天井から声が聞こえ、こんなことをするのは一人しか居ないと思いその人物の名を呼ぶ。

 

「東方不敗か。」

 

「はっ。」

 

天井の蓋が外れ、降り立ったのは部下でもある東方不敗だった。

 

しかし、本当に忍者だよな。

いや、東方不敗は格闘家だから違うか。

だが来てくれたので呼ぶ手間が省けてよかった。

 

「ちょうど、よかった。

東方不敗にちょっと話があってな。」

 

「儂になにかご用で?」

 

「ああ、彼女の事をまだ紹介していなかったと思ってな。せっかくだから紹介しようと思って。」

 

「・・・ああ、彼女のことでしたら先程ジョーカー殿が寝ている間にしておきましたぞ。」

 

「ん?そうなのか?」

(いつのまに・・・。)

 

「はい、東方不敗の言うとおり尋ねてきたのでお相手(・・・)しておりました。」

 

「そっか、それじゃあ要らない世話だったか。」

 

「いえ、お心遣い感謝します。」

 

(となると、本来の目的の紹介は終わってしまったから特にやることがなくなったな。

それならDG軍団の仲間が集まったことだし何かお喋りでもしようかな。)

(仲間ではないのが一人寝ているが。まあ大丈夫だろう。)

 

(それなら飲み物でも用意しないとな、でもここには飲み物はおいてないしな。どこかで用意してこないと。

でもステラが服に手を・・・あっ、上に着てる服を脱げばいいじゃん。)

 

俺はコートをステラが起きないように巧みに脱ぐ。

コートは未だにステラの手の中だが動けるようになったので問題はなし。

 

「それじゃあ、何か飲み物でも取りに行くか。」

 

「お供致します。」

 

俺が飲み物を取りに行こうとすると、ディナが一緒に付いてこようとするがせっかく東方不敗がいるのだから、二人で仲良く話せるように気を使ってやらないと。

うん、俺って気が効いてるな。

 

「ああ、いいよ。

二人はステラのことを見ててくれるかい。」

 

「・・・畏まりました。」

 

「承知。」

 

俺はそういってベットから立ち上がり部屋を後にした。

 

----------------------

 

ジョーカーが部屋を後にしたあと、部屋に残ったディナ達は・・・。

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

仲がいい・・・とは言いずらい雰囲気が溢れ出ていた。

 

「これもお主の策かの、ディナよ?」

 

「いいえ、私は特になにも伝えてはおりません。

それに私たちの事を嗅ぎ回っているならそれもご存じでは?」

 

「やはり、気付いておったか。」

 

「当然です。

最初の頃のあなたは特に何もしていませんでしたが、ZEUTHで合流を果たしてからこちらを嗅ぎ回っていることも。」

 

「・・・さすが、というべきかの。

では聞きたいことがある。あの男ジョーカー殿の正体は一体何者なのだ?」

 

「わたしがマスターの事を私が教えると思って?」

 

「いいや、お主の事だ。

喋るつもりは毛頭ないのだろう?」

 

「当然です。」

 

「やはりな・・・。」

 

東方不敗はディナの返事が予想通りと思ってたような顔をしていると同時に何か別の思いを感じたがディナにはそれがわからない。

 

「東方不敗、あなたが何かを企んで実行するのは好きにして構いませんが、あなたは何故このような行為を?」

 

「・・・仮面や素性を隠すのは分かる。

だが儂には分からんものが一つある。

最初にジョーカー殿に出会ったときは再生計画の事を聞き、その為に尽くそうと考えた。

だが、共にいるにつれて疑問に思ったのだ。

ジョーカー殿の力はもちろんの事、知識においてもそうだ。まるでジョーカー殿にはこれから起こる未来が手に取るようにわかっているかのように。

儂はそれが恐ろしく見えるのだ。

何もかもを見透かされているのではないかと。」

 

「確かにマスターなら未来が見えていても不思議ではありません。

ですがそれは重要ですか?」

 

「何・・・?」

 

「人間とは、自分の目的のために生きていると私は理解しています。

あなたはその目的の為にマスターを利用しているのでは?

貴方の事を見られることで何か不都合があるならまだしも、貴方にはそんな不都合があるのですか?」

 

東方不敗の目的、

そう、東方不敗はたった一つのことを果たすために生きているのだから。

 

「ふっ、ふははははは!」

 

「・・・?」

 

「まさか機械にそういわれるとは思わなかったぞ!」

 

ディナが元々はデビルガンダムという一体の機械にも関わらず、まるで人間かのように考えを、そしてまだ未熟であるが感情を持っていることに驚きつつも東方不敗は笑いだす。

 

「ふっ、だがお陰で吹っ切れたぞ。」

 

「ディナよ、儂の目的は地球の再生、儂はその為に今を生きている。

それを成せるデビルガンダム・・・そしてジョーカー殿に尽くそう。」

 

「わかりました。

では私も東方不敗の目的のために、貴方を利用しましょう。」

 

ディナは隠しもせず東方不敗を利用すると口にする。

 

しかし東方不敗も元々は利用していたのだ。

むしろ隠さず堂々と喋るほうが好感が持てた。

 

「うむ、ではこれから・・・うっ、ゴホゴホッ!?」

 

東方不敗はディナと喋っている途中、咳き込みはじめ、

ディナはすぐさまにその異変に気付く。

 

「・・・!

東方不敗、貴方の体ですが・・・」

 

ディナが東方不敗の体について喋ろうとするが東方不敗がそれを言わせないかのように手を出す。

 

「確かにお主の細胞を使えば儂は長くいきられるだろう。

だが、儂は最後まで己の命で生きることこそが人間だと思っておる。」

 

「・・・理解できません。」

 

「いずれお主にも分かる。

人間とはどういう生き物なのか。」

 

「人間・・・とは。」

 

「お主はまだ生まれて間もないのだろう?

ならば、時が経てば分かる。」

 

「・・・。」

 

ディナは考える。

人間は欲深い生き物なのだと。

 

だが、東方不敗の言葉を理解しようと頭脳が機械のように高速で処理しようとするが理解できず、ただ延々と『人間とは』を繰り返していた。

 

「戻ったぞ。」

 

そんな中、扉が開き飲み物を取りに行っていたジョーカーが帰って来た。

 

「ん?、何かあったのか?」

 

ジョーカーは帰ってきたとき何かを考えているディナに気付いた。

 

「少しばかり儂がディナに与えた課題を考えておるのですよ。」

 

「課題?」

 

「ええ、ディナに必要なことですのでしばらくそっとしておくとよいですぞ。」

 

「あ、ああ。そうだな?」

 

なんだかよく分からないが、まあ大丈夫だろう。

 

そう思って飲み物を渡そうとするが・・・。

 

『各員、ブリッジへの集合をお願いします。!繰り返す・・・。』

 

突然、メイリンの声による放送が鳴り響き、ブリッチへの集合を促される。

 

「何かあったのか?」

 

「非常事態ではなさそうですな。」

 

「そうだな、とにかく行くか。」

 

「かしこまりました。」

 

(うぉ!?ビックリした!)

 

いつの間にか横に現れたディナにあまりの驚きで声には出さなかったが内心では驚き、心臓がバクバクと音を立てる。

 

「も、もういいのか?」

 

「はい、答えはいずれ出るようですので、ブリッジの集合が優先と判断しました。

ブリッジへ向かいますか?」

 

「ああ、そうだな。

けど、ステラのことだが・・・。」

 

「それでしたら、儂が残りましょう。」

 

ステラを一人にして出掛けるのはまずいなと思い、どうしようかと考えたとき、東方不敗が自ら名乗り上げた。

 

「いいのか?」

 

「もちろんです。

儂が行ったところでなにもすることはないでしょうしな。はははは。」

 

東方不敗は俺に心配かけないようにか笑って送り出してくれる。

 

「すまない。

では頼んだよ。」

 

そして、俺とディナはミネルバへのブリッジへと向かうのであった。

 

 

 

 

医務室に残った東方不敗はいまだに眠り続けているステラに目を向ける。

 

「・・・、お主はこの世界をどう思っておるのだ?」

 

東方不敗はまるでステラに問うかのように話すが、ステラは何も変わらず、ただ静かに寝息を立てていた。

 

「・・・。」

 

それから東方不敗は何も言わず、何もせず、ただじっとステラをずっと見守っていた。

 

----------------------

 

俺とディナは二人でミネルバのブリッジへ向かうとすでに他の人たちが来ていた。

 

「お、ジョーカーも来たみたいだな。」

 

俺たちが入ってきたことに甲児くんが気さくに挨拶を交わしてくれる。

 

甲児くんは仮面を被っている俺でも分け隔てず喋ってくるのでほんと良い奴だよ。

 

「ん?ジョーカー。彼女は誰だ?」

 

「ああ、彼女はディナ。俺の仲間だ。

別れて行動していたんだが、研究所で合流した。」

 

甲児くんはディナの顔を見ると少し赤くなっているのが分かる。

 

(あっ、これはあれだな。甲児くんの悪い癖。

ということはあれが見れるな。)

 

「えっと、どうも俺は兜甲児っていいます。」

 

「もう、甲児君ったら!

また女の人にデレデレしちゃって!」

 

甲児くんがディナにデレデレしているとさやかさんが嫉妬で甲児くんの耳を引っ張る。

 

「あいたたた!?

ちょっ、さやかさん痛いって!?」

 

はい、さやかさんの甲児くんへの嫉妬を生で見れて(?)ファンとしては御馳走様です。ありがとうございます。

 

「さて、何人かは諸事情で来ていないですが、集まったので話をさせていただきます。」

 

どうやら俺が最後だったらしく、タリア艦長が話を始める。

 

「つい先程、タンパグンダ基地による補給が完了したため、明朝に我々ZEUTHはザフト軍基地ジブラルタルへ向かいます。」

 

「はぁ~、敵がまたやって来るんじゃないかと思ったぜ。」

 

「甲児くん。まだジブラルタルに向かうんだから気を抜かないの。」

 

どうやら補給が終わったらしく明日には出発するようだ。

 

(あれ?そういえばアサキムの襲撃は?)

 

 

本来の話で現れるはずのアサキムとの戦闘がないことに俺は心配するが、そんな未来の事を知らないZEUTHは明日の出発の準備を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

----------------------

 

時は遡り・・・。

ディナが東方不敗に忠告した後の話。

 

 

ジョーカーこと隆司がベットで寝ているとき、

デビルガンダムことディナは隆司の眠るベットの横で立っており、これが普通なら軽く心霊現象になる光景であるがディナの外見の美しさもあってか、絵にもなるような光景であった。

 

しかし、ディナは何かに気がついたらしく周りをキョロキョロと見回す。

 

(・・・どうやら外にネズミがいるみたいですね。)

 

(東方不敗とは違う人物のようですがマスターへの危険要素は排除しときましよう。)

 

ディナは再び部屋を後にして通路を進んだ。

 

「おや、これはこれはかわいいお嬢さん。」

 

通路を歩いていると一人の老人、ジエー・ベイベルと出くわした。

 

「この基地の周りにを囲んでいる部隊。

あなた方の仲間では?」

 

「ん、何故分かったのかな~。」

 

「貴方がここをうろうろしているのと、その態度でわかります。」

 

「ありゃー、そこまでわかっていたのかぁー。」

 

「そんな風に姿を隠していても私には無意味です。」

 

「ふーん、どうやら君の事を甘く見すぎていたようだね。」

 

ジエー・ベイベルの体がノイズが走ったかのように所々形が代わり、先程までの老人ではなく若い男性へと姿が変わった。

 

「それが貴方の姿ですか。」

 

「そうだよ。これがジエー・ベイベルことジ・エーデル・ベルナルだよ、すごいでしょ。」

 

「いえ、興味がありません。」

 

「えー、君ってつまんない奴だね。

まあ、僕としては君よりセツコのほうが重要だからね。君はおまけさ。」

 

「セツコ・オハラですか。」

 

「そっ!

よく知ってるね。ご褒美に僕をいたぶる権利をあげようか?」

 

「あなたの言っている意味がわからないので、必要ありません。」

 

「残念。

まっ、いいさ。

この後、彼女の機体の改良もしないといけないし。」

 

「それで、その後は我々と戦うと?」

 

「ん~、そのつもりだったけど、やっばやめた。

君が戦うとあんまり面白くなくなりそうだから。

セツコをいじるだけで済ませる。」

 

「では今は敵対はしないと。」

 

「僕は君の味方でもないし、敵でもない。

あっ、でも敵になったらそれはそれで面白そうだね。

デビルガンダムがこの世界にいることに驚いたけど、まあそれも可能性の一つだしね。

でもいま興味があるのはあのジョーカーって男。

彼のこと知ろうとすると何でか邪魔されるんだよね。

何でかな~。

ねぇ、彼のこと調べさせてくれない?」

 

「私が許可すると思いで?」

 

ディナは表情は変わってはいないものの誰から見ても殺す気満々の雰囲気を出しており、スカートや服の袖などからは触手を生やして攻撃は万端の状態だった。

 

「冗談だよ冗談。

まったく冗談が通じないな~。」

 

ジ・エーデルはやれやれっと言っているかのような態度でディナを煽る。

 

「では、もうあなたと話すことはないのでこれで失礼します。」

 

ディナは ジ・エーデルと話すことがなくなると触手を服の中へと戻し、部屋への道へと帰るのであった。

 

----------------------

 

「あれがデビルガンダムか・・・。」

 

 

「ふふふ。面白いことおもいついちゃった!」

 

ジ・エーデルは新しいオモチャを見つけたかのようにルンルンと軽い足取りでその場をあとにするのであった。

 

 

 

 

 

そして次の日、

 

ジ・エーデルはその後、何もせずただZEUTHが基地を離れてジブラルタルへと向かうのを見ているだけだった。

 




あれ?セツコの悲しみの乙女は?(フラグ)


最近、諸事情で執筆が中々進まないくなり、さらに何度も更新が遅くなってしまい本当に申し訳ないです。

今さらですが、早くも2年が経過してしまいました。
(やべーよ、全然お話進んでないじゃないか!?)

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