BanG Dream!~あの時の約束~完結 作:レイハントン
前回に引き続き今回も主人公の話となります。今回は過去の話がありますよー。
あいつが倒れてから1日。その場に居た風間さんのおかげで大事にはいたらなかった。今日は学校の帰りに香澄達と病院にお見舞いに来てる。
いくら嫌いな奴でも、目の前でいきなり倒れたら心配の1つもする。………中学の時からオーバーワークするのは変わらないのかよ。ホント……昔から根っこは変わらないな。テストとか文化祭とか行事ごとがある度にテンション上げて張り切って。
「バカだよな……私もお前も……」
そーっとバカの手を握った。目立った傷が数カ所。暖かくて、大きな手。一回も手繋いだことないな。当たり前か………。付き合ってた訳じゃないし。繋いだことなくて当然。
誰にも見られないようにすぐに手を離した。一定のリズムで呼吸する中、「うっ」と声が漏れてくる。悪夢でうなされてるのかな? もう一度手を握ろうとした瞬間───病室のドアが静かに開いた。入ってきたのは香澄達。タイミング悪………。
あれ? なんで今……タイミング悪なんて思ったのかな。 私……。
「けーちゃん……まだ起きないんだね」
いつもの元気がない様子でバカを見る香澄。あの香澄でも落ち込むんだな。なんか意外。
「もう朝なのに」
「いや、それは関係ない」
おたえは相変わらずだな……。
「ずっと無理してたのかな……? 勉強と練習で」
「過労だからそうじゃね?」
そこで会話は途切れた。ただバカを見つめるだけ。
「全然気付かなかった………」不意に香澄がボソッと言った。周りが気付かないようにオーバーワークするのが、バカの得意技だからな。気付かないのは当然。
「私ただ呑気にギター弾いてただけだった……。けーちゃんは疲れと勉強で苦しんでたのに……」
「香澄ちゃん……。今は自分を攻めるのはやめよう? 神山君はそんなこと望んでないと思うし」
「りみの言うとおり。こんなオーバーワークするバカなんてほっとけばいいんだよ。昔からこうだから」
バカは死んでも治らない。こいつの場合は地獄に落ちても治らないと思う。だって……筋金入りのお人好しバカだから。
中学1年生の冬。
「うめー! やっぱりばあちゃんが作る飯は旨いな~」
市ヶ谷家で俺は朝ご飯を食べていた。
「ありがとねー。恵ちゃん、いつも美味しいって言ってくれて」
「いやいや。本当のことだから!」
笑顔で答えて今度は味噌汁を飲む。これもやっぱり旨い。お袋の味はこういうのを言うんだな! まっ、俺のばあちゃんじゃないけどな~。
すると襖が開いた。そこにはクリーム色の髪を肩に掛かるくらいに伸ばした瞳が黄色の少女───市ヶ谷有咲の姿があった。
「よっ! やっと起きたか有咲」
「・・・・いつもいつもなんでいんだよ!」
開幕一番でツッコミとはこの数年で腕を上げたな有咲よ。お兄ちゃんは嬉しいぞ~。お兄ちゃんでもないんだけど。
「いや、ばあちゃんのご飯を食べるため」
「ふざけんなよ! ここはお前の家じゃねえ~!」
「俺は第2のhomeだと思ってるけどな」
箸を片手にサムズアップを有咲に向ける。
こんだけ朝から大声だしてるとどうせ今日も学校行かないとか言うんだろうな~。別に不登校なわけじゃない。俺もよくわからんけど、なんか学校行かなくても単位取れるとか取れないとか。有咲は俺と違って頭が良いからな~。勉強に関しては頭が上がらない。
「もういい。だるいから今日は学校行かない~」
「ほら、またでた。単位取れるから学校行かなくても良いって教えた覚えはないぞ~お兄ちゃんは」
「うるせえ! お兄ちゃんじゃないだろお前は! ただの友達!」
「そんな連れねえこと言うなよ有咲~。俺とお前の仲だろ?」
毎朝このやり取りを永遠行っている。まっ、結果的学校には連れて行くんだけどな~。あの方法で………。
「わかった。じゃあ今日1日頑張ったら明日から朝はもう来ない。それでどうだ?」
「はぁ? 寝言は寝てから言えよ。前に今日は夜更かしするから明日は行かないって言ったのに来たじゃねえかよ!」
「あれ? そだっけ? 記憶にございやせーん」
あらあら。そろそろ止めないと有咲が怒るぞ。怒ると機嫌直すのに時間かかるんだよな~。それはめんどい。
「お前なー」
「わかったわかった。とりま着替えてこい。た、たまにはお前の制服姿見せてくれよ」
「はぁ?! お前な、なに言ってるんだよ!」
有咲は顔を赤くして部屋を出て行った。もちろんそれを言った俺の顔も。今ならお湯くらい沸かせそうな勢いだ。
あー恥ずかしかった……。制服姿見せてくれよだって。どこのラブコメの主人公だよ。つうかラブコメの主人公でもそんなこと言わないんじゃねえか?
俺は恥ずかしさを隠すために味噌汁をすすった。………旨い。
数分経っただろうか。朝ご飯の片付けを手伝い、有咲が来るのを待った。まだ学校に遅刻するかもという時間ではない。twisterを見ながらその時間を潰す。
説明しよう。twisterとは世界中で使っている人が沢山いるSNSアプリである。
「なんだなんだ。あいつ今日サボリかよ」
どうやら今日は友達が休みらしい。もうすぐ春休みだからって弛みすぎじゃありやせんかね。にしても有咲はまだか~?
「ごめん。待たせた」
「お~。んじゃ行きますかね」
久しぶりに見たけどやっぱり可愛いな。とりま平常心平常心。悟られないようにしないと。
俺、神山恵は市ヶ谷有咲に恋をしている。いつからかはわからない。有咲はたぶん気付いてないと思う。
市ヶ谷家を出て有咲が通う中学校に向かった。
「いい天気ですな~。こんな日は外に出て学校に行くに限る」
「なんだよ。学校行かない当てつけ?」
「いや、そういう訳じゃねえよ。学校くらい毎日行こうって話だ。授業聞いてなくてもいいからさ」
俺は学校を休みがちな有咲が心配だった。勉強出来て、容姿も可愛いのに学生生活をわざわざ捨てるのは勿体ないと思う。普通に彼氏が居たっておかしくない話だし。
俺は有咲のことが好きだ。でももし付き合えたらと考えると嬉しいけど、自分の性格を考えるとちゃんと付き合えるか心配だ。
めんどくさがりだし、変に心配症だし、たまに無性に叫びたくなるし。最後のは関係ないにしても、夜連絡とるとか考えるとなんだかめんどくさい。
じゃあ恋をするなって話になるけどそうもいかない。人はなんやかんやで異性のことが好きになってしまう。その1人が俺である。友達に「俺は恋愛とかだるいからいいわ」とか言ってしまってるから、今更有咲のことが好きとか言えない。
「お前さっきからなにぶつぶつ言ってるの?」
「いやなんでもない」
「にしても毎日よく朝早く起きれよね。どうして?」
「そりゃ決まってるだろ。早寝早起きしてるからだ」
「はぁ?」
いやもう、年寄りなんすよ。どれだけ遅く寝ても5時には目を覚ますんですはい。そのおかげで有咲の家に早く行けるんだけどな~。前に勇気だして部屋入って寝顔見ようとしたらバッチリ目が合って殴られた。あれは痛かったぞ。
「まさか勉強はちゃんとやってるよね?」
「お陰様で学年10位以内に入っております。これも有咲の教え方が良いんだよ」
「当たり前でしょ」
クソ。たまに頭がどうしても上がらない時があるけど文句の1つも言えねえから悔しい~! だけど実際は助かってるから文句は言えないよな。
少し道が狭くなった。その事で俺と有咲の距離が近くなる。なにも持ってない左手が時折、有咲の手と触れ合う。
「あっ、悪りぃ」
「う、うん」
なんだか気まずい雰囲気になってきた……。早く学校着いてくれ~。
なんて考えてるといつの間にか学校に着いた。正門から入っていく生徒は殆ど女子。というかここは中高一貫校の女子校。だから女子しか居ないのだ。そこに男子が1人。………いや、目立ってしゃあない。
「んじゃあな」
「待って! あの……その。帰りも一緒に帰らない?」
「おう。じゃあ学校終わったらまた来るわ。ちゃんと学校頑張れよ」
「わかってる」
有咲と別れ俺も中学校へと向かった。俺の通う中学校は普通の中学だ。中学受験というものを受けなければ、必然的に行くことになる中学校かな。因みに有咲は中学受験してあの学校に行きました~。
ここら辺は女子校が2校か3校くらいある。有咲が通ってる花咲川女子学園と…………なんとか女子学園。殆ど知らんけど。
とりあえず女子校が沢山ある!
「あ! 神山君おはよう!!」
「ビックリした~! 朝から大声で挨拶するんじゃありません」
「えへへ。ごめんごめん」
朝から大きな声で挨拶してきたのは、戸山香澄。独特な髪型をしている。崩れてるのは一度も見たことがない。と言っても仲良くなったのは中学に入ってからだ。
そしてなにより元気全開day!day!day!でポジティブ思考な彼女はクラスでも人気者。特に女子から。そう言うのが気に入らない男子や女子も居るが俺はどっちでもなく普通だ。
「いつも元気だなお前は。疲れないのか?」
「うん! 元気あるのが一番だよ! だからそんなダルそうな顔してないで行こ!」
「ご勝手にどうぞ~」
めんどくさい。実にめんどくさい。でも結局俺のことは待たずに先に走って行ってしまった。ホント朝から走れるとか尊敬だわ~。まっ、同じクラスだと委員長決めたりする時は楽だぞ。必ずと言って良いほどやるから。
「そうだ! 今度勉強教えてよ~! 次のテスト赤点取ったら補習になっちゃう!」
「お前な……。そうならないようにするために、日頃から勉強するんだよ。わかる?」
「うんうん」
わかってたら補習になりそうなんて言わんだろ。そう戸山は勉強が出来ない。コミュ力は申し分ないし、容姿も普通に可愛い。だけど勉強が出来ない。才色兼備にはまだまだ遠いな。目指してるかは知らんが。
「………はぁー。しゃーねーな。教えてやるけど、ビシバシいくからな!」
「やったー! これで赤点回避だー!」
「それはお前次第だけどな」
「え……」
当たり前だろ……。勉強するのはお前なんだから。
放課後。さっさと帰る準備をして有咲を迎えに行くために学校を出た。若干だけど、花女の方が終わるのが早かったりするんだよ。急がないと!
「はぁ……はぁ……。悪い」若干肩を上下させながら謝った。ジト目でこっちを見てくるものの。終わる時間には勝てないものだ。
「急いで来たから許す。……帰ろう」
「おう。今日は早退しなかったんだな」
「早退したら、次お前と合った時がめんどうたから」
遠まわしにうるさいって言われてるような………。でもお節介を焼くのが俺の仕事でもあるしな。
ここだけの話、有咲にはお父さんとお母さんは居ない。……居ないと言ったら語弊があるか。転勤族らしくて殆ど家に居ないらしい。そのことについてはあまり聞いたことがないからわからんけど。話したくないみたいだから、俺も深くは追求しなかった。
「それは俺のことか?」
「そうだよ! お前以外に居ると思うか?!」
「思わん」
有咲はため息を吐いた。一旦会話が途切れる。次はなに話そうかと考えて居ると……。不意に俺の左手に触れてきた。少しびっくりした俺は有咲のことを見る。顔が若干紅潮していた。
「ど、どうかしたか?」歩みを止めずに聞く。
「手、つ、繋いじゃダメ?」
「いや……。別に良いけど……」
そう言うと有咲は俺の手をしっかりと握ってきた。俺もあまり深くは追求せずに手を握る。柔らかくて、暖かい有咲の手を。
たまにこういうことがある。………やっぱり寂しい時があるのかな。親が居ないっていうのは正直よくわからない。でも仕事でお父さん、お母さんが居ないとかはあって小さい頃は寂しかった記憶はある。
「なあ……有咲」
「ん? な、なに?」
「あのさ………いや、なんでもない」
普通に繋いでいた有咲の手を世に言う恋人繋ぎというやつだ。
「ど、ど、ど、ど、どうしたの?! 急に!」
「だからなんでもないって」
この時決めたのに……
「絶対にどこにも行かないし」
初めて守ってやりたいって思ったのに。
「有咲を裏切らない」
その約束を………。
「ずっと友達だ!」
破ってしまった。
有咲の親はほとんど家に帰ってこない設定にしました。なにかありましたら感想でお待ちしております。
しばらく主人公の話が続きます。