BanG Dream!~あの時の約束~完結   作:レイハントン

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14.邂逅

 あれからというもの、やっぱり戸山は課題が終わらず蔵に来ない始末で、毎日牛込さんと有咲と俺を含めた3人で気まずい時間を過ごしている。何度も戸山に早く課題終わらせて来いよと言ってるけど、全くと言っていいほど効果はない。ギターの状況もバンドの状況もなにもわかりゃしねえ。

 

 だからと言ってギターを教えてくれてる人なんてほっとけとは言えない。そもそも人間関係は本人が決めることで、第三者があいつと仲良くしろなんて命令は出来ないし、かと言ってほおっておくわけにもいかないわけで。大変非常に困ってる。

 

「いったいどうすれば……」

 

 自室でポリポリと頭を掻きながら、窓の外を見る。今日も快晴。最近雨とか全く降らないな。まっ、雨は好きじゃないから降らなくていいんだけど。

 

 背伸びをしてベッドから起き上がった。

 

「さて……今日も気合い入れていきますかー」

 

 いまいちやる気の出なさそうな声で言って自室をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝ご飯と準備を終わらせた俺は足早に家を出た。理由はいろいろあるけど、1つはゆっくりし過ぎていつもの家を出る時間が過ぎてしまったこと。もう1つはなんとなくだ。

 

「やべっ。もう徹来てっかな?」

 

 いつもの待ち合わせ場所に行くと徹の姿はなかった。

 

 あれ? あいつ今日は先に行くとか言ってたっけか? それともあいつも遅れてるとか・・・・それはないな。徹は絶対に遅れてきたことはないからだ。

 

 スマホを確認すると、almondに連絡がきていた。開くと徹から、『寝坊したーw 先行っててー』の連絡。少しでも遅れてきたことはないとか思った俺がバカだったよ。仕方ない。今日は1人で行くか~。

 

 こうして寂しい1人での登校が始まったとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく1人でのんびり歩いた。今日は戸山達とは会わずに商店街辺りに到着。今日は気分を変えて違う道を通ったわけだけど、なんか新鮮だわ。たまにはこういうのも悪くないな。

 

 小学生や中学生がワイワイ喋りながら歩く姿を見るとどこか懐かしさを感じる。ふといい匂いがしてきた。この匂いはもうあれしかない。

 

「やまぶきベーカリー……たまには朝寄るってのもいいか」

 

 なんの躊躇いもなくドアを開けた。するといつもの明るい声の挨拶が飛んでくる。今日は花女の制服姿で。

 

「いらっしゃいませー。…あれ? 珍しいね。神山君が朝来るなんて」

 

「そうだな。今日は雹でも降るかも」

 

「あっはは! そうかもね」

 

 笑顔で言う山吹。相変わらずの人当たりの良さがにじみでている。それに朝から働いてるとは関心関心。俺は無理だわ。朝は出来るだけゆっくりしたい派なんでね。でもゆっくりし過ぎると朝みたい遅れることも多々。

 

 トレイにメロンパンを1個乗せ、安定のチョココロネを乗せようとした刹那。俺の目に飛び込んできた────

 

「こ、コロッケパンだと?! しかも北沢精肉店とのコラボ?! な、なんなんだこれは!」

 

 もう買うしかないじゃないか!! 俺の好きなやまぶきベーカリーのパンと北沢精肉店の美味しいコロッケ! そんな2つのコラボレーション! 俺の中では買う以外の選択肢などなかった。

 

「予想通り……やっぱり2つとったね」

 

「この野郎。俺の弱点を見事に突きおって。こんなんずっこい」

 

 頭がおかしくなりすぎてどこかの方言が出てしまった。ちなみに生まれも育ちも東京です。

 

 メロンパン、コロッケパンを2つトレイに乗せお会計をしてもらった。結構かかったけど悔いなどない。むしろ誇れるレベルである。俺にとって最強のコラボレーションのパンの為ならいくらでもって感じだ。

 

「んじゃ近いうちにまた来るな」

 

「ちょっと待って。あたしもそろそろ学校行くから、たまには一緒に行かない?」

 

「別にいいけど。……外で待ってるな」

 

「わかった」

 

 一足先に外に出て待つことにした。一緒に行かない? ……か。今考えると山吹と一緒に学校行くのは初めてなはず。まっ、お客さんと店員さんでなおかつ友達って関係だから緊張はしない。

 

「お待たせー」

 

「おう。そんじゃ行くか」

 

「うん」

 

 商店街を2人で並んで歩き始める。ちょいちょい人の視線が気になるな。付き合ってるの? とかカップル? みたいな視線だ。俺もたまにそういう視線をカップルに送るからわかるんだよな~。決して羨ましいとかではない。変な理由で別れるなよ……と心で思うだけ。

 

「そう言えばさ、最近戸山の課題の調子わかるか?」

 

「ん~。話を聞く限りだともう少しらしいけど………」

 

 なんとも微妙な表情で話す山吹。もうこれは……進んでないのか、例のギター練習なのか……。

 

「らしいけど?」

 

「終わらせる気はないと思う」

 

「なんだそれ」

 

 あいつはバンドの練習する気はないのか? それに課題サボってギター練習とは関心しないな。まずは学業を優先させないと。補習とかになったら、練習どころじゃないからな。

 

「それに3人で練習も大変そうだけど大丈夫?」

 

「大丈夫だったら困ってねえよ……。有咲とは話せないし、牛込さんとはなんかまだ…いまいちって感じなんだし……」

 

「そっか~。話せないのはキツいよね」と苦笑いしながら言う。

 

 だから早く戸山に戻ってきて欲しいし、なにか牛込さんと話せる話題が欲しい。前途多難ってやつだ。

 

「まあ、頑張るよ。……いつも朝から手伝ってるのか?」

 

「うん。うちは朝から忙しいし、お母さんの負担を減らさないといけないから」

 

「マジか。家に居て家事とか手伝った記憶あんまりねえな」

 

「えー、ダメじゃんそれ。たまには手伝ってあげないと」

 

「ギターの教え方の勉強とか、普通の勉強とかで忙しいから無理だ」

 

 本当はめんどくさいのが本音だけど、ここでめんどくさいなんて言ってみろ。完全に俺が敗北するのは目に見えてる。だからここはドローに持ち込むのが正解。

 

「あたしは、手伝いして、勉強して、弟達と遊んでるけど?」

 

「負けました」

 

 ハイスペック過ぎやしませんかね? なんか全部出来てるじゃん。俺負けてるやん。本音がめんどくさいとかめっちゃ恥ずかしいんですけど………。

 

「でも山吹が店番し始めたのって、中学3年生辺り? じゃなかったっけか? 記憶曖昧なんだけど」

 

「うん。ちょっとね……。いつもお世話になってるお母さんに恩返ししたくなって」

 

 なんだろう………。さっきまでの普通の笑顔ではなく、なんとなく作り笑いをしているようにも感じられたような気がする。たまにわかる時があるんだ。無理に作り笑いしてる時が。どこでそんなことがわかるようになったかは………恐らくは優衣の表情でわかるようになったと思う。小さい頃から人の表情や機嫌を伺う時はあったから。

 

「………気のせいだったらすまん。山吹、どこか無理してないか?」

 

「……そんなことないよ? あたしは普通だから、大丈夫。神山君の方こそ無理しちゃダメだからね?」

 

「わーってるよ」

 

 ホントこいつは……。気がつくといっつもこっちが心配されてるんだよな。なんか近所に住む年上のお姉さんみたいだ。でも………心配されたまま終わるのはなんかしゃくだな。

 

「なんかあったら遠慮せずに言ってくれ。俺とお前の仲だし」

 

「本当に?」

 

「ホント、ホント」

 

「じゃあ……」

 

 すると凄いニコニコしながら俺のことを見始めた。

 

「な、なんだよ」

 

「そろそろ名前で呼んでほしいな~って」

 

「はぁ?」

 

 なんでいきなり名前になるんだよ。別に名前で呼ぶのが恥ずかしいとかじゃないんだぞ? でもそういう感じで名前呼びにするんだっけ? っていう話。

 

「もう1年くらいは経つよ? 友達として名前で呼ばない? いつまでも名字だと仲が深まってない気がするから」

 

「………んー。それもそうか。そっちが良いなら構わないぞ」

 

「じゃあ決まりね! なんて呼ぼうかな~」と楽しそうに考え始める山吹。

 

 いや、そこは普通で良いだろと思うけど………これは止まらないやつか?

 

 すると思いついたのかニヤニヤしながらこっちを見てくる。

 

「けいちゃん」

 

「却下」

 

「えーなんでー? いいと思うけどな~」

 

「やだよ。こっちが恥ずかしいわ!」

 

 その後も名前呼びの抗争は続き結局心折れたのは俺。こんなに山吹がしつこいとはな……。

正直びっくりだよ。でも……こんな日もたまにはいいか。

 

 ふと気づくとすでに花女前に着いていた。すると山吹は、「じゃあね。けいちゃん」と手を振ってくる。

 

 恥ずかしさはマックスだけど、ここでやらなかったら空気読めないKYになってしまう。

 

 だから────

 

「じゃあな。沙綾」

 

 名前で呼んで手を振った。

 

 可愛いなおい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 1日真面目に授業を受けた。聞かなくてもいい授業はスルーして教える勉強。ちゃんと予習復習できてれば勉強はついていける。聞かないで書いてるから勉強が出来なくなるんだよな。そんなこんなで放課後。今日はちと用事がある。このままじゃバンドの練習がままならないから、戸山にもの申しに行く。今の現状が楽しいのはわかるけど………。有咲の人あんな表情2度と見たくない。

 

 前に戸山が今日も来ないとわかった時のあいつの悲しそうな表情……。俺の時とはまた違っていたけど、このままじゃいけないのはわかる。

 

 鞄を持って教室を急いで出た。廊下で歩く人を避けつつ昇降口へと向かう。

 

 ん。待てよ。戸山は花女に居るってことは中に入らないといけないよな? 出待ちするしかなくね? いつ出てくるかわからないし、ここは急ぐのが得策か。

 

 スピードを緩めることなく花女に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 花女の前にたどり着いた俺は戸山らしき人が居ないか、一旦辺り見回す。

 

「居ないか。先に帰った線はなさそうだな」

 

 ってことで待つ!

 

 

 

 

 

 

 

 夕焼け小焼けの夕方のオレンジ色の夕方。自分で言ってて意味分からん。

 

「そろそろ、帰ろうかな~」とスマホを弄りながら言った。

 

 さっきまでの勢いはどこ行ったとか言わないでくれ。すでに30分は経過してる。生徒の人がちょこちょこ出てくるくらいで戸山らしき人は………。

 

 ふとスマホを弄る手を止めて顔を上げる。すると見たことある髪型の生徒が俺の横を通り過ぎる前に止まった。

 

「あれ? 恵君? どうしてここに?」

 

「お前こそ。違う違う。戸山に用があって来たんだよ」

 

「そうなの? でも私急ぐから後でね!」

 

「おいおい! ちょっと待てよ!」

 

 俺の静止も聞かずに戸山は走りだす。背中を見つめながら、「あのー。有咲の事でー」と呟く。すると戸山は後ろに振り返ると「有咲と話してくる!」と言って走って行ってしまった。

 

「なんだよ……。気付くの遅せえんだよ」

 

 笑顔で見送り、蔵に向かおうと歩き始める。ふと隣に違和感。ゆっくり首を右に曲げると、こっちを見ながらニコニコしている花園さんの姿が。

 

「久しぶり」

 

「久しぶりだな。元気してたか?」

 

「元気してたよ。……有咲の家知ってる?」

 

 なぜそんな事を聞くのだろう。そしてなぜ背中にギターケースを背負ってるんだ? しかもほぼ戸山と同じタイミングで出てきた。待てよ……。戸山にギターを教えてた人って………。

 

「まさか戸山にギターを教えてたのは………」

 

「うん。わたしだよ」

 

「マジか。通りで上達するのが早いわけだ。教えてるのが花園さんだもんな」

 

「そんなことない。香澄も頑張ってたし」

 

 ご謙遜を。お陰で俺のやることはほぼ皆無なんだよなー。でも予定より早くて助かる。こっちも有咲と牛込さんの上達もそこそこだし。上手くいけば合わせられるはず。

 

「そんじゃ行くか」

 

「うん」

 

 有咲の家へレッツラゴーと思った矢先。前から明らか怪しい人が歩いてくる。サングラスに青っぽいジーパンの人。

 

「へいへーい。ちょっと良いかな? 神山君」

 

「あ、あなたは?」

 

 すると周りをキョロキョロし始めた。いや、あんたに言ってるんだよ。あんたに。

 

「あなたですよ」

 

「あ、自分? 自分は風間翔太。ちょーと聞きたいことがあるんだけど……いいかな?」

 

「なんですか?」

 

「この動画のー」と言いながらスマホを操作する風間さん? くん? さんで良いか。店だい動画が見つかったのか俺に動画を見せてきた。そこには例のごとくtwisterに上げてる俺の動画。

 

「これって~。君ー、だよね?」

 

「違うって言ったら?」

 

「んー。それは困るかなー。でも…手の傷。一緒だよね?」

 

 なに? 普段から人の手を見てるの? 花園さんにバレてからは両手をポケットに入れてるんだけどな。今だって鞄を背負って両手をポケットに入れてるわけで。

 

「ビンゴみたいだな」

 

「そうですね」

 

 すると風間さんは右手を差し出してきた。

 

「え? こ、これは……」

 

「いいから、いいから」

 

 なんで握手なんだかわからないけど、俺は大人しく右手を握る。風間さんはニコニコしながら、「あんた凄いな。これからも頑張ってくれよ」と言ってくれた。急に褒められて照れる所もあるけど、しっかりお礼はしなくちゃな。

 

「ありがとうございます」

 

「ふふーん。……そうだそうだ。バンドとか興味あるなら、ここに来いよ。面白いバンドが来るから」

 

 手を離して、紙を1枚俺に、もう1枚を花園さんにくれた。目を通すと、スタジオのチラシ。バンドとかの練習が出来る所だな。俺達は蔵で出来るから音漏れの心配はない。

 

「そんじゃな~」

 

「さよなら」

 

 結局あの人はいったいなんだんだろうか。おっと、こうしてる場合じゃないな。俺と花園さんは有咲の家に向かうべく歩き始めた。

 

 

 

 

 

 この出会いが後々重要になるとは思ってもいなかった。

 

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