Fate/EXTELLA  ~Dream awake~   作:Kanat

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本作は、fate/extellaの二次創作、及び続編となっています。原作未プレイの方には推奨しません。


Re:Summons

無限の深蒼と、点在する物体(オブジェクト)で満ちている。この世界を知らぬ者が、「この世界を構成するものは、すべて電子である」と聞いた時、即座に信じることはないだろう。それほど、仮想世界である、SE.RA.PH(霊子虚構世界)は美しかった。現実――いや、まるで現実のように、人々が町中を行きかっている。

しかし、今やこの世界を覆いつくすのは蒼の量子だけではなかった。むしろその逆、紅だ。見るも華やかな情熱を感じさせるその風景は、確かに人類史の一環に残っていた。

―ローマ―

はるか昔に大繁栄し、最繁期には地中海沿岸を統治し、さらに侵攻を続けた、最も名高い帝国群の一つである。もちろん俺は見たことはないものの、その風景からローマの街並みと推察するのは容易なことだった。街一帯を覆っている黄金と紅は、息をのむほど壮大で、当時の権威、インペリウムの強大さを思わせる。建造物の一つ一つに刻まれているローマを象徴するその紋章は美しくなお剛健だ。きらめきに満ちたその街中は、賑わい且つ、自然な安心感をもたらしてくれる。

 

しかし、そんな街に、似合わない大声が一つ。

 

「奏者よー!!!!」

 

聞くもの全てが心惹かれるような、覇気のある声が一つ、俺の背中の方向から響いた。

げ……。

恐る恐る振り向くと、大方予想通りの、赤き貴公子の皇帝陛下が、我が物顔でおられた。

 

「げ……ではない!せっかく余が早起きして、奏者とともにあの性悪狐のところに向かおうと

していたのに、今までい何を!」

 

あーそういえば。

確かにそんなこともあった。昨夜、明日は例の()()()()だといったのは確かに俺のほうだったな。と、思い出したかのようなそぶりを一応見せておく。そんなことでもしないと、アイアンメイデンにでもぶち込まれそうだ。いや、ホントに。

 

「全く……、まぁまでも奏者はどこまでも奏者な故、仕方のないことではあるのだがな…」

 

はい、その通りです。すいません。

実際のところ、セイバーに調味料を買ってくるように頼まれていたのだが、どうやら本人は忘れているようなのだ。さすが皇帝。うん。開放感のあるこの空間に、まだとどまっていたいというささやかな願いはあるが、それはそれ。それ以上の用事があるのであれば仕方ない。

やれやれ、とセイバーとともに現在の本拠地であるローマ宮殿へと向かう。

ローマ宮殿までの道のりは、そこそこあるようだ、というか、さっき俺自身が通ってきた道だから、確信できることではあるのだが。

しかし、こうしてこの街を歩いていると、改めてその華やかさに驚く。いたるところにセイバーの真名である、「ネロ・クラウディウス」のシンボルの赤い薔薇がその花を咲かせているのだ。しかも、俺たちがただ、街中をこうして二人で歩いているだけで、人々に声をかけられる。

一応ながら俺は、「月の聖杯戦争」の勝者であるマスターで、彼女はそのサーヴァントだ。それをもとにして、…いろいろあったのだが、今のこの世界の王権は俺にあるらしい。王とはいえド、そんなに皇帝らしいことはしていないのだが、ここまでふるまわれるものなのだろうか。

 

「それはまぁ、彼らにとって奏者が忠誠すべき王として映っているからな。しかし、NPCだけでなく月に移住してきた人間までもがそう言った反応を示すのは、まぁ奏者の行動といのはある」

 

ああ、あの戦いのことか。

遊星とその配下に置かれたアルキメデスたちとの戦いは、本当に厳しいものだった。(精神)とセイバーだけでは乗り越えられなかっただろう。もちろん(肉体)が残した記録のおかげでもあるが、キャスターや助けてくれた彼女たちの配下のサーヴァント。何よりも…

 

「おかえりなさい!マスター!!」

 

この少女、アルテラの力だ。その時の姿とはかなり違っているが。

いろいろ考え事をしているうちに到着してしまっていたようで、出口までアルテラが迎えに来てくれていた。

―ただいまー

一言言って宮殿内部に足を運ぶ。内装は外観のイメージと相変わらず、紅と黄金で埋め尽くされている。テーブル、椅子、暖炉さらにはトイレまでだ。さすがにトイレはやめてくれと頼み込んだが、「黄金の間で用をたすべきだ!」と全く聞かなかったものである。まぁ、彼女は『招き賜う黄金劇場』。自分の理想とする空間を作り、民衆に反映をもたらすことを得意とする。そんな障害を送った彼女に、いまさら何を言っても愚行か…。

と、そんな過去を思い出しながら、出る準備を済ませ、セイバーに声をかける。

 

「む、奏者よ、準備は終わったのか。アルテラはどうだ?」

 

「だいじょうぶですよ!」

 

「そうか、では転移によって移動するぞ」

 

セイバーがそう言うと、三人の周りに赤いサークルが発生し、体を包み込む。それらは光の輝度を増し、やがて白色に変貌した。視界が遮られ、元タマモ支配領域――千年京への転移を開始した。

 

 

 

桜が狂乱の如く咲き誇っている、いわばSE。RA.PHの()、千年京、以前は、俗称、タマモ域として栄えていたこの地だが、レガリアが統合され、一時の安息が訪れているこの世界の今では、ローマとは違った文明の地として、人々の繁栄をもたらしている。

そんなここにも、似合わぬ女性の声二つ。

 

「だーかーらー!!なんであんたがマスターと一緒にいるってんですよ!?!?」

 

「それは余と奏者が結ばれている故、命的なものであろうが」

 

「そういうロマンチスト気取りな回答は求めてねーんすよ!!」

 

「仕方なかろう!余と奏者はローマに住んでいるのだから!」

 

「な!?いつの間に同棲など…。こうしちゃいられませんマスター!今すぐ屋敷の愛の巣へ!

 

「ねぇマスター!このお料理はたべていいのですか?」

 

 

……分ってはいたが、どうしてこうもこの二人は会うたび会うたびバチバチなんだろうか。

”キャスターと会うのも一週間ぶりで、元気にしてるかな?”という出発前の心配は驚くほどの杞憂だったらしい。俺は、それを傍観するほかにやることもなく、時折二人の仲裁に入り、この都内で時間をつぶしていた。以前この部屋は、キャスターと()がマイルームとしていた部屋のようで、いまだ抜けない生活感があり、居心地が良い。

 

「……まぁ、とりあえず座れ、マスター。茶の一杯でも出そう。」

 

奥からひっそりと茶を出しながらカルナが姿を現した。彼は毎回定例会議に参加してくれていて、こちら側としてはまとも(・・・)なサーヴァントが一人でもいてくれるだけで本当に心心強い。比べてあの二人は…まあいいか。俺はカルナと相対するように席に着き、最近のSE.RA.PH内部の様子について話していた。彼は遊星との戦いの後、ここ、千年京でゆっくりと余暇を過ごしているらしい。最近のブームは、桜を見ながらライダーと世間話をすることだそうだ。曰く、”やることが特にない”のだそうだ。

 

 

「失礼、集合が遅れた…訳でもなさそうですね、マスター」

 

慌てた様子で部屋の中にライダーが転移してきた。いつものように艶やかな淡い髪を風になびかせながら、礼儀正しく部屋の中央まで移動してきた。真名、メデューサに関する神話、逸話は、裏切りや拷問などの悪名高いものが多く、こうしてこのような振る舞いを見せている彼女とは到底思えない。

彼女はこの場の状況を理解し、即座にカルナの横へと移動して席に着いた。

今更だが、俺たちがこの屋敷に簡単に転移できるのは、キャスターが結界を張っていないかららしい。なんにも、敵が消えたからこれ以降はめんどくさいとかなんとか。

 

「マスター、そろそろ始めないか?…セイバーもキャスターも席につけ」

 

そんなカルナの一言で、二人はしぶしぶ言い争いをやめ、それぞれ一つのテーブルの向かい側に座った。俺たちが経験した、アルキメデス、遊星との闘いとの後、このSE.RA.PHは一時の平和が訪れていた。しかし、いまだ俺たちが知らない。未知の領域も多く、完全に安心できるといった状態ではなかったのが現状だ。そのため、定期的に、集まれるメンバーで集合し、セラフ内部や、ムーンセル・オートマトンの運営などに、危険がないかを確認する会議を開いているというわけだ。

関には、俺の左右にセイバーとキャスター、その二人に挟まれるようにして俺の反対側、奥方にライダーとカルナが座っている。気を利かせ、ライダーが俺とカルナ以外に緑茶を入れる。こうしてみるとただのお花見と茶会に見えるが。

 

「…む。では余から。」

 

最初に静寂を切ったのは、セイバーだった。

 

「言っても、特に何の変化もないのだがな。ローマ周辺に敵性プログラムは検出されず、余が感じる時点でも、特に敵の気配はないな。」

 

「私も同じです。てゆーか、結界すら張ってないリラクシング状態なので、あんまり警戒してねーんですけど」

 

淡々と報告を進めていくセイバーとキャスター。つまらないと感じるか漏れないが、これが俺たちの戦いで得られたものなのと、改めて実感するところでもある。椅子に腰かけなおし、一息ついたカルナが、再び話を再開する。

 

「俺からも特にないな。敷いてゆうなら、千年京側にも最近NPCが増え始めたことぐらいか」

 

「私からもないですね。まぁ、それが平和で一番なのですが」

 

俺からも感じることは特に無い。

というか、敵索のような技術は持ち合わせていあいため、ほとんどセイバーたちが頼りなのだ。俺にできることがあったらぜひやりたいのだが、当面はそのようなことはないだろう。おれにできることは、今のところ、王として佇んでいることだけだと、セイバーにも言われてしまったし

うむ、とセイバーが話を切り、立ち上がる。ライダーとカルナも、用は終わった。という顔でそれぞれ転移していった。

そんな感じで、今回も会議は5分ほどで終了し、それぞれの本拠地へと戻っていった。ちなみに、キャスターは「今日だけですからね!」と言って、ローマで一夜を過ごすことを認めたらしい。

 

 

 

 

つい10分前まで、大量に並んでいた豪華な御馳走は、短時間のうちに、ものすごいスピードで消費されてしまった。俺はほとんど手を付けていないが。

「ごちそうさまでした~!!」

 

「うむ!余の作った料理は今日も美味であったな!やはり余は万才の皇帝だ!」

 

会議から帰り、セイバーの料理の手伝いや、疲れて眠りそうなアルテラの相手をしていたら、いつの間にかすっかり日が暮れてしまっていた。どうやらセイバーも料理に対してはこだわりがあるようで、仮想世界であれど、自分で食べるものは自分で作りたいらしい。

セイバーとアルテラは、食事が終わると、食器を台所まで運んでいき、それぞれ、リビングでくつろいでいた。しかし、このセイバーも、あれだけ生前は暴君と名高かったとは思えない。確かに、独りよがりで走ってしまうところもあるが。

 

「マスター、私お風呂に入ってきます」

 

と、ソファで今にも眠りそうだったアルテラが立ち上がり、声を掛けた。一人で大丈夫かと思ったが、そこは英霊。知識がほとんどなかったあの戦いのとき以来、生活に驚くべき速さで適応したのだろう。

今思えば、自慢でもなんでもなく、彼女のことを最も理解しているのは自分なのかもしれない。もちろん、(肉体)の時の()()は、セイバーも知っている。しかし。前回の世界の彼女とともにいたのは、紛れもない自分(肉体)だ。考えることも同じで、彼女の気持ちがよく伝わってくるところもある。

 

「む、奏者よ、なぜアルテラを見つめておる。……!!、まさかそなた、よもや一緒にふろに入ろうとしているのではあるまいな!?」

 

感慨に耽っていると、横からセイバーが口を挟む。

なんでそうなるんだよ…。ていうか、セイバーの価値観だと別に他人と風呂に入るのが恥ずかしくないんだし、別に突っ込むべきところじゃなくないのか?

 

「それはそうだが…、さ、さすがに、その……お、想い人と他の女を同じ風呂に入れるのは心地よくないというか…」

 

へぇ、セイバーにもそういう感情はあるのか、と、心から感じた。そういうところは乙女なんだろう。いくら大帝国を統治していたからと言って、根本的な部分は変わらないらしい。やはり、そういったところがセイバーらしくて可愛らしいのだが。

 

「な」

 

あれ、もしかして口に出てたのか?

 

「ば、ばかもの!もしや奏者()の影響が残っているのか!?普段だったらそんな情熱的なことは言わないであろう!」

 

そうかもね、と食い下がり気味に返答する。まあ、別に嘘をついてるわけではないし、素直に言っただけだから別段良いと思うのだが。

 

「奏者!調子が狂うではないか!余はアルテラと風呂に入って先に寝るとするぞ!」

 

……拗ねられてしまった。まあ、いつもの調子で戻るだろう。

…今日はなんだか俺も疲れた。皿洗いを済ませたら、寝ることにしよう。残りの皿をすべて運び、皿洗いを始める。やはり、あの大食いたち二人がいると量も多くなるものだ。

そうして作業を進めているうちに、セイバーとアルテラが上がり、先に別の寝室に向かってしまった。一通り台所はきれいに済ませ、水を止めた。

 

 

……

それにしても、この家は一階だけでも相当に広い。大理石で形作られたこの部屋の白さは、余計に孤独さを思わせる。なんていうんだろう、そう、

 

――空虚――  

だろうか。

 

 

 

 

 

その時だった。

リビングの中央、ある程度の空間に亀裂が入った。

空間からは緑色の光が漏れ、ミシミシと音を立ててだんだんと傷が大きくあっていく。空間が歪み、ガラスが割れ、散るように音を鳴らしていく。

反射的に臨戦体制を取るが、その必要はすぐに無くなった。

 

 

 

 

 

 

 

直後。亀裂の隙間から。一人の少女が姿を現した。

 

 

とても、美しかった。

俺はその光景を見たことがあった。

 

 

 

「……助けてくれ、我が(マスター)

 

 

 




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